転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 出発の準備が出来た様なので馬車に向かう。皆、入り口付近に置いてあった荷物を背負う。かなりの大荷物だ。この依頼には期限が無い。つまり短期間で終わる事もあるが長期間遺跡に潜り続ける事もある。それを考慮しての荷物らしい。

「あれ?坊主は荷物どうした?」

「僕はアイテムボックス持ちなので。」

「いきなり非常識が出たな。」

「え?冒険者でアイテムボックス持ちは結構いるって聞きましたけど?」

「アイテムボックス持ちの冒険者はポーターの役割が大きい。つまり戦わないんだ。」

 周りを見ると皆がうんうんと頷いている。

 表に出て馬車に乗り込むと6人乗りの馬車らしく、結構スペースが広い。更に後ろには荷物を積むスペースも確保されている。馬車は4頭立てで御者席には既に案内人兼御者が控えている。

「思ったより大きな馬車ですね。」

「そう思うのは最初だけだ。3時間もすると後悔するぞ。」

「どう言う事です?」

「馬車ってのは走ってる最中は休めない。更に、北に向かうと言う事は魔物が多いと言う事だ。」

 なるほど、幾ら馬車が広くてもサーチを掛けながら寝る訳には行かないか。

「ちなみに、目的地までどの位掛かるんですか?」

 御者に語り掛ける。

「12時間と言った所だな。」

「と言うとギリギリ今日中に着く?」

「そうだな、だが着いてすぐに野営の準備になるな。」

 おお、野営か楽しみだな。一応テントも買って置いたし。

 全員が荷物を載せて乗り込むと馬車がゆっくりと動き出す。

 ちなみに席の順番は一列目にジェレミーとクレイトス、三列目にミレニアとホリー、真ん中に僕だ、どう言う意図で決めたのかは大体わかるが納得はしていない。

 僕はサーチを常に使っている。王都の近郊では大した魔物は現れないだろう。ジェレミーも時々キョロキョロしているので何らかの索敵手段を持っているのだろう。 

 3時間と言って居たが1時間で後悔した。自由に動けるがケツが痛い。しかもシートが固いので背もたれにもたれても背中が痛くなる。他のメンバーは良く平気だなと感心する。

 暇を持て余していたらホリーが話しかけて来た。

「ねぇ、最強君。得意な魔法を教えてくれる?魔法使い同士使う魔法をすり合わせておきましょう。」

「よく使うのは火と土、氷ですね。」

「私は風と水を良く使うわ。得意な魔法が被って無いのは悪く無いわ。中には属性に特化した魔物も居るしね。ただ、遺跡の中で火魔法は駄目よ。」

「解ってます。今回はダンジョンでは無いんですよね?」

「そうね、ダンジョンと遺跡は色々と違いがあるわ。特に魔物の死体の処理には気を付けないとね。」

 ダンジョンでは倒した魔物はダンジョンに吸収される、しかし、遺跡ではそのまま残るので血の匂いを嗅ぎつけた魔物が集まる可能性があると言う事だ。

「他に気を付ける点って何ですか?」

「遺跡はダンジョンと違って脆いと言う事ね。あまり威力の高い魔法を使うと崩落の危険性があるわ。」

「なるほど、魔物だけを確実に倒さないと駄目なんですね。」

「そう言う点では剣士の方が有利かもしれないわね。」

「僕はどっちも行けますので、ホリーさんは補助魔法は使えます?」

「簡単な物ならね。でも攻撃魔法の方が得意かな?」

「じゃあ、見せて貰いましょうか?」

「え?」

「敵襲です。」

「何っ?」

 ジェレミーが素っ頓狂な声を上げた。

「えっと、オークが30匹って所ですね。5分後に遭遇します。」

「俺の索敵にはまだ何も掛かって無いぞ?」

「まだ、距離がありますからね。ジェレミーさんの索敵にもそろそろ引っ掛かりますよ。」

 馬車の速度を緩めて戦闘の準備をする。

「あと2分ですね。準備は良いですか?」

「あいつ、どれだけ先が見えてるんだ?俺の索敵ではこの距離じゃ数までは正確に把握できないぞ。」

「僕とホリーさんで先に魔法を放ちます。後はクレイトスさんとミレニアさんに前衛を任せて良いですか?」

「解った。その作戦で行こう。オークに時間を割いている暇は無いからな。」

 やがてオークの集団が見えて来る。街道を真っすぐ歩いて来た様だ。

 500メートルの距離で僕がヘルファイアを放つ。オークの半数が消し飛ぶ。

「この距離で、この威力?」

 ホリーさんが驚いている。300メートルの距離でホリーさんがアクアショットをばら撒く4体が沈む。残りは11体。

