転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 皇帝陛下の協力を取り付けたので、僕とフローネル嬢は、作戦を練って行く。現状、身近にいるドラゴンはルシルだけなので、ルシルの協力も頼んで置いた。

 ルシルは普通のドラゴンでは無く暗黒竜なので、帝都に現れたらかなりの大騒ぎになるだろうな。

 小道具として、マントと仮面を用意した。ネタバラシをするまではフローネル嬢には姿を隠して置いて貰わないと困るからだ。一応マントと仮面にはドラゴンの意匠をデザインした。

 暗黒竜が姿を消すと同時にマントと仮面を付けたフローネル嬢が現れればドラゴンの化身と思ってくれるだろう。

 仕掛けは色々としてはいるが、実際の計画は行き当たりばったりな部分が多い。まあ、どんな状況になっても対処出来る様には考えているが、予想外の出来事が起きる事もある。その時はその時だ。

 剣の稽古と魔法の稽古は相変わらず続けている。正直、現状ではギリギリ1万人と対峙出来る程度だ。魔法使いが前線に出て来るとは思えないが、絶対ではない。出来れば、1万5千人位を相手に出来る位にして置きたい。

 もっと言えば3国が戦争状態になった時、1人で王都を守り切れる程度には鍛えたかったのだが、どうやら時間が足りない様だ。

「ちなみに、作戦が成功した後はどうされるおつもりですか?」

「兄の動向次第ですね。考えを改めない様であれば、皇帝の資質も疑わしくなります。あなたが言う様に、排除の方向性も視野に入れなければなりません。」

「そうなると、忙しくなりますね。出来ればもう少し鍛えたかったのですが、仕方ありませんね。」

「私はこれ以上の強さは求めませんよ。現状を変えられれば満足です。」

「まあ、一人で強くなろうとしなければ、別に問題は無いのですが。強いと言うのはそれはそれで生きづらい物ですよ。大丈夫ですか?」

「私が得る物の代償と考えれば、それ程辛くは無いと考えて居ます。甘いでしょうか?」

 正直甘いのだが、あえて言うのは止めて置いた。

 人の身で、身に余る力を持つ事はかなりの精神力を必要とする。もう一段上に上がればそれもコントロール出来るようになるのだが、彼女にそれを強いるのは難しそうだ。

 多分、彼女には普通の女性としての幸せは望めないだろう。だが、それも皇帝の娘に生まれた宿命なのかもしれない。

 更に、彼女は境遇に恵まれなかった。彼女の兄がそう言う人物で無かったら、また違う人生を送れたのかもしれない。

 僕と出会ってしまったのも、幸か不幸か解らないが、人生を大きく変えた。彼女は普通では手に入らない力を得た。

 それが将来どう言う運命に繋がるのかは判らないが、確実に彼女の人生は本来歩む道から逸れてしまったはずだ。僕の存在はこの世界ではイレギュラーだ。僕に関わった者は、多かれ少なかれ、僕の影響を受ける。これは良い事なのか悪い事なのか、現時点では判断できない。

 異世界転生と言う本来あり得ない現象が起き、僕はここに居る。更には神との邂逅、知識。どれを取っても、この世界の住人には刺激が強すぎるのでは無いだろうか?

 僕は本当にこのまま、この世界で、この世界の住人と関りながら生きて良い物なのだろうか?時折自問自答するが、答えは出ない。

 だが、この世界の神であるブラスマイヤーもローレシアも、僕を異分子として排除する事はしなかった。神の視点で見れば、僕程度のイレギュラーは許容範囲なのだろうか?

