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 どうやら元公爵は執事協会を掌握している様だ、救済の箱舟は何処までを掌握しているのだろう?

 まだ、僕らにはそういった勢力図さえはっきりと判らないでいる。

 闇ギルドを100人ばかり退治したが、相手のリアクションは特に無い。想定内と言う事なのだろうか?

 まあ、僕としては闇ギルドのSSSランクが思ったより弱かったのが救いかな。ただ、僕の知らない場所で動かれるとちょっと厄介かもしれない。

 救済の箱舟が厄介なのは表立った行動をしない事だ。全てを秘密裏に行うのでこちらの対処が後手後手になってしまう。

 元公爵は彼等と長年戦ってきたと言うが、どう言う方法で戦って来たのだろう?情報戦なら頼もしいのだが。

 そう言えば救済の箱舟は、王都を転覆させるのが目的だったはず。闇ギルドのメンバーを減らした今でもその計画は続いているのだろうか?続いているとしたら、幹部やその上のメンバーは何処へ避難する予定なのだろう?

 全てが憶測で、具体的な情報が入って来ないのは非常にやりにくい。いっその事、救済の箱舟の作戦を見届けてみるか?その後に時間逆行の魔法で戻すと言うのも一つの手だとは思うが。

 僕としては、僕を狙ってくれるのが一番楽だ。敵の行動も読みやすいし、幹部に辿り着くきっかけになるかもしれない。

 そう言えば元公爵は捕えた100人をどうしたのだろう?そこから何か判るとは期待してはいないが、彼らをどうしたのかは気になる。

 そんな事を考えていたら、執事協会を通じて元公爵からメッセージが来た。

 どうやら、奴らは僕の抹殺を計画しているらしい。これはチャンスだ。

 僕は急いで、家人と使用人を現公爵の家に送った。一時的に保護して欲しいと言う手紙も添える。ルシルが付いているので問題は無いと思うが、人質を取られるのは不味い。

 僕はクラ―ネルを呼び出し、侯爵邸の窓やドアを全て開け放した。

 どうせ、閉めても破って入って来るのは解って居るなら被害は少ない方が良いだろう。

 僕らは応接室に陣取る。当然ドアは開け放したままだ。

 問題は何時攻めて来るかだな。僕は夜だと睨んでいる。

「今回も殺さずに対処してくれ。少しでも情報が欲しい。」

「解りました。今回は守りながらの戦いでは無いので楽が出来そうです。」

 お?クラ―ネル君言う様になったね。

「おそらく襲撃は今夜だ。元公爵と僕らが繋がっているのはバレている。だとすれば、襲撃の情報も漏れていると考えるだろう。僕が指揮官なら速やかに抹殺対象は排除する。だが、昼間は目立つ。」

「僕も同意見ですね。」

「敵の総数は判らないが、前回より多い事は予想できる。そこでだ、室内で戦うのはなるべく避けたい。敵を感知したら家に近づく前に倒すと言う作戦で行こうと思う。」

「解りました。敵の数が多いと足場に困りますからね。」

「まあ、最悪フライを使うと言う手もあるが、手の内はなるべく隠しておきたい。」

「そう言えば、元公爵の情報が正しければあと4人程SSSランクが居るんですよね?どうです戦ってみた感じは?」

「まあ、竜王の爺さんやルシル程の怖さは無い。だが、魔法は確実にレジストしてくる。クラ―ネルが苦戦するとは思えないが、油断をすると怪我をするかもしれないな。」

「剣士なんですよね?」

「ああ、恐らく魔法使いでは無いだろう。」

「なら、幾らでも対処方法がありそうですが?」

「剣士だが、魔法使いと戦いなれている。だから、ここは武術で対抗するのが手っ取り早い。別に魔法で負けるとは思わないが、敵の人数が多い時は確実性を取るのが定石だ。」

 やがて、日が沈み、辺りが暗くなって来る。東の空だけはほんのり赤い。

「日没ですね。そろそろ来ますかね?」

「おそらく、近くまでは来ているだろう。後は、どのタイミングで襲って来るかだな。」

 僕とクラ―ネルは気を研ぎ澄ます。

 やがて、ポツポツと人間の気配がサーチに引っ掛かる。

「クラ―ネル。出るぞ!」

「はい!」

 僕とクラ―ネルは察知した者から順に潰して行く作戦を取る。

 一応気を消しているつもりなのだろうが、丸見えだ。

 転移と瞬動を駆使して一人ずつ確実に沈黙させていく。しかし、人数が多いな?

