上 下
69 / 308

069

しおりを挟む
 サーチを掛け続けているが、魔物が近づく気配は今の所ない。時間もまだ早いので眠くも無い。

「ところで、気絶している4人を転移で運んだのよね?」

「はい、そうですけど?」

「一度転移ってのを経験してみたかったんだけど、気絶している最中とは不覚だったな。」

「うんうん。そうだよね。今度時間があったら転移を体験させてね。」

「解りました。お2人なら何時でも歓迎しますよ。」

「そうか?そう言えば、私たちが気絶している間に変な事はしてないだろうな?」

「しませんって。」

「真面目なんだね。おっぱい位なら触っても良かったのに。」

 おいおい、なんで2人共残念そうな顔してるんだ?

「妻が3人居ますので間に合ってます。」

「そうなんだって、3人?もしかして貴族?」

「あー、この格好をしている時は冒険者です。」

「ねぇ、年上には興味ないの?って言うか私たちって魅力ない?」

「いや、2人共綺麗なお姉さんだと思いますよ。」

「お?もしかしてチャンスあり?」

 どんだけ男に飢えてるんですか?まあ、この世界20歳を超えると行き遅れって言われるらしいからな。20代でSランクだと男も近づき辛いのかもな。

「これ以上妻を増やす予定は無いですよ。」

「愛人枠は空いてないの?」

「クレイトスさんやジェレミーさんは既婚なんですか?」

「あの2人が貴族だったら、飛びついてたかもね。」

「Sランク冒険者なら稼ぎも良いでしょ?」

「今はね。でも将来を考えると、冒険者はあり得ないかな。」

 そう言えば、冒険者は40歳位で引退するって言ってたな。

「最強君は強い上に若い。あと20年は稼げるでしょ?更に貴族なら冒険者引退後も安泰、目の前にこれだけの優良物件がいると、あの2人が霞んじゃうんだよね。」

「お金を持ってるって言う条件なら商人でも良いのでは?」

「悪くは無いけどね。ただ、自分より弱いってのは魅力に欠けるんだよね。」

「女性冒険者って普通はどう言う人と結婚するんですか?」

「一番多いのは同じパーティーの男性かな。一般人は冒険者って言うだけで怖いって言うイメージを持ってる様なので、冒険者同士のカップルは多いわね。」

「ふむ、後はギルドの職員とくっつくケースも多いな。ギルドの職員は元冒険者が多い上に、収入が安定しているからな。」

「お2人はずっと2人でパーティーを組んでいるんですか?」

「ああ、同じ村出身の幼馴染でな。ずっと女2人ってのが不味かったかな。時折今回みたいに臨時パーティーに参加はしているんだが、目ぼしい男は大抵女が居るんだよな。」

「そうそう。やっぱり条件の良い男性は早いもん勝ちって所があるね。」

 ああ、なんだろう。この2人の将来が心配だ。

「お2人共Sランクですよね?その2人より強くて、お金を持っている男性ってかなり限られんじゃありませんか?」

「その通り!そしてその限られた男性が、今目の前に居る。これは落とすっきゃないよね?」

 ミレニアさんまでうんうんと頷いている。

 いやいや、だから僕は女性は間に合ってますって。

「お2人共もっと現実を見た方が良いと思いますよ。」

「まあ、分かっては居るんだけどね。まだ夢を見たい年頃なのさ。」

「いやいや、そんな事言ってたらマジで寂しい老後が待ってますよ。」

「現実を突きつけないでくれたまえ、最強君。私たちだって焦ってるのさ。」

 ホリーさんが芝居の様な口調で言う。

「実際クレイトスはミレニアに気がある様だ。彼は女性に免疫が無さそうだから、ミレニアが迫れば落ちるだろう。彼は真面目だから引退後も堅実な仕事に着くだろう。後はミレニアの覚悟次第と言った所だ。」

 おお、ホリーさんが真面目に語っている。ちゃんと見るべき所は見てる様だ。

「だが、ミレニアは自分が結婚したら、私が一人になってしまう事を心配している。そうやってチャンスを逃すのは愚かな事だと分かっているのに、友を見捨てられない。それがミレニアなのさ。」

「な、何故急に私の話になってるのだ?」

 ミレニアさんが赤くなっている、どうやらまんざらクレイトスに気が無い訳でも無さそうだ。

「ホリーさんっていい女ですね。」

「惚れたかい最強君?」

「ミレニアさんがその気ならホリーさんの面倒は僕が見ても良いですよ。どうします?ミレニアさん。」

「ん?それは愛人にしてくれると言う事で良いのかい?」

「いやいや、責任を持って、ホリーさんの結婚相手を探しますと言う事ですよ。」

「つれないなぁ、最強君。」

 実際ホリーさん位美人でコミュニケーション能力があれば、結婚相手位すぐに見つかりそうだ。たぶん、ミレニアさんが結婚するのを待っていたんだろうな。

「ミレニアはこう見えて、意外に初心なんだよ。だから、周りが動かないと自分では何もできないんだ。出来ればクレイトスから告白する形にしたい。出来るかい?最強君。」

「難しくは無いと思いますよ。ホリーさんがそれで良いのなら。」

「ははは、最強君は意外に女性の心を解ってるね。ますます愛人になりたくなったよ。」

 ミレニアさんは真っ赤になり俯いたっきり黙っている。これはOKサインだよね?