 そう言えばブラスマイヤーが、僕が飛ばされて来た事にも何か意味がある様な事を言ってたな。どう言う事か聞いて置けば良かった。

「さて、今日はこの位にしておきましょう。作戦の実行日は皇女様の力から考えて後1週間後位でしょうか。」

「解りました。父にも伝えて置きます。」

 その日は王国に帰る前に子爵邸に寄って行く。あまり放っておくとリアンが情緒不安定になるからな。

 そして、作戦実行の日がやって来る。僕はルシルを連れて帝国に転移した。

 人間の姿のルシルとフローネル嬢を会わせるのは不味いかな?少し考えて、ルシルに喋るなとだけ伝え、会わせる事にした。

 闘技場へ飛び、フローネル嬢と合流する。

「そちらの女性は?」

「僕の知り合いのドラゴンですけど?」

「はあ。」

「これから彼女に帝国城の上空を飛んで貰います。どの位で、兵が集まりますか?」

「城の内部に居る兵士が集まるのに20分。帝都に散らばっている兵士が集まるのに1時間と言った所でしょうか?その後ハンターが集まってきます。」

 まあ、そんなもんだろうな。僕はルシルに作戦を伝える。まず、帝国城の上を10分程飛んでから、帝都上空をゆっくり1時間かけて旋回して貰う。その後また城の上空を飛んで、兵士が集まったのを確認したら、人間の姿に戻って姿を隠して貰う。

 ルシルが頷いて、暗黒竜の姿に変化するとフローネル嬢が大いに驚いていた。

 さて、作戦開始だ。

「皇女様は城に飛んで陛下に報告を。陛下にはすぐに全軍を城に集めて貰って下さい。」

「解りました。」

「陛下に報告が終わったら、一旦ここへ戻って下さいね。」

「はい。」

 ルシルがゆっくりと浮き上がり城の方向に飛んで行く。ルシルの速度なら数秒で城の上空に着くだろう。

 ルシルが飛んで行くのを確認して、フローネル嬢が城に転移する。僕は闘技場で待機だ。ルシルの気は把握しているのでサーチで現在位置が判る。

 ドラゴンの中でもブラックドラゴンは特に恐れられている。レッドドラゴンでさえ災害級だ、更にその上に位置するブラックドラゴンは最早天災級と言って良いだろう。ルシルはその進化系の暗黒竜だ。帝都はパニックに陥る事だろう。

 果たして帝国の騎士たちは逃げずに立ち向かえるのだろうか?

 ルシルが城の上を旋回している。今頃、陛下は全軍集結の指示を出しているはずだ。5分程でフローネル嬢が闘技場に戻って来た。

「指示通り父に全軍を集めて貰っています。」

「城の状況は?」

「大混乱ですね。騎士団もパニックに陥る寸前です。我が国の兵士があれほど惰弱だとは思いませんでした。」

 まあ、普通の騎士はドラゴンが出たらそうなるわな。

「さて、僕らが動くのは1時間後だ。お茶でも飲んでゆっくり待とう。」

 僕はストレージからカフェオレとマフィンの様なお菓子を籠に入れて出して、闘技場の客席に座りティータイムを楽しむ。

「あの、こんなに寛いでいて良いのでしょうか?」

「まあ、全軍が集まらないと作戦が進まないからね。それまではする事無いよ。」

「でも、ドラゴンさんは頑張っているのに、悪い事をしている気分です。」

「まあ、ルシルもただ飛んでるだけだから、頑張るって程じゃ無いと思うよ。」

 むしろ頑張っているのは陛下と兵士達だな。

 ルシルは久しぶりにドラゴンの姿になって、喜んで飛び回って居るぞ。

 そして、1時間が経過する。

 ルシルは再び城の上空を旋回している。時々魔法が飛んで来るが、届かないか、当たっても効果が無いと言う体たらくだ。本当に帝国の魔法使いは駄目だな。

 さて、僕のサーチでは、まだ全軍が集まったとは言い切れないが、人数的には騎士と魔法使いを合わせれば1万2000人くらいにはなっている。

 もう少し待つか、決行するか迷う数字だな。

 とりあえず、現地に行って見るか。

 フローネル嬢に顔を隠して貰ってから、転移で城から少し離れた場所に飛ぶ。

「どうかな?まだ、全軍が集結した訳では無いが、人数的には悪く無い数だと思うのだが?」

「そうですね。予定通りなら兄上も城の何処かから様子を伺っているはずですので、そろそろ決行しても良いかもしれません。」

「じゃあ、マントと仮面を身に着けて、ルシルが消えた地点に転移する準備をしてくれ。」

「解りました。」

 そう言ってフローネル嬢はマントと仮面を身に着ける。

「転移後の段取りは解って居るね?」

「大丈夫です。任せて下さい。」

「じゃあ、始めるよ。」

 僕はルシルに念話の魔法で話しかける。城から西に500メートル程飛んでから人間の姿に戻って、地上に降りる様に指示する。その後は僕が転移で回収する。

 ルシルが向きを変えてこちらに向かって来る。

 さて、ここからが本番だ。
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