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 翌日からベルクロスと対戦形式の稽古をする様になった。いきなり神竜と戦うとかどうなの?次元が違うじゃ無いですか。え?意外に戦えてるって?

 あら?この間まで魔神レベルだったのに?いつの間に僕はこんなに強くなってるんだ?って言うかベルクロスが凹んでますけど大丈夫でしょうか?

 ブラスマイヤーの特訓を24時間受けても外へ出ると2時間しか経って無い。この違和感にもだいぶ慣れたな。

 今日は午前中に農作業を終えてしまおう。そして午後一でプレイースに飛べば、3時くらいには王都に戻れるはずだ。久しぶりに何か料理でもするかな?

 そう言えば、僕の畑のある区画には4つの肥料の山がある。これは少なくなると補充しているので、まず山が無くなる事は無い。だが最近夜中に肥料を持って行く肥料泥棒が現れるらしい。無料で好きな時に好きなだけ持って行って良いと言うのに泥棒ってなんだろう?と思ったらこの肥料を売っているらしい。

 農家の人達はけしからんとご立腹だが、僕は放置している。近い将来この肥料については王都中に広まるだろうし、プレイースで量産している新肥料もある。肥料が売れると言うのは逆に吉報だ。近所の農家の人が僕に盗まれて大丈夫なの?と聞いて来るが、無料ですからね。と答えている。

 まあ、新鮮な野菜が一般家庭に流通するのは悪い事じゃ無いし、豊作が過ぎれば野菜の価格が下落する事は農家なら解っているだろう。それに農地改革の本には他の改革も書かれている。小出しにして行くつもりだが、僕に親切な近所の農家には儲けさせてあげたいと言うのは利己的過ぎるだろうか?

 午後にはプレイースに飛ぶ、最近の人口の推移をグラフにした物をマークに見せて貰う。月に数百人単位で人が増えているが、これは受け入れる物件が間に合わなくて頭打ちしている感じだ。現状新住宅地の建築数が3割。領主館の周りの建築数が4割と言った所だ。これが全部終わる頃には更に新住宅地を確保するつもりだ。

 当初3万人だった人口が既に4万人を超え5万人に迫っている。プレイースにはまだ農地も宅地も余っている状況だ。仕事もある。目標の10万人まではこのペースで行こう。

 そうそう税率だが、暫くは半分にするつもりだ。これで行けるなら、このまま続けるし財政がひっ迫したら改めて考えるつもりだ。マークにそう指示をして置く。

 現在王都の税率は30%これは所得税だ。消費税は無い。プレイースも王都の直轄地だったので30%とされていた。これを暫く15%で試してみるつもりだ。

 税金が安く物価が安い、仕事はあるし家もある。条件は揃えた。後は近隣の町の住人がどう判断するかだな。

 ちなみに南に王都、東には2つの町がある。東の2つの町はプレイースから3日の位置にあり。片方は北東、片方は南東にあり2つの町は半日程で行き来出来るらしい。

 なんか聞いた事の無い伯爵の領地で北東の町はロンダールと言い。主に布の産地として有名らしい。南東の町はロンジームと言いこちらは鉄鉱石がとれるらしい。

 僕なら2つの町を一つに統合するのだが、伯爵は町を2つ持っていると言う事が自慢らしい。まあ、布に鉱山と解り易い産業があるのでそこそこ儲けもあるはずだ。しかし聞いた話では税金がかなり高いらしい。なんでも税率が35%だそうだ。これは地方都市としては異例の高税率だ。

 人口は2つ合わせて7万人あるのだが、人の出入りが激しい事でも有名らしい。最近はここの2つの町からのプレイース流入が多い。

 プレイースの税率引き下げの件はすぐにでも地方に広まるだろう。ますます移住者が増えそうだ。

 家に帰るとまだ3時を少し回った所だ。予定通りだな。さて、何を作ろう?久しぶりの料理だ。

 実は前から食べたいと思って居た料理がある。とんかつだ。だがとんかつにはソースが不可欠。そこで今日はソースを作ろうと思う。

 まず寸胴鍋に玉ねぎやニンジン、セロリなどの香りの強い野菜を入れて行く。ニンニクやショウガなども加え火にかける。かなり大量の砂糖を使う。それから自然の甘みを出すためにトマトや果物も入れて行く。出汁として昆布も多めに入れる。水が鍋の半分くらいになるまで煮込んだら、スパイスと塩を入れる。ここで味が決まるので味見をしながら慎重に入れて行く。スパイスはカレーっぽくならない様に調合すると良い。塩は若干多いかなって言う位入れても大丈夫だ。このままだと色がソースじゃ無いのでカラメルを作り入れる。これを粗目の布で濾す。濾した物を冷やしそこにワインビネガーを入れる。

