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「何を言ってるのミリア。エイジさんはSランクでも最強と言われているのよ。ハンターギルドが手放すわけないじゃない。」
アデルが援護射撃をしてくれる。
「なるほど、アデルの方は彼に気がある訳だ。」
その言葉にアデルは真っ赤になり撃沈した。戦力外早っ。
「そもそも何でそう言う話になるんだ?」
「だって、協力してくれるって言ったじゃない。協力を提示されて私が受ければそれは契約でしょ?どうせ契約するならより強固な結婚の方が確実じゃ無い?途中で逃げられても困るし。」
どう言う理論だ?って言うか、この世界で結婚は死ぬまで解除できない呪いの様な物だぞ、解って居るのか?
「別に結婚しなくても、と言うか契約をしなくても、協力はするぞ?」
「この南エリアでは口約束は信用されないのよ。」
なるほど、ようやく理解した。この貧民街では口約束より契約を重視している訳だ。お金が無いから、余計にそう言った事に敏感なんだろう。騙されない為の知恵って奴かな。
逆にハンターと言うのはお金より信用を重視する職業だ、そんな事情が産んだ齟齬と言う奴かな?
ミリアはハンターを止めて半年も経っていないのに、すっかり南エリアに染まっている様だ。余程深く関わっているのだろう。
「どうすれば信用してくれるんだ?」
「だから、結婚。」
「それは駄目!」
お、アデル復活。
「ところで、何でここにはこんなに怪我人や病人が多いんだ?」
「北の王国からの亡命者だ。ここ最近増えている。」
北の王国からの?何が起こっているんだ?
「どう言う理由で亡命して来るんだ?」
「なんでも、ここ最近小規模な内戦が頻発しているらしい。」
「ここ最近の話なのか?」
「正確には3か月ほど前からだな。反乱軍とやらが暴れているそうだ。」
ほう?レジスタンスか、王国も物騒だな。
「その情報が知れ渡ったら戦争が起きるんじゃないか?」
「可能性はある。だから反乱軍も大規模な戦闘はしないらしい。」
これはフローネル嬢に報告して、皇帝に伝えて置いた方が良さそうだ。
「これから、患者が押し寄せて来るんだろ?その患者全部完治させてやる。それで納得してくれないか?」
「けが人や病人は北の王国の者だけではない。これからもここにはたくさんの患者が集まって来る。出来れば定期的あるいは常駐して欲しい。」
常駐は無理だ、かと言って定期的に来るのもなかなか難しい話だ。
「困ったな。不定期なら来れるんだが、定期的と言うのは難しいな。」
「私としては、あなたの様な有能な人材は是非とも確保しておきたい。その為ならこの体を差し出しても構わない。」
「でも、だからって結婚はやり過ぎだと思います。」
ここでアデルが割って入った。
「私達のパーティーにもエイジさんは必要な人です。ミリアに渡す訳には行きません。体なら私だって差し出しますよ。」
いや、張り合う場所が違う様な気がするのだが。
「別に体とか求めて無いから。こうやって知り合いになった縁を大事にした方が良いと思うぞ。」
「この南エリアでは、そう言う甘い考えでは生きて行けない。どうしても欲しい物があれば、お金を出すか、それに代わる代償を払わねばならない。私が差し出せるのはこの体だけだ。それで手に入らないのなら諦めるしかなくなる。」
「それは、この南エリアのルールですよね?僕らはハンターですので南エリアのルールは通用しません。僕もアデルも貴方を元ハンターのミリアとして見て居ます。思い出して下さい。ハンターだった頃の自分を。」
「口約束を信じろと?」
「アデルはあなたの眼を治すために必死であなたを探し、僕をここまで連れて来ましたよ。南エリアのルールではどうなるんでしょうか?」
