転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

文字の大きさ
上 下
100 / 308

100

しおりを挟む
 リリから興味深い話を聞いた。最近帝都にバンパイアが出るそうだ。

「バンパイアってのは種族なのか?」

「いえ、バンパイアは亜人ではありません。アンデットの一種ですね。ただ、知能が高いので無差別に人を襲う存在でもありません。」

「ほう?魔物なのに人を襲わないのか?」

「全く襲わないと言う訳では無いので危険な事には変わりはありません。ただ、今回は多少事情が違う様で、今の所被害者は出ていません。」

「面白いな。で、被害者が出ていないと言う事は、バンパイアを討伐出来ないと言う事になるのかな?」

「いや、バンパイアはアンデットなので見つけ次第討伐対象になります。が、今回、問題のバンパイアが姿を見せないのです。」

「ん?姿を現さないのに何故バンパイアが出ると言う話になったんだ?」

「バンパイアは非常に高度な催眠術を使います。バンパイアに噛まれるとバンパイアになると言う言い伝えはここから来ています。」

「なるほど、催眠術に掛かった人間が出たのか。それも複数。」

「良く解りましたね。その通りです。バンパイアの狙いが解りません。」

「ちなみに催眠術にかかるとどうなるんだ?」

「通常、バンパイアの言いなりになります、が今回の場合は記憶を失っただけで、何かを命令された形跡がありません。」

「ふむ、となるとバンパイアが何か人に知られたくない事を企んでいて、それを目撃したと言うのが一番可能性が高いな。」

「なるほど、辻褄はあってますね。」

「ちなみにバンパイアって強いのか?」

「いえ、バンパイアは基本弱点の多い魔物です。事前に白木の杭または銀の針を用意していればCランクハンターでも倒せます。」

「用意が無い場合は?」

「火魔法で灰まで焼き尽くせば倒せます。」

「この国って魔法使いが少ないんじゃないのか?」

「そうですね。Bランクハンターなら退治は無理でも追い払う事位は出来るそうです。」

 ふむ、バンパイアか、王国に居ない魔物だ、戦ってみたい気もするが、ここで僕が出るのはどうなんだろう?

 その後、リリの家庭教師で、この話はすっかり頭から飛んでいた。

 家庭教師が終わった後、何時もの様に町をぶらつく。モールではなく昔ながらの商店街を今日は見て回る。商店街一つとっても王国とはやはり品揃えが違う。娯楽製品の様な物もあるが、残念ながら使い方が解らない。一応購入して置いて後でリリに使い方を聞いてみるか。

 他にも珍しい果物やナッツ類を購入していく、そう言えばカカオって買えるのかな?まあ、チョコレートは買えたので良いんだけど、カカオがあればココアが飲めるなと思ったので。

 そんな事を考えながら歩いていたら商店街の外れまで来てしまった。ここから戻るのは面倒なので、人目を避けて転移で帰ろうとした。周りを見回したら変な気を感じた。なんだ?

 姿は見えないが気は感じる。何処かで隠れて見ているのか?盗賊?探ってみるが、おかしい。気は感じるのだが場所が特定できない。しかも敵意を感じない。どう言う事だ?僕は商店街の方へ引き返して行く、追って来る訳でも無い。なんなんだ?

 時間が無いので王国へ転移し公爵家にお邪魔する。仕事の話を一通りしてから、家に帰る。

 風呂に入っている時にふと思い出した。あれってバンパイアじゃ?でもあんなところで何をしてたんだ?