 熟成が必要なので時越えの魔法を掛ける。2か月位で良いだろう。これで完成だ。ちょっととろみのあるウスターソース?が完成した。

 これにケチャップやマスタード、ゴマペーストを混ぜるととんかつソースになるのだが、他のフライにも使いたいので今回はこれで行く。横で見習い君が真剣にレシピをメモって居る。

 次にトンカツを作る。豚肉によく似た魔物の肉(多分オークかボアだろうな)を厚めにスライスする。筋切をしてから小麦粉をまぶし、卵に潜らせてパン粉を付けて揚げる。バットに網を乗せてその上で油を切る。この時2分位放っておくと中まで熱が回って、柔らかく仕上がる。

 これは簡単だから見習い君でも出来るよね?と言う目で見ると頷いている。なので2枚目からは見習い君に揚げて貰う。

 出来上がったとんかつを2.5センチくらいの幅で切り分けソースをかけて味見。うん。白いご飯が欲しくなる。今度かつ丼も作ろう。

 キャベツが無いので野菜サラダを横に添えて完成だ。見本を1つ作ったら厨房を後にする。これで今夜の夕食はとんかつが出るはずだ。

 風呂に入って応接室で寛ぐ、最近これが日課になってるな。アイスカフェオレが出て来た。解ってるねメイドさん。

 まったりしているとアリアナが入って来た。

「どうした?今日は3人で風呂に入らないのか?」

「はい、ちょっと旦那様にお話がありまして。」

「どうした?珍しく畏まって。」

「実は子供が出来ました。」

「え?」

 ちょっと待て16歳だぞ。16歳で子供、大丈夫だ、ここは異世界、成人しているから21歳で子供が出来たと思えばよい。

「あー、疑う訳じゃないんだが鑑定を掛けても良いか?」

「良いですよ。」

 鑑定を掛けると確かに状態が『妊娠』になっている。

「確かに妊娠しているな。めでたい事だから。ご両親にも報告しないとな。」

「はい、両親も喜んでくれると思います。」

「他の皆は知ってるのか?」

「セリーさんには相談しました。」

「じゃあ、皆にも発表しないとな。」

 しかし、一番回数の少ないアリアナが最初に妊娠するとは解らない物だ。

 その後夕食のとんかつを堪能した後、僕の部屋で緊急会議が開かれた。

 夜の順番をどうするかと言う物だ。セリーとルシルはアリアナに先を越されて焦っているらしい。

「焦ったからって出来るもんじゃ無いだろう?」

「でも、やっぱり子供は欲しいですよ。」

「順番は今まで通りで3人相手して1日休み。これは変えないよ。でないと不公平だろう?」

「でもアリアナは?」

「妊娠していても一緒に寝る権利はあるはずだ。そう言う夫婦の時間も大切だと思うが?」

 と言う僕の主張が通って今まで通りで収まった。実質2謹2休になった訳だ。

 翌日稽古の後、アリアナを連れて馬車でロートス伯爵家へ向かう。披露宴ではそれ程話が出来なかったので、結婚式以来だな。

 12分ほどで伯爵家に着く。門番がアリアナの姿を見て慌てた様子で中へ通してくれる。応接室へ通され、少し待つとロートス伯爵夫妻が現れる。

「随分と急な訪問。何か問題でも?」

「急な訪問になってしまい申し訳ありません。報告がありましてお邪魔した次第です。」

 その後アリアナの口から妊娠の報告をし、大いに喜ばれた。伯爵家は子供が多いらしく、アリアナが一番上で、下に男の子2人と女の子が2人居るらしい。一番下の子はまだ8歳だそうだ。それならばとスライスしたパウンドケーキをお茶菓子としてテーブルに出した。

 アリアナがお姉ちゃんの旦那さんだよと紹介してくれた。子供たちは嬉しそうにパウンドケーキを食べながら挨拶をしてくれた。

 こう言うのもたまには良いな。また遊びに来よう。

 そう言えばアリアナの子供はどう言う立場になるのだろう?セリーが正妻になる訳だから、側室の子供になる訳だ。もし男児だったら爵位を用意する必要があるな。確か侯爵なら幾つか爵位を余分に持てるはずだ。

 そう言えばこの世界には避妊の魔法があるらしい。女性の冒険者等は日常的に使用していると聞くが、貴族の場合はどうなんだろう?

 後でセリーに聞いてみるか。あとルシルの子供ってどう言う扱いをすれば良いんだ?立場的には王様の養女だけど、暗黒竜も爵位を望むのか?その辺も併せて聞くか?

 1時間半程お邪魔して伯爵家を辞した。帰り道アリアナに聞いた話によると、伯爵家は思ったより裕福では無いらしい。伯爵の稼ぎで5人の子供を養っていた訳だからそれもそうか。アリアナが侯爵家に嫁いでかなり生活が楽になったと伯爵がこぼしてたとアリアナ自身が自嘲気味に話してくれた。

 どうやら貴族にも色々あるらしい。
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