「そうだな。アデルには返しきれない恩を受けた。私はこれに対して何か返さねばならないだろう。」
「だったら、エイジさんを信じて、エイジさんの言う通りにして下さい。」
アデルがそう畳み掛ける。
「ふむ、それでアデルが納得するなら、そうしよう。」
どうやら、何とか形になった様だ。
「具体的には、まず、今日来る患者を完全に治し、ミリアさんの時間を作りましょう。時間が出来たら上級の回復魔法を覚えて貰います。」
「なんか、私に都合が良すぎないか?」
「アデルは君に怪我を負わせた事に責任を感じているんだ。その重荷を解き放つには、こうするのが、一番だと判断した結果だ。」
納得したのかどうかは解らないが、とりあえず提案は受け入れられた。
午後になると朝同様、治療院の外に人だかりが出来る。
治療院を開ける頃には50人近い患者が集まっていた。本来ならここで治療院を開き、治療が始まるのだが、今日は僕が治療院から外に出て、皆にエリアハイヒールを掛ける。
今まではミリアがヒールで痛みを和らげるだけだった患者の傷や怪我が一瞬で治る。病気も深刻な物でなければ治るはずだ。
集まった患者たちは自分に何が起こったか理解するのに時間が掛かった様で、数秒の間があってから、騒ぎ出す。
まあ、これで治らない患者は後で個人的に診る事にしよう。
「次は何時に集まるんだ?」
「次の診療時間は夕方4時だ。それまでに急患が入る場合もある。」
「なるほど、急患が入る事もあるのか、そうなると魔法の練習場所を考えないと行けないな。」
「回復魔法だけなら、室内でも練習出来るのではないか?」
「まあ、通常の回復魔法なら室内でも構わないが、広範囲の回復魔法は室内で練習するのはどうかと思うぞ。」
「治療院で広範囲回復魔法は普通使わないだろう?」
「使わないのと使えないのでは色々と差が出る物だ。魔法使いなら解るだろう?」
「だが、治療院を留守にする訳には行かない。初めは普通の回復魔法から頼む。」
「解った。最初は理論だけにしよう。実際に使うのは後日だな。」
明日は狩りに出る予定なので、明後日になるだろうと伝えて置く。
4時まで、上級の回復魔法の理論を教えて行く。基本の回復魔法が使えるので、それ程難しくないはずだ。
2度ほど急患が来たが、どちらもヒールで対処出来る物だった。
アデルにもついでに回復魔法を覚えて貰おうと思う。僕が抜けたら、回復役が居なくなるからね。
4時になると、また患者が集まって来る。これもエリアハイヒールで対処し、その日は帰る事にする。
家に帰り、フローネル嬢に北の王国の情勢を伝える。これで、皇帝にも話が届くだろう。戦争にならない様に共和国の動向に注意してくれるはずだ。
さて、実は、フローネル嬢には、大森林の先に国があると言う事をまだ話していない。本来なら話さなければイケないのだろうが、現在のフローネル嬢の力があれば大森林を超えて王国に行く事は不可能では無い。
現状でフローネル嬢に王国へ行かれると色々と不味い事がある。僕が2重生活をしている事を話さないとこの話は出来ない。
話すべきか話さないべきか悩むことろだ。
リアンには口止めしてあるが、リアンは権力に弱いのでいずれバレるのではないかと不安だ。早めに話した方が良いのだろうか?
翌日は狩りに出る。ミリアの件で時間が取れないので、実戦でアデルを鍛える事にする。まあ、ミリアが回復魔法を習得するまでなので、そう長い時間は掛からないと思うが、1か月位はこんな感じになるだろう。
レモーネとバレッタは、自信が付いたのか戦い方を覚えたのかは判らないが、以前とは別人の様に強くなった。なんとなく、僕の剣術に似ている気もするが、以前戦ったSランカーと比べても、遜色が無い程度になって居る。現状でSランク試験を受けても受かるだろう。
そう言えば僕に負けたSランクハンター、あれからどうなったんだろう?
