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翌日は稽古の後すぐに帝国へ飛んだ。
帝国の剣技に興味があったからだ。前から気にはなって居たのだが、帝都には剣術道場が多い。これは剣で身を立てる者が多いと言う事になる。
ちなみに、王国には剣術の道場は無い。騎士の家庭は親から剣術を習うのが普通だ。魔法使いには魔術学院がある。庶民が剣で身を立てるには冒険者しか道が無い。
帝都にも魔術学院はあるが、王都のそれとはだいぶ水準が違う様だ。剣術に関しては、帝国ではハンターから騎士と言う道もあると言う。これは剣術道場で騎士の剣を教えているからでは無いかと予想している。
町で情報を集め、一番人気のある道場を教えて貰う。身元バレしない様に変装をする流石に仮面は付けない。
教えて貰った道場に辿り着いたが、看板が出て居ない。壁に剣と盾の絵が彫ってあるだけだ。どうやら道場に名前は無いらしい。
門は開け放してあり、門番も居ない。なのでそのまま中に入ってみる。ちなみに帯刀はしていない。
かなり大きな武舞台があり、その周りには稽古用の人形が立っている。更に、その奥には大きな建物があり。中でも稽古をしている様だ。
大きいな。200人位の門弟が居るのでは無いだろうか?
キョロキョロとしているとガタイの良い男に声を掛けられた。
「なんだ?見学か?」
「あ、はい。王都に来たばかりの田舎者なので、町で一番評判の良い道場を聞いたらここを勧められました。」
「そうか。見てるだけでは退屈だろう?少し打ち合ってみるか?」
「良いのですか?」
「構わん。我が剣術流は来るものを拒まないのが売りだからな。」
ほう?剣術流と言うのが流派なのか?
「ちなみにどんな剣術を教えているのでしょうか?」
「ハンターから騎士まで、ありとあらゆる場面に対応した剣術を教えている。君は普段どんな剣を使っているのかね?」
「僕は一応ハンターです。片手剣をメインに使用しています。」
「なるほど、実践の剣だな。少し見てやろう。模擬戦をするぞ。」
そう言うとガタイの良い人の好さそうな青年が、木刀を投げてよこした。
「模擬戦と言っても試合形式では無い。君が撃ち込んで私が捌く。それで君の実力を確認したい。」
うーん、これはどうしたら良いのだろうか?この人に勝って良い物なのだろうか?
まあ、変装してるしな。この人に勝てばもう少し強そうな人が出来るだろう。
「どうした?準備はしないのか?」
僕はぶらりと右手に剣を下げている。
「あ、準備は出来てますよ。何時でも始めて下さい。」
「ほう?変わった構えだな?自然体と言う奴か?まあ、良い。そっちから仕掛けてくれ。私は受けるだけで手出しはしない。」
じゃあ、お言葉に甘えて。ふらりと体が揺れると同時に1瞬で間を詰めて、相手の木刀を宙に飛ばした。
「え?ちょっと待った。今のは油断した。もう一度頼む。」
いや、何度やっても一緒ですよ。僕の動き見えて無かったでしょ?
仕方が無いのでもう一度木刀を飛ばしてやる。
「す、少し待っててくれ。師範代を呼んで来るから。」
そう言って青年は建物の中に消えて行った。
5分位待っていると何やら数名の男たちがさっきの青年と一緒に出て来た。
「面白い剣術を使うそうだが、何処かで習っていたのか?」
一番背の高い男がそう聞いて来た。年はさっきの青年より若干上だろうか。
「いや、田舎育ちな物で、我流です。魔物を退治している間に覚えた剣ですので、出来ればまともな剣術を習いたくて、こちらにお邪魔しました。」
「なるほど、我流か。それは戦いにくいのも判るな。」
我流が戦いにくい?そんなこと言ってる時点でたかが知れているのがバレるぞ。
「済まんが俺にも見せてくれないかな?もちろんこちらからは攻撃しない。」
そう言って木刀を構える。この人も大した事無さそうだな。どうする?もう少し手っ取り早く一番強い人が出て来ると良いのだが。
対峙した距離は5メートル程、僕は木刀を一切動かさずにゆっくりと相手に近寄る。一歩ずつ殺気を強めながら。あと1メートルを切った所で相手の男が倒れた。
「何をした?」
他の男たちが声を荒げる。
「何もしてませんよ。むしろ、これから攻撃しようと思ってた矢先に倒れてしまいました。」
って言うか、あれだけの殺気に誰も気が付かなかったのか?この道場大丈夫?
