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王国は広い。だが、1週間もすると徐々に地方にも国王崩御の知らせが届く。王都が西の端にあるので東の端まで情報が届くのに1か月近く掛かる事もある。
少し遅れて新国王にミーレン公爵が就任した事が伝わる。4万人の虐殺事件については更に遅れて情報が流れた。これについては詳細を国が意図的に発表していないと言う理由がある。
僕は旧国王派を纏め上げると言う面倒臭い仕事に邁進中だ。その合間に元公爵と救済の箱舟についての情報交換などをしている。
あれから1か月近く経つが、爆破事件は起きていない。救済の箱舟は本格的に組織の立て直しに動いているのかもしれない。それはそれで厄介だ。
一つ気になる事がある。爆破の魔法は視認が必要だと仮定した。となると、陛下の死に関して辻褄が合わない点が出て来る。
陛下を視認して爆破したなら、食堂に長老が居た事になる。王族のプライベート空間に、怪しい人物が居たら即捕まっているはずだ。では、国王の側近が長老だったのか?これもおかしい気がする。もし、側近が長老なら、長老も爆破に巻き込まれて死んでしまう。
こうなると爆破に視認は必要ないと言う事になってしまう。そうなると1時間のタイムラグは何だったんだ?
もう一つの可能性がある。それは視認してから、爆破までの時間をある程度コントロール出来ると言う場合だ。これならば対象をロックオンしてからその場を去り、安全な位置から爆破出来る。
もし、この推測が正しいとなると非常に厄介だ。しかし、それと同時に一つの手掛りが出来た。長老は王城に出入りしていた。それも陛下に近づける程の位置に。
王城での死者は80人程度。だが、死体が消滅している者も居るので正確な数字は判らない。国王の側近で、死んだはずなのに生きている人物が居れば、それが長老だ。
まあ、この先そいつが姿を現す事は滅多に無いだろうが、追い詰められれば姿を現さずにはいられなくなると言う可能性はある。
それに奴の能力は厄介だ、これに対抗する手段も考えなければならない。まだ、他の2人の長老の能力も解って居ないし、今、救済の箱舟に力を与えるのは危険だ。
なんとか、救済の箱舟が立て直す前に叩きたいのだが、新国王も心配だし、元公爵もあまり派手に行動すると爆破のターゲットになりかねない。
ここは僕とクラ―ネルで動くしか無さそうなのだが、僕らも爵位が上がったばかりで忙しいと来ている。
もう一人駒が欲しい。クラ―ネルだけではなく、もう一人位弟子を育てて置けば良かった。
流石に今から育てたんじゃ間に合わないよね。
そう言えば、クラ―ネルは弟子を取る気は無いのだろうか?
「なぁ、クラ―ネル。そろそろ弟子を取っても良いんじゃ無いか?Sランク冒険者は大抵弟子を取るかパーティーを組んでるぞ。」
「弟子ですか?僕まだ16歳ですよ、弟子になってくれる人居ますかね?」
あれ?そうだっけ。なんか最近頼もしいから、ついつい忘れちゃうんだよね。
「でも、Sランクには変わりは無いからな。弟子が無理ならパーティーを組んでみたらどうだ?」
「パーティーですか?僕一人の方が動きやすいんですけど?」
「パーティーを組めば、向こうもクラ―ネルの実力が解るだろう?そこで、パーティーメンバーを鍛える訳だ。つまりパーティーメンバーと言う名の弟子だな。」
「なるほど、そう言う事ですか。で、何処まで鍛えれば良いんですか?」
流石にクラ―ネルは賢い。こちらの意図を読んでいる。
「なるべく短期間で救済の箱舟に対抗出来る戦力にして欲しい。」
「そうなると最低でもSランクを超える力が必要ですね。短期間で育ちますかね?」
「まあ、経験の無い者を1から育てるには時間が足りないだろうが、Aランク位の力を持つ者なら、意外に早く引き上げられるんじゃないか?」
まあ、素質にも寄るが、若くしてAランクに上れる者なら可能性はあるだろう。
「僕に人を育てる才能があれば良いのですが、何でエイジさんがやらないんですか?」
「公爵と言う肩書を持つとなかなか冒険者をやってる時間が取れないんだよ。」
「なるほど、判る気がします。僕も伯爵の地位を貰って急に忙しくなりましたからね。」
「どうだ、伯爵の椅子の座り心地は?」
「正直、窮屈ですね。マリーカと文官が居なかったら逃げ出していたかもしれません。」
「僕も似た様な物だ。まあ、その内慣れるさ。」
「そう言うもんですか?」
「そう言うもんだ。」
やはりクラ―ネルに負担を掛け過ぎていた様だ。まあ、この事態は想定していなかったからなぁ。
戦闘ならば竜王の爺さんやルシルを動員すれば何とでもなる。だが、戦闘以外の戦いは他の人間に任せるのは難しい。現状、僕とクラ―ネルそして元公爵位しか救済の箱舟に対抗出来る戦力が無い。
もう一枚カードがあれば、色々と幅が広がるんだがな。
現状、新国王や宰相に頼る訳には行かない。冒険者ギルドも救済の箱舟に対抗出来るとは思えない。
フローネルをとも考えたが、彼女をこの国の戦いに巻き込んで良い物なのか判断が付かなかった。
久しぶりにブラスマイヤーに相談しようかと考えたが、神は人の争いに干渉しないと言う言葉を思い出した。
そう言えば、若返りの秘薬を飲んでいるのって、救済の箱舟のメンバーや元公爵以外にも結構居るんだよな?その中に使える人材は居ないのだろうか?
