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 翌日は稽古の後、自室に篭って、ギルドカードを眺めながら現状を把握し、今後の方針を固めて行く。

 現在の僕のレベルは7だ。多分『緋色の風』のメンバーの方が上だろう。ローレシアに力をセーブされる前、最後に確認した時のレベルが1200位だったと思う。その時の体力の数値が15万オーバーだったと記憶している。

 僕が最初にこの世界でギルドカードを作った時、レベル1で体力が500だった。だが、ローレシアにレベルをリセットされた後は、レベル1で体力が650あった。現在レベル7で1020だ。

 なんだろう?力をセーブされた後の方が数値の伸びが高い気がする。

 現在、毎朝ルシルと稽古しているが、身体強化魔法を使いルシルと対等に戦えるが、もし魔法を使わなければルシルの70%程の力しか無さそうだ。

 まあ、ルシルは精霊なので人間である僕より、強くて当たり前なのだが、邪竜討伐の時は僕の方が上だった気がするのでなんか悔しい。

 そう言えばスキルはまるっきり変わって居ない。本来、スキルはレベルが上がると生えるらしいが、僕のスキルはレベル1に下がっても消えて無かった。一度覚えたスキルはレベルが下がっても消えない様だ。と言うか、通常レベルが下がると言う事があり得ないのだろう。

 さて、これからの方針だが、やはりレベル上げは必須だ。せめて100位には上げて置きたい。体力はこれ以上上がっても上がらなくても、強さにはあまり関係ない様だ。と言うかステータスは稽古で補える。

 多分、ブラスマイヤーが稽古をずっと続けたのは、これを僕に教える為だったのでは無いかと今では思う。レベル1だろうがレベル1000だろうが、稽古で最強は目指せる。

 逆に言うとあまりレベルが高いと日常生活に支障をきたす事がある。ここから導き出される答えは、人間のままでも神を超える力を得られると言う事だ。

 現状僕は神になりたい訳では無いので、神に近づく行為は避けて、家族を守る力を得る事に集中したいと思っている。

 話は変わるが、コピー竜泉酒に時越えの魔法を1000年かけたが味は変わらなかった。1万年で掛けたら腐った。やはり古竜で無いと竜泉酒は作れないらしい。まあ、コピー竜泉酒でも十分美味しいので家族で呑む分には問題無いだろう。販売する訳じゃ無いしね。

 そう言えば最近ドラゴン肉食べて無いな。まだストレージにトン単位で残っているから、今日の夕食に出そう。

 翌日は稽古の後、帝国に飛び、『緋色の風』と合流する。

「調子はどうだ?」

「昨日はフォレストボアを10匹とオークを20匹狩ったよ。途中でヒルダがダウンしちゃってね。」

 やはり、レーネが探知に集中するとヒルダにしわ寄せが行く様だな。もう一枚魔法か剣士が欲しい所だ。

「リオンは攻撃魔法は一切使えないのか?」

「いや、初級魔法なら使えない事は無いけど。」

「だったらエアカッターだけでも覚えたらどうだ?指揮が足止めするのは効率が良いぞ。」

「確かに、そうだね。練習してみるよ。それから、この間貰った本。レーネに貸しても構わないかな?」

「構わないって言うか、まだあるからレーネにも上げようか?」

 僕は王国の魔法書を翻訳した物をレーネに渡す。

「それ、凄いよ。魔法学院では教えて貰えない事が沢山載ってる。レーネが読めば、すぐにランクアップ出来るんじゃないかな?」

 どうやら2人は魔法学院を卒業しているみたいだ。

「ところで、今日の獲物はどうする?」

 シンが焦れたように聞いて来る。

「フォレストボアより強くて、レッドボアより弱い魔物で、高く売れる魔物って居ないのか?」

「難しい注文だな。そうそう都合の良い魔物は、あ、探知持ちなら行けるかもしれないな。ブラックサーペントはどうだろう?一応Bランクの魔物だが、攻撃力はレッドボアより低い。問題は、レアな魔物なので見つけにくいって所だ。」

「ほう?面白そうだな。じゃあ、今日はそのブラックサーペントを討伐しよう。」

「となると北だな。今、東西南はボアとゴブリンが大量に出ているからな。ブラックサーペントはボアと相性が悪い。代わりにベア系の魔物と共存している。」

「ベア系の魔物は高く売れないのか?」

「そこそこの値段は付くが、同じ強さならフォレストボアの方がコスパは良いって感じかな。魔石と毛皮は高いが肉が安いんだ。」

「なるほど、じゃあ、ベアを狩りつつブラックサーペントを探そう。」

 シンを先頭に北門へ向かう。

 北門を出て、すぐに街道を外れ北西に進む。どうやら、街道の先に村があるらしく、街道沿いには魔物が少ないのだそうだ。多分定期討伐が行われているのだろう。北西には冒険者が結構入っている様で、獣道の様な道が出来ている。そこを20分程進んだ。