 翌日帝都に家庭教師をしに行ったら、リリが興奮していた。

「先生。昨日Aランクハンターがバンパイアに遭遇し返り討ちに会いました。」

「あれ?Bランクハンターでも追い返せる位弱いんじゃなかったか?」

「そうなんです。それで、もしかしたら上位種のバンパイアロードなんじゃ無いかって言う話になっています。」

「バンパイアロード?危険なのか?」

「どうでしょう?基本バンパイアはこちらが手を出さなければ、向こうから襲って来る事はありません。今回もAランクハンターが先に手を出したそうです。」

「ふむ、目的が解らないのが不気味だな。」

「そうですね。」

「ちなみにだが、僕の故郷ではバンパイアは若い純潔の女の子を求めると言われているのだが、実際はどうなんだ?」

「それは若い子が夜遊びをしない様にと言う理由で親が作った作り話と言うのが通説です。」

「となるとだ、バンパイアを退治するのは余計なお世話かな?」

「実際に会って話を聞いてみるのはどうでしょう?」

「ふむ、それも一理あるな。じゃあ、少し自主練してて、ちょっと行って来る。」

「え?居場所に心当たりがあるんですか?」

「うん。まあね。」

 そう言って商店街の外れに転移する。相変わらず気を隠す気は無いらしい。駄々洩れだ。なるほど、気が特定できないのは気が大きすぎて周り中から感じるかららしい。

 バンパイアロード思ったより厄介な相手かもしれない。気の流れを特定し、余計な気は感知しないようにすると、なんとか方向だけは特定出来た。そちらに向かう。

 徐々に気が大きくなる。まるでドラゴンだな。自分の気を押さえられないほど持て余すとは。だが、気のコントロールが出来て無い時点で僕に勝つ事は無理だぞ。

 やがて姿が見えて来る。普通の老紳士に見える。その瞬間気が収まった。

「近づかない様に気を張っていたのだが。鈍感なのか?それとも?」

「どっちだと思う?」

「ふむ、我に何の用だ?」

「目的を聞きたくてね。納得したら帰るよ。」

「納得しなければ?」

「少し長居をさせて貰う事になるかな。」

「面白いな。人間にしては知能が高い。納得するかどうかは解らんが目的はおしえてやろう。消滅だ。」

「消滅?」

「ああ、私はもう800年は生きている。いや、正確には死んでいるのだが、こうして偽りの生を過ごしている。正直飽きたのだよ。しかし、私には自殺は出来ない。そこで、自身を消滅させる儀式を行おうとしている。」

「その儀式ってのは周りに影響は無いのか?」

「無いな。人に迷惑をかけてまでこんな事はせんよ。私が普通のバンパイアなら良かったのだがな、なまじロードにまでなってしまったので、私を倒してくれる様な相手に巡り合わなかったのだよ。」

「僕ならあなたを倒せますよ。と言ったらどうします?」

「儀式にはあと120日かかる。それが本当なら試してみたいところだ。」

「ここは狭い。少し広い所へ移動しましょう。」

 そう言って、帝都の西の草原に転移した。

「ほう?転移魔法を使うか?これは面白い。楽しめそうだ。」

 どうでも良い事だが、バンパイヤの癖に太陽の下でも平気なんだな。

「反撃してくれても構わないよ。バンパイアと戦うのは初めてなんだ、楽しませてくれ。」

 そう言った途端。怒気と言うか殺気の様な物が飛んで来た。恐らく恐怖を具現化した攻撃だろう。だが、あいにくこう言うのは毎日喰らってるので耐性があるのだよ。

 転移を超える速度で相手に近づき、顔面を殴った。頭が爆裂した。うわっ、グロイと思ったが、相手は生きてる。いや死んでるんだったか?再生してくる。

「早いな、見えなかったぞ。」

「ちなみに心臓を抜いても生きてるのか?」

「ああ、その位じゃ死なない。まあ、既に死んでるんだけどな。」

「バンパイアロードの強さってのを見せてくれよ。それが楽しみで戦ってるんだからさ。」

 あり得ない速度で近づき手刀でロードを縦に真っ二つにしてみた。瞬間、2つに分かれた体から黒い槍の様な物が10本位ランダムに襲って来た。面白いが遅いな。躱している間に体が再生している。

 ふむ、不死って言うだけで、ハッキリ言って弱いぞ。つまらないな。

「もう隠し玉は無いよね?そろそろ蹴りを付けて良いかな?」

「お主の様な強者と最後に戦えたのは僥倖。さあ、やってくれ!」

 今度は近づいた瞬間爪を使い細切れにする。再生する前にインフェルノを叩き込む。確か、灰が残ると再生するんだよな?だがバンパイアロードは燃えるどころか蒸発していた。

「物理的にも消滅したな。」

 急いでリリの元へ転移で戻る。

「ただいま。」

「あ、先生。どうなりました?」

「終わったよ。」

「バンパイアの目的って何だったんですか?」

「意外と普通の要件だったよ。生きてる事に疲れたらしい。」

「それって・・・」

「まあ、願いは叶えてやったので騒ぎは収まるだろう。」

 あれ?なんだろう?リリの顔が若干呆れている様に見える。僕、変な事言いました?
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...