結論から言うと居なかった。元公爵に聞いた所、そう言った使える人材は全て元公爵が吸収したそうだ。そして、救済の箱舟に敗れて死んでいったらしい。
救済の箱舟との戦いが短期決戦で終わるのか、それとも長期に渡るのか、それによって対応も変わって来る。
僕としては短期決戦が望ましいが、恐らく、救済の箱舟は長期での戦いを考えているだろう。国王陛下を殺害したのは時間稼ぎが目的だと思える。もし、短期決戦を望んでいるのなら、僕達を殺害する方が早い。
それをしなかった。もしくは出来なかったのであれば、現在の救済の箱舟は相当弱って居ると考えられる。ならば、こちらから攻勢に出た方が勝機があるのだが、奴らはモグラの様に地下に潜って出て来ない。
これでは奴らの思うつぼだ。だが、時間が欲しいのはこっちも一緒だ。なんとか奴らの動きを止めて時間を稼ぐ方法は無い物だろうか?
時間があればこちらの戦力も増強出来る。だが、時間を掛ければ向こうの戦力も上がる。これでは戦闘の規模が大きくなるだけで、王都の被害が拡大するだけだ。
現在、元公爵が必死に救済の箱舟の行方を追っている。見つける事が出来れば良いのだが、手掛かりが少なすぎる。
僕はどう動くべきなのか。元公爵が奴らを見つければ、全戦力で潰しに掛かる。見つからない場合の事も考え、同時に新しい戦力を育てておくべきなのだろうな。
セリーが復活してくれれば僕の行動が少し自由になる。そうなれば、新しい戦力を見つけたり育てたりする時間が取れるのだが。
「セリー。少し話があるのだけれど、今大丈夫か?」
「あなた。大事な話ですか?」
「ああ、国王陛下の仇を取る為には現状では時間が取れない。セリーの協力が必要だ。だが、今の君の状態も解って居る。無理をさせるつもりは無い。」
「済みません。」
「いや、謝る事では無い。何時までも悲しみに浸っていても陛下は喜ばないと思うぞ。それに、新国王も危険に晒されている事は解って居るのだろう?」
「そうですね。頭では理解しているのです。ですが、心が納得してくれないのです。もう少し、もう少しで良いので時間を下さい。」
「解った。セリーが何時までもその状態では子供達にも影響が出る。時間は掛かっても良いが、子供達には不安な顔を見せるなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
どうやらセリーの復活にはもう少し時間が掛かりそうだ。どうする?何か現状を打破する策は無い物だろうか?
心を癒す魔法って無いよな?
少し遅れて新国王にミーレン公爵が就任した事が伝わる。4万人の虐殺事件については更に遅れて情報が流れた。これについては詳細を国が意図的に発表していないと言う理由がある。
僕は旧国王派を纏め上げると言う面倒臭い仕事に邁進中だ。その合間に元公爵と救済の箱舟についての情報交換などをしている。
あれから1か月近く経つが、爆破事件は起きていない。救済の箱舟は本格的に組織の立て直しに動いているのかもしれない。それはそれで厄介だ。
一つ気になる事がある。爆破の魔法は視認が必要だと仮定した。となると、陛下の死に関して辻褄が合わない点が出て来る。
陛下を視認して爆破したなら、食堂に長老が居た事になる。王族のプライベート空間に、怪しい人物が居たら即捕まっているはずだ。では、国王の側近が長老だったのか?これもおかしい気がする。もし、側近が長老なら、長老も爆破に巻き込まれて死んでしまう。
こうなると爆破に視認は必要ないと言う事になってしまう。そうなると1時間のタイムラグは何だったんだ?
