転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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「あれ?僕は普通のSランク冒険者ですよね?戦闘力もエイジさんの足元にも及ばないですし。」

 クラ―ネルが怪訝な顔で聞いて来た。

「いや、今のクラ―ネルなら、1国の軍隊と1人で戦って勝てるぞ。」

「え?流石にそれは大げさですよね?」

「冒険者でSランクと言うのは一般人から見れば化け物らしいぞ。クラ―ネルはそのSランク以上の力がある。もし冒険者ギルドのランクシステムが変更されるならおそらくSSランクを貰えるだろう。」

「SSランクですか?」

「もともとランクシステムは魔物の強さから来ている。Sランクの魔物を倒せる者がSランクだ。ドラゴンは災害級と呼ばれている。ならばそれを倒せるクラ―ネルはSランク以上と言えるだろう?黒竜などは天災級と言われている。これを倒せるならSSSランクが貰えるだろうな。」

「えっと、聞くのが怖いのですが、僕が黒竜と戦ったらどうなります?」

「多少は苦戦するだろうが、負ける事は無いだろうな。」

 クラ―ネルがこの世の終わりみたいな顔をした。

「それって、僕が乱心して暴れたらこの国が亡びるって事になりませんか?」

「そうだな。だから体だけじゃ無くて精神も鍛えているだろう?」

 実際にクラ―ネルが暴れたら僕が抑えるけどね。

「なんか、自分が怖くなって来ました。隠居しても良いですか?」

「おいおい、子供が生まれたらそんな事言ってられないぞ。それにな、天災級なんか可愛いと思える程の理不尽な存在がこの世には存在すると教えたろう?そう言う存在が居る限りは、僕らは訓練を続ける義務がある。」

「この世界を守る為ですか?」

「いや、そう言う存在を止める為だ。正直、奴らがその気ならとっくに世界は滅んでいるよ。」

 クラ―ネルが僕の言葉の意味を反芻する様に考え込んでいる。

「ところで上級ポーション作りは、もうしないのか?」

「え?あ、やります!」

 結局、1日では中級ポーションまでが限界だった。

「どうする?明日もポーション作りにするか?それとも違う魔道具の理論を教えようか?」

「そうですね、ポーション作りは自分で研究しますので、違う物でお願いします。上級ポーションが作れる様になったら、上級万能薬の作り方を教えて下さい。」

「解った。じゃあ、明日もうちに10時に来るように。今日はここまでだな。送ろうか?」

「いえ、大丈夫です。それ程遠く無いですし。」

 クラ―ネルが帰って行くのを見送った。

 ちょっと脅かし過ぎたかな?まあ、クラ―ネルなら大丈夫だと考えて弟子にしたんだが、それも言ってやれば良かったかな?

 翌日は原価が安くて、高く売れる魔道具を幾つか教えた。付与付きの指輪や腕輪だ。これは付与によって値段が変わって来るので一概に幾ら儲かるとは言えないが、付与を多重に掛けると高く売れる事も教えて置く。

