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 さて、今日は稽古の後、道場を軽く見て回り、ギルドで昇級試験を受けた。無事Dランクに昇級した。

 その後子爵邸でゆっくりと過ごし、3時には王国へ戻る。

 子供たちを1時間程戯れ、風呂に入る。その後は応接室が僕の定位置だ。お茶を飲みながら明日の事を考える。

 『緋色の風』のメンバーは、稼げるようにはなったが、どうも実力が伴って居ない。ここは少し鍛えてみても良いかな?正直、これから先も一緒に行動するなら、せめてBランク位にはなって欲しい。

 まあ、1日でどうこうなる物では無いが、あれだけ稼いで居れば、週に1日位は稽古の日が取れそうだ。

 翌朝、稽古の後、帝国に飛び、『緋色の風』と合流する。

「昨日はどうだった?」

「昨日はブラックベアを中心に狩りました。ブラックサーペントが1匹。ベアが12匹ですね。」

「悪く無い成果だな。レーネの探知魔法もだいぶ上手くなって来ている様じゃ無いか。」

「今日はどうします?」

「今日はこれから皆で昇級試験を受けようと思う。その後は稽古をしたいな。」

「え?狩りには出ないんですか?」

「毎日狩りと言う訳にも行かないだろう?昇級すればパーティーランクも上がるし。狩れる魔物のランクも上がる。特に女性2人はここの所活躍がめざましいからランクアップしてEランクパーティーにしましょう。」

 と言う事で混雑の中皆で窓口に並ぶ。

「ところで、稽古をしたいんだが、良い場所を知らないか?」

「普通はハンターギルドの裏手で稽古をするもんだが、派手な魔法を使うなら西の平原がお勧めだな。」

 西の平原?そう言えばリリの家庭教師の時に行ったな。あそこなら滅多に人も来ないし良いかも。

 30分程で順番が回って来た。

「ここにいる5人全員で昇級試験を受けたいんだが。」

「では、ギルドカードを出して下さい。」

「みなさん、Cランク以下ですので、すぐに試験は受けられます。受付票を発行しますので、受け取ったらギルドの裏手に回って下さい。」

 順番に、カードと受付票を受け取り。ギルドの裏手の試験会場へ向かう。

 朝一と言う事もあってか、試験を受ける人が結構いる。まあ、その分職員も多いので、意外に早く終わりそうだ。

 僕とシン、ヒルダは戦士職で、リオンとレーネは魔法職で試験を受ける。結果全員が昇級した。リオンはギリギリだったな。鍛えないと。

 再び窓口に並び、手続きを終えた頃には11時を回っていた。

「じゃあ、これから西の草原に行くぞ。ちなみに僕はCランクでシンがDランク他のメンバーがE、これってパーティーランクはどうなるんだ?」

「エイジが居ればD、居ない時はEランクのパーティーになるな。」

 西門を出て10分程で平原に着く。

「さて、まずは皆の実力を量る為に模擬戦をする。その後、個人別に指導をしよう。」

「模擬戦ですか?」

「ええ、そっちは4人で何時ものフォーメーションで掛かって来て下さい。武器も真剣で構いません。魔法も普通に使って良いですよ。僕を魔物だと思って狩るつもりで来てくださいね。」

 僕は4人と7メートル程距離を取る。

「何時でも良いですよ。あ、指揮はリオンが取って下さい。」

 1対4で対峙する。皆は戸惑っているが、魔物は待ってくれないよ。

 僕が軽く走り出すと。レーネがエアカッターを発動する。同時にリオンもファイヤーボールを撃つ。僕が2つの魔法を霧散させると、ヒルダが真剣な顔になった。

 僕はヒルダに向かうと見せて、途中で、くるりと身を翻し、シンと打ち合う。シンは慌てたのか、剣を弾かれて手放してしまった。

 4人の中央に入り込んだ僕は4人に同時にバインドを掛けた。

「はい、パーティー全滅。全員死亡だよ。」

 バインドを解きながらそう言った。

「このパーティーは良くも悪くもシンが要のパーティーだ。シンが崩れたらパーティーは全滅する。」

 シンが神妙な顔で頷く。

「次に盾役のヒルダ。ヒルダは魔物を押さえるのは当然だが、常にシンの居場所を把握して守らなければならない。今はそれが出来ていない。」

 ヒルダも頷いている。

「そして魔法職の2人。魔法が外れる事は良くある事だ。常に第二の魔法を撃てるように準備しなければ駄目だ。それに、攻撃魔法だけが魔法では無い。支援魔法も上手く使わなければ今後の戦いはきつくなるぞ。」

