俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ

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023 冒険者?

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 獣人の女性に駆け寄り、大丈夫ですかと声を掛ける。

「お姉さん虐められてたの?」

 ローナがストレートに聞くが、少し事情が違うらしい。どうやら、虐めでは無く、パーティーから追放された様だ。

 だが、雰囲気から察するに、虐めに近い事は日常的に行われて居たのだと推測される。

 彼女の名前はルルイ。獣人にも色々あって、彼女は猫の獣人だと言う。そう言えば猫耳が付いている。ちょっと触ってみたい。毛の色は茶色と黄色の混合だ。だが、猫耳と尻尾が付いている以外は普通の人間に見える。特に手足が毛深いとかは無い。

「パーティーを追い出されて、これからやって行けるのか?」

 俺の言葉に、思いっきり落胆の表情で答えるルルイ。

「狩りに出なければ食事も満足に取れません。また、拠点も使えないので住む家もありませんね。貯金が尽きる前に次のパーティーを探さないと。」

「聞いて良いのか解らないが、月にどの位稼いでいたんだ?」

 獣人は稼ぐとローナは言っていた。

「私たちのパーティはDランクに上がったばかりのパーティーでした。4人で月に金貨5枚程度の稼ぎがあります。」

「ほう?なら1人頭月に金貨1.25枚か。」

 月収12.5万円あれば、この世界ならそこそこ裕福な暮らしが出来るな。

「いえ、私はパーティーでは新人ですし獣人なので、月に銀貨3枚を貰っていました。」

 え?そこまで獣人の地位って低いのか?月に3万円じゃ食費で飛んでしまう。武器や防具を新調する事も出来ないでは無いか。

「失礼ですが、そこまで獣人差別と言うのは酷い物なのですか?」

「どうでしょう?何処のパーティーでも新人は分け前が少ないのは当たり前だと思いますので、特別獣人差別とも言い切れません。」

 なるほど、冒険者ルールとしては新人の扱いは、そんな物なのか?

「ちなみにパーティーにはどの位の期間居たのですか?」

「2か月ですね。」

 ふむ、2か月なら見習い期間と言う考え方も出来るのか。いや、このタイミングで追い出せば2か月それなりの腕の冒険者が雇えるとも考えられる。

「ルルイさん。もし宜しければ、次のパーティーが決まるまで護衛の仕事をしませんか?給料はあまり出せませんが、食事と住む家は提供出来ると思います。」

「本当ですか?食事と家があるのなら給料は無くても構わないですよ。」

 とりあえず、ここで長話をしていたら遅刻するので、市場に向かいながら細かい話を詰めていく。

 ルルイは短剣と体術をメインに戦うスタイルらしい、典型的な前衛職だ。護衛には打って付けだろう。

 パーティーでの狩りが無い日はソロでも狩りをして、小遣い稼ぎをしていたそうだ。ランクはもうすぐCに上がるそうだ。

 Cランカーならソロでも月に金貨10枚は稼げるんじゃ無かったか?そんな彼女を擁しながら4人パーティーで月に金貨5枚と言うのは、そのパーティーの実力は低いのでは無いかと想像できる。逆に言えば、彼女の力で稼いで、暴利を貪って居るとも言える。

 獣人は知能が低いと言われているらしいが、彼女の受け答えは普通だ。恐らく、悪知恵が苦手なのでは無いかと思う。良く言えば純真なのだろう。

 市場に着くと3人が待っていた。ソリオさんはエールの準備をしているが、他の2人は手持無沙汰にしている。そう言えば、俺が殆どの荷物を持っているから、俺が来ないと店の開店準備が出来ない。これは、その内何とかしないとイケないと思っている。

