転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 翌朝、クラ―ネル等と稽古をした後、王城へ向かう。ルシルはセリーの警護、爺さんはフェニックスの元から帰って居ない。

 現状でフェニックスを狙う確率は低いとは思うが、国を転覆させるにはフェニックスの力は十分な利用価値がある。と言う事で竜王の爺さんが張り付いているのだ。
 
 王城に着くと近衛兵に奥へ通された。宰相の執務室でも応接室でも無い。以前に一度だけ訪れた事のある、尋問室だ。

 中には宰相と尋問官が居た。

「やはり何も吐きませんか?」

「うむ、恐らくそう言う教育を受けているのだろう。」

 まあ、そうだろうな。捕まりそうになっただけで自殺するってのは尋常じゃない。しかし、そこまでして隠したい何かがあるって事を言ってる様なもんだぞ。

 さて、僕には秘策がある。ここの所、何人かの人物に言語をコピーペーストしているうちに気が付いた事がある。言語中枢は記憶領域と密接な関係にある。

 言語中枢から言語をコピーペーストするには記憶領域にもアクセスする必要があるのだ。だとすれば、記憶領域に直接アクセスするまたはコピーする事も可能では無いかと言う仮説が成り立つ。

 今まで人体実験をするのは憚られていたが、こいつなら問題無いだろう。僕は右手の人差し指と中指を相手の眉間に当てた。

 記憶領域にアクセスして、必要な情報をコピーしようとするのだが、人間一人分の記憶が思ったより膨大だ。不必要な情報をどんどんと切り捨てて、目的の情報に辿り着くのに、かなりの時間が掛かってしまった。

「フロスト・フォン・リーバス。リーバス男爵の次男。」

 僕が、そう言うと、男が初めて動揺の色を見せた。

 宰相が慌てて指示を出そうとするのを手で制して話を続ける。

「リーバス男爵はおそらく下っ端です。捕縛しても大した情報は出ないでしょう。それに、こいつらは捕縛しようとすると自殺する厄介な奴等です。見張りだけ付けて置いて下さい。」

「ふむ、解った。」

「それよりも、この男フロストに僕とクラ―ネルを暗殺する様に命じた。ライネン子爵の方が情報を持っていそうですね。」

 ライネン子爵の名前が出た途端。フロストが青い顔になる。

 なんで、こいつらはその情報を知っているんだ?と言う恐怖心に駆られている。

「宰相。ライネン子爵の家が知りたい。手配だけして貰えれば僕とクラ―ネルで捕縛して来ますよ。」

「解った。急がせよう。」

 そう言って近衛兵に何やら命じている。

 この男フロストからはこれ以上の情報は引き出せそうにない。本当に下っ端なのだろう。

 しかし、下っ端の構成員が捕縛されそうになっただけで自殺すると言うのはまともじゃない。余程狂信的なのか、なんらかのマインドコントロールを受けて居るかもしれない。その辺の事情をもう少し調べて貰おう。

 僕は、宰相にその旨も伝えて置いた。

 やがて、近衛兵が1枚の地図を持って帰って来る。

 僕らの目の前で地図を広げて、1点に丸を付ける。どうやら貴族街の地図らしい。

「ここがライネン子爵の家になります。」

「ちなみにライネン子爵の先代と言うのがどう言う人物か解るか?」

「いえ、正直ライネン子爵と言う名前すら知りませんでした。今回調べるまで全く聞いた事の無い人物でした。」

 なるほど、目立たない存在だった訳か。貴族をやっていて、目立たないって言うのはある意味普通じゃ無いよな?

