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 結局、魔剣は古代遺跡から発掘されたものをギルドに持ち込んだ物と言う設定で、オークションに出品する事になった。

 まあ、ギルドも手数料を取ってるので儲かるから融通してくれたのだろう。

 そう何回も使える手では無いので次の魔剣はお婆さんの所にでも持って行こう。あそこなら高値は付かないが訂正な値段で売れるだろう。

 その日は家に帰り、夕食を食べ部屋と戻る。そう言えば夜這いを掛けないとな。この世界の平均就寝時間って8時とか9時なんだよね。夜這いって夜中のイメージがあるのだが、何時に行けば良いんだ?

 とりあえず部屋に居ても手持無沙汰なので、セリーの部屋へ行く。ノックをするとまだ起きている様だ。

「エイジさん、こんな時間に何かありましたか?」

「いや、夜這いに来たんだけど、早かったか?」

「あ、いや、その、どうぞ。」

 セリーが部屋に入れてくれた。鍵はしっかりと掛けている。夜這いってこんなんだったか?

 昼間覗いた事はあるが、夜のセリーの部屋は初めて見る。なんと言うか女の子らしい部屋になって居る。

「夜這いの経験が無い物でな。貴族って言うのはそう言う事も教わる物なの?」

「詳しい手順とかは分かりません。そう言う物があると言う事を漠然と知らされるだけですね。」

「では、赤ちゃんが出来るメカニズムは?」

「正直、知りません。」

 セリーが真っ赤になりながら小声で答える。ん~、そうなると色々と面倒だな。

「まあ、今日は優しくするから、セリーは体の力を抜いて、なるべくなすがままになってくれると助かるよ。」

「はい、お任せします。」

 正直、僕も初めてなんだよね。前世から彼女いない歴=年齢だったし。とりあえず、精一杯優しくした。あとは魔法が便利だったとだけ言って置こう。

 翌朝、寝不足で起きるがルシルとの稽古はしっかりとこなす。最近思う事がある。武術ではルシルには勝てない。ブラスマイヤーに剣術を習ってみようかと思い始めている。聖剣が使えれば魔人との戦いはもっと楽だったはずだ。

 午後になり、ブラスマイヤーに相談する。

「剣術を覚えたいと思うのだが、どの位で身に付く?」

「聖剣を持てる程度までなら1か月って所だな。」

「では、まずは聖剣を持てるまで引き上げてくれ。」

 ブラスマイヤーの稽古は独特だ。脳内にイメージが飛び込んで来る、それを習得して行くのだが、いわば型の練習に近いが、極稀に仮想敵が現れる。これを覚えた技で切り捨てるのだ。

 多分、はたから見たら変な奴だと思われるだろうが、型と実践を同時に覚えられるので上達が早い。

 翌日からルシルとの稽古でも木刀を持つ事にした。いまだ、当てる事は出来ないが、木刀を持っていてもそれなりの動きが出来る様にはなった。

 1週間もすると、ルシルが戦法を変えてきた。これは多分、僕の剣術の腕が上がって来たのだろう。

 ほぼ毎日午前午後と3時間ずつ稽古をしているが、2週間目に入ると、剣術の基礎と言うか理論の様な物が理解できるようになって来た。剣術は決して無理な動きをしない、極めて合理的な動きを良しとする。つまり、体勢が崩れる様では駄目って事だ。これが解ってからは、動きが流れる様に滑らかになった。

 ちなみに夜這いは週に1度にしている。流石に毎日稽古は疲れるのだ。そう言えば、セリーが徐々に積極的になってるのは良い事なのか悪い事なのか?

 そう言えば2週間の間にルーゼリア子爵が本を返しに来たが、読めるのかと聞いたらさっぱりと答えられた。まだ、同じような本はあるのか聞くと、持ってる人の名前は知っているらしい。今度会合があるので紹介してくれるそうだ。

 それから数日後、午後の稽古をしようと思ったら宰相の呼び出しを喰らった。

 王城へ着くと貴族の証を出す前に、近衛兵に連れられて、宰相の執務室へ通される。

「おお、ゼルマキア卿。其方の領地が決まったぞ。」

「ありがたき幸せ。」

「王都の北にある。プレイースと言う土地だ。町が一つと漁村がある。人口は合わせて3万と言った所だ。」

「王都の北と言うとアーネスハイム王国でもかなり北西に位置する町ですね?王都から何日位の距離ですか?」

「そうだな、漁村があるので解る通り海に面している。地図上ではもっとも北西の町だが、知っての通りこの国は人の住める場所が限られている。なので、王都からは馬車で3日程度と非常に近い位置にある。」