ハンターの世界では、勝った負けたがかなり重要なのだと、マルコスの一件で思い知らされた。僕は気にして居ないのだが、僕を倒そうと虎視眈々と狙っているSランクハンターが何人か居るとギルマスが言っていた。
今の所、勝負を挑まれた事は無いが、いずれ、そう言った輩が出て来るだろう。
まあ、最強には拘らないが、負けてやるつもりは無い。
アデルが援護射撃をしてくれる。
「なるほど、アデルの方は彼に気がある訳だ。」
その言葉にアデルは真っ赤になり撃沈した。戦力外早っ。
「そもそも何でそう言う話になるんだ?」
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どう言う理論だ?って言うか、この世界で結婚は死ぬまで解除できない呪いの様な物だぞ、解って居るのか?
「別に結婚しなくても、と言うか契約をしなくても、協力はするぞ?」
「この南エリアでは口約束は信用されないのよ。」
なるほど、ようやく理解した。この貧民街では口約束より契約を重視している訳だ。お金が無いから、余計にそう言った事に敏感なんだろう。騙されない為の知恵って奴かな。
逆にハンターと言うのはお金より信用を重視する職業だ、そんな事情が産んだ齟齬と言う奴かな?
ミリアはハンターを止めて半年も経っていないのに、すっかり南エリアに染まっている様だ。余程深く関わっているのだろう。
「どうすれば信用してくれるんだ?」
「だから、結婚。」
「それは駄目!」
お、アデル復活。
「ところで、何でここにはこんなに怪我人や病人が多いんだ?」
「北の王国からの亡命者だ。ここ最近増えている。」
北の王国からの?何が起こっているんだ?
「どう言う理由で亡命して来るんだ?」
「なんでも、ここ最近小規模な内戦が頻発しているらしい。」
「ここ最近の話なのか?」
「正確には3か月ほど前からだな。反乱軍とやらが暴れているそうだ。」
ほう?レジスタンスか、王国も物騒だな。
「その情報が知れ渡ったら戦争が起きるんじゃないか?」
「可能性はある。だから反乱軍も大規模な戦闘はしないらしい。」
これはフローネル嬢に報告して、皇帝に伝えて置いた方が良さそうだ。
「これから、患者が押し寄せて来るんだろ?その患者全部完治させてやる。それで納得してくれないか?」
「けが人や病人は北の王国の者だけではない。これからもここにはたくさんの患者が集まって来る。出来れば定期的あるいは常駐して欲しい。」
常駐は無理だ、かと言って定期的に来るのもなかなか難しい話だ。
「困ったな。不定期なら来れるんだが、定期的と言うのは難しいな。」
「私としては、あなたの様な有能な人材は是非とも確保しておきたい。その為ならこの体を差し出しても構わない。」
「でも、だからって結婚はやり過ぎだと思います。」
ここでアデルが割って入った。
「私達のパーティーにもエイジさんは必要な人です。ミリアに渡す訳には行きません。体なら私だって差し出しますよ。」
いや、張り合う場所が違う様な気がするのだが。
「別に体とか求めて無いから。こうやって知り合いになった縁を大事にした方が良いと思うぞ。」
「この南エリアでは、そう言う甘い考えでは生きて行けない。どうしても欲しい物があれば、お金を出すか、それに代わる代償を払わねばならない。私が差し出せるのはこの体だけだ。それで手に入らないのなら諦めるしかなくなる。」
「それは、この南エリアのルールですよね?僕らはハンターですので南エリアのルールは通用しません。僕もアデルも貴方を元ハンターのミリアとして見て居ます。思い出して下さい。ハンターだった頃の自分を。」
「口約束を信じろと?」
「アデルはあなたの眼を治すために必死であなたを探し、僕をここまで連れて来ましたよ。南エリアのルールではどうなるんでしょうか?」
「そうだな。アデルには返しきれない恩を受けた。私はこれに対して何か返さねばならないだろう。」
「だったら、エイジさんを信じて、エイジさんの言う通りにして下さい。」
アデルがそう畳み掛ける。
