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 翌日稽古の後帝国へ飛び、ハンターギルドにオークの代金を貰いに行った。

 窓口に並んで待っていると、何故か、ギルドマスターの部屋に呼ばれる。

 なんだろう?金額が大きいから直接渡してくれるのかな?

 2階に上がりギルマスの部屋に入ると、ギルマスが険しい顔で書類に目を通していた。声を掛けて良い物か悩んでいると。ギルマスの方が気づいてくれた様だ。

「おお、君か、待って居ったぞ。」

「今日は何の用でしょう?」

「昨日のオークキングだがな、どうやら亜種だったらしいぞ。」

「え?オークキングに亜種が居るんですか?」

「正確には亜種とは違うのだが、エルダーオークキングだったらしい。1000年以上を生きた、オークキングだ。」

「えっと、普通のオークの寿命は短いって事ですか?」

「そうだ、オークは基本人間とあまり変わらない寿命の魔物だ。それを1000年以上生きるとは、どう言う事か解るかね?」

「長生きって言う事はもしかして、普通のオークキングより強かったりとか?」

「その通り。ギルドではSランクと判定した。」

 ああ、なんか雲行きが怪しくなって来たぞ。

「確か、君はCランクだったな?」

「そうですね。」

「そこが、どうも不味い事になって居てな。CランカーにSランクの魔物が倒せるのかとね。」

「はあ?僕はどうしたら良いのでしょう?」

「悪いがこれから裏庭に付き合ってくれんかな?」

 裏庭?なんか放課後に体育館裏に呼び出された気分だ。

 ギルマスについて行くと、裏庭に昇級試験とは別に人が集まっている。

「なに、大した事をする訳では無いので心配するな。我々に君の実力を見せて貰いたい。それだけだ。」

「実力ですか?模擬戦をすれば良いのですか?」

 んー、実力を見せるのが一番不味いんだけどな。

「彼と戦って貰いたい。勝敗は関係ないが、不甲斐ない戦いをすると昨日君が持ち込んだ素材は不正に得た物として、没収されるぞ。」

 ああ、そう言う事ね。僕がオークキングを倒した事に納得してない人が居るって事か。

 前に出て来た対戦相手の後方にギルマスを含め5人の見物人が居る。彼らが納得していない人たちかな?

 対戦相手は均整の取れた体を持つ正統派の剣士と言った感じだ。弱くは無いが、強さも感じない。多分、Aランカーではないかと思う。どうする?倒した方が良いのかな?勝敗は関係ないと言って居た。これは僕が勝つ事も想定内って事だよね?

「ルールは木刀を使った模擬戦。勝敗は関係ない。出来るだけ君たちの力を見せて欲しい。」

「済みません。僕は純粋な剣士じゃ無くて、魔法剣士なんですが、魔法も使って良いのですか?」

 ギルマスが直々に審判をやる様だ。何かこの模擬戦おかしいぞ。

「攻撃魔法は禁止だ、補助魔法は制限しない。」

 僕が頷くと、ギルマスが一歩下がり開始の合図を掛ける。

 対戦相手は僕がCランクだと知っている。何時でも倒せると高をくくっているのか、様子見だ。

 本気になって貰わないと実力を見せられない。少し揺さぶってみるか?

 遅めの瞬動で後ろに回り込む。軽く蹴りを入れて、距離を取る。相手はよろめき、驚いた顔をする。その顔が徐々に真剣な表情になった。

 これで、向こうも侮ったりしないだろう。試しにバインドを撃ってみる。やはりと言うか弾かれた。まあ、これはこっちには魔法もあるぞと言う威嚇である。

 こうなると相手は、スピードで攻めてくるはずだ。魔法が使えない剣士には魔法使いは厄介な相手のはずだ。

 思った通り魔法が使えない様に攻めに転じた。まあ、僕の場合戦いながらでも魔法は撃てるんだが、教えてやる必要は無い。

 3度4度と剣を受けるが、それ程強い剣士では無さそうだ。スピードもそれ程速くない。これは、終わらせちゃって良いかな?

 僕は切りかかって来る相手の剣をギリギリで躱し、懐に潜り込んで首筋に剣をそっと当てる。

「そこまで!」

 ギルドマスターの声が上がり、模擬戦は終了になった。

 えっと、やらかしてないよね?普通に戦ったはずだ。

 なのになんで、後ろの5人は集まってこそこそ話をしてんの?

