上 下
218 / 308

218

しおりを挟む
 明日は冒険者として依頼を受けると宣言し、待ち合わせ場所を冒険者ギルド前に変更する。
 
 クラ―ネルは大いに喜んでいた。

 さて、家に帰ると、クラ―ネルの婿入り先の候補の詳細が書類に纏められていた。

 一通り目を通したが、特に問題は無い様だ。あるとしたら、クラ―ネルの見た目になるだろう。

 あれは、どうにかならないかな?

 セリーに会わせて、解決策を練って貰おうか?

 翌日、10時に冒険者ギルドに飛んだ。待ち合わせ場所に近づくと何やら騒がしい上に人だかりが、トラブルかな?

 どうも、騒ぎの中心に居るのはクラ―ネルの様だ。クラ―ネルを女性新人冒険者と勘違いした馬鹿共がパーティーに誘っている。

 僕は人だかりに割って入り。クラ―ネルを拉致して、周囲に聞こえる声で謝罪する。

「うちのパーティーメンバーが迷惑をかけた様で済まんな。」

 これで、明日からは勧誘の声は掛からなくなるだろう。

「済みませんエイジさん。」

「済まないと思うなら見た目を変える努力をしたらどうだ?」

「これでも、結構努力してるんですが。」

 言われてみれば、化粧をしている訳でも無く、髪もこの世界の住人にしては短い方だ。女性っぽい服を着ている訳でも無い。

 何と言うか顔立ちに問題がある様だ。これは遺伝的な物でクラ―ネルを攻める訳には行かない。

 逆に化粧で男っぽく出来ない物だろうか?

「まあ良い。依頼を受けるぞ。」

「今からでも依頼に間に合いますか?皆さん結構早くに依頼を受けに来ている様ですが?」

「ああ、問題無い。僕らが受けるのは常時討伐のみだ。」

 常時討伐と言うのはその名の通り、常時貼り出されている、討伐依頼だ。メリットは常に依頼が出ているので時間が遅くても受けられる。失敗時のペナルティが無いと言う事だ。デメリットは、通常依頼より若干報酬が低くなる事位かな。

 さて、一つ問題がある。僕がSランクでクラ―ネルはGランクだ。僕らのパーティーは何ランクになるのだろう?

 ざっと掲示板を見て、今日の獲物を決める。
 
 ゴブリンとオークで最初は様子を見よう。

 常時討伐の良い所はわざわざ窓口で依頼を受けなくても良い所にもある。先に討伐して来てから報告しても依頼達成扱いになるのだ。

「今日は最初なのでゴブリンとオークを狩に行く。まあ、途中で美味しい魔物が出れば狩るがな。」

「ゴブリンにオークですか。何だが冒険者って感じがしますね。」

 いやいや、ちゃんと登録したんだから立派な冒険者なんだって。

「じゃあ、出発するぞ。」

 そう言ってギルドを出る。基本オークやゴブリンは比較的浅い位置に出る事が多い。しかも東西南北何処へ行っても出る。なので一番近い南門を目指し歩き始める。

「さて、クラ―ネル。今日使って良い魔法はウインドカッターだけだ。しかも狙うのは足限定だ。」

「それはどう言う意味があるんですか?」

「今日は冒険者初日だ、いわゆる普通の冒険者の魔法使いの戦い方を教える。明日からは、また違った事を教えるので、今日は魔法使いに徹してくれ。」

 南門を出て20分程歩き、森へと分け入る。僕のサーチではこの辺にはゴブリンの反応が多い。

「いいか、ゴブリンはまとめて数匹出て来る事が多い。なので、ゴブリンを見かけたらすぐに足に向けてウインドカッターを放て。動きを止めたゴブリンは無視して良い。次々にゴブリンの足を止めるのが君の役目だ。」