あれ?知らない内に今まで居なかったお爺さんが混じっている。む?この人只者じゃ無いな。
「面白い事をするな。高位のハンターか?」
「いえ、王都に来てから登録したのでGランクです。」
「ほう?Gランクハンターとは面白い。」
言葉と同時に殺気が飛んで来たので霧散させた。
「君は若いのに随分と実戦経験が豊富な様だな。」
「まあ、戦わないと死ぬ状況でしたので。」
嘘は言ってない。毎朝の稽古は気を抜いたら即死だ。
「うちの道場を混乱させに来たのか?」
「いえ、違います。騎士の剣と言うのを見たくて見学に来ました。」
「ふむ、見せるのは構わんが、がっかりすると思うぞ。」
「そうなんですか?」
「騎士の剣とは言わば守りの剣だ。お主の様な攻めの剣を極めた物には退屈な物だぞ。」
「騎士の剣の方が上と聞いていたのですが?」
「それは間違いだ。騎士の剣だろうがハンターの剣だろうが強い者は強いし弱い者は弱い。」
「なるほど、解りました。帰ります。お騒がせ致しました。」
お爺さんに礼をしてその場を去る。
どうやら、帝国は剣でも魔法でも王国より遅れている様だ。つまり、武力が低いのだ。それと対等の他に国も似た様な物だろう。だとすれば、戦争であまり人が死なない理由にも納得が行く。
帝国では軍事力が弱い。俄かには信じられないが、魔物と対峙しているハンターの方が強い者が多いのであろう。だから、ハンターから騎士へと言う道が出来たのかもしれない。
何だか消化不良で終わってしまった。僕は子爵邸に歩いて戻る事にした。王国に輸入する製品探しだ。
しかし、いざ探すとなると意外と見つからない物だ。初めて来た時はもっと進んだ都市に見えたんだがな。実際に色々知ってしまうと、なんと言うか背伸びをしている感じだ。産業にしても魔法が発展しなかったから進化するしかなかったのであろう。
良く考えると不思議だ。この世界の空気は魔素が40%を占めている。過去の文明も魔法で栄えた。王国も魔法のお陰で現状を維持している。なのに、この帝国を含む三国は何で魔法が遅れているんだ?
幸いこの国は本が大量に流通している。図書館もある。識字率も高い。ならば歴史書でその謎を探ってみよう。
図書館は国営で使用料は銅貨3枚と安い。中はゆったりと作られていて、紙の本が大量に並んでいる。
僕は歴史書のコーナーで、何冊かそれらしき本を手に取り。椅子にかけてゆっくりと読みふける。
疑問はあっさりと解決した。過去の戦争が原因である。過去の戦争では有能な魔法使いが大量に投入されたらしい。有能であれば有能であるほど前線へ投入される。結果、有能な魔法使いが大量に死亡したのだ。
有能な魔法使いは減り、後世にその魔法を残せなかった。言い換えれば自分の首を自分で閉めたのだ。
この世界で生き残るには魔法が必須だ。それなのに有能な魔法使いを戦争と言う自己満足で浪費したのだ。現在の帝国はそのツケが回って来ているのであろう。
だが、リリの様な先祖返りも時々見られる。まったく希望が無い訳でも無い。
さて、どうする?帝国の魔法使いのレベルを上げるか?でも、それは王国の滅亡へと続いていないだろうか?
