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 連れてきてしまった物はしょうがない。とりあえず、フローネル嬢に王国語をペーストして覚えさせる。これで日常会話には困らないはずだ。

「しかし、なんでいきなり亡命なんだ?」

 セリーに恐る恐る聞いてみる。

「帝国がどう言う所かはしりませんが、女性を政治的に利用すると言うのは感心しませんね。」

 そう言うセリーさんも思いっきり利用されてましたよ。とは言えない。

「まして、産まれて来る子供が男児か女児かで待遇が変わると言うのは許せません。子供は政治の道具ではありません。」

「だとしても、何故亡命?」

「あなた、あなたには罰として1年間、帝国行きを禁止します。」

 え?やっぱり怒ってる?

「と言う事で、皇女様を放っておく訳には行きませんので亡命です。」

 まあ、僕は良いんだが、帝国はどうなるんだ?突然侯爵が一人と皇女が失踪する訳だぞ?大騒ぎになるんじゃないか?

 確か、皇帝には王国の話はしてなかったよな?更に言えば、皇太子を押さえる人間が減る訳だ、帝国が変な方向に行かなければ良いが。

「それから、リアン。あなたは1か月程ゆっくり休養して、徐々にメイドの仕事に戻る様に。出来るわね?」

 あれ?セリーはリアンの事は疑って無いのかな?

「こうなる事を予想していたわけではありませんが、幸い部屋は沢山あります。その1室を皇女様に使って貰いましょう。」

「フローネルはそれで大丈夫か?」

「私は帝国でも望まれない子として育てられてきました。なので何処でも旦那様が居る場所が私の居場所です。」

 とりあえず方は付いたが、後でセリーに怒られるんだろうな。

 翌日、フローネルの為に産婆が呼ばれた。セリー達の子供を取り上げたベテランの産婆だ。まあ、彼女に任せて置けば大抵は問題が無いだろう。

 こうして、我が家に新しい嫁が1名追加された訳だが、意外にもアリアナやルシルは無関心だ。まあ、ルシルはともかく、アリアナは帝国の事を詳しくしらないからな。

 食事に関しては帝国の技術と僕の現代知識を大いに取り入れてあるので、舌の肥えたフローネル嬢でも十分に満足した様だ。

 しかし、1年も帝国に行けないのは拷問だな。いや、待てよ。帝国に行かなければ良いんだよね?共和国とかなら問題無いのかな?

 帝国のハンターギルドは良い稼ぎ場所だったからなぁ。それが無くなるのはちと痛いかな。まあ、金が無い訳では無いが、稼ぎ場所があるのと無いのでは心の余裕が違う。

 共和国なら僕を知っている人間は居ないだろう。本気で考えてみるかな?

 まあ、帝国の情報はクラ―ネルから入って来るだろうし、共和国に居てもそれなりの情報は集まるだろう。

 問題は今まで君主制の国ばかりに滞在していたから、民主制の国に馴染めるかどうかだな。

 あれ?民主制って事は貴族が居ないのか?なんだろう?現代日本は民主制だったのに、すっかり貴族社会に馴染んでいる僕って。

 とりあえず、帝国の事がセリーにバレたので、2重生活も辞める事にした。これからは時間逆行の魔法を使う機会が減るだろう。

 でもって、一度共和国を見に行く事にした。今日はその最初の日だ。

 帝国に一度飛んでから、フライで共和国を目指す。共和国の首都は、帝都から真っ直ぐに西に飛べば辿り着く。

 やがて、それらしき町が見えて来る。町の大きさは帝都レベルだ。だが、雰囲気がだいぶ違う。何だろうこの違和感は?そうだ、城が無いんだ。ついでに言えば貴族街も無い。

 首都に城が無いのはイメージ的にだいぶ違う、まるで地方都市のイメージだ。

 だが、町の規模は同じ位なので、その分商業施設が多いのだろう。活気がある。

 適当に商店街っぽい場所に降りてみた。そう言えば最近、まともに門を出入りしていないな。不法侵入で捕まらないだろうか?

