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「と、セリー。今、何時だ?」

「まだ、2時を少し回った所ですよ。」

「貴族学院の終わる時間は3時で合ってるか?」

 するとセリーが少し考えてから。そうですねと答える。

「基本魔術学院も貴族学院も終わるのは3時ですよ。」

 とクラ―ネルが補足してくれた。

「なら間に合うな。クラ―ネル、ここから一人で家に帰れるか?」

「はい。道は覚えましたから大丈夫です。」

「なんなら馬車で送らせるが?」

「そんなに遠く無いですよ。30分も掛かりませんから。」

 クラ―ネルが首だけじゃ無く手まで一緒に振って断っている。

「僕とセリーはちょっと貴族学院へ行って来る。クラ―ネルの将来の為だ我慢してくれ。」

「大丈夫です。僕の為にわざわざ済みません。」

 クラ―ネルが謝っているが、こっちにも利益のある話だ。なんか騙している様で申し訳ない気持ちになる。

 クラ―ネルを玄関で見送ってから、セリーに尋ねる。

「相手の女の子の顔は解るか?」

 事前にある程度の資料は貰っているが、流石に顔写真は付いていなかった。

「解ります。調べる時に顔も確認しましたので。」

 お?セリーさん、そこまで徹底して調べてるんだね。メイドに適当に調べさせた訳じゃ無いんだ。

 まあ、将来自分の派閥に入るとなれば、慎重にもなるって物か。

「じゃあ、貴族学院まで飛ぶので、見つけるのを手伝ってくれ。」

「解りました。」

 僕は怪しまれない様に貴族の平服に着替える。セリーは平服なのでそのままで問題は無い。

 時間は2時半を回った所だ。少し早いな。お茶でも飲んで時間を潰すか?

 いや、セリーに情報を聞いて置いた方が良いかも。

「その子爵令嬢をクラ―ネルの嫁候補にした理由ってなんだ?」

「はい、実はその子爵家なのですが、長男が生後1年経たずに亡くなっているのです。で、その2年後に生まれた待望の赤ちゃんが、女児だった訳です。」

「なるほど、望まれない子供だったのか?」

 貴族には良くある話だ。跡取りにならない女児を歓迎しない当主は結構いる。

「実際、その後にも2人の子供が産まれているのですが、全てが女児でした。」

「それで、婿を取ると言う話になった訳か?」

「そう言う事です。そう言う環境で育ったので、子爵の令嬢は、忍耐強く、性格も悪く無いと言う話です。」

「第2夫人をと言う話は出なかったのか?」

「正直あまり裕福な家では無いと言う話ですので。」

「それって、うちの派閥に入れる意味があるのか?」

「ありますよ。まずクラ―ネルさんが優秀です。そして、子爵家を援助すれば、忠誠心が上がりますよね?」

 なるほど、貴族と言うのはそう言う考え方をするのか。

「ちなみに、クラ―ネルを男爵にしてから、ゆっくり嫁を探すのと、今回の子爵令嬢と結婚させるのでは、どっちが我が家の利益になる?」

「間違いなく後者ですね。男爵から子爵に陞爵するのはかなり難しいですよ。」

 そう言う物かな?クラ―ネルの才能があれば伯爵位までは簡単に行けそうなんだけど、貴族社会って案外上がつかえているのかな?

 さて、そろそろ良い時間だろう。僕はセリーを連れて、貴族学院の近くに転移する。

 下校時間が近いからか、馬車がずらりと並んでいる。これは良い。隠れる場所が沢山あるので、かなり近づける。

 校門が良く見える位置に移動して、学院生達が出て来るのを待つ。

「見つけたら教えてくれよ。僕は顔を知らないんだから。」

 どうやら、爵位の高い者から出て来る様だ。下級貴族の子供は上級貴族の子に道を譲っている。こう言う上下関係もここで学ぶのだろう。

 馬車で迎えに来ているのは上級貴族または裕福な貴族のみで、貧乏貴族は歩きで帰る様だ。

 20分程待つと、目的の女生徒が出て来た。

「あなた、出てきました。」

「どこだ?」

「向かって右側の3人組。解りますか?その一番右が子爵の令嬢です。」

 セリーの言葉を聞き僕は、右側に目を移す。

「あの青っぽい銀髪の子か?」

「そうです。」

「なるほど、悪く無いな。セリーが選んだ意味が解るよ。」

 彼女の佇まいは貴族のそれでは無い。どちらかと言うと平民に近い物がある。他の貴族に気おされて居る様な気さえする。

 今年成人と言う事は上級生だ。なのに彼女は学院に馴染んでない様に見える。

 おそらく友達も少ないのだろう。自分は学院が場違いだと解って居る目をしている。

「彼女は早くここから逃げたいと言う願望を持っている様だ。結婚話が来たら飛びつくかもしれないな。」

「私もそう感じました。恐らくですが、クラ―ネルさんの事を見た目で判断する子では無いと思います。」

「うん。良いな。セリー、見合いの話進めてくれないか。出来れば公爵のお茶会の1週間後位が望ましい。」

「解りました。その日程で調整してみます。場所は我が家で宜しいですか?」

「そうだな。それで頼む。」

 こうして、クラ―ネルの居ない場所で見合いが決定するのであった。

 翌日からはグレートボアをメインに、レッドボアも狩る。グレートボアは止めもクラ―ネルに刺させる様にした。もちろん魔法では無く剣でだ。

 一週間もすると、平均して白金貨5枚位は稼げる様になった。一人頭、金貨250枚だ。日本円で2500万円になる。月に20日狩りに出るとすれば、5億だぞ。

 月に白金貨50枚はちょっと稼ぎすぎだな。まあ、僕が抜けてクラ―ネル一人になったら、半減どころか3分の1位になりそうだ。そう考えると、まあ良い所なのかな?

「話は変わるが、明日は僕の誕生日だ。18歳になる。」

「おめでとうございます。」

「いや、それは良いのだが、明日は来れない。そこでだ、明日は狩りに出ずに昇級試験を受けてBランクに上がれ。今のクラ―ネルなら問題無いだろう。」

「解りました。いよいよ目標のBランクですね。」

 いや、既にAランクの腕は余裕であると思うぞ。

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