「あー、坊主。エイジだっけ?お前にBランクをやる。出来れば早めにAランクの試験を受けろ。」

「どう言う事ですか?」

「お前が相手をしたのはギルドでも1、2を争うSランカーだ。まさか勝つとは思わなかったよ。」

 え?あれでSランク?Sランクはバケモノだって言って無かったか?

 ちょっと待って、ここは勝っちゃいけない場面だったのでは無いだろうか?事前にSランクだと解って居れば、もう少し手加減したのに、謀ったなギルドマスター。

 茫然としている僕にギルマスが何か紙を渡してくれた。

「これ持って、窓口に並べば報酬とBランクのカードが貰える。行ってこい。」

 ありがとうございますと一応礼を言って、適当な窓口に並ぶ。しまったな、またやらかした。これでギルドに僕の実力を知られてしまった。面倒な事にならなければ良いが。

 あ、ちなみに僕が討伐依頼を行っている間は緋色の風のメンバーは漆黒の闇に同行している。顔はともかく、あのおっさんは面倒見が良いからな。

 落ち込んで並んでいたせいか、窓口のお姉さんに、大丈夫ですか?と心配されてしまった。

「大丈夫です。あ、これお願いします。」

「Bランク昇級に報酬白金貨25枚って、なんでこれで落ち込んでるんですか?」

「まあ、ちょっと色々とありましてね。」

「ハンターの事は深く詮索しませんので、元気出して下さいね。で、白金貨25枚は当日支払いが出来ないのでギルドカードへの貯金で構いませんか?」

「あ、それでお願いします。」

「じゃあ、ギルドカードをこちらへ。」

 僕はギルドカードをお姉さんに渡して、暫く待つ。5分程で新しいカードが出来て来る。

「昇級おめでとうございます。こちらが新しいカードです。貯金も引き継がれて居ますので安心して下さい。報酬の方は本日中に振り込まれる様に手配しました。」

「ありがとうございます。」

 そう言って帰ろうとしたら、呼び止められた。
 
 ん?まだ何かあったっけ?

「ギルドマスターから、手続きが終わったら部屋へ来るようにと伝える様にとメモが回って来ています。何か怒られる様な事したんですか?」

「いやいや、怒られる様な事しませんって。ギルマスの部屋に行けば良いんですね?」

 僕は、もう一度礼を言って、2階へ上がった。

 ギルドマスターの部屋をノックすると、開いてるぞと言う声が聞こえた。入るとギルマスともう一人が何やら話をしている。入って良かったのか?

「おお、来たか。待ってたぞ。まあ、座れ。」

 そう言って体が沈み込むソファに無理やり座らされた。

「お前に頼みたい事がある。廃神殿の調査だ。」

「廃神殿ですか?」

「ああ、古代の神殿らしくかなり大きい。まあ、そこまでは良いのだがな。ここの所、その神殿から魔物が湧くようになった。その原因を突き止めて欲しい。」

「なんで、僕なんですか?」

「理由は2つある。1つはその神殿に得体のしれない結界の様な物が張ってあると言う事。2つ目は、ダンジョン化している可能性があると言う事だ。」

 あれ?イマイチ意味が解らないんだが?

「本来ならSランクの戦士と魔法使いを送るところなんだが、現在Sランクの魔法使いは居ない。」

 んー、帝国の魔法使いどんだけ遅れてるんだ?

「お前、魔法剣士なんだろう?実力はSランクを倒す程。つまり、1人でSランクの戦士と魔法使い2人分の仕事が出来る。ギルドは報酬を1人分用意すれば良い。」

 なんだろう、このギルマス。商人の方が向いてるんじゃね?

「調査だけで良いんですね?報酬は?」

「ああ、調査だけで構わない。ダンジョン化しているなら他のハンターを送り込むし。別の理由ならそれを調べてくれ。あと、結界を破れるなら頼みたい。駄目なら無害かどうかだけでも知りたい。」

 古代の神殿か、僕個人としても興味はあるな。だが邪竜とか封印されてたら嫌だな。まあ、でも調べない訳には行かないか。

「解りました引き受けます。あ、何気に報酬を言わなかったでしょ?」

「ははは、バレたか。」

 僕は抗議の目をギルマスに向ける。

「調査の報酬は金貨100枚だ。別途討伐した魔物が居れば買い取る。」

「Sランクの仕事にしては安くありませんか?」

「だって、お前Bランクだろう?Bランクの仕事としては美味しいぞ。」

 このギルマス。一度ぎゃふんと言わせたい。
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