「さて、この辺からブラックベアが出現するぞ。フォーメーションを組んで進む事になる。エイジとレーネは探知を頼む。」

「ブラックサーペントは奥か?」

「いや、ブラックベアとブラックサーペントは共存している。ベアを狩って居れば出て来るぞ。」

「解った。いつも通り、最初は僕が指示を出す。後半はリオン、頼むぞ。」

 ブラックサーペント。弱いとは言えBランクだ、気を付けないとこの間の二の舞になるぞ。

 サーチを展開すると大型の魔物の反応が幾つかある。多分ブラックベアだろう。群れて無いのは都合が良い。各個撃破して行こう。

「ちなみにブラックベアのランクは?」

「Cランクです。たまにBランクのレッドベアが出る事がありますので気を付けて下さい。」

「ん?ちょっと待って。ブラックの上がレッドなのか?」

「基本そうですね。ブラックサーペントの上はレッドサーペントになります。」

「でも、ドラゴンはレッドドラゴンの上がブラックドラゴンだよな?」

「ドラゴンの生態はあまり詳しい事が判明していないんですよ。なにしろ一番弱いグリーンドラゴンでさえ10年に一度位しか討伐されないですし、レッドドラゴン以上は災害級と呼ばれ、軍隊が出動する事案ですからね。」

 あれ?ここ2年半で3匹ドラゴン倒してますけど。邪竜も入れれば4匹だ。

「まあ、いいや。左からベアが来るぞ。レーネは足止め、リオンは目を狙ってみろ。足が止まったらヒルダが抑え込む、ベアの武器は爪だ、それだけ気を付ければ良い。シンは首か目を狙え。」

 2分程でベアが出て来る。思ったより小さい。もこもこしていて、まるで黒いパンダだ。あれ?前に狩った記憶があるぞ。

 危なげなく1匹目のブラックベアを倒した。どうやら、Cランクは余裕の様だ。CとBの差が結構ある様だな。そう言えばギルドの試験もBから変わるって言ってたな。

 その後も他の魔物は無視してブラックベアを討伐して行く。どうやら北の森は他の森とは生態系が大きく違う様で、見た事の無い魔物が多い。

 4匹目のベアを倒した後、大きな反応がサーチに掛かる。これがブラックサーペントか?

 って言うか、ブラックサーペントも前に狩った事がある様な気がする。

「さて、お待ちかねのブラックサーペントが出たぞ。サーペントは蛇の魔物だ。足が無いので今までの戦法が使えない。そこで、正面からヒルダがサーペントの突進を止める。奴の武器は牙なので噛みつきしか攻撃手段が無いからな。動きが止まったらレーネがバインドかパラライズを掛ける。後はシンが首を刈るか心臓を突けば終わりだ。」

 ヒルダを先頭に、奥へと進む。ブラックサーペントまでの距離は15メートルと言った所だ。

 慎重に進むヒルダ。だが、相手は既にこちらを察知している。蛇だからな。熱感知能力を持っていてもおかしくない。

 あと7メートルと言った所でやっとヒルダが、ブラックサーペントの姿を捉える。右手を挙げて進行を止める。ブラックサーペントはこちらにスルスルと向かって来ている。

 ブラックサーペントは全長8メートル位の蛇だ。一番太い鎌首部分で直径30センチ位だろうか?徐々にスピードを上げてこちらに突進してくる。

 あと2メートルと言った所でサーペントがジャンプする。ヒルダは盾で叩き落す様にサーペントをはじき返した。そこへレーネのバインドが掛かる。バインドは格上だと弾かれる可能性もあるのだが、サーペントがヒルダに気を取られて居たのが幸いした。シンがゆっくり近づき、首を落とす。

「悪く無いな。レッドボアの教訓が生きている様だ。」

 その後1匹のブラックサーペントを倒し、リオンと指揮を交代する。そして後半戦でも1匹ブラックサーペントを倒した。

 今日の成果はブラックサーペント3匹とブラックベア27匹だ。

 ブラックサーペントは1匹で金貨15枚になる。これだけで金貨45枚だ。そしてブラックベアが金貨4枚になった。27匹で金貨108枚だ。併せて金貨153枚。一人頭金貨30枚と銀貨6枚だ。日本円で306万円とか、メンバーたちの金銭感覚が狂わなければ良いが。

 ヒルダは怖いと言いながらすぐにカードに貯金していた。確かに大金を持ち歩くのは怖いかもね。
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