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第9話 大魔導師アンゼリカ
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魔獣の森での騒動を解決した私は、川で子猫の唾液を洗い流し、つつがなく林間学校のキャンプ地へと戻ったのであった。
カリーナもソフィアもすぴーすぴーと寝ているテントに入って私も眠る。
その就寝後。
***
おお!懐かしの何もない真っ白い空間!
岩下真帆だった私が、死んだ直後に存在した場所だ!
と、いうことは……
「お久しぶりです。魔王様」
おお!16年ぶりに見るアンゼリカちゃんだ!
真っ黒いドレスに長い銀髪。
小学校5年生ぐらいの、こんな妹がいたら毎日お触りしていたいよ~、って思える超絶美少女!
「うわああああん。
会いたかったよお、アンゼリカちゃん!」
ヒシっと抱きつく私。
「もう、魔王様ったら。
どちらかというと、魔王様に覚醒したあなた様に、私が抱きつきたいのですが……」
「え~?別にいいよ~。今も抱きついてきても」
前前世は覚えてないけど、前世と今世は明確に記憶ある私なのだ。
それを繋げてくれてるのがアンゼリカちゃんなんだから、遠慮しなくていいのに。
「コホン。魔王様、いつ気づかれるかわかりませんので手短に伝えます。
魔王様と岩下真帆を殺した勇者は、あなた様の近くにいます」
私から離れ、真面目な顔つきになってアンゼリカちゃんは告げてくる。
「おや?驚かれないのですね」
「うん……私が林間学校で近くに行くタイミングで、魔獣の森を混乱させようとした。
そんな偶然、滅多にないと思うし」
謎の人物からの、生き残った一匹だけに食糧100年分プレゼント企画。
あの森の魔獣たちは賢い。
それなのに心揺らいで、おかしな空気を森に蔓延させたのは、謎の人物が人智を超えた何かな証拠なのだ。
それが、私が近くにいるのを知ってて実行した。
勇者からの宣戦布告と考えるのが妥当だろう。
「リーシャ・リンベルの16年間を見てました。
あなた様が、前世の記憶を思いだしたのは1年前。
……お詫びします。記憶を封じていたのは私です。
理由は……」
「ああ~、何となくわかるかな?
赤ん坊から、岩下真帆の記憶を持ってたら、私は怯えて過ごしてたと思うし。
おかげで随分自由気ままに、伸び伸びと幼少期過ごしたし。
前世で戦闘力ゼロだった私が、今はかなり戦えるようになったのはアンゼリカちゃんのおかげだから、むしろ感謝かな?」
「そう言っていただき、感謝します。
……あなた様の今の能力は、前前世の魔王様に近づきつつあります。
どうです?魔王様時代は思いだしましたか?」
「ごめん、それはまったく」
魔王時代の夢である、ファーストキスした相手と大恋愛して生涯を共にする。
それが叶うまで魔王の記憶を封じて、転生したらしいけど……
正直、ピンと来ないんだよねえ。
世界の9割支配してたって。
……それなのに、ファーストキスすらまだだったってのが。
そこまで支配してもモテなかったのかい、前前世の私。
「話を戻すけど、アンゼリカちゃんは、勇者の転生体が誰だか特定できる?」
「……すいません。試してはいるのですが、あなた様の近くにいる人間全員に靄をかけられてしまいまして。
平たく言いますと、林間学校であなた様のグループが寝ているテントが対象です」
「……それって女子も含む?」
「はい。含まれます」
マジかあ。
ソフィアは怪しいけど、カリーナも疑わなくっちゃならないのかあ。
まあ、ずっと女子寮で一緒にいて私を襲おうとしてこないし、カリーナは違うと思うけど。
男子はイワン、ボリス、フェリクス、ユリウスの4人が私を好きだと公言してきた。
ソフィア含む、その5人が今のところ私に告白した面々だ。
あと林間学校の面子は、銀髪のニコライがいる。
ただ、彼は私に興味なく振る舞ってるから現状は容疑者から外れるかな?