 クレイトスさんが突進してオークを足止めする。その間にミレニアさんが横を抜けて来るオークを切り捨てる。連携も上手く取れている様だ。

 僕はミレニアさんの反対側を抜けて来るオークを剣で相手する。そうこうしているうちにミレニアさんがクレイトスさんの方へ近づき、オークをどんどん減らして行く。

 戦闘は10分掛からずに終わった。流石はSランクパーティーと言った所か。

 僕はオークの死体を焼いて行く。これでアンデット化したりしないだろう。

 休憩したい所だが、ここで休むのもなんなので、15分程馬車で走ってから休憩にする。

「今から30分休憩にする。何をしても良いが、馬車からはあまり離れない様に。」

 クレイトスがリーダーらしく仕切っている。って言うか休憩って何するの?馬車に乗ってる間も休んでる様なもんだった様な?

 周りを見ていると皆何やら飲んでいる。なるほど、お茶休憩か。

 僕がぼーっとしているとミレニアさんが近寄って来た。

「どうした?喉は渇いていないのか?」

 ん?この匂い?ミレニアさんエール飲んでます?

「お酒はあまり得意じゃ無いんですよ。」

「お子様なのか?そんなんじゃ立派な冒険者になれないぞ。」

 そう言ってエールを渡された。仕方が無いので氷魔法で冷やして、飲む。温いエールは苦手なんだよね。

「今、何をした?」

「え?エールを冷やしただけですけど?」

「なんで?」

「喉が渇くと冷たい物が欲しくなるでしょ?」

「済まんが、これも冷やしてみてくれ。」

 そう言ってミレニアさんが木のジョッキを差し出す。氷魔法で冷やしてあげる。

 ミレニアさんは一口味見をしてから一気に飲み乾した。

「冷えたエールは美味いなぁ。これはもう温いエールは飲めんな。」

 騒ぎを聞きつけてクレイトスとジェレミーがやってきた。知らない間にホリーさんもいる。

 それから皆のエールを冷やして、お前便利だなと変な誉め言葉を貰った。って言うかホリーさんは自分で冷やせないの?

 休憩が終わり、また馬車に揺られ進みだす。ホリーがポツリと呟いた。

「ギルマスが言っていた非常識って言うのが解る気がします。」

「どう言う事だ?」

 隣に座っていたミレニアさんには聞こえた様だ。

「普通、魔法と言うのは距離を飛ばすと威力が落ちる物なんです。しかし、彼の魔法は500メートルの距離であれだけの威力を持っています。普通ではありえません。」

「ふむ、ギルマスの言う最強と言うのもあながち間違ってはいないと?」

「そうですね。あれだけの魔法を持っていて剣も使うと言うのは、実際に見なければ信じられませんね。」

「確かに剣の腕も並の剣士より筋が良さそうだしな。」

 あ、2人の視線が痛い。と思ったら後ろから男2人からも視線が刺さっていた。

 皆、何者だこいつ?って顔をしている。

 と、サーチに何かが引っかかった。この反応は、ワイバーンでは?

 まだ、だいぶ距離はあるが、確実にこちらに向かって来る。やばいかな?

 暫く様子を見るが、方向を変える素振りは無い。ロックオンされたかな?

「敵襲!数4、ワイバーンです。」

「ワイバーンだと?」

「距離はありますが、スピードが速いので3分位で来ますよ。」

「つーか、なんでそんなに落ち着いてんだよ。」

「え?ワイバーンですよ。落とせば余裕でしょ?」

「落とせればな。」

「じゃあ、僕が落としますので、後を頼んで良いですか?」

「出来るのか?」

「って言うか、僕が聞きたいですよ。ワイバーンと普段どうやって戦ってるんですか?」

「引き付けて弓で落とすのが普通だな。」

「弓を使えない場合は?」

「逃げる。」

 ワイバーンから逃げるの?あり得ないぞ。

 馬車から降りると既にワイバーンが既に低空飛行をしている。完全に狙われてるな。

 ロックライフルの準備をして狙いを付ける。翼の付け根を狙う、1発目で見事命中ワイバーンが砂埃を上げて地面を滑っている。

 それを見て2匹目が上に逃げる。腹を見せたので羽根に穴を開ける。2匹目も落下、ミレニアがそれを見てワイバーンに駆け寄り首を落とす。

 3匹目と4匹目は少し遠い位置に居るので、引きつけてから落とそうと思ったのだが、旋回しているだけで近寄って来ない。しょうがないので落としてから走って首を刈りに行き、ストレージに仕舞った。

 馬車へ戻ると皆が唖然とした顔をしていた。

 早く行かないと日が暮れますよ?

 あ、ミレニアが狩った2匹のワイバーンもストレージに仕舞って置く。
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