「ふむ、それでアデルが納得するなら、そうしよう。」
どうやら、何とか形になった様だ。
「具体的には、まず、今日来る患者を完全に治し、ミリアさんの時間を作りましょう。時間が出来たら上級の回復魔法を覚えて貰います。」
「なんか、私に都合が良すぎないか?」
「アデルは君に怪我を負わせた事に責任を感じているんだ。その重荷を解き放つには、こうするのが、一番だと判断した結果だ。」
納得したのかどうかは解らないが、とりあえず提案は受け入れられた。
午後になると朝同様、治療院の外に人だかりが出来る。
治療院を開ける頃には50人近い患者が集まっていた。本来ならここで治療院を開き、治療が始まるのだが、今日は僕が治療院から外に出て、皆にエリアハイヒールを掛ける。
今まではミリアがヒールで痛みを和らげるだけだった患者の傷や怪我が一瞬で治る。病気も深刻な物でなければ治るはずだ。
集まった患者たちは自分に何が起こったか理解するのに時間が掛かった様で、数秒の間があってから、騒ぎ出す。
まあ、これで治らない患者は後で個人的に診る事にしよう。
「次は何時に集まるんだ?」
「次の診療時間は夕方4時だ。それまでに急患が入る場合もある。」
「なるほど、急患が入る事もあるのか、そうなると魔法の練習場所を考えないと行けないな。」
「回復魔法だけなら、室内でも練習出来るのではないか?」
「まあ、通常の回復魔法なら室内でも構わないが、広範囲の回復魔法は室内で練習するのはどうかと思うぞ。」
「治療院で広範囲回復魔法は普通使わないだろう?」
「使わないのと使えないのでは色々と差が出る物だ。魔法使いなら解るだろう?」
「だが、治療院を留守にする訳には行かない。初めは普通の回復魔法から頼む。」
「解った。最初は理論だけにしよう。実際に使うのは後日だな。」
明日は狩りに出る予定なので、明後日になるだろうと伝えて置く。
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2度ほど急患が来たが、どちらもヒールで対処出来る物だった。
アデルにもついでに回復魔法を覚えて貰おうと思う。僕が抜けたら、回復役が居なくなるからね。
4時になると、また患者が集まって来る。これもエリアハイヒールで対処し、その日は帰る事にする。
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さて、実は、フローネル嬢には、大森林の先に国があると言う事をまだ話していない。本来なら話さなければイケないのだろうが、現在のフローネル嬢の力があれば大森林を超えて王国に行く事は不可能では無い。
現状でフローネル嬢に王国へ行かれると色々と不味い事がある。僕が2重生活をしている事を話さないとこの話は出来ない。
話すべきか話さないべきか悩むことろだ。
リアンには口止めしてあるが、リアンは権力に弱いのでいずれバレるのではないかと不安だ。早めに話した方が良いのだろうか?
翌日は狩りに出る。ミリアの件で時間が取れないので、実戦でアデルを鍛える事にする。まあ、ミリアが回復魔法を習得するまでなので、そう長い時間は掛からないと思うが、1か月位はこんな感じになるだろう。
レモーネとバレッタは、自信が付いたのか戦い方を覚えたのかは判らないが、以前とは別人の様に強くなった。なんとなく、僕の剣術に似ている気もするが、以前戦ったSランカーと比べても、遜色が無い程度になって居る。現状でSランク試験を受けても受かるだろう。
そう言えば僕に負けたSランクハンター、あれからどうなったんだろう?
ハンターの世界では、勝った負けたがかなり重要なのだと、マルコスの一件で思い知らされた。僕は気にして居ないのだが、僕を倒そうと虎視眈々と狙っているSランクハンターが何人か居るとギルマスが言っていた。
今の所、勝負を挑まれた事は無いが、いずれ、そう言った輩が出て来るだろう。
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