転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

文字の大きさ
上 下
54 / 308

054

しおりを挟む
 さて、儀式当日だが、儀式を止めるのは勿論の事。儀式に参加する全員を捕縛する必要がある。参加者が3人なのか4人なのかは分からない。

 ブラスマイヤーに鐘撞き堂を監視して貰っているが、今の所動きは無い様だ。夕刻の鐘は6時に鳴る。最低でも5時までには何か動きがあるはずだ。問題は、僕らが何処から監視して、どのタイミングで出るかだな。相手に見つかっては意味が無いし、儀式を止められなくても意味が無い。一応昨日のうちに鐘撞き堂の下見はしてあるので、転移で飛ぶことは可能だ。だが、出来れば、どんな儀式が行われるのか見てみたい。

 鐘撞き堂は2階建ての建物で、1階部分は教会になっている。2階部分は教会の職員の居住区になっており、屋上に鐘撞き堂が設置されている。つまり、屋上に昇った途端敵から発見される事になる。

 時間は既に4時半を回っている。まだ動きは無い。教会にも剣を持っていそうな人物は見当たらない。

 鐘撞き堂に上がるには必ず教会へ入る必要がある。2階の居住区を通らないと屋上へは出られないのだ。

 5時を回った頃。明かに雰囲気の違う男女4人組が教会へ入って来た。皆マントで体を隠している。剣を持っていても分からない格好だ。更に女性は薬でも飲まされているのか。意識が朦朧としている感じだ。

 間違いないこの4人だ。僕とルシルは4人をマークする。

 あくまでも推測だが、3人の男が術者で女性は生贄では無いかと思う。彼女が無事なうちに助け出さないといけない。ミッションの難易度が上がる。

 4人は階段を上がって行った。この先はブラスマイヤーに頼るしかない。

「悪いがブラスマイヤー、4人の動きを実況してくれ。あと女性が危険になったらすぐに飛ぶので合図を。」

「解った。今の所これと言った動きは無い。多分、時間を待っているのであろう。」

 6時までおよそ40分。

「どうやら女性を鐘撞き堂の柱に括り付けている様だ。多分、儀式の準備だろう。おそらく儀式が始まるまでは女性の身は安全だと思われる。」

「ふむ、3本の剣は揃っているのか?」

「ああ、どうやら3人共帯刀している様だ。」

 残り時間およそ30分、この時間で何をする気だ?

「何やら鐘撞き堂の周りに魔法陣の様な物を描いているぞ。」

「魔法陣による召喚?幻獣か何かか?」

「もしかしたら悪魔かもしれんぞ。」

「悪魔って強いのか?」

「少なくとも魔人よりは強いな、悪魔は純粋な悪だからな。問題はどの程度の悪魔を呼び出すつもりなのかだな。」

「悪魔にもレベルがあるのか?」

「ああ、下位の悪魔は魔物と大して変わらん。上位の悪魔はちと手ごわいぞ。」

「厄介な事をしてくれる。」

「魔法陣が描きあがるのを待つのは愚策だぞ。出るなら今だ!」

「解った。行くぞルシル!」

 鐘撞き堂に転移する。突然現れた僕とルシルに驚きを隠せない3人の男たち。

 女性は全裸で鐘撞き堂の柱に貼り付けにされている。意識があるのか無いのか分からない。

「随分と大掛かりな儀式だな。悪魔でも呼び出すつもりか?」

 男たちが明らかに動揺する。瞬間ルシルの姿が消え、魔法陣を描いていた男が吹き飛ぶ。

 驚き意識をそちらに向けたタイミングで僕は一番近い男の意識を刈る。もう一人はルシルに任せ。柱に括り付けられた女性を助ける。

 見た目僕と同じくらいの金髪の女の子だ。全裸なので、色々と見えてはいけない物が見えてしまう。ストレージから薄手の毛布を取り出し体を包む。状態異常回復の魔法を掛けると何とか意識を取り戻した。

「私は?あの男たちは?」

「もう、大丈夫ですよ。これから家に帰して差し上げますので、詳しい話を聞かせて下さい。」

 3人の男と計4本の剣、そして女性とルシルを連れて、王城へ転移する。

 顔なじみになった門番に、今日は何だいと聞かれたので、盗まれた宝剣を取り戻したよと答えて置く。

 暫くすると衛兵がやってきた。男3人は別室に、僕は女性を抱きかかえたままルシルと共に応接室へ通された。

「どこから突っ込んでいいか解らんのう。まず、その女性は誰じゃ?」

「ああ、儀式で生贄にされそうになって居た所を助けました。そう言えば名前はまだ聞いていません。」

「私の名前はアリアナ・フォン・ロートス。ロートス伯爵家の長女です。」

「おお、ロートス家の。確か一度会っておるな。」

「はい、陛下、お見苦しい格好で失礼します。」

「構わん、其方は被害者だ。」

 アリアナが下せと言うジェスチャーをしたので、そっと足から床に下し、立たせてあげる。

 更にストレージから2本の剣を取り出し、大理石のテーブルの上に置く。

「別の部屋に捉えられている3人の男が今回の事件の首謀者です。どうやらアリアナ嬢を生贄に悪魔を呼び出そうとしていた形跡があります。」

「陛下、事実であります。私は見ました。悪魔を呼び出す儀式を。」

 ん?どう言う事?

