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「どうだ、ブラスマイヤー。奴らは何を話している?」

「まあ、待て、話の途中からなので詳しくは解らんが『盟主』と言う単語が出てきている。それと、お主の正体はまだバレていない様だな。」

「なんかじれったいな僕も聞きたい。」

「お主が聞いても意味なかろう。悪魔語が解るのか?」

「悪魔語、そっか。人間に化けていても喋るのは悪魔語か。」

 そりゃそうだよね。悪魔の集会で人間の言葉喋る意味なんか無いもんな。自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。

「やはり新盟主が生まれるのか?」

「そこがハッキリせん。奴らはこれからの対応を協議している様だ。バレたからには打って出ると言う強硬派と今まで通り隠れて時を待つと言う保守派に分かれているな。」

「ふむ、内部分裂でも起こしてくれると面白いんだがな。」

「それは期待できんな。向こうにはロードが居るからな。」

「どうする?こっちが打って出るか?」

「ロードと上級3体だぞ。同時に相手をしたらお前が負ける。」

「待てよ。この集会に出た下級悪魔は情報を知っているって事だよな?」

「ああ、そうなるな。」

「下級悪魔なら殺さずに捕縛出来るんじゃないか?」

「ふむ、そこから情報を引き出そうと言う事か?悪魔が口を割るかどうかは解らんがやってみる価値はあるかもしれん。」

「よし、じゃあ1体にマークを付けて置こう。」

 それから40分程で悪魔たちの集会は終わった。解散して出て来る者たちの中からマークを付けた悪魔を尾行する。

 人気のない所に差し掛かった時、転移で後ろに回って相手の意識を刈る。さて、何処へ連れて行こうか?

 迷った挙句王城に決めた。あそこなら悪魔を逃がさないで監禁する場所があるだろうと言う選択だ。

 宰相に取り次いで貰い、近衛騎士団立会いの下、尋問室を借りられた。

 悪魔だと言って連れて来た男は何処にでも居そうな人の好さそうなおじさんだ。近衛騎士団の兵士たちは、本当にこれが悪魔なのか?と言う顔をしている。

「えっと、部屋が狭いので付いて来るのは2人までにして下さい。」

 何やら話し合った後、副団長と言う人と、尋問係と言う人が残った。

 4人で尋問室へ入り、おじさんを椅子に固定してから回復魔法で起こす。あれ?悪魔に回復魔法って効くのか?効いたのか苦しんだのか解らないが目を覚ました。

「なんだこれは?どう言う事だ?私はなもしてないぞ!」

 目を覚ますと同時に騒ぎ出す。

「ああ、あなたが何かしたとは言ってませんが?」

「え?ではなんで尋問室に?」

「ん?おかしいな?何故あなたはここが尋問室だと知ってるんですか?」

「あっ!」

 悪魔さんちょっと迂闊過ぎますよ。

「さあ、どうします?知ってる事を素直に話せば悪い事にはならないと思いますよ。」

「私は何も知らない。本当だ。信じてくれ。」

「それは通じませんよ。あなたが悪魔の集会に出ていたのを僕は知っています。だって、そこからずっとあなたの後を付けて来たんですから。」

「違うんだ、あれはたまたまあそこに紛れ込んだだけで、私は悪魔では無い。」

「誰もあなたが悪魔だなんて言ってませんよ。知ってる事を話して下さいと言っただけですが?」

 本当に悪魔って知能高いのか?

