転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

文字の大きさ
上 下
283 / 308

283

しおりを挟む
 翌日からなるべくビアンカを連れて歩くようになった。元公爵に会う時も、王城に上がる時も常にビアンカを後ろに従えて、話を聞かせる様にしている。

 転移が使える事も既に話してある。領地のプレイースやロンダールにも連れて行き、ゼルマキア家の現状もだいぶ把握出来た様だ。

 流石に帝国には連れて行っていないが、いずれは大森林の向こうの事も話す日が来るだろう。僕の右腕なら、知って居て貰わないと困る事になる。

 ちなみに戦闘能力は皆無なので狩りには連れて行かない。まあ、狩りは僕のストレス発散の場でもあるし、1人の方が効率が良い。

 僕が狩りに出ている間はセリーの仕事を見て学ぶ様に言ってある。流石に貴族学院を出ているだけあって、政務についての知識はある様で、最初は戸惑っていたが、今では手伝い程度ならこなせるようになって来た。

 まあ、貴族学院を出ていきなり公爵家の政務を行うと言うのは無茶ぶりだったかもしれない。

 ビアンカは魔法が使えない。厳密に言えば使えないのではなく知識が無いだけなのだが、参謀の知識と魔法の知識を同時に覚えるのは大変なので、現状では参謀の知識を覚える事を優先させている。

 僕の方は未だに時間を戻す魔法は完成していない。時越えの魔法や、時間逆行の魔法、時を止める魔法等、様々な時空魔法は覚えられたのだが、何故か世界の時間を戻す魔法だけが発動しない。理論が間違っているのだろうか?

 時を止める魔法は3分位なら時間を止める事が出来る様になった。これはこれで色々と使い道がありそうだ。時間を止めて自分だけが動けるのなら、僕の戦闘能力と併せて使えば、瞬時に数万人の敵を無効化出来そうだ。

 さて、僕と一緒に行動しているビアンカだが、当然の事ながら、クラ―ネルとの接点が多くなる。ビアンカはクラ―ネルに憧れているらしいが、クラ―ネルはどうなのだろう?

「なぁ、クラ―ネルも伯爵になったんだから、そろそろ第二夫人の事を考えないと行けないんじゃ無いか?」

「はぁ、実際に見合いの話が大量に来ていて困ってる状態です。僕としてはマリーカの出産が終わるまでは第二夫人の件は考えられないんですけどね。」

「しかし、伯爵ともなると上級貴族だ。最低でももう一人嫁を貰わないと周りが煩いぞ。マリーカ嬢を第一夫人にしたいのなら、子爵か男爵の次女辺りを嫁にするしかないな。」

「僕としてはマリーカ一人で十分なんですけどね。貴族って面倒ですね。」

「そう言う事ならうちのビアンカを嫁にしたらどうだ?マリーカ嬢の友達だし、男爵家の次女なので分はわきまえているぞ。」

 そう言ったら、後ろで話を聞いていたビアンカが間抜けな声を上げた。

「ビアンカさんを僕にですか?エイジさんの参謀に育てているんですよね?大丈夫なんですか?」

「ビアンカももう16歳だからな。何時までも嫁に行かない訳にも行かないだろう?まぁ、救済の箱舟と戦う同志だし、色々と秘密も知っている。誰にでも嫁に出せるって訳じゃ無いんだ。その点クラ―ネルなら僕の事を良く知ってるから安心なんだよね。」

「なるほど、確かにそうなりますね。解りました、後でマリーカに相談してみます。」

 そう言ってクラ―ネルは仕事に行った。パーティーメンバーの育成もかなり進んでいる様で、既にSランク相当まで引き上げた様だ。

 クラ―ネルの姿が見えなくなるとビアンカが、凄い勢いで抗議をして来た。

「な、何を言ってくれるんですか!明日からどうやってクラ―ネルさんと顔を合わせれば良いのか解りませんよ!!」

「ん?おかしな事を言ったか?ビアンカも貴族の娘ならこう言う話の一つや二つ聞いた事があるだろう?」

「それは、そうですが、自分の話となるとまた別ですよ。」

「あれ?クラ―ネルと結婚するのは嫌だったか?」

「いや、その、別にそう言う訳ではありませんが。」

 あら?ビアンカさん語尾がだんだん小さくなって居ますが?