「なあ、ブラスマイヤー。僕の存在ってこの世界では完全にイレギュラーだよな?その僕が色々と干渉するのは歴史の改ざんにならないのか?」
「どう考えるかはお主次第だな。歴史と言うのは後世に語られるものだ。今を生きて居る者が考える事では無い。」
「僕が今ここに居る事にも何らかの意味があると?」
「ふむ、結果、どちらかの国が滅んでもそれは歴史の奔流と後世で語られるだけだ。」
確かに僕らが邪竜を倒せなければこの世界は終わる可能性だってある。そう考えれば僕がする事等大した事では無いのかもしれないな。
その後子爵邸でリアンの様子を見てから王国へ転移する。
何気なくセリーに親子3人で風呂に入らないか?と誘ったら。セリーが物凄く嬉しそうだった。
なんだろう最近一人で風呂に入るのが寂しくなって来た。歳のせいか?
帝国の剣技に興味があったからだ。前から気にはなって居たのだが、帝都には剣術道場が多い。これは剣で身を立てる者が多いと言う事になる。
ちなみに、王国には剣術の道場は無い。騎士の家庭は親から剣術を習うのが普通だ。魔法使いには魔術学院がある。庶民が剣で身を立てるには冒険者しか道が無い。
帝都にも魔術学院はあるが、王都のそれとはだいぶ水準が違う様だ。剣術に関しては、帝国ではハンターから騎士と言う道もあると言う。これは剣術道場で騎士の剣を教えているからでは無いかと予想している。
町で情報を集め、一番人気のある道場を教えて貰う。身元バレしない様に変装をする流石に仮面は付けない。
教えて貰った道場に辿り着いたが、看板が出て居ない。壁に剣と盾の絵が彫ってあるだけだ。どうやら道場に名前は無いらしい。
門は開け放してあり、門番も居ない。なのでそのまま中に入ってみる。ちなみに帯刀はしていない。
かなり大きな武舞台があり、その周りには稽古用の人形が立っている。更に、その奥には大きな建物があり。中でも稽古をしている様だ。
大きいな。200人位の門弟が居るのでは無いだろうか?
キョロキョロとしているとガタイの良い男に声を掛けられた。
「なんだ?見学か?」
「あ、はい。王都に来たばかりの田舎者なので、町で一番評判の良い道場を聞いたらここを勧められました。」
「そうか。見てるだけでは退屈だろう?少し打ち合ってみるか?」
「良いのですか?」
「構わん。我が剣術流は来るものを拒まないのが売りだからな。」
ほう?剣術流と言うのが流派なのか?
「ちなみにどんな剣術を教えているのでしょうか?」
「ハンターから騎士まで、ありとあらゆる場面に対応した剣術を教えている。君は普段どんな剣を使っているのかね?」
「僕は一応ハンターです。片手剣をメインに使用しています。」
「なるほど、実践の剣だな。少し見てやろう。模擬戦をするぞ。」
そう言うとガタイの良い人の好さそうな青年が、木刀を投げてよこした。
「模擬戦と言っても試合形式では無い。君が撃ち込んで私が捌く。それで君の実力を確認したい。」
うーん、これはどうしたら良いのだろうか?この人に勝って良い物なのだろうか?
まあ、変装してるしな。この人に勝てばもう少し強そうな人が出来るだろう。
「どうした?準備はしないのか?」
僕はぶらりと右手に剣を下げている。
「あ、準備は出来てますよ。何時でも始めて下さい。」
「ほう?変わった構えだな?自然体と言う奴か?まあ、良い。そっちから仕掛けてくれ。私は受けるだけで手出しはしない。」
じゃあ、お言葉に甘えて。ふらりと体が揺れると同時に1瞬で間を詰めて、相手の木刀を宙に飛ばした。
「え?ちょっと待った。今のは油断した。もう一度頼む。」
いや、何度やっても一緒ですよ。僕の動き見えて無かったでしょ?