「ねえ、アンゼリカちゃん?
私を好きだと言ってきた人たち、全員ガチだと思う?」
「と、申しますと?」
「いや、だってさ、私って前世モテなかったし!
前世を思い出す前のリーシャ・リンベルもモテてなかったし!
なのにこの数ヶ月で、4人のイケメンと、1人の超絶美少女から告白されたんだよ!
こんなの絶対、裏があるよ~。
もしかして、全員勇者の転生体ってオチが待ってたりして~」
誰を選んでも、ファーストキス後に豹変するバッドエンド要因だとしたらガチで凹むぞ。
大体、みんなが私に惚れたって告げるシーンも唐突だったし~。
そう私が言うと、アンゼリカちゃんは小首を傾げた。
「勇者の転生体は1つですので御安心を。
他の人たちは、リーシャ・リンベルである魔王様にベタ惚れなのは間違いありません」
私を狙う勇者の転生体は1人しかいない……か。
だとすれば、私に告白してきたイワンやボリス、フェリクスにユリウス、それにソフィアの中で、犯人の勇者以外は私にベタ惚れねえ。
それもなんかピンとこないんだよな~。
「……グスン。
アンゼリカちゃんはホントいい子だねえ。
ねえ、これって寝てる私の夢にアンゼリカちゃんが魔法で呼んだって感じなんだよね」
「はい、合ってます」
「じゃあ、さ。
ここからアンゼリカちゃんを、私が転生した世界に呼ぶことは可能なのかな?」
アンゼリカちゃんが、いつも側にいてくれたら心強いし。
しかも可愛くて抱き心地最高だから、メンタル回復にも必須な存在なのだ。
……それに、ずっとこんな真っ白い空間に1人でいるのは可哀想だ。
私と一緒に外の世界を自由気ままに過ごしてもらいたいのだ。
「……この場所は、私が魔王様に託された場所なのです。
あらゆる天地創造の神々をも騙すために産み出した、魔王様が転生をするための装置なのです。
離れるわけにはいけません」
私が託した?
転生するために?
しかも天地創造の神々をも騙すって……
「それ、取り消しで」
「魔王様の記憶が戻っての命令なら受け入れますが、今のあなた様では命令を聞く謂れはありません」
淡々と、無機質に、アンゼリカちゃんは答えた。
アンゼリカちゃんの冷酷な物言いに、私は心を痛めた。
彼女が私に寄せる感情は、奉仕と義務のようなものなのだと感じてしまったからだ。
それでも、彼女を私のそばに置きたいという願望は変わらない。
「そろそろ、時間ですね。
お気をつけてくださいませ。
魔王様……いえ、今はリーシャ・リンベル様とお呼びしましょう」
岩下真帆からリーシャ・リンベルになる前と同じような光が、私を包む。
「アンゼリカちゃん、また、会えるよね?
毎日夢の中に出てきてよ~」
そんな私の言葉に、彼女はクスッと笑ってこう答えるのであった。
「魔王様となられたら、叶いますよ。
頑張ってください。
そして、かつてのお約束を思い出してください」
私は困惑してしまう。
「約束?どんな約束?」
「魔王様が全てを思い出された時、きっと理解されるでしょう。
あなた様の目的と、私たちの使命を、天地創造の神々を屠ることを」
淡々と、冷酷に、アンゼリカちゃんは答えた。
く~。まだいっぱい聞きたいことあるのに~。
空間が歪んでいく。
この場所から、私が消えていく。
『天地創造の神々を屠ること』とはいったい何を意味しているのだろうか。
アンゼリカちゃんが私に寄せる想いは、そのような壮大な目的のためなのだろうか。
彼女が語る『約束』とはいったい何なのか、気がかりになって仕方がないぞ。
直後、私は目を覚ましたのであった。
***
『大魔導師アンゼリカ
年齢 ?歳
容姿 銀髪ストレートヘア 十代前半 美少女
身分 魔王の側近中の側近
能力 全ての物質を魔法に変換できる
性格 真面目 忠誠無私
人生 魔王様に出会うまでは暗黒だった
目的 天地創造の神々を屠ること(本当かは不明)』
カリーナもソフィアもすぴーすぴーと寝ているテントに入って私も眠る。
その就寝後。
***
おお!懐かしの何もない真っ白い空間!