「解りました。開拓は自由にして宜しいのですね?」

「うむ、開拓に関しても、町の運営に関しても其方に一任する。また、今日より、エイジ・フォン・ゼルマキア侯爵を名乗る事を許す。」

 そう言って宰相は一振りの短剣を差し出す。僕は懐の短剣と引き換える様に交換し。晴れて侯爵に陞爵した。

「エイジ・フォン・ゼルマキア侯爵。アーネスハイム王国の名に恥じぬよう邁進いたします。」

「うむ、出来ればで良いが、3侯爵の鼻っ柱を折ってくれると個人的に嬉しい。」

「あー、善処します。」

 王城を辞し、家に帰る。執事のルーメンさんに正式に侯爵に陞爵した事を伝える。また、新たにプレイースを領地として貰った事も付け加える。

「プレイースですか?」

「何か問題がある土地なのか?」

「いえ、そうではありません。あそこは塩が採れるので王家が手放すとは異例だと思いまして。」

「そう言えば、王都では塩が採れないんだったな。」

 そんな話をしているとメイド長とセリーがやって来たので陞爵と領地の話をした。

「プレイースを頂けるとは随分と買われてますね。」

「それも、そうですが、若奥様。この若さで侯爵ですよ。見合い写真が凄い事になるのではありませんか?」

「それなのですが、ルシルさんを叔父様の養女にして嫁に迎えてはどうでしょう?」

「え?なんでルシルの名前が??」

「エイジさんは他の人と結婚したくないんですよね?」

「うん。現状セリーで満足しているからな。」

「でしたら、形式上だけ、王家の娘を迎え入れると言う形にして置けば、周りの貴族達は黙りますよ。」

「なるほど、ルシルを名目上の第2夫人に仕立て上げるって事か?」

「ルシルさんの正体は知られてませんからね。それに万が一暗殺を狙ってもルシルさんなら大丈夫ですよね?」

「確かにルシルをどうにかできる奴は居ないだろうな。」

「では、私に任せて下さい。叔父様に話を付けて参ります。」

 お?セリーさんなんでそんなに張り切っているんですか?

「ところで、プレイースって今まで王家の直轄地だったのですか?」

「そうですね、代官が今までは管理していたはずです。」

「代官か、これから領地経営するなら参謀が欲しいよな。そう言う人材は何処で探せば良いんだ?」

「そう言う場合は通常であれば、代官をそのまま登用するのですが、一度その人物の人となりを確認した方が良いですね。」

「ふむ、近い内に行ってみるか。」

 その日の夜、夜這いに行ったついでにセリーに聞いてみた。

「なんでルシルを嫁になんて思いついたんだ?」

「エイジさんは女心が解ってませんね。女性は好きでもない男の家にずっと住み続けたりはしませんよ。」

「ん?それって、僕がルシルに好かれてるって事?」

「さあ、どうでしょう?」

 いや待て、ルシルは幼女だぞ、手を出したら犯罪だ。だが、実年齢は僕より遥かに上だからセーフなのか?なまじ前世の記憶があるから、セリーだって犯罪すれすれだと思ってたのに、あの見た目のルシルはどうなんだ??

「まあ、どうするかはエイジさん次第です。私としてはエイジさんを独占したい気持ちが無いと言えば嘘になりますが。」

 翌日セリーが登城した。

「叔父様、お久しぶりです。」

「おお、セリーでは無いか、相変わらず綺麗な顔をしておる。どうじゃ、今の生活は?」

「それなのですが、一つお願いがあって参りました。ゼルマキア家に幼女が一人いるのはご存じですか?」

「ああ、なにやら影からの報告にあったのう。」

「実は、ルシルと言うその幼女。正体は暗黒竜です。もし、彼女を怒らせたらこの国は地図から消えるでしょうね。」

「なんと?それは誠か?」

「はい、そこで私に妙案があります。彼女を叔父様の養女にしてエイジさんに嫁がせて下さい。そうすれば実質エイジさんの妻は私一人になりますし、エイジさんに恩が売れます。」

「ほう?ゼルマキア卿に恩を売って置くのは悪く無いな。」

「実は縁談が山の様に来ていて大変困っております。万が一奸計に嵌って変な女に妻の座に座られては困るのです。」

「ふむ、セリーがそこまで頑張るとは、それほどの男か?奴は?」

「はい、正直、まだ底が見えません。」

「ある意味恐ろしいな。よし、今のうちに味方に付けて置くとしよう。」

 と言うやり取りがあった事をエイジは知らなかった。
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