「さて、そろそろ交代の時間だ。作戦は帰り道で決行しよう。」

 ホリーさんがそう言って男性2人を起こしに行った。

 軽い引継ぎをして、熱々のカフェオレ2杯をテーブルに置き。僕はクレイトスさんの寝ていた場所にクリーンを掛けてから横になる。女性陣2人は別のテントだ。

 寝る前にサーチを掛けるが、今の所異変は無い。

 クレイトスさんとミレニアさんをくっつける方法を考えていたら何時の間にか寝ていた様だ。

 朝4時に起こされた。外はまだ暗い。照り焼きサンドとクリームスープで朝食を取り出発の準備をする。テント類は置いて行くらしい。樽の水や食料も殆ど捨てて行く。身軽な状態で、なるべく今日中に王都の近くまで行こうと言う考えらしい。

 5時前には出発した。30分ほどすると周りが明るくなってくる。依頼を失敗と考えているのか、男性陣の口は重い。女性陣は割と元気だ。

「ねぇ、クレイトスさん。冒険者って結婚は遅いんですか?」

「ん?ああ、そうだな。活躍している冒険者程結婚が遅くなる傾向はあるみたいだな。Cランク辺りで生活が出来れば良いと考えている冒険者の方が結婚は早い。」

「それは冒険者が危険な職業だからですか?」

「それもあるが、冒険者は基本パーティー単位で活動するだろう?だから女性との出会いが無いんだ。実際、ギルドの受付嬢と酒場のウエイトレス位しか女性との接点が無いと言う冒険者は多い。」 

「クレイトスさんやジェレミーさんもその口ですか?」

「あはは、その通りだよ。」

 ジェレミーは探索に力を入れているのでこちらの会話の内容までは理解していない様だ。

「女性冒険者は結婚の対象にはならないんですか?」

「いや、そんな事は無いな。冒険者同士の結婚は珍しくない。ただ、女性冒険者の中には、自分は男として扱ってくれと言う者も結構な数居るのも事実だ。」

「ちなみに後ろの女性2人は対象になりますか?」

「2人共美人だからな。こっちが好意を持っても向こうが対象外なんじゃ無いかな?」

「ほう?と言う事はクレイトスさんとしては女性としてみてる訳ですね?ちなみにどっちがタイプですか?」

 そう言ったら急に慌て出した。僕の誘導にまんまと引っ掛かったのに気づいたかな?

「た、タイプとかは分からんが、相性的にはミレニアの方が接しやすいかな。同じ戦士職だしね。」

「昨日の見張りの順番覚えてますか?暇だったので女性陣の話を延々と聞かされたんですよ。」

「それは災難だったな。」

「その中で結婚観の話が出ましてね。クレイトスさんの名前も出たんですよ。」

「俺の?」

「ええ、クレイトスさんは真面目だから有りだそうです。ジェレミーさんはおっさんなので無しと言う事でした。」

「冗談だろ?」

「いや、真面目な話ですよ。何故ミレニアさんがあんな口調で喋るのか解りますか?」

「いや、見当もつかないな。」

「ミレニアさんは男性に免疫が無いので男性とどう喋ったらよいか解らないんですよ。だから男性と同じ口調になってしまう。逆にホリーさんはコミュニケーション能力が高いので誰とでも普通に喋りますよね?」

「お前、若いのに女性に詳しいな。」

「こう見えても妻が3人居ますので。」

「え?マジか?って3人って事は貴族なのか?いや、ですか?」

「今は冒険者ですので普通に喋って良いですよ。」
 
 良い具合に混乱して来たぞ。

「簡潔に言うと、ミレニアさんはああ見えて初心なんです。でもって男性から声を掛けてくれるのを待っています。更に言えばクレイトスさんに好意を持っています。どうすれば良いか解りますよね?」

「それって・・・」

「ミレニアさんをこのまま行き遅れにしちゃって良いんですか?」

「いや、でもな。」

「じゃあ駄目押し。クレイトスさんがミレニアさんに好意を持っている事は全員にバレてますよ。もちろんミレニアさん本人にも。その上でミレニアさんはクレイトスさんは有りだと言って居るんです。」

「俺は不器用だから気の利いた言葉とか知らないぞ。」

「良いんですよ。自分の言葉で普通に話せば。」

 僕はホリーに合図を送って前に呼び出す。代わりにクレイトスを後ろに追いやる。後は2人次第だね。

 その後3時間程歩き危険な地帯を抜けた辺りで休憩を取った。その時には2人はすっかり仲良くなっていた。

 ジェレミーが邪魔しそうになるのをホリーが止めているのがおかしかった。

「おい、なんであの2人がくっ付いているんだよ。お前ら何かしたろう?」

「まあ、おっさんには関係ない事だよ。」

「いやいや、俺とクレイトスはパーティなんだから関係あるだろう?」

 駄目だな空気の読めないおっさんに結婚は無理だ。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...