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 ルシルの子供シルフィーヌが生まれて、数日後、ついにリリが負けた。勝ったのはサム。サムは参謀役だけあって、戦略が上手い。模擬戦と実戦の違いにいち早く気が付き、リリの攻略のみに焦点を当て、研究したのだろう。

 予定通り半年だったな。リリは悔しそうだったが、僕に負け慣れているので、そう悲壮な感じでは無い。一方の4人組の方が驚きでパニくっている。

「さあ、リリに勝ったんだから、4人共特待生になるんだぞ。」

「えー、特待生になったら道場に来れなくなりますよ。」

「リリは週に1回は来てるぞ。」

「私たちにもそうしろと?」

「別に来たくないなら来なくても良いが?」

「来ます来ます。」

「週一でもちゃんと強くしてやるから心配するな。それより学院を何とかして欲しい。これはリリにも言ってあるのだが、間違いだらけの学院の魔法を変えて欲しいんだ。」

「それは私たちを学院に送り込むって言う風に考えれば良いのでしょうか?」

「まあ、そうだな。5人も異端児が居て、同じ理論を持っていれば、間違っているのがどっちか、学院の教師たちにも解るだろう。」

「なるほど、それが目的で私たちを学院に行かせたがったのですね?」

「そう言う事だ。幸い、師範達が仕上がって来たので、道場は安心できるレベルになった。思い切って学院で大暴れして来い。」

「解りました、大暴れして退学になったら先生が責任を取ってくれるって事ですね?」

 責任って何だ?

「まあ、何でも良いから頑張って来い。」

 こうして4人を特待生として学院へ送り込んだ。まあ、リリの話だとリリ一人でも学院は扱いに困っているそうだ。更に4人増えれば、カリキュラムその物の見直しが入るだろう。

 そうそう、そう言えば子供達から3人、門下生に無償で引き上げた。3人は読み書きが出来ると言うので教科書を与えた。今は教科書を読んで訓練しているが、いずれ師範と同レベルで稽古が出来る様になるだろう。

 これが切欠かどうか解らないが子供たちが俄然やる気を出している。うかうかしていると負けちゃうよ。そこの門下生君。

 子供たちの人数が11人になった事で、今までより若干レベルを下げて、一番下の子に合わせる様にした。すると不思議な物で、今まで目立たなかった子が急に伸びたりするんだよね。やはり上が抜けると言うのは意味がある様だ。

 ちなみに師範の2人は、現状ではベル達4人と同レベルだが、あと1か月で、もう一段上に持って行くつもりだ。そこで一旦、特訓は終わりとする。他の門下生やリリ達より先に魔法の効率化を叩き込むつもりだ。これを会得すれば、帝国ではほぼ無敵と言って良いレベルだ。後は自分で勉強も出来るだろう。

 師範が育てば、門下生のレベルも上がるだろう。僕の帝国での役割も一区切りつく。

 さて、次は何をやろうかな?魔道具屋でもやるかな?

 王都の自宅へ戻る。子供たちの顔を見てホッとしていると、セリーから呼ばれた。応接室に一緒に行く。

「どうした?何かあったのか?」

「ええ、実は昨日うちのメイドがあなたを商店街で見かけたそうです。」

 ん?昨日?商店街?そう言えばアスアスラとルーラと3人で行ったな・・・

「例のエルフの女性と子供を連れていたそうで、どう言う事か説明して頂けるんでしょうね?」

「あー、特に意味は無いよ。彼女は冒険者だし、ほら、近所の子供と一緒に買い物に来てたんだよ。たまたま会っただけだよ。」

「その子はあなたの子供ですか?」

「はい?なんでそうなる?」

「メイドの話によるとその子はあなたの事をパパと呼んでいたそうです。」

「あのな、ルーラ。その子の名前だが、あの子は5歳だぞもうすぐ6歳になる。僕とアスアスラが出会ったのは1年前だ。計算すれば解るだろう?」

「呼び捨てなのですね。解りましたあなたとエルフが親密なのは良く解りました。と言う事は6年も前からそう言う関係だったと言う事になりますね。」

「あの、冷静に考えて下さい。僕は現在17歳です。流石に11歳の時の子供はあり得ないでしょう?」

「ふむ、とするとエルフの子は成長が早いとか?」

「いやいや、だから、僕の子だって言う所が間違いなんですよ。」

「じゃあ、なんで、その子はあなたをパパと呼ぶのですか?」

「エルフと言うのは血縁に関係なく集落単位で家族を形成するらしい。アスアスラは孤児だったルーラを引き取った。だから彼女はママと呼ばれている。彼女と仲が良い僕は自然とパパと呼ばれる様になった。ただそれだけの話だよ。」

「なるほど、つまり、エルフとあなたは仲が良いと?」

 なんじゃ、その飛躍した考え方は?