岩下真帆だった私が、死んだ直後に存在した場所だ!
と、いうことは……
「お久しぶりです。魔王様」
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真っ黒いドレスに長い銀髪。
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「うわああああん。
会いたかったよお、アンゼリカちゃん!」
ヒシっと抱きつく私。
「もう、魔王様ったら。
どちらかというと、魔王様に覚醒したあなた様に、私が抱きつきたいのですが……」
「え~?別にいいよ~。今も抱きついてきても」
前前世は覚えてないけど、前世と今世は明確に記憶ある私なのだ。
それを繋げてくれてるのがアンゼリカちゃんなんだから、遠慮しなくていいのに。
「コホン。魔王様、いつ気づかれるかわかりませんので手短に伝えます。
魔王様と岩下真帆を殺した勇者は、あなた様の近くにいます」
私から離れ、真面目な顔つきになってアンゼリカちゃんは告げてくる。
「おや?驚かれないのですね」
「うん……私が林間学校で近くに行くタイミングで、魔獣の森を混乱させようとした。
そんな偶然、滅多にないと思うし」
謎の人物からの、生き残った一匹だけに食糧100年分プレゼント企画。
あの森の魔獣たちは賢い。
それなのに心揺らいで、おかしな空気を森に蔓延させたのは、謎の人物が人智を超えた何かな証拠なのだ。
それが、私が近くにいるのを知ってて実行した。
勇者からの宣戦布告と考えるのが妥当だろう。
「リーシャ・リンベルの16年間を見てました。
あなた様が、前世の記憶を思いだしたのは1年前。
……お詫びします。記憶を封じていたのは私です。
理由は……」
「ああ~、何となくわかるかな?
赤ん坊から、岩下真帆の記憶を持ってたら、私は怯えて過ごしてたと思うし。
おかげで随分自由気ままに、伸び伸びと幼少期過ごしたし。
前世で戦闘力ゼロだった私が、今はかなり戦えるようになったのはアンゼリカちゃんのおかげだから、むしろ感謝かな?」
「そう言っていただき、感謝します。
……あなた様の今の能力は、前前世の魔王様に近づきつつあります。
どうです?魔王様時代は思いだしましたか?」
「ごめん、それはまったく」
魔王時代の夢である、ファーストキスした相手と大恋愛して生涯を共にする。
それが叶うまで魔王の記憶を封じて、転生したらしいけど……
正直、ピンと来ないんだよねえ。
世界の9割支配してたって。
……それなのに、ファーストキスすらまだだったってのが。
そこまで支配してもモテなかったのかい、前前世の私。
「話を戻すけど、アンゼリカちゃんは、勇者の転生体が誰だか特定できる?」
「……すいません。試してはいるのですが、あなた様の近くにいる人間全員に靄をかけられてしまいまして。
平たく言いますと、林間学校であなた様のグループが寝ているテントが対象です」
「……それって女子も含む?」
「はい。含まれます」
マジかあ。
ソフィアは怪しいけど、カリーナも疑わなくっちゃならないのかあ。
まあ、ずっと女子寮で一緒にいて私を襲おうとしてこないし、カリーナは違うと思うけど。
男子はイワン、ボリス、フェリクス、ユリウスの4人が私を好きだと公言してきた。
ソフィア含む、その5人が今のところ私に告白した面々だ。
あと林間学校の面子は、銀髪のニコライがいる。
ただ、彼は私に興味なく振る舞ってるから現状は容疑者から外れるかな?
「ねえ、アンゼリカちゃん?