 店の開店準備をしながら、皆に、ルルイの事を紹介して行く。新しく護衛に雇ったと顔合わせをして行く。

 獣人と言う事で反発があるかと思ったが、意外にすんなりと皆は受け入れている。護衛に獣人を雇うのは価格も安いので商人では珍しくないとソリオさんは言っていた。

 ルルイは、俺達が開店の準備をしているのを眺めながら、色々と変わった物が並んでいるので驚いていた。

 開店の準備が終わったら即開店だ。何故なら既に並んで待っている客が居るからだ。

 今日も昨日とほぼ同じ布陣で開店に臨む。サンドウィッチを提供するのは、昼飯時が近づいたタイミングが良いだろう。

 皆が忙しなく動いている間、ルルイは呆気に取られて居た。

「私は何をすれば良いのでしょうか?」

「ルルイの任務は護衛だ。特にローナを見ていてくれ。午後になると酒が入って暴れる者も出て来る。怪我をさせない様に大人しくさせる事は可能かな?」

 ルルイが大丈夫ですと胸を叩いたので安心して任せる。まあ、店が忙しくなったら少しくらいは手伝って貰うシーンが出来るかもしれない。

 そう言えばルルイは皮鎧を着ているので目立たないが、結構ふくよかな胸を持っている。獣人だから数が多いとか言う事は無い様だ。

 俺がルルイの胸を見ていた事に気が付いたのか、ローナとライムが自分の胸を見てため息をついていた。

 やがてポテトが揚がり、本格的に店が始動する。朝からエールやチューハイを飲む客もちらほら居る。

 そう言えば、チューハイを気に入って常温でも良いから欲しいと言う客が結構な数居る。恐らく家でゆっくりと飲みたいのだろう。その内フレーバーも増やす事を検討しよう。

 流石に焼き鳥はまだあまり出ない。俺は、ライムからポテトを一つ受け取って、護衛をしているルルイに差し入れする。

「これは何と言うか、エールが飲みたくなる味ですね。」

 皆と同じ事を言うので笑ってしまった。そう言えば、若く見えるが、ルルイって幾つ何だろう?

「私ですか?21歳になりました。獣人は子供の頃は成長が早く、成人すると成長が遅くなるんですよ。なので見た目で年齢を当てるのは難しいと思います。」

 ほう?そう言う物なのか?まあ、俺も若く見られるから24歳だと言うと大抵の人に驚かれるけどね。

「じゃあ、護衛頼むね。後で昼飯持って来るから。」

 あまり店を空ける訳には行かないのでそそくさと戻る。

 焼き鳥が徐々に出始めた頃、新製品としてサンドウィッチを出し、宣伝する。

 こう言うのは最初の1個が売れるまでが勝負なんだよね。

 唐揚げや照り焼きチキンは良い匂いがするので客寄せにはなる。カツサンドは値段が高いので最初は売れないかもしれない。たまごサンドとハムサンドは匂いがあまりしないので少し不利かな?

「なあ、その黄色いのってタマゴか?」

 客の1人に質問された。

「そうです。茹でたタマゴを細かくして調味料で味付けしてあります。美味しいですよ。」

 そこから何故かたまごサンドが売れに売れた。後で聞いたら、この世界では卵は貴重品らしい。1個で銅貨2枚位すると言う。その卵が2~3個分位入って銅貨2枚なら、そりゃあ売れるわな。

 タイミングを見計らって、店のメンバーに交代で昼食を食べさせる。今日は、サンドウィッチとスープだ。それぞれに好きなサンドウィッチを選ばせた。スープはインスタントのクラムチャウダーにしてみた。

 ローナの順番が来た時にルルイの分も渡して一緒に食べて貰った。

 サンドウィッチは好評で、たまごサンドが売れると他のサンドウィッチも売れる様になった。スープとのセットも結構出ている。中には持ち帰りたいと言う客も居たので、本日中にお召し上がり下さいと注意してから販売した。

 結局昨日仕込んだ分は殆ど売れてしまった。明日はもう少し量を増やさないとイケないかもしれない。特にたまごサンドは倍位作る必要がありそうだ。

 日本なら1個15円の卵が、この世界では銅貨2枚、200円になる。普通にゆで卵として銅貨1枚で売っても儲けが出そうだ。卵を使ったメニューはこれからも増やして行きたいな。

 と言っても、オムライスやお好み焼きはまだ、早いよね?卵料理って何があったっけ?

 さて、今日の売り上げは金貨2枚にかなり近づいたはずだ。店舗への道ももう少しだな。ルルイの給料は店の売り上げからではなく、俺の取り分から出す事にした。月に銀貨7枚。冒険者の給料としては低いが我慢して貰おう。

 店を閉店させて、ソリオさんに分配金を貰い、帰路に着く。ローナとルルイも一緒だ。ルルイには、魔道具屋の2階に住んで貰おうと考えて居る。2階は好きに使って良いと爺さんも言ってたしね。それに彼女の食事も作らないとイケないから、一緒に住んだ方が効率が良い。

 まあ、部屋も沢山余ってるしね。

 一応爺さんの許可は取るつもりだが、2階は好きに使って良いと言う言質はとってあるので、駄目とは言わせないけどね。

 3人でワイワイと話をしながら帰るのも悪く無い物だ。
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