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 困ったな。理と言われても、こっちの世界の理を完全に理解した訳じゃ無いし。理って曖昧な言葉だよね?

 要は異世界のドラゴンだから見た目から何から、こちらのドラゴンとは違うって事だよね?そもそも生物的な観点からして違うならこの地では生きられないはず。場所は違うかもしれないが、心臓や脳に相当する場所はあるはずだ。つまり、弱点は必ずあると言う事になる。

 さっきの攻撃で炎系が効かないのは解った。他の魔法も試してみるか?

 ブリザードやライトニングを撃ってみるが、効果は無い。これは魔法は効かないと考えて良いだろう。だとすると物理攻撃なんだが、外殻が固い魔物の弱点は内臓だよね、やっぱり。

 と言うか、なんか向こうもこっちを攻めあぐねているのが気になるんだよね。お互いにお互いの攻撃が通らないっておかしくない?

 ブラスマイヤーが僕の世界の理がどうのって言っていたが、これと関係あるのかな?

「って言うかさ、このドラゴンの攻撃、こっちには効かないよね?放っておいても大丈夫なんじゃない?」

「儂らには効かんが、王都の建物や一般市民には被害が出るぞ。」

 ん?僕らが強いから攻撃が効かないって事?あれ?これって最強の盾と最強の鉾、ぶつかり合ったらどっちが勝つって奴か?『矛盾』の語源になった故事だよね?この話の結末ってなんだったっけ?

「仕方ない。小僧にはあまり見せたくなかったのじゃが、奥の手をつかうとするかのう。」

 なんだ?竜王の爺さんの奥の手?でも、なんで僕に見せたくないの?

 爺さんが腕を振るうと敵ドラゴンの羽が切り裂かれ、何か体液の様な物が吹き飛んだ。

 お、初めて攻撃が通った。

「何をしたんですか?」

「時空ごと奴を切ったんじゃ。」

「空間を切ったんですか?時空魔法の一種ですか?」

「お主ならそこまで聞けば理論が解るじゃろうて。」

 なるほど、爺さんが僕に見せたくないって言う事は、かなり危険な魔法なんだろうな。だが、理論が解れば真似るのはそう難しくは無い。

「あまり乱発せんでくれよ。次元に穴が空くぞ。」

「それは危険ですね。でも、これって神には効かない魔法ですよね?」

「いや、使い方によっては神にも効果があるぞい。」

 ああ、僕に見せたくないってのは、そっちの意味か?

 まあ、良い。一撃で仕留めれば問題無いだろう。

 空間を切ると言うより、ずらすイメージだな。そうすれば自然とその空間に居る者が切れるって言う感じかな?ならば、ドラゴンを真正面に捉えて、その中心部を縦に直線状に捉えて、左右の空間を、こう、ずらしてあげれば。

 ドラゴンが突然真っ二つに裂けた、断末魔の叫びを上げるが、2つになってもまだ動いている。どんだけ生命力強いんだ?

 だが、それも数十秒、ドラゴンは落下して行く。何とか仕留めた様だ。

 この死体どうしよう?異世界のドラゴンの素材って需要無いよね?肉も食べたくないし。でも、ここに放って置く訳にも行かないし、ストレージの肥やし?

 そんな事を考えていたら、ドラゴンの死体が消えて行く。む?消えた後に何か丸い物が6つほど残っている。その内の2個は半分に割れている。その内部を見て驚く。これって機械じゃ?もしかして、あのドラゴンって、生物じゃ無くてロボット?なるほど、僕の世界の理だ。ブラスマイヤーが言いたかったことをやっと理解した。
 
 しかし、次元を超えて、ロボットを異世界に送り込んで来るとは、相当文明のすすんだ世界って事だよな?この世界、狙われているのか?

「見事じゃった。しかし、その魔法は無闇に使うなよ。それは儂が神を倒すために編み出した魔法じゃ。出来ればブラスマイヤーには見せたくなかった。」

 なるほど、僕に見せたくないってそう言う意味ね。僕が見ればブラスマイヤーも見るもんね。ってどんだけバトルジャンキーなんだ?