もう一つの可能性がある。それは視認してから、爆破までの時間をある程度コントロール出来ると言う場合だ。これならば対象をロックオンしてからその場を去り、安全な位置から爆破出来る。
もし、この推測が正しいとなると非常に厄介だ。しかし、それと同時に一つの手掛りが出来た。長老は王城に出入りしていた。それも陛下に近づける程の位置に。
王城での死者は80人程度。だが、死体が消滅している者も居るので正確な数字は判らない。国王の側近で、死んだはずなのに生きている人物が居れば、それが長老だ。
まあ、この先そいつが姿を現す事は滅多に無いだろうが、追い詰められれば姿を現さずにはいられなくなると言う可能性はある。
それに奴の能力は厄介だ、これに対抗する手段も考えなければならない。まだ、他の2人の長老の能力も解って居ないし、今、救済の箱舟に力を与えるのは危険だ。
なんとか、救済の箱舟が立て直す前に叩きたいのだが、新国王も心配だし、元公爵もあまり派手に行動すると爆破のターゲットになりかねない。
ここは僕とクラ―ネルで動くしか無さそうなのだが、僕らも爵位が上がったばかりで忙しいと来ている。
もう一人駒が欲しい。クラ―ネルだけではなく、もう一人位弟子を育てて置けば良かった。
流石に今から育てたんじゃ間に合わないよね。
そう言えば、クラ―ネルは弟子を取る気は無いのだろうか?
「なぁ、クラ―ネル。そろそろ弟子を取っても良いんじゃ無いか?Sランク冒険者は大抵弟子を取るかパーティーを組んでるぞ。」
「弟子ですか?僕まだ16歳ですよ、弟子になってくれる人居ますかね?」
あれ?そうだっけ。なんか最近頼もしいから、ついつい忘れちゃうんだよね。
「でも、Sランクには変わりは無いからな。弟子が無理ならパーティーを組んでみたらどうだ?」
「パーティーですか?僕一人の方が動きやすいんですけど?」
「パーティーを組めば、向こうもクラ―ネルの実力が解るだろう?そこで、パーティーメンバーを鍛える訳だ。つまりパーティーメンバーと言う名の弟子だな。」
「なるほど、そう言う事ですか。で、何処まで鍛えれば良いんですか?」
流石にクラ―ネルは賢い。こちらの意図を読んでいる。
「なるべく短期間で救済の箱舟に対抗出来る戦力にして欲しい。」
「そうなると最低でもSランクを超える力が必要ですね。短期間で育ちますかね?」
「まあ、経験の無い者を1から育てるには時間が足りないだろうが、Aランク位の力を持つ者なら、意外に早く引き上げられるんじゃないか?」
まあ、素質にも寄るが、若くしてAランクに上れる者なら可能性はあるだろう。
「僕に人を育てる才能があれば良いのですが、何でエイジさんがやらないんですか?」
「公爵と言う肩書を持つとなかなか冒険者をやってる時間が取れないんだよ。」
「なるほど、判る気がします。僕も伯爵の地位を貰って急に忙しくなりましたからね。」
「どうだ、伯爵の椅子の座り心地は?」
「正直、窮屈ですね。マリーカと文官が居なかったら逃げ出していたかもしれません。」
「僕も似た様な物だ。まあ、その内慣れるさ。」
「そう言うもんですか?」
「そう言うもんだ。」
やはりクラ―ネルに負担を掛け過ぎていた様だ。まあ、この事態は想定していなかったからなぁ。
戦闘ならば竜王の爺さんやルシルを動員すれば何とでもなる。だが、戦闘以外の戦いは他の人間に任せるのは難しい。現状、僕とクラ―ネルそして元公爵位しか救済の箱舟に対抗出来る戦力が無い。
もう一枚カードがあれば、色々と幅が広がるんだがな。
現状、新国王や宰相に頼る訳には行かない。冒険者ギルドも救済の箱舟に対抗出来るとは思えない。
フローネルをとも考えたが、彼女をこの国の戦いに巻き込んで良い物なのか判断が付かなかった。
久しぶりにブラスマイヤーに相談しようかと考えたが、神は人の争いに干渉しないと言う言葉を思い出した。
そう言えば、若返りの秘薬を飲んでいるのって、救済の箱舟のメンバーや元公爵以外にも結構居るんだよな?その中に使える人材は居ないのだろうか?
結論から言うと居なかった。元公爵に聞いた所、そう言った使える人材は全て元公爵が吸収したそうだ。そして、救済の箱舟に敗れて死んでいったらしい。
救済の箱舟との戦いが短期決戦で終わるのか、それとも長期に渡るのか、それによって対応も変わって来る。
僕としては短期決戦が望ましいが、恐らく、救済の箱舟は長期での戦いを考えているだろう。国王陛下を殺害したのは時間稼ぎが目的だと思える。もし、短期決戦を望んでいるのなら、僕達を殺害する方が早い。
それをしなかった。もしくは出来なかったのであれば、現在の救済の箱舟は相当弱って居ると考えられる。ならば、こちらから攻勢に出た方が勝機があるのだが、奴らはモグラの様に地下に潜って出て来ない。
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時間があればこちらの戦力も増強出来る。だが、時間を掛ければ向こうの戦力も上がる。これでは戦闘の規模が大きくなるだけで、王都の被害が拡大するだけだ。
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「そうですね。頭では理解しているのです。ですが、心が納得してくれないのです。もう少し、もう少しで良いので時間を下さい。」
「解った。セリーが何時までもその状態では子供達にも影響が出る。時間は掛かっても良いが、子供達には不安な顔を見せるなよ。」
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