「解りました。」

「群れの魔物と対峙する時は、どの魔物から足を止めれば効率が良いか考えながら魔法を使うのが効果的だ。」

 すると早速ゴブリンが2匹お出ましだ。僕はあえて、クラ―ネルに先手を譲る。

 クラ―ネルのウインドカッターが先行するゴブリンに当たる。後ろのゴブリンが逃げようとするが、その間を与えず、2発目が飛んで行った。

 初めてにしては上出来だな。僕は、素早く2匹のゴブリンの首を跳ねる。

「ゴブリンの討伐証明部位は右耳だ。ナイフで切り取る。出来るか?」

「やります。」

 出来ると言わずにやりますと言うのがクラ―ネルらしい。

 切り取った耳を麻袋に入れてクラ―ネルに持たせる。

「さて、次が来るぞ。」

「それって探知魔法ですよね?僕も使った方が良いのでしょうか?」

「使えるのなら使った方が良いぞ。前にも言ったが、出来る事は全てしろ、それが生き残る条件だ。冒険者ってのは生き残って居れば勝ちなんだ。」

 次に現れたゴブリンは3匹だ。ゴブリンは5匹で1依頼なので、丁度良い数だな。

 さっき、2匹目のゴブリンに逃げられかけたので、クラ―ネルは少し引き付けてから、魔法を発動する。

 状況判断も的確だし魔法の運用も上手い。魔法使いとしては合格だな。

 3匹のゴブリンの首を跳ねながら僕は満足していた。

 クラ―ネルが耳を切り取っている間に、少し遠くまでサーチを広げる。オークを捉える。

「よし、ゴブリンは、この辺で良いだろう。次はオークに行くぞ。オークはゴブリンよりも動きは遅いが、その分防御力が高い。油断せずに、どの位の魔法で足止め出来るか確認しながら進め。」

 数分でオークのエリアに辿り着く、クラ―ネルも探知魔法で大体の敵の位置は確認できている様だ。

 ゴブリンと違いオークは基本群れを作らない。だが、2~3匹なら同時に出る事はある。

「来るぞ、まずは1匹だ。」

「はい。」

 1匹と聞いたクラ―ネルはオークの姿を見るなりウインドカッターを発動した。ゴブリンに撃った物より威力が高い。防御力が高いと聞いて、威力を上げたのだろうが、ちょっと強すぎた様だ。オークの足がスパッと切断された。

「限度って物があるぞ。もう少し弱くても足止めは出来る。」

 僕は、そう言って、オークも剣で一閃。首を飛ばす。

「オークの討伐証明部位も右耳だが、オークは食用として肉が素材になる。なので持ち帰れるなら持ち帰った方が金になるぞ。」

 そう言ってストレージに仕舞った。

「アイテムボックスですか?」

「ああ、時空魔法もいずれは教えるつもりだ。覚えればアイテムボックスも使える様になるだろう。どの魔物が、どう言う素材になるのか、何が高く売れるのか、効率の良い狩りと言うのを叩き込んでやるから、キッチリ覚えろよ。」

「なるほど、冒険者で生活して行くなら、効率の良い狩りをしなければイケないと言う事ですね。」

「その通りだ。更に言えば、効率の良い狩りをするにはランクも重要になって来る。冒険者がランクに拘るのはその辺に理由があると言う事だ。」

 これはあくまでも一般論だ。実際に僕は現在Sランクだが、下位ランクの時から稼いでいた。実力があれば、ランクは関係ないのだが、そうでは無い場合はランクは重要な指標になる。

 また、ステータスの方が重要だと考える冒険者が多い事も事実だ。昇級試験って剣と魔法しか無いので、それ以外の職業の人はステータスを重視する事になる。これは冒険者ギルドの改革が必要なのかもしれないが、実力があるのに剣と魔法が苦手でランクが上がらないと言う例は結構多い。

 その後オークを狩りまくって、今日の成果はオーク10匹、ゴブリン5匹になった。

 ギルドに帰り清算して貰う。ゴブリンの討伐費用が銀貨2枚。オークの素材が金貨2枚になった。

「基本冒険者の報酬は山分けだ。ランクの違いや職業の違いもあるだろうが、僕はそう教わって来た。」

 そう言って、クラ―ネルに金貨1枚と銀貨1枚を渡す。日本円で11万円だ。一日の稼ぎとしては悪く無いが、貴族の稼ぎと考えると少ない。

「冒険者って稼ぐんですね。」

「それは、命を懸けた仕事だからな。だが、その分冒険者の寿命は短い。早い者は30代で引退する。だから、なるべく早く強くなって、稼げる間に沢山稼いで引退後に裕福に暮らして行く為に貯蓄するのが普通らしいぞ。」

「ちなみにエイジさんは月にどの位稼ぐんですか?」

「僕はあまり参考にならないぞ。だいたい月に白金貨50枚位だな。」

「そんなに稼ぐんですか?僕の家の1年分以上ですよ?」

「だから参考にならないと言ったろう?Bランクの冒険者なら月に白金貨10枚位は稼ぐんじゃ無いかな。」 

「じゃあ目指すはBランクですね。」

 まあ、まずは、その辺が無難だなと答えて置いた。僕的にはSランクに育てるつもりなんだけどね。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...