 しかし、ルシルとベルクロスは良いとこ無しだな、かなり強くなっているのに活躍できないって可哀そうだな。

 4人で我が家の庭に転移する。ルシルとベルクロスはこれから稽古をするそうだ。やはり、相当悔しかったのだろう。

 僕は疲れたので風呂に入る。って、あれ?なんでライザさん入ってるの?って言うか、メイドさんなんで教えてくれなかったの?

 ライザさんは、中身はともかく体は完全に女性だ。って観察している場合ではない。

「失礼。メイドが君が入っている事を忘れていた様だ。」

「構いませんよ。一緒に入りますか?」

 我が家の風呂は5人位なら一緒に入れる位大きい。

「あー、そう言う分けには行かないんだ。男女は一緒に風呂には入らない。これはこの世界の常識だ。覚えて置いてくれ。」

 そう言って脱衣所に引き返す。ストレージから服を装備して、部屋に戻る。

 なんだろう?ライザの裸が目に焼き付いて離れない。

 そう言えばライザの裸って、例のメイドの裸をスキャンしてコピーした物だよな?って事は、あれはあのメイドの裸でもあるのか?って、何を考えているんだろうか僕は。

 10分ほどするとライザがわざわざ風呂から出た事を知らせてくれた。僕は動揺を悟られない様に返事をし、風呂へ向かった。

 風呂に誰も居ない事を確認してからゆっくりと浸かる。疲れた体が溶けて行く。

 風呂から上がってから応接室で明日の予定を色々と考える。そう言えばリリの家庭教師が2日ほど休みになってしまったな。もう時間も少ないし明日は行かないとな。

 そんな事を考えていると食事の時間になる。相変わらずカオスな食卓が広がる。

 今日はデザートにショートケーキが出た。これは時間がある時に見習い君と研究していた物だ。帝国のカステラをハチミツを抜いて再現したものと生クリームのコラボだ。イチゴが無いので王都で人気の果物を使った。

 評判は上々だ。特に女性陣には受けが良い。周りで見ているメイドたちも興味深々だ。今度はチョコレートを使ったケーキにチャレンジしよう。

 翌朝の稽古は何時もより気合が入っていた。特にルシルとベルクロスは僕を集中的に狙ってる様な気がする。無茶苦茶疲れた。2時間程仮眠を取ってから外に出る。

 その後畑に行って草むしり。久しぶりにスローライフを楽しむ。

 午後は帝国に飛ぶ、2日ぶりの家庭教師だ。なんと驚く事にリリがマルチタスクをマスターしていた。

「驚いたな。入学試験に間に合わないと思ったんだけど。」

「そうなんですか?私は入学試験までにもっと色々教わりたいです。」

「マルチタスクは2個同時で終わりじゃ無いぞ。これから3個4個と同時に発動する魔法を増やして行かないと駄目だ。例えば戦場では常に防御魔法を使いながら行動しなければならない。最低でもマルチタスクは3個は同時に使える様にならないときついぞ。」

「解りました。じゃあ、それをクリアしたら新しい魔法を教えて貰えますか?」

「ああ、考えて置こう。今日はマルチタスクの練習だ。まずは3つにチャレンジだ。」

 結局その日はマルチタスク3個は成功しなかった。頑張り屋で負けず嫌いなリリの事だ、この後も練習を続けて明日にはマスターして居るかもしれない。

 その後は町をぶらつき、色々な物を仕入れてから王国へ戻り、公爵家にお邪魔し、仕入れた物を誰に捌かせるか相談する。

 家に帰ったら風呂だ。ライザが入って居ない事を確認してから入る。

 やっぱりお風呂は一人でゆっくり浸かりたいよね?子供がもう少し大きくなったら一緒に入るんだけど。

 そんな事を考えていたら、風呂場の扉があいた。え?なんでライザさんが入って来るの?止めろよメイド共。

「何してるんですか?ライザさん。」

「この世界の文化を調べていたら、混浴と言う文化があるみたいなので実践してみました。」

 いや、確かにあるにはあるけど。なんでタオルで隠さない?そこは調べて無いんかい?

「あの、僕は既婚者なので、そう言う事をされると嫁に怒られます。」

「ほう?それはどう言う事なのか詳しく説明して貰いたいですね。実に興味深い。」

「いや、そう言う話は風呂の外でしましょう。僕は先に出ますのでごゆっくり。」

 逃げる様に風呂場を後にした。

 あの調子でこの世界に溶け込めるのだろうか?心配だ。
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