上 下
147 / 308

147

しおりを挟む
 今日は稽古の後、冒険者ギルドでストレージの魔物を白金貨2枚分だけ換金する。白金貨は使いづらいので金貨で200枚貰った。その後アスアスラの所へ行く。現在アスアスラは妊娠の為、冒険者は休業中だ。家に居るのは解って居る。この時間だとルーラは教会に行っている。

 アスアスラに麻袋を渡し、足りなくなったら言ってくれと言うと。これでも蓄えは結構あるんですよ。と笑っていた。どうやら契約を結んだあと、妊娠する事を視野に入れて貯金をしていたらしい。

 最近の事を話そうとしたが、上手く話せる自信がなかったので止めた。アスアスラが一方的に話をするのを聞いていた。午後になるとルーラが帰って来る。魔法と剣の稽古を一緒にする。

 その後3人で一緒に風呂に入り、食事をしてから帰る。時間は4時、帰って子供たちと遊び、風呂に入る。夕食は済ませて来たと言い。お茶を貰い応接室で飲んで時間を潰す。

 翌日帝国のハンターギルドに飛び、『緋色の風』の溜まり場に合流する。なんでも東の森でCランクパーティーの『ブラックタイガー』がレッドボアに遭遇して逃げ帰ったとギルドで話題になって居るらしい。

 ちょっと待て、ブラックタイガーってエビじゃね?なんで寄りにもよってパーティ―名がエビ?腹筋が崩壊しそうになるのを堪えるが。よく考えたらこの世界にブラックタイガーって言う名のエビは居ないんだよな。

「なぁ、オークより金になる魔物って知ってるか?」

「オークはDランクの魔物です。うちみたいなFランクパーティーでは、たまたま1匹退治できればラッキーと言う位ですね。」

「僕は昨日Eランクになったんだけど、僕1人じゃ意味が無いのかな?」

「あ、俺もEランクだよ。あと一人EランクになればEランクパーティーに昇格出来るな。」

 シンがそう言った。どうやらシンもEランクらしい。

「レッドボアってのは儲かるのか?」

「儲かりますよ。Bランクの魔物で、魔石と肉、それに毛皮が素材として高く売れます。1頭で金貨10枚になりますね。」

「ほう?1頭で金貨10枚は美味しいな。狙うか?」

「流石にBランクはきついですよ。狙うならCランクのフォレストボアにしましょう。フォレストボアでも1頭で金貨5枚になりますよ。」

「じゃあ、そのボアを狙いつつオークも狩るって方針で良いか?」

「東の森に行く気ですか?」

「怖いか?」

「多少は。」

 正直なのは悪い事じゃ無い。それに恐怖感を感じるのも生き残る上では重要だ。

 5人は東門へ向かった。

 東門から、東の森までは40分位かかる。その間に昨日の事をリオンに聞いて置く事にする。

「昨日はどうだった?」

「レーネがかなり頑張ってくれたので、1日でオーク27匹行けました。」

「ほう?それは凄いな、ヒルダはどうだ?」

「ヒルダの盾役もだいぶ動きが良くなって来ています。状況判断が的確になって来ていますし。自分で獲物に止めを刺す事も多くなって来ています。」

「ふむ、じゃあヒルダにEランク試験を受けさせても良いかもしれないね。」

「そうですね、レーネも昇級出来そうですし、僕だけが取り残されそうです。」

 確かに神官はなぁ、回復職だし。教えているのは指揮だからなぁ。ランクアップに必要な技術を教えにくい職業なんだよね。

「ちなみに神官の昇級試験ってどんな内容なんだ?」

「基本、魔法職と一緒です。魔法を撃って、その発動までの時間と、威力を見ます。」

「それはファイヤーボールでも良いのか?」

「そうですね。魔法職は一括りにされていますから、魔法なら何でも良いはずです。」

 それなら、やりようはありそうだ。ストレージから1冊の本を取り出して、リオンに渡した。リリに渡したのと同じ王国の魔法書を翻訳した物だ。

「時間がある時に、これを読んでみて下さい。上手くハマればランクアップに役立ちますよ。」

 そんな事を話しながら歩いていると、最初の獲物を見つけた。オークだ。

「右手にオークが居る。動いていないからこちらから仕掛けに行くぞ。」

 森に分け入ると、オークの姿が見える。割と浅い位置に居るな。これは奥にもっと強い魔物が居るんじゃないか?

