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「そう言えば、お前たち、学院に行かなくて大丈夫なのか?」

「一般生徒は試験さえ受けて居れば大丈夫ですよ。特待生は毎日授業に出ないと煩いですけどね。」

 そう言う物なのか?

 さて、授業を始めようかと思った時、リリが現れた。

「あれ?学院は?」

「先生。今日は休日ですよ。」

 ん?そう言えば、皆私服だ。なんで今まで気が付かなかったんだ?

「だいぶ道場も出来てきましたね。そろそろ生徒を集めないと行けませんね。」

「生徒なら居るぞ。ほら。」

 そう言って4人の方を振り返る。

「あら、あなたたち学院の?」

「リリルアーナ様おはようございます。」

「同じ学年なんだから様は要らないわよ。」

 そうは言っても男爵家の娘にとって侯爵の令嬢は特別な存在だろう。リリよ、無茶ぶりは可哀そうだぞ。

「そうだリリ。これから中級魔法を教える所なんだが、見本を見せてくれないか?リリが見本を見せて僕が解説すれば手っ取り早いだろう?」

「良いですけど、何から行きます?」

「まずはファイヤーストームだ。中級魔法の代表だな。」

 僕の解説に合わせてリリが魔法を発動する。お?前より発動が早くなったか?

「見て解ると思うが、この魔法は火魔法と風魔法を同時に使っている。同じ要領で土魔法と風魔法を合わせるとサンドストーム。」

 今度はリリがサンドストームを放つ。

「そして水魔法と火魔法の掛け合わせでアイスランス。」

「え?なんで水と火で氷魔法なんですか?」

 サムが素っ頓狂な声を上げた。

「まず最初に、中級魔法が2属性の魔法の組み合わせって言うのは理解出来たか?」

「はい、2種類の魔法を同時に使う事で威力が上がっているのは解りました。」

「火魔法と言うのは実は温度を操る魔法なんだ。同じファイヤーボールでも温度が違うと威力も違う。温度を上げる事が出来るなら、下げる事も出来るよね?水の温度をどんどん下げて行くとどうなる?」

「凍ります。」

「リリも最初はこの理論には苦労したみたいだから、皆も慌てなくて良いぞ。」

「先生。出来ればそれは内緒で。」

 リリが赤くなっている。

 まずは理論から入った方が良さそうだ。この後2時間程掛けて、中級魔法の理論の勉強をする。時々リリに実際に魔法を使って貰ったりしながらの授業だったので、皆、退屈せずに集中出来た様だ。

「さて、中級魔法の理論を勉強した所で、教科書を読んでみてくれ。多分、今まで解らなかった部分が理解できるようになっているはずだ。」

「えっと、教科書は家に置いて来ましたけど?」

「ああ、それで構わない。寝る前にでも読んでくれ。」

「今日は、この後どうするんですか?」

「これから1時間ばかりリリに魔法を教える。皆にも見ていて欲しい。きっとヒントになる部分が多いはずだ。」

 リリは自分の話になって戸惑っている。まさか稽古を付けて貰えるとは思って居なかったのかもしれない。

 武舞台に上がり、リリに今までの成果を見せて貰う。リリは上級魔法まで使えるが対人戦で上級魔法は意味がない。意味があるのはマルチタスクの方だろう。さて、幾つまで同時に魔法を操れるかな?

「対人戦形式で行くぞ。殺す気で来い。」

 驚く事にリリは6段階までマルチタスクを使用してくる。更に、こちらの攻撃もしっかりと打ち消している。悪く無い仕上がりだ。そろそろクロックアップを教えても良いかもな。