 言葉は通じる。帝国とあまり違いが無い。東京と大阪位の違いだ。微妙な言葉の違いはあるが、帝国語が判れば共和国語も理解出来る。

 商店街をざっと見て回るが、帝国とそう大した差異は無い。

 おそらく交易によって、3国の文化レベルは統一されている様だ。もし違いがあるとすれば、それは共和国の名産になるのかもしれない。

 ハンターギルドの場所を聞いて商店街を後にした。ギルドは45分程離れた場所にあるらしい。首都のほぼ中央に当たる。

 ギルドに着き、ハンター登録をする。基本は何処のギルドも変わらない様だ。Gランクのギルドカードを貰って、ギルドを後にした。

 ランクアップのシステムなども帝都のギルドと一緒だった。一応高く売れる魔物の種類も聞いて置いたがこちらも変わりが無かった。まあ、地続きだし、そう大きく魔物の分布が変わる事も無い様だ。

 さて、この時点で12時を回っている。流石にこれから狩りに出るのはキツそうだ。と言う事で首都の様子をもう少し探って置きたい。

 なんでも首都には議事堂と言う建物があるらしい。かなりの大きさで、すり鉢状になっているらしい。貴族時代の名残か、上院と下院があって、議員の数は全部で400名近いそうだ。

 ちなみに現在は下院で10年以上のキャリアを積むと上院に立候補出来るのだそうだ。

 他にも公共の施設が割と充実しており、公園や図書館、下水道などが国営だそうだ。

 また、この首都にも軍隊が駐屯していて、国防を担って居るらしい。なんでも兵役があるそうだ。男子は15歳から20歳までの間に2年間は兵役に就く義務があると言う。

 悪い国では無さそうだが、子供を育てるにはどうかなと言った感じだ。

 帰る前に軽食屋に立ち寄ってみた。コーヒーと甘い物を注文する。味は帝国とさして変わらない。値段も大銅貨1枚と、それ程高くは無かった。

 ふむ、ここなら帝国の代わりになりそうだな。

 4時を回った所で王国へ帰還した。

 セリーが待っていた。

「ん?帝国には行ってないぞ?」

「その事はどうでも良いのです。皇女様のこれからの立場をどうするのか聞きたかったのです。」

「これからの立場?」

「はい、一応亡命者ですが、帝国は存在しない国と言う扱いです。」

「国王陛下に報告するのか?」

「正直迷って居ます。伯父様は帝国の事をご存じなのですよね?」

「まあ、そうだが、皇女の存在を明らかにするって事は、帝国の存在が国民にバレるって事だぞ?」

「ですが、皇女様の立場を決めないと、彼女の我が家での序列は最下位になりますよ?」

「んー、それで良いんじゃないかな?彼女はそう言う序列とか権威と言った物をあまり気に行ってない節があるからな。」

 フローネル嬢は女性と言うだけで、あまり良い待遇で扱われなかった過去がある。

「彼女の年齢は19歳だ。それを考慮の上、セリーが序列を決めれば良いと思うぞ。この家の第一夫人はセリーだからな。」

「解りました。では、私が仕切らせて頂きます。」

 まあ、こう言うのはセリーに任せて置けば良いだろう。なんだかんだ言って、セリーが一番貴族してるんだよね。

 翌朝、クラ―ネルも含め訓練を行った後、僕は共和国へ飛んだ。

 共和国での初狩りだ。Gランクと言う事も考慮して、白金貨1枚分だけギルドに卸した。新人のうちに目を付けられても困るしね。

 あれ?ギルドが大騒ぎになってるぞ?え?Gランクの稼ぎって金貨1枚も行かないのが普通だって?

 どうやら、僕の金銭感覚もかなりぶっ壊れてるらしい。

「だいたい、白金貨1枚って言ったら、Dランクのパーティー並の稼ぎですよ?」

 受付のお姉さんに叱られてしまった。

「これでも加減したんですけどね。では、早くランクアップしたいので、昇級試験の申請をお願いします。」

「解りました。エイジさんには飛び級でCランクの試験を受けて貰います。構いませんね?」

「えっと、Cランクだとどの位稼ぐんですか?」

「そうですね。Cランクならソロで白金貨1枚位稼ぐ人も居ますよ。」

「では、それでお願いします。」

「あ、ちなみにGランクからCランクへの飛び級で受かった人はここ20年居ませんので覚悟して置いて下さい。」

 おそらく大丈夫です。だって、帝国では一応Sランクだったしね。
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