仕方が無いのでもう一度木刀を飛ばしてやる。
「す、少し待っててくれ。師範代を呼んで来るから。」
そう言って青年は建物の中に消えて行った。
5分位待っていると何やら数名の男たちがさっきの青年と一緒に出て来た。
「面白い剣術を使うそうだが、何処かで習っていたのか?」
一番背の高い男がそう聞いて来た。年はさっきの青年より若干上だろうか。
「いや、田舎育ちな物で、我流です。魔物を退治している間に覚えた剣ですので、出来ればまともな剣術を習いたくて、こちらにお邪魔しました。」
「なるほど、我流か。それは戦いにくいのも判るな。」
我流が戦いにくい?そんなこと言ってる時点でたかが知れているのがバレるぞ。
「済まんが俺にも見せてくれないかな?もちろんこちらからは攻撃しない。」
そう言って木刀を構える。この人も大した事無さそうだな。どうする?もう少し手っ取り早く一番強い人が出て来ると良いのだが。
対峙した距離は5メートル程、僕は木刀を一切動かさずにゆっくりと相手に近寄る。一歩ずつ殺気を強めながら。あと1メートルを切った所で相手の男が倒れた。
「何をした?」
他の男たちが声を荒げる。
「何もしてませんよ。むしろ、これから攻撃しようと思ってた矢先に倒れてしまいました。」
って言うか、あれだけの殺気に誰も気が付かなかったのか?この道場大丈夫?
あれ?知らない内に今まで居なかったお爺さんが混じっている。む?この人只者じゃ無いな。
「面白い事をするな。高位のハンターか?」
「いえ、王都に来てから登録したのでGランクです。」
「ほう?Gランクハンターとは面白い。」
言葉と同時に殺気が飛んで来たので霧散させた。
「君は若いのに随分と実戦経験が豊富な様だな。」
「まあ、戦わないと死ぬ状況でしたので。」
嘘は言ってない。毎朝の稽古は気を抜いたら即死だ。
「うちの道場を混乱させに来たのか?」
「いえ、違います。騎士の剣と言うのを見たくて見学に来ました。」
「ふむ、見せるのは構わんが、がっかりすると思うぞ。」
「そうなんですか?」
「騎士の剣とは言わば守りの剣だ。お主の様な攻めの剣を極めた物には退屈な物だぞ。」
「騎士の剣の方が上と聞いていたのですが?」
「それは間違いだ。騎士の剣だろうがハンターの剣だろうが強い者は強いし弱い者は弱い。」
「なるほど、解りました。帰ります。お騒がせ致しました。」
お爺さんに礼をしてその場を去る。
どうやら、帝国は剣でも魔法でも王国より遅れている様だ。つまり、武力が低いのだ。それと対等の他に国も似た様な物だろう。だとすれば、戦争であまり人が死なない理由にも納得が行く。
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有能な魔法使いは減り、後世にその魔法を残せなかった。言い換えれば自分の首を自分で閉めたのだ。
この世界で生き残るには魔法が必須だ。それなのに有能な魔法使いを戦争と言う自己満足で浪費したのだ。現在の帝国はそのツケが回って来ているのであろう。
だが、リリの様な先祖返りも時々見られる。まったく希望が無い訳でも無い。
さて、どうする?帝国の魔法使いのレベルを上げるか?でも、それは王国の滅亡へと続いていないだろうか?
「なあ、ブラスマイヤー。僕の存在ってこの世界では完全にイレギュラーだよな?その僕が色々と干渉するのは歴史の改ざんにならないのか?」
「どう考えるかはお主次第だな。歴史と言うのは後世に語られるものだ。今を生きて居る者が考える事では無い。」
「僕が今ここに居る事にも何らかの意味があると?」
「ふむ、結果、どちらかの国が滅んでもそれは歴史の奔流と後世で語られるだけだ。」
確かに僕らが邪竜を倒せなければこの世界は終わる可能性だってある。そう考えれば僕がする事等大した事では無いのかもしれないな。
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