 ベルたちや子供たちは唖然とした顔で、模擬戦を見ている。おいおい、ボーっとして無いで学べよ。

 30分程体を動かして終了にする。その後教科書を渡して。

「この教科書を後でじっくり読んでみろ。特に、クロックアップ、高速思考と言うのを覚える事でマルチタスクがよりスムーズになるぞ。そうなると戦い方も変わって来る。」

「解りました。って言うか、この教科書、この道場に入門すると皆貰えるんですか?」

「ああ、全員に配る予定だが?」

「それって、私もうかうかしていられないって事ですよね?」

「どうかな?それに気付く者が何人出るかって話だ。」

 実際問題200冊配って10人が理解出来れば良い方だと考えている。

「でも、そこの4人はこの教科書に沿って勉強してるんですよね?」

「そうなるな。」

「私も週に1度は顔を出す事にします。」

「学院は大丈夫なのか?」

「学院より大事な事です。」

 ベルたち4人はこのやり取りが理解出来て居ない様だ。

「リリはね、君たち4人に脅威を感じているらしいよ。」

「え?なんで?あんなに強いのに?」

「半年後には追い付いているさ。」

「え、え~!」

「さて、今日はここまでだ。家で教科書をじっくり読めよ。それから、ベルたちはたまには学院に顔を出した方が良いぞ。明日は学院へ行け。」

「何でですか?」

「学院に行けば、今の自分の実力が判るぞ。そうだな。週に2回は学院へ行け。他の日はここへ来て良い。」

「解りました。先生がそう言うなら。」

 それから1か月。無事に道場が完成した。門下生はベルたち4人とリリを含めて、50名と言った所だ。相変わらず子供達にも庭は開放している。

 ベルたち4人は週に4日来ているので、1日は師範代わりに門下生の面倒を見させている。これは人に教える事で、自分を振り返る事が出来るからだ。

 週に1時間だけリリが来る。この時は道場中のメンバーが集まって見学をするのが恒例になってしまった。

 なんとか形になって安心したが、門下生50人と言うのは規模が小さい。せめて100名は欲しい所だ。何か実績があれば良いのだが、魔法の道場が初めてなので、大会とかも無いしな、どうしよう?

 さて、話は変わるが、ここの所帝国の魔法道場にかかりっきりだったので、アスアスラの所に行ってない。更に言えば、セリーの妊娠が発覚した。これで妊婦が3人だ。道場も完成したので、週に1日位は休みが欲しい。エルとリアーナは順調に成長している。最近、リアーナにパパと呼ばれてテンションが上がっている。

 相変わらず稽古と食事は家でしているので、嫁たちからの文句は無い。無いのだが、僕はちょっと欲求不満気味だ。こう言う時に他の貴族はどうやって処理しているのだろうか?

 セリーや公爵に聞く訳にも行かず。悶々としている。やはりアスアスラの所へ行くか?

 翌日道場を3時に切り上げて、僕はアスアスラの家に飛んだ。

「随分久しぶりね。忘れられたかと思った。」

「忘れる訳無いだろう。忙しかったんだよ。」

「男はそうやって言い訳をするのね。」

 ん?アスアスラさんが拗ねすねモードに入ってるぞ。これはこれで可愛い。

 そこへルーラがパパ―と叫びながら走って来る。お?少し背が伸びたか?

「風呂に入るか?それとも買い物に行くか?」

「夕食の材料ならたっぷりあります。お風呂にしましょう。」

「わーい!パパとお風呂~」

 魔法でパパっとお風呂の準備をして、皆で入る。うん。はやり落ち着くなぁ。

「で、何が忙しかったんですか?」

「ああ、魔法の道場をね、作ったんだ。」

「今更魔法の道場ですか?」

「ああ、話すと長いが、ちょっと遠い場所でね。魔法が王都より遅れているんだ。」

「魔法の事なら多少ならお手伝い出来ますが?」

「ルーラが居るだろう?アスアスラはここを離れる訳には行かないでしょ?」

「そうですね。」

「ちなみに嫁が全員妊娠中でな。アスアスラは大丈夫だよな?」

「今の所その兆候はないですね。」

 風呂から出てアスアスラの手料理で夕食になる。久しぶりのせいか、腕を上げたのか、妙に美味かった。

 その後少しルーラと遊んで寝かしつける。スリープを掛けて起きない様にしてから、お楽しみタイムだ。何時もより激しかったのかアスアスラが珍しくダウンした。

 翌朝5時にすっきりと目覚めアスアスラに挨拶をしてから家に転移する。

 朝の稽古をこなし、帝国へ転移する。

 道場に集まってる子供たちに魔法理論を解り易く教える。教えた後は実践だ。そうこうしているうちに門下生が集まって来る。基本門下生は課題を与えられていて、それぞれの場所で練習をする。僕は見て回りながら時々アドバイスをする。

 今日はベルたち4人は来ない様だ、学院にちゃんと行って居るだろうか?

 やはり師範が1人欲しいな。師範が居れば、この時間は自由に使える。誰かいないかな?
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