私を好きだと言ってきた人たち、全員ガチだと思う?」
「と、申しますと?」
「いや、だってさ、私って前世モテなかったし!
前世を思い出す前のリーシャ・リンベルもモテてなかったし!
なのにこの数ヶ月で、4人のイケメンと、1人の超絶美少女から告白されたんだよ!
こんなの絶対、裏があるよ~。
もしかして、全員勇者の転生体ってオチが待ってたりして~」
誰を選んでも、ファーストキス後に豹変するバッドエンド要因だとしたらガチで凹むぞ。
大体、みんなが私に惚れたって告げるシーンも唐突だったし~。
そう私が言うと、アンゼリカちゃんは小首を傾げた。
「勇者の転生体は1つですので御安心を。
他の人たちは、リーシャ・リンベルである魔王様にベタ惚れなのは間違いありません」
私を狙う勇者の転生体は1人しかいない……か。
だとすれば、私に告白してきたイワンやボリス、フェリクスにユリウス、それにソフィアの中で、犯人の勇者以外は私にベタ惚れねえ。
それもなんかピンとこないんだよな~。
「……グスン。
アンゼリカちゃんはホントいい子だねえ。
ねえ、これって寝てる私の夢にアンゼリカちゃんが魔法で呼んだって感じなんだよね」
「はい、合ってます」
「じゃあ、さ。
ここからアンゼリカちゃんを、私が転生した世界に呼ぶことは可能なのかな?」
アンゼリカちゃんが、いつも側にいてくれたら心強いし。
しかも可愛くて抱き心地最高だから、メンタル回復にも必須な存在なのだ。
……それに、ずっとこんな真っ白い空間に1人でいるのは可哀想だ。
私と一緒に外の世界を自由気ままに過ごしてもらいたいのだ。
「……この場所は、私が魔王様に託された場所なのです。
あらゆる天地創造の神々をも騙すために産み出した、魔王様が転生をするための装置なのです。
離れるわけにはいけません」
私が託した?
転生するために?
しかも天地創造の神々をも騙すって……
「それ、取り消しで」
「魔王様の記憶が戻っての命令なら受け入れますが、今のあなた様では命令を聞く謂れはありません」
淡々と、無機質に、アンゼリカちゃんは答えた。
アンゼリカちゃんの冷酷な物言いに、私は心を痛めた。
彼女が私に寄せる感情は、奉仕と義務のようなものなのだと感じてしまったからだ。
それでも、彼女を私のそばに置きたいという願望は変わらない。
「そろそろ、時間ですね。
お気をつけてくださいませ。
魔王様……いえ、今はリーシャ・リンベル様とお呼びしましょう」
岩下真帆からリーシャ・リンベルになる前と同じような光が、私を包む。
「アンゼリカちゃん、また、会えるよね?
毎日夢の中に出てきてよ~」
そんな私の言葉に、彼女はクスッと笑ってこう答えるのであった。
「魔王様となられたら、叶いますよ。
頑張ってください。
そして、かつてのお約束を思い出してください」
私は困惑してしまう。
「約束?どんな約束?」
「魔王様が全てを思い出された時、きっと理解されるでしょう。
あなた様の目的と、私たちの使命を、天地創造の神々を屠ることを」
淡々と、冷酷に、アンゼリカちゃんは答えた。
く~。まだいっぱい聞きたいことあるのに~。
空間が歪んでいく。
この場所から、私が消えていく。
『天地創造の神々を屠ること』とはいったい何を意味しているのだろうか。
アンゼリカちゃんが私に寄せる想いは、そのような壮大な目的のためなのだろうか。
彼女が語る『約束』とはいったい何なのか、気がかりになって仕方がないぞ。
直後、私は目を覚ましたのであった。
***
『大魔導師アンゼリカ
年齢 ?歳
容姿 銀髪ストレートヘア 十代前半 美少女
身分 魔王の側近中の側近
能力 全ての物質を魔法に変換できる
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