「それはどう言う事だね、アリアナ嬢。」

「私と同じように捉えられていた女性があと2人居ました。1人は儀式で死亡、もう一人は儀式で悪魔になってしまいました。私も悪魔になるのだとばかり思って居ましたが、神は私に救いの手を差し伸べてくれました。」

 なんで、うるんだ瞳で僕を見つめるのでしょうか?

「その話が本当だとすると、悪魔がこの王都に解き放たれている可能性がありますね。」

「そうなるな。これは至急、捉えた男たちを尋問せねばならんのう。」

「ちょっと待って下さい。私はそちらの殿方に、その、私の全てを見られてしまいました。もう、お嫁に行く事は出来ないでしょう。責任は取って貰えるのでしょうか?」

「え?そんな事を言ったら、捉えられている3人も見てますよ?」

「ふむ、その3人の目は責任を持って私が潰そう。ゼルマキア卿の目はどういたそうかのう?」

「王様、そう言う事をするとセリーに嫌われますよ。」

「むむ、しかしのぉ、ロートス伯爵家はワシの派閥なんじゃよ。」

「王様、事件の方は良いんですか?」

「おお、そうじゃった。アリアナ嬢、後の事はワシとゼルマキア卿そして伯爵と相談して決めるで少し待っておれ、悪いようにはせん。」

「解りました。よろしくお願いします。」

 だから、何故うるんだ目で僕を見る?

 しかし、悪魔か?上級悪魔じゃ無ければよいが。

「じゃあ、僕は一旦帰りますね。また明日顔を出しますので、尋問の結果を教えて下さい。」

 と言って、ルシルと共にその場から消えた、逃げたとも言う。

 オークション会場へ顔を出し、盗まれた剣2本とネックレスを渡してから家に帰る。

 家に帰ってからセリーに事の次第を事細かく説明した。後でバレたら殺されるからね。

「貴方は何故、そう迂闊なのでしょうか?そう言う場面であればルシルさんに任せればよいでは無いですか。私を連れて行くと言う手段もありましたよ。」

「すみません。」

「で、その伯爵嬢は胸が大きいのですか?」

「え?いや、そこまで詳しくは見て無いよ。セリーと同じ位じゃ無いかな?」

「年は?」

「16歳と言ってたと思う。」

「年上ですか。」

「いや、でも僕も来月には16歳になるし。セリーももうすぐ誕生日でしょ?」

「なるほど、同い年と言う可能性もある訳ですね。解りました、その伯爵嬢は私が何とかします。」

「何とかって?何とかなる物なの?」

「結婚は確定でしょうね。でも、その後の力関係は何とかします。」

「あ、結婚は確定なのね。」

 落ち込んで部屋に戻る。

 おいおい、冗談じゃ無いぞ、そうじゃなくても激しいのが2人居るんだ、これ以上増えたら、考えるだけで恐ろしい。

 って、そんな場合じゃ無い。悪魔だ悪魔。

「ブラスマイヤー、王都に悪魔が居るか確認してくれ。」

「ああ、それなんだが、お主たちが話をしている間にサーチを掛けたんだが、王都に悪魔らしき反応が100以上あるぞ。」

「なんだって?」

「上級から下級まで様々な悪魔が100体以上、王都だけでだぞ。この国全土だとどの位いるのやら。」

「それって、非常に不味く無いか?」

「まあ、そうとも言える。悪魔は知能が非常に高い。単純な殺人はしないだろう。だが、証拠が残らない殺人は既に起きているだろうな。」

「悪魔は何故人を殺すんだ?」

「理由は2つある。1つはその人物に成りすます為。もう一つは食う為だ。」

「人を食うのか?」

「ああ、1説には人が死ぬ瞬間の恐怖を食うと言う説もあるが、実際奴らは肉体も食べる。」

「放ってはおけないな。しかし、これは下手に発表したらパニックになるな。魔女狩りの様な事も起こるかもしれない。」

「うむ、国王等と綿密な打ち合わせが必要になるだろうな。」

「ブラスマイヤーは人間と悪魔を区別出来るんだよな?僕ら人間にその方法は無いのか?」

「奴らの変身は鑑定をもすり抜ける。聖職者でも時には欺く。上級悪魔なら光り魔法さえ弾く。」

「こうなるとブラスマイヤーの鑑定だのみになるな。あとは聖剣を使いこなせるようにならないとな。」

「また暫く、稽古の毎日だな。」

 なんだろうスローライフの夢はいずこへ?
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...