「さて、ここに小さな小瓶があります。中身は人には全く無害な、ただの聖水です。あなたが何もやましい事が無いのであれば、これを飲み干せますよね?」

 そう言った途端悪魔は震えだし、様子がおかしくなって来た。

「頼む、それは止めてくれ、それを飲んだら私ごときでは耐え切れない。」

「ほう?では素直に話してくれますか?」

「何を聞きたい?」

「あの場で話していた事、特に盟主の話が聞きたいな。」

 僕が盟主と言った時の反応があまりにもオーバーリアクションで笑いそうになった。

「新しい盟主が生まれる。世代交代だ。人間には迷惑を掛けない。出来れば放って置いて欲しい。」

「新しい盟主は何時生まれるんだ?」

「早ければ200年後。」

「ふむ、人間には迷惑を掛けないねぇ。あなたのその体はどうやって手に入れたのでしょうか?」

「これは、その・・・」

「喰いましたね?」

 後ろで見ている2人が生唾を飲み込む音が聞こえた。

「副団長さんでしたね。あとは任せます。」

 そう言って聖水をおじさんにぶちまけた。ひどく耳障りな叫びを背後に聞きながら部屋を出る。

 200年も待ってられないよ。

 一旦家に転移で帰る、部屋に籠りブラスマイヤーと作戦会議だ。

「概ねブラスマイヤーの予想通りだったな。後は悪魔を減らして行くだけだ。出来れば今日中に上級を1匹仕留めたい。」

「随分と急いでいるな?何かあるのか?」

「放っておくと奴らは数を増やすだろう?それにプレイースが心配なんだ。」

「ふむ、悪魔は他の生物と違って数が減ったからと言ってすぐには増えんぞ。」

「そうなのか?」

「ああ、悪魔と言う種族は数千年に1匹生まれるかどうかの種族だ。だからその分長生きをする。今回新しい盟主が生まれるのにまだ200年以上時間が掛かるのもその為だ。」

「なるほど、ではあまり焦る必要は無いと?」

「そうだ、じっくりと作戦を練って確実に仕留めた方が良いぞ。」

 まあ、ブラスマイヤーがそう言うなら、従った方が賢いだろう。

「じゃあ、午後はプレイースを見に行くよ。ずっと心配だったんだ。」

 転移でプレイースに向かう。

 久しぶりに訪れたプレイースは活気に満ちていた。どうやらルキナとマークは良くやってくれている様だ。

 まず、サーチでプレイースの悪魔を探す。現状引っ掛かる反応は無い。良かったと胸をなでおろす。どうやら悪魔は王都に集結している様だ。

 次にルキナとマークを探し、転移で飛ぶ。

「久しぶり。悪かったな、王都が忙しくてこっちになかなか来れなくて。」

「いえ、領主様が居ない間に好き勝手やらせて貰ってます。町づくりって言うのは楽しいですね。」

「おいおいルキナ。それは不敬だろう。一通り指示は受けていたので、問題無く動けています。ここの所人も多く流れて来て、住民の数もかなり増えてますので、領主様の計画通り行って居ると思います。」

「2人が居て助かったよ。とこでマーク。結婚は出来そうか?」

「出来そうどころじゃ無いですよ。こいつ既に籍を入れたそうです。代官になって1週間で。」

「ほう?めでたい事は早い方が良いだろう。ルキナはそう言う話は無いのか?」

「こいつは駄目ですよ。俺が知り合いの女の子を紹介してやったんですが、緊張しすぎて自滅しました。」 

 ほう?意外にルキナの方が女性に免疫が無いのか、人は見かけによらんな。

「まあ、そう言うのは縁だからな。そのうちルキナに合う女性が現れるよ。」

「まあ、その話は置いて置いて、領主様、指示がありましたらお願いします。」

 その後細かい指示や今後の展望などを語って、現状を把握してから、元漁村、現町北部へ向かい新鮮な魚を仕入れてから帰る。

 家の厨房にマジックバッグに入れた新鮮な魚介を置いて、これで何か作れたら夕食に出してくれと伝えた。無理に作らなくても良いぞとも伝えて置く。

 うちの料理人は結構有能なのか、アクアパッツァの様な物が夕食に出た、かなり美味い。セリー達も王都では魚料理は珍しいので大いに喜んでいた。

 そう言えば、漁村なら鰹節の様な出汁になる物は無いのかな?昆布でも良いな。今度プレイースに行ったら聞いてみよう。

 新鮮な魚介をセリーとアリアナの実家に送っても良いかもしれない。

 そう言えばアリアナをプレイースに連れて行ってないな。デート感覚で連れて行ってみるか?なら早い方が良いか、明日にでも行くかな?

 翌日は朝からアリアナを連れてプレイースに飛んだ。米畑や住宅建設予定地の視察から始める。米畑はだいぶ米が育って緑色の絨毯が広がっている。あと数か月で収穫できるだろう。住宅建設予定地は約3分の1ほど建築が始まっている。良いペースだ。

 町の中央部へ行くと屋台群が見えて来る。ここで新鮮な魚介を販売している。何処の屋台も人だかりが出来ていて活気がある。

「随分と活気がある町ですね。」

 アリアナが感心したように口にする。

「ここまでにするには結構苦労したんだよ。」

「強い上に領地経営の才能もあるんですね。」

「いやいや、領地経営の才能のある奴を雇ったんだよ。」

「なるほど、人を使うのも貴族の才覚の一つですね。」

「そう言う事だ。さあ次は海へ行ってみよう。」

 町の北部へ向かう。この北部との境界に領主邸を建設中だ。もう外観は殆ど完成している。そろそろ執事のルーメンさんに話して置かないとな。

 漁村に出ると塩田は拡張工事中だが、作業は行っている様だ。浜辺に沿って歩いて行くと、昆布を干している人が居た。

「済みません。これって昆布ですよね?何に使うんですか?」

「ああ、これは一旦干してから煮物にすると良い味が出るんだよ。」

「へぇ、少し貰えませんか?お金は払いますので。」

「いいよ。どの位欲しいんだい?」

 見ると10メートル位の昆布が20枚位干してある。

「じゃあ、これを5枚分位。」

「そんなに?」

「ええ、これは使い方があるんですよ。」

「うちは構わないけど、大銅貨5枚になるよ?」

 1枚千円って安いな。価値が解ればもっと値段が上がるかも。

 大銅貨5枚払って昆布を受け取りストレージに入れる。

「他に良い味が出る魚の干し物とか知りませんか?」

「干し物は知らないねぇ、新鮮な魚のアラなら良い味が出るけど。」

「そうですか、ありがとうございます。」

 どうやら鰹節の様な物は無いらしい。鰹節って何気に作るの難しいんだよね。ただ干せば良いのなら簡単なのに。

 その後、屋台で焼き立ての魚介を堪能したり、上がって来た船の魚を丸ごと買ったりした。

 アリアナは王都から出た事が無いらしく、プレイースを堪能した様だ。

 マジックバッグを2つストレージから取り出し。それぞれに買ったばかりの新鮮な魚介を詰めて行く。

 ルキナとマークには昨日指示を出したから会わなくても良いよな。

 昼過ぎに家に転移で帰り、セリーとアリアナにマジックバッグを一つずつ渡す。

「新鮮な魚介が50人前位ずつ入っているから実家に持って行ってあげなよ。王都には海が無いから喜ばれると思うよ。」

 セリーとアリアナは馬車に乗って実家に向かった。2人共上級貴族の娘なので家は近所だ。まあ、近所と言っても馬車で10分位はかかるんだけどね。公爵家、伯爵家と回っても30分程で帰って来る。魚介はマジックバッグから出さなければ新鮮なままなので、きっと喜ばれるだろう。

 さて、僕は昆布で何を作ろうか?
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