 サーチに引っ掛かる点がどんどんと増えて行く。人海戦術に出たのか?

 確か闇ギルドの構成員は数百名。そのうち100人程を倒したから、残りは多くても300人位か?まさか全員で報復に来たのか?

 僕とクラ―ネルで既に50人は倒している。

 中には明らかにSランクとは思えないお粗末な者も混じっている。もしかして裏ギルドの人間も動員したのか?

 屋敷に押し寄せる人の数が100人を超えた。僕とクラ―ネルは、各個撃破から魔法に切り替える。ライトニングレインが荒れ狂っている。

 既に500人は倒しているが、SSSランクの姿が見えない?

 まさか、こっちは陽動か?だとすると、狙いはセリー?

「クラ―ネル。ここは任せた!」

「はい、大丈夫です。」

 僕は、公爵邸へと転移する。

 ルシルが5人の男と対峙していた。

 サーチを掛けるが、5人以外の気配は感じない。5人で、セリーを拉致?

 こちらの戦力を甘く見たな。5人の男はルシルを相手に攻めあぐねている。

 ルシルは器用に5人との距離を一定に保って、誰一人として抜け駆けを許さない。流石だな。

 僕は瞬動で、一人ずつ意識を刈り取って行く。

「よくやったなルシル。流石だ。」

 僕は5人を捕縛して、公爵に預けた。ルシルは万が一に備えて残して行く。

 侯爵邸に転移すると、こっちも終わっていた。総数700人弱が倒れている。

 しかし、SSSランクがまだ5人も居た。それに、ここへの襲撃者は700人。元公爵の情報と若干の齟齬がある。救済の箱舟の内部で何かが起こって居るのか?

 そんな事を考えていると、元公爵が部下を連れてやって来た。

「ふむ、事前の情報と若干の違いがあるな。」

 元公爵の部下が倒れている闇ギルドのメンバーを何処かへ運んでいる。

「僕を囮に使ったんですか?」

「そう言う訳では無い。この襲撃はあくまでも幹部の決定だ。それにしても、実行部隊が全滅とは、救済の箱舟はこれからどうするつもりなのだろうか。」

「実行部隊を潰しても油断は出来ないと?」

「正直判らんと言うのが本音だ。救済の箱舟は危険な組織だ。組織の為なら命もいとわないと言う狂信者も多い。実行部隊が居なくなった今、過激な手に出なければ良いが。」

 なるほど、実行部隊の他に信者も居るのか。

「その信者を焙り出す方法とか無いですかね?」

「あるとすれば麻薬だな。実行部隊が壊滅した今なら、麻薬の供給ルートを一時的にストップ出来るかもしれない。そうなれば、麻薬の中毒患者を焙り出せる。」

「でも、全員が救済の箱舟の信者では無いんですよね?」

「ふむ、そこでだ、救済の箱舟の信者には優先的に麻薬を回すと言う噂を流したらどうなるだろう?」

「麻薬欲しさに信者じゃ無いのに信者だと名乗り出る者が出ませんか?」

「救済の箱舟の信者だと言う証拠を出させればよい。」

「証拠ですか?そんな物があるのですか?」

「ああ、救済の箱舟の信者は体のどこかに小さな刺青を入れている。それが証拠になる。」

 あれ?そんな解り易い特徴があるのなら、こんな苦労をしなくても良いのでは?

「信者を捕まえても意味は無い。幹部や5長老には決して繋がらないからな。」

「でも、その信者達が麻薬を購入した代金が資金源なんでしょう?」

「捕まえれば違う人間が資金源になるだけだ。だから、ある程度の金持ちだけはピックアップして監視している。」

「それを、あえてあぶり出すと言う事は、救済の箱舟を叩き潰すおつもりですか?」

「ああ、その為の準備をしている。私も久しぶりに表舞台に出る事になるかもしれん。」

 え?元公爵さん。何をするおつもりですか?
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