 オークをサクッと倒し、更に進む。またオークの反応がある。

「今度は正面だ。」

 僕の指揮に、メンバーはスムーズにフォーメーションを変えながら動く。ほう?なかなか育って来たな。

 2匹目のオークを倒し、マジックバッグに仕舞った時に、オークより大きな反応が見つかる。

「やや右手、オークより大きめの反応。多分フォレストボアだと思う。基本の作戦はオークと一緒だ。」

 フォレストボアはオークよりスピードが速い。

「思ったより早いぞ。レーネ魔法を撃つタイミングを間違えるなよ。ヒルダは吹き飛ばされない様に気を付けて。シンは切るんじゃなくて突け!」

 指示が終わると同時にフォレストボアが突進して来た。レーネの魔法を信じて無い訳では無いが、僕も魔法を撃つ。足を刈られたフォレストボアが頭から地面に突っ込み転がる。ヒルダがガツンと受け止めて、シンが首を剣で貫いた。

 良い連携だ。FランクパーティーがCランクの魔物に完勝だ。

「十分行けるな。今日は稼ぐぞ!」

 そう言うと、おおと言う声が上がった。

 更に奥へ進むとやはりフォレストボアの反応が多い。どうやらボアの数が増えていて、オークが浅い位置に追いやられている様だ。

 流石に2匹同時は厳しいだろう。1匹ずつ当たる様に調整する。レーネも探知を使っているはずなので、僕が、どう言う指揮をしているか理解していると良いのだが、どうだろう?

 場所的な物かもしれないが、オークとフォレストボアが混じって出て来る。今日はボアに絞りたいのでもう少し、奥へ進むとしよう。

 若干奥へ進むとオークの気配が消え、ボアの気配が濃くなる。2時間で8匹のフォレストボアと6匹のオークを狩った。

 さて、後半はリオンに指揮を任せて大丈夫かな?そんな事を考えていると、フォレストボアより強い反応が引っかかる。レーネがこっちを向いた。目が合う。

「皆、聞いてくれ、おそらくだが、レッドボアと見られる反応がある。戦うかどうかは皆の判断に任せる。基本の対処はフォレストボアと変わらない。どうする?」

 4人が顔を見合わせている。

「エイジが居る今なら戦えるんじゃ無いか?4人だけなら逃げる所だが、今日はエイジが居るからな。」

 シンがそう言うと皆も頷いている。

「って言う事で、指揮を頼む、エイジ!」

「解った。任せろ。反応は正面やや左だ。」

 そう言うとフォーメーションが綺麗に完成する。

 5メートル程前進するとレッドボアがこちらに気付く。突進を始めるレッドボア。

「来るぞ。魔法準備。」

 スピードはフォレストボアとあまり変わらない。ただ、でかい。

 僕とレーネが同時にエアカッターを撃つ。レーネの魔法は弾かれたが、僕の魔法はレッドボアの足を綺麗に刈る。

 バランスを崩して横倒しになり、滑って来るレッドボアをヒルダが抑え込む、だが、巨大過ぎて力負けしている。不味いな。

 シンが飛び掛かり、首を剣で突くが致命傷には至らなかった。流石はBランクと言った所か。

「落ち着け。ヒルダはシールドバッシュで頭に攻撃、その後シンはもう一度同じ場所を突け。」

 ヒルダが頭に攻撃する事で頭が若干後ろに逸れる。いわゆる顎が上がった状態だ、これなら剣も通りやすくなる。シンの剣が今度はレッドボアの首を貫いた。

 このパーティーの実力だと、こんな物かな。

 シンとヒルダは息が上がっている。不味いな、他のボアが集まり出しているぞ。逃げるか?

「皆、ゆっくり後退だ。まだレッドボアは早かった様だ。」

 レーネが素早くレッドボアをマジックバッグに仕舞う。他のメンバーはゆっくりと後退を始めている。だが、後ろからも魔物は来てるんだよね。

「レッドボアは決して倒せない相手では無い。だが、時間を掛け過ぎた。他の魔物が集まって来ている。」

 僕はサーチで魔物の薄い場所を探す。

「右手だ、魔物が少ない。強行突破する。付いて来いよ!」

 僕は敵にスローを掛けながら味方にクイックを掛ける。なんとか、安全地帯までパーティーを導いた。

「とりあえず、逃げ切れたな。さて、ここからどうする?」

「レッドボアはBランクの魔物だからな。俺達にはまだ早いって事だろう。だが、フォレストボアなら狩れる事が解ったのは収穫だ。」

 お?死にかけたのに前向きだな。

「と言う事で、残りの時間でもう少しフォレストボアの狩り方を教えて貰えるか?」

「構わんが、後半は指揮をリオン、探知をレーネに任せたい。僕はサポートに回ろう。それで良いか?」

「解った。それで行こう。」

 結局、後半戦でフォレストボアを4匹。オークを5匹狩った。連携は出来ているし、フォレストボアまでなら危ない場面も無かった。やはり、Bランクの魔物ってのは凄いんだな。

 今日の成果はレッドボア1、フォレストボア12、オークが11だ。金貨92枚になる。一人頭金貨18枚と銀貨4枚だ。日本円にして184万円。

 ヒルダが分配の時震えていた。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...