「それに、良く考えてみろ。第二夫人だとしてもクラ―ネルは伯爵だぞ。こんな事を言っては失礼かもしれんが、男爵家の次女が貴族の嫁になれる可能性は低いんじゃないか?」

「そうですね、男爵の次女なんて半分平民の様な物です。それなりに裕福な商人に嫁げれば良い方です。貴族に嫁げることはまず無いでしょう。良くてお金のある貴族の妾が精々ですね。」

「だろう?だったら伯爵家の第二夫人と言うのは破格の条件だと思うが?」

「そう言う事を言ってるのではありません。なんで本人が居る前でそう言う話をするんですかと言ってるんです。」

 まあ、ビアンカの言いたい事は解るが、僕もクラ―ネルも忙しいので、こう言うタイミングで無いとなかなか話が出来ないんだよね。

「でもさ、正式な話じゃ無いし、本人が居た方が意思の確認も出来るでしょ?僕としてはビアンカが嫌な結婚を無理やりさせる様な事をしたく無いんだよ。」

「正式な話じゃなくても公爵様が口にしたら断われる貴族って居ないんじゃ無いですか?」

「そんな事は無いぞ。クラ―ネルは僕の弟子だからな。嫌な物は嫌だとちゃんと言える様に教育してある。ビアンカも同じく僕の弟子になる訳だから、嫌なら嫌だと言えば僕は違う道を考えるぞ。」

「公爵様なのに変わった考え方をするんですね。」

「僕は冒険者から貴族になったからね。生まれつきの貴族とはちょっと違うかもしれないね。」

 って言うか、日本人の感覚では貴族の世界はなかなか理解出来ないぞ。

「ちょっとと言うかだいぶ違いますよ。そもそも、男爵家の次女を文官として抱える貴族はまず居ません。更に言えば女性に参謀をやらせる事もまず無いでしょうね。」

「そうか?才能があるのなら男女の区別は関係ないと思うけどな?」

「そもそも、貴族社会では女性は政治に参加出来ないのが普通ですよ?」

 ああ、完全な男尊女卑の世界だったな、日本人の感覚だとそれって忘れがちなんだよね。

「冒険者の世界では強さが全てだ。そこに男女の差は無い。そもそも魔物は男性だろうと女性だろうと構わず襲って来るだろう?僕はそう言う世界で育ったからね、女性だから何もできないとは考えないんだよ。むしろ使える者は使うと言う主義だ。」

「やはり変わってますよ。」

「まあ、その話は良い。クラ―ネルとの結婚、考えて置いてくれよ。嫌なら断るから、遠慮なく言え。」

「嫌ではありませんが、結婚したら参謀はどうなるのですか?」

「貴族の結婚は色々と面倒だ。まあ、結婚が決まっても1年位は時間がある。その間にみっちり鍛えてやるよ。そして、実戦もして貰う。全てが片付いた頃にようやく結婚って感じになると思うぞ。」

「結婚後は?」

「そうだな、結婚後はクラ―ネルの参謀になれば良いんじゃないか?まあ、君が働きたいと言うなら継続して雇っても良いが、子供とか欲しいだろう?」

 正直、今から1年後には全ては終わっていると思いたい。そうなれば参謀は必要が無くなる。ビアンカには平和な世界で子育てをして欲しい物だ。

 それにはなるべく短時間でビアンカを1人前の参謀に育てないと行けない。知識は武器だ、本当はじっくりと教え込みたいのだが、何時何が起こるか解らない現状ではそう悠長にはして居られない。

 あまりビアンカに負担は掛けたくないが、魔法で脳に戦略と戦術の知識を書き込もうと思う。おそらく、現代日本人の僕の持っている知識を理解するのは普通では無理だろう。

 さて、知識を得たビアンカがどんな参謀になるか、楽しみでもあるが、不安でもある。

 僕と同レベルでは困る。僕が思いつかない作戦を考えられて初めて参謀と呼べるようになる。

 ビアンカの才能と僕の知識、それがどんな化学反応を起こすのか、そしてそれを得たビアンカがこの先どんな人生を送るのか、これは一種の賭けだな。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...