「いや、悪くは無いが、普通に心配してたまに見に行く程度だよ。」

 セリーの目がジト目になっている。

「あなた。今なら謝れば許してあげても良いですよ。」

「御免なさい。」

「やっぱり、そう言う関係だったんですね?」

 あ、謀ったな!

「3人共妊娠していたからな、寂しかったんだよ。」

「毎日添い寝してたじゃないですか?」

「男には我慢できない夜があるんだよ。」

「それでライザにまで手を出したと?」

「へ?なんで知ってるの?」

「今のは冗談で言ったのですが、どうやらお仕置きが必要な様ですね。」

 2度も謀ったな!!

「アリアナとルシルには黙ってて上げます。しかし、暫くは夜の外出は禁止させて頂きます。私が、休みの日も添い寝しますので、そのつもりで。」

 あれ?セリーってそう言うキャラだったっけ?まあ、ライザとは手を切るつもりだったから良いが、アスアスラに会えないのは辛いな。

 翌日、朝にアスアスラに会いに行き、嫁にバレたので暫くは夜は会えないと言ったら。昼間なら会えるんですね?と聞かれた。確かに昼間なら会えなくはない。ん?昼間っからするつもりか?

 まあ、良い。道場が暇なときは会いに行こう。

 さて、1か月が経過し、ルシルが稽古に復帰した。1日2時間しか参加出来ないので実質24時間しか使えない。前は48時間位稽古していたので一気に伸びたのだが、さて、産後のルシルはどうだろう。

 正直最初の12時間は皆に着いて行けなかった。だが、後半からコツを掴んだのか、徐々に皆のペースについて来る様になった。流石は戦闘種族。

 初日はそんな感じだったが2日目からは、もう皆と同じレベルで戦っている。ルシルが凄いのか、僕たちが進歩していないのか?

 ブラスマイヤーに聞いてみた。僕らはこれ以上強くならないのか?答えは曖昧だった。既にこの世界では最強だ。これを超える敵が出て来ないと強くなる方法が解らない。

 どう言う事?

 この世界最強って事は、神であるブラスマイヤーを越えているって事かな?だとすれば、ブラスマイヤーに師事してもこれ以上は強くなれないって事になるよね?

 まあ、要はこれ以上強くなっても意味は無いって事なのかな?

 しかし、僕にルシル、ベルクロス、竜王、ライザ、そしてブラスマイヤーと6人も最強が居るって変じゃない?

 そう言えば邪竜ガンドロスの復活って何時だっけ?え?心配するな、復活してからでも間に合うって?お前も忘れてんじゃねぇか。

 なんだ、この最強軍団。って言うか、この世最強がうちの庭に集まってて大丈夫なの?

 まあ、良い。最近は稽古にも慣れて昼寝の必要が無くなった。さっさと地上に出て、帝国の道場へ転移する。

 今日も子供たちに稽古を付ける。そう言えば人数減ったから少し補充しても良いんだけど、最近道場を覗きに来る子供居ないんだよね。一時期14人で固定していたから皆諦めたのかな?それともこの辺の子供って少ないのか?

「なあ、お前らの友達で道場に遊びに来たいって子居ないのか?」

「ああ、僕らが強くなっちゃったから、最近一緒に遊んで無いんだ。」

 あら?子供たちの交友関係を壊しちゃったか?

「強くなりたいって子が居たら連れて来ても良いぞ。あまり多いと困るけど。」

「ん~、聞いてみるよ。」

 ここに集まっている子は比較的賢い子達だ、流石に魔法の理論を覚えられない子には教えても意味が無いし、教わるのも苦痛だろう。

 まあ、最悪11人でも構わない。この子たちの中から抜ける子が出て来たら改めて考えても遅くは無い。

 さて、子供組から抜けた特待生3人は、まだ抜けてない子供たちに時々アドバイスをしている様だ。更には、まだ初級の門下生からも頼られている。良い傾向だ。

 師範達も既に完成形になりつつある。教え方も僕に似て来た。おかげで週に1日の休みが2日に増えた。
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