「自分たちの弱点がハッキリと見える模擬戦でした。全く何も出来ずに全滅するとは、情けないです。」

 リオンが落ち込んでいる。

「落ち込む事は無い。魔物は僕みたいな戦い方はしないし、僕は皆の弱点が解って居たから出来た事だ。自分たちの弱点が解ったなら、そこを改善すれば良いだけの事だろう?」

 その後3時間みっちりと4人を扱いた。特にリオンをメインに。リオンには攻撃魔法と支援魔法を。レーネには支援魔法をメインに教えた。後は魔法書で勉強すれば魔法は上手くなるはずだ。

 シンには剣技を教えつつ模擬戦を行った。ヒルダには、盾を使いながらの剣技を教えた。

 ここの所の魔物討伐で、4人は大幅にレベルが上がっている。どうやら体がレベルアップについて行って居ない様だ。それを補正する意味でも、週に1度は稽古をしたい。そう、提案すると、皆思う所があるらしく、賛成してくれた。

「さて、今日の訓練はここまでだな。出来れば週に1度は休みの日にした方が良い。現在の稼ぎなら可能だろう?週に1日休み、1日稽古。残りの5日で金貨100枚も稼げば問題無いだろ?」

「エイジが入る前は、月に金貨10枚って感じだったよ。それでもFランクとしては稼いでる方だったし。」

 リオンの言葉にヒルダがうんうんと頷いている。

「週に金貨100枚とか、Bランカーの稼ぎだよ。」

 ん?そうなの?やりすぎた?

 確かに月に金貨10枚稼げば、一般人より良い生活が出来る。そう言う意味ではシンは有能なリーダーなのかもしれないな。

 なるほど、ヒルダが怖がるわけだ。

 でも、強くなることは悪く無い。何より知り合いが死ぬのは避けたい。だから、稼ぎは二の次と考えて、鍛えて行くつもりだ。結果、稼げるなら、それは悪い事では無いと思うのだが。

 とりあえず、金銭感覚が麻痺しない様に気を付けよう。って言ってる僕が一番金銭感覚狂ってるけどね。

 稽古を終えて、西門へ向かう最中、冒険者グループと鉢合わせた。ガラの悪そうな連中だったので、僕らは道の端に避け、道を譲った。しかし、その行為が気に食わなかったのか、絡まれた。

「お前ら、最近稼いでると噂のFランクパーティーじゃねえか?金持ってるなら少し恵んでくれないか?」

 ん?噂になってるのか?

 同じパーティーのメンバーが止めているが、男は止めようとしない。

「Fランクごときが生意気なんだよ。俺らDランクパーティーが注目されずに、なんでFランクパーティーが話題になってるんだ?」

「それは、こいつらのせいじゃ無いだろう?お前酔ってるのか?」

 どうでも良いが、道を開けてるんだからさっさと行ってくれないかな?

「いや、俺の気が収まらねぇ。上下関係ってのを教えてやる。」

「よせって、問題を起こすとギルドがうるさいぞ。」

「構うもんか、それに、今、ここには誰も居ねえよ。」

 内輪もめか、喧嘩を売るのかはっきりして欲しいね。

 それに、早く帰りたい。

「何だ、その眼は?喧嘩売ってんのか?」

 いやいや、喧嘩を売ってるのはあなたでしょう。

 男が剣に手をかけた。それを抜いたら、ギルドカードを剥奪されるよ?

「やめろ、ゲルド!」

 前方から迫力のある声が聞こえた。

「だけど、リーダー、こいつらが。」

「俺に2度同じ事を言わせる気か?」

 相手のパーティーは6人。リーダーと呼ばれた男が振り向く。どうやら、リーダーだけは格が違う様だ。

 ゲルドと呼ばれた男は、黙って列に戻った。どうやらリーダーには頭が上がらない様だ。

 僕たちは黙ってそのパーティーを見送る。

「なんだ、あれ?」

「あれは、Dランクパーティーの『漆黒の影』ですね。リーダーのゴルザはBランクらしいです。」

 リオンが答えてくれた。

「強いのか?」

「Dランクパーティーとしては強いですね。ただ、上はBで下がEまでの幅がある構成なのでリーダーが居なくなったら大変そうです。」

「まあ、良いか。滅多に会う事は無いだろうしね。」

 あれ?今僕思いっきりフラグ立てなかった?
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