「では、僕らはライネン子爵の捕縛に向かいます。後の事はお任せしますので、よろしくお願いします。」

 僕とクラ―ネルは王城を辞し、貴族街へ向かう。地図を確認しながら、クラ―ネルに問う。

「この辺りってクラ―ネルの家の近くじゃ無いのか?」

「まあ、近いと言えば近いですね。」

「レンツェル子爵は大丈夫だよな?」

「大丈夫だと思いますよ。子爵は野心家ですが、裏で何かをするよりは表で堂々と何かを成すタイプだと思います。」

 ほう?この数か月でだいぶ子爵の事を理解した様だな。

「さて、ライネン子爵だが、子爵は僕が捕縛する。クラ―ネルには他に構成メンバーが居ないかを探して欲しい。出来れば見つけたらパラライズで麻痺させて欲しいかな。」

「自殺防止ですか?」

「そう言う事だな。出来るか?」

「任せて下さい。」

 ライネン子爵邸の前にまで来た。サーチを掛けると中には20人程度の人が居る。おそらく使用人が結構な数居るのだろう。

「ちと厄介だな。一般人に怪我をさせない様に暴れろよ。」

「暴れるのは良いんですね?」

 まあ、大人しくしてても相手は正体を現さないだろうからな。こう言う時は高圧的に行かないとね。

 合図を決めて、僕は2階から、クラ―ネルは玄関から正面突破することにした。

 クラ―ネルが玄関を蹴破ると、悲鳴が上がった。それをきっかけに僕は2階から部屋に飛び込んだ。2階に人の気配は無い。気になったのは応接室の反応だ。2人の人間が密談をしている。

 クラ―ネルが玄関で使用人の気を引いているうちに、僕は小転移で徐々に応接室へと近づく。

 応接室のドアを蹴破ると、ライネン子爵と思われる人物と商人風の男が居た。

 この2人の関係をどう見る?

「フロストは口を割ったぞ。」

 そう言うと2人が揃って馬鹿な?と答えた。決まりだ。2人共『救済の箱舟』の関係者だ。

 毒を飲まれると厄介なので、2人に同時にパラライズを掛けた。クラ―ネルが時間稼ぎをしている間に必要な事を教えて貰いましょうか。

 ライネン子爵から記憶を覗かせて貰う。ここで得られた情報は、ライネン子爵の上に当たるのが目の前の商人である事。ライネン子爵はそれ程深く『救済の箱舟』に関わって居ない事位だ。
 
 僕らを襲わせたのも目の前の商人ホーランドの差し金らしい。僕はすぐさま、ホーランドの記憶を覗く。

 ホーランドは『救済の箱舟』では中核とも言える存在らしい。幹部と下の者を結ぶ立場だ。しかし、肝心の幹部の名前が出て来ない。「あの方」としか知らされて居ない様だ。

 どんだけセキュリティが厳しいんだ?しかし、そこまでして隠さなければ行けない秘密があるとも言えるのか。

 僕はライネン子爵とホーランドを丁寧に縛り、クラ―ネルに声を掛けた。

「用事は済んだ。帰るぞ。」

「了解です。こちらは怪しい人物は見当たりませんでした。」

 解ったと頷き、王城へ転移する。

 尋問室へ2人を引きずりながら向かう。入り口の近衛兵に事情を説明して宰相に取り次いで貰った。

「僕とクラ―ネルの抹殺命令を出したライネン子爵と、その指令を出したホーランドと言う商人です。」

「ほう?子爵より商人の方が立場が上なのか?」

「そうらしいです。この商人は幹部と下位構成員の間を取り持つ立場だったようです。しかし、幹部については「あの方」としか情報を持っていませんでした。幹部の正体を実際には知らされて居ない様ですね。」

「ふむ、実に慎重だな。それだけ組織が大きければもっと管理が杜撰になる物なのだが、ずいぶんと徹底している様だな。」

「宰相は、それだけの影響を持つ人物って知りませんか?現役じゃなくても良いですよ。例えば、現国王の前の世代とか?」

 そう言うと宰相が何やら考え込んでしまった。

「一人心当たりがあるが、その人物は既に亡くなっている可能性が高いぞ?」

「構いません、教えて下さい。」

「現公爵が国王の弟と言うのは知っておるな?実は、先代の公爵は先代の国王の叔父に当たる。非常に聡明な人物で、現国王が無能であれば国王になれたかもしれないと言われていた。」

「ほう?先代の国王の叔父と言うのは現在だと何歳位になるのでしょう?」

「ああ、現国王より12歳年上だったはずだ。」

「今の国王陛下は40代後半ですよね?だとすれば生きていても不思議は無いと言う事になりますね。」

「ふむ、だが、ここ20年あまり、元公爵の姿を見た者は居ないと言われている。」

「若返りの秘薬を飲んでいたらどうでしょう?もし、出会っても気が付かないのでは無いでしょうか?」

「どうだろう?判る者には判るのでは無いか?」

 確信は持てないが可能性は出て来たかな?
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