 マジックバッグは既に作れるので、大きさだけ決めて置く。最初は6メートル立方に固定しよう。

「アイテムボックスは時間がある時に大きくしておくと後で便利だぞ。今はドラゴンの素材が入っているからかなり圧迫しているだろう?もう一匹ドラゴンが出たら困るぞ。」

「そうそう、ドラゴンは出ないでしょう?」

「まあ、この国ではな。他の国にはドラゴンの生息地があるらしいぞ。」

 そして、12時を回った時、例の商会の夫人とその旦那らしき男性が訪れた。

 セリーに頼んで呼んで置いて貰ったのだ。

 入って来るなり男性が土下座した。

「娘のミルアを助けて頂きありがとうございます。お礼が遅くなって済みません。」

「いやいや、礼は要らないと奥さんにも伝えたはずですが?」

「しかし、人に聞いた話ではエリクサーを使ったとか。その代金だけでも支払わせて下さい。」

 いや、エリクサーって伝説の薬だし、おそらく全財産でも足りないと思うよ。

「頭を上げて下さい。まだお名前も聞いてませんよね?」

「私は、ポルト商会のポルトと言います。こちらは妻のルーカです。」

「僕はゼルマキア侯爵、こちらはレンツェル子爵だ。よろしく頼む。ちなみに使ったのはエリクサーでは無く上級万能薬だ。気にしなくて良い。」

 そう言うとポルトはポカンとした顔になる。恐らく突っ込みどころが多くてパニくったのだろう。

「ミルアさんは大丈夫ですか?」

 クラ―ネルがそう聞いた。

「はい、後遺症も無く、元気に走り回ってます。」

 あの時のご婦人、ルーカさんが答える。

「まあ、立ち話もなんだし、上がってくれないか。今日は商売の話があって来て貰った。」

 僕は、皆を促し応接室へ通す。メイドに頼んでお茶とお菓子を人数分持って来させる。

 メイドがお茶を配り終わり下がった所で話を始める。

「まずは、これを見て貰いたい。」

 そう言ってストレージから板と箱を出す。

 板には8×8のマスがあり、箱には表が白で裏が黒の丸い駒が64枚入っている。現代日本人なら誰もが知っているあのゲームだ。

「これは何でしょうか?」

 ポルト夫妻が興味深げに見ている。クラ―ネルも気になっている様だ。

「これはリバーシと言う娯楽品だ。」

 実際にポルト夫妻に遊んで貰いながら製品の説明をする。ルールは簡単なので皆すぐに覚えた様だ。

「これは、面白いですね。単純なので子供でも遊べますし、奥が深いので大人も楽しめます。」

「これと同じ物を木工職人に作らせたら幾らで作れるかな?」

「大銅貨4枚と言った所でしょうか?」

 ポルトが商人の目になっている。原価が4000円か、ちと高いな。売値がその位だと良いのだが。

「売値は幾らになる?」

「このままなら銀貨1枚、もう少し飾りを付ければ銀貨3枚位は行けそうです。」

 まあ、貴族ならもう少し高くても買うだろうな。しかし、庶民にはちょっと高過ぎないか?

「解った。このリバーシの販売権利を譲ろう。自由に作って販売して構わない。特許を取るのを忘れるなよ。」

 この発言にその場の3人が驚く。

「この商品を無料で私共の商会に下さると言うのですか?しかも権利ごと。」

「まあ、簡単に言うとそうだな。もちろん、その代わりに頼みたい事がある。」

 ここが肝心だ。商人は見返りを求めない貴族を信用しない。商売と言うのは慈善事業では無いのだ。

「ここに居るレンツェル子爵は優れた魔道具職人だ。だが、名前が知られて居ない。後は解るな?」

「そう言う事ならお任せ下さい。1流の魔道具職人として名前が通る様に協力させて頂きます。」

 その後、具体的な話をして1時間程でポルト夫妻は帰って行った。

「良いのですか?僕の為に、遊具の権利を上げてしまって。」

 クラ―ネルが申し訳なさそうな声で聞いて来る。

「問題無い。あの娯楽製品のアイデアは僕の物では無いからな。」

「あ、もしかして、あれも古代の?」

「まあ、似た様な物だ。」

「でも、あの利権だけでも、かなりの儲けになるので無いですか?」

「僕が作って僕が売るなら儲かるだろうな。だが、商会に利権を貸すだけでは大した儲けにはならない。ポルトに計算させたろう?あの金額では1台売れても大銅貨1枚程度の儲けにしかならない。」

「それが、解って居たから、商会に権利を無料で渡したのですか?」

 クラ―ネルが驚く。

「ああ、正直、あの程度のアイデアでは小さな商会がちょっと目立つくらいの儲けしか上がらない。ならば渡してしまった方が恩が売れる。」

「それで、交換条件で僕の事を頼んだのですか?」

「悪くは無いだろう。クラ―ネルも儲かるし、あの商会も儲かる。誰も損はしない妙案だと思うが?」

「エイジさんは損してませんか?」

「あの商会は公爵家の息が掛かっている。ならば公爵に恩が売れて、僕も得をするって計算だ。」

 まあ、僕が得をするってのは半分方便だが、これでクラ―ネルが納得してくれれば問題は無い。

「これで舞台は整った。後はクラ―ネルが上質な魔道具を作れば、自然と名前は売れるし、作った魔道具も売れるって言う寸法だ。」

「上質な魔道具ですか?なんかハードル高くありません?」

「大丈夫だ。今のこの国で上級万能薬を作れる人間は何人も居ないぞ。」

「それって、悪目立ちしませんか?」

「子爵なら大丈夫だろう。気になるなら早く伯爵に上がれ。」
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