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014 魔法?

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 翌朝、ローナが迎えに来て市場へ向かった。パンは口コミとリピーターでかなりの数が売れた。その数99袋。

 ソリオさんは後一袋で100袋達成だったのにと悔しそうだったが、俺とローナはむしろ売れすぎて怖いと思った。

 今日も試食を用意したのだが、その必要は無かった様だ。仕入れがパン102袋で15300円。売り上げが99袋で59400円。差し引き44100円の儲けだ。これを3人で割ると一人頭14700円銅貨147枚の儲けになる。1日大銅貨5枚を目標にしていたのが、2日目で約9倍だ。

 このままのペースで行けば明日には1人分の月銀貨5枚を1日で稼げそうだ。こんなに稼いで大丈夫なのだろうか?他の商人やギルドに目を付けられなければ良いが。

 暗くなる前には店仕舞いを終えて家に帰る。家に帰ると爺さんの魔法訓練を受ける事になっている。

「今日は最初なので、魔法の基礎からじゃな。生活魔法は使えるんじゃったのぉ?では、属性魔法の基礎として火、水、風、土の4つの魔法から始めるとしよう。」

 属性魔法は基礎の4つと上級の光、闇、時間、空間の4つがあるのだそうだ。全部で8属性らしい、氷や雷はどれに分類されるのだろう?

 また、属性魔法以外にも無属性魔法やユニーク魔法と言うのもあるそうだが、まずは基本を覚えないと駄目らしい。

「面白いな。普通は偏りが出る物なのじゃが、お主はどの属性も均等に使える。そして、どの属性も均等に他の者に劣っているな。」

 ん?それって俺には魔法は向いて無いって事では?

「均等に劣っているってのは魔法使いとしては致命的なんじゃ無いですか?」

「いやいや、そうとも言えんのじゃ。まず4つの魔法を均等に使えると言うのは珍しい、これだけでも魔法使いとして価値がある。そして、どの魔法も均等に劣っていると言う事はユニーク魔法使いの可能性が高いと言う事になる。」

 ふむ?そう言う物なのか?つーかユニーク魔法使いってなんぞや?

「ユニーク魔法使いと言うのは独自のオリジナル魔法が使える魔法使いの事じゃな。お主はアイテムボックスも持って居るし、魔力も高そうじゃ。ユニーク魔法使いの可能性は高いと踏んで居る。」

「ちなみにそれはどうやって立証するんですか?独自の魔法だとどんな魔法を持ってるか解らないんじゃないですか?」

 俺は当然の疑問をぶつけてみた。

「ふむ、お主の言う通り、ユニーク魔法はその魔法の立証が難しい。じゃがな、ユニーク魔法の研究と言うのが結構進んでいてのぉ。ある程度の予測が可能なんじゃよ。」

 ほう?科学は進んでいない代わりに魔法の研究は結構進んでいるんだな。

「じゃあ、そのユニーク魔法の判別方法とやらを試してもらえませんか?」

「それはまだ先じゃな。まずは上級魔法の理論を覚えてからじゃ。焦りは禁物、そうじゃな、3か月は待て。」

 ん?そんなに時間が掛かる物なのか?

「それに腹が減ったから今日はこの辺で終わりじゃな。」

 言われてみれば、今日は昼飯を食う時間も無かったので腹が空いている。時間的にも夕食時だ。

「爺さんは夕飯は何時もどうしてるんですか?」

「ワシか?ワシは何時も知り合いの食堂で飯は済ませておる。」

「キッチンを貸して貰えるなら俺が作りますけど、どうします?」

 俺もそろそろ温かい物が食べたいしね。

「片づけをキッチリしてくれるならキッチンは自由に使って良いぞ。」

 言質は取ったので、俺はネットスーパーでレトルトのビーフシチューとハンバーグを2人前ずつ購入する。少しお高めの物にしてみた。本当はカレーライスが食いたいのだが、人前じゃ不味いよね。

 湯煎するだけなので鍋1個で事足りるし。汚れ物もほとんど出ない。パンも少し高級な物を選択してみた。

「気に入って貰えると良いのですが。」

 そう言って皿に乗せた料理をテーブルに運んだ。ナイフとフォークそれにスプーンはステンレス製だが、問題無いよね?あ、サラダもあった方が良かったかな?

「ほう?珍しい肉料理じゃな。だが、美味そうな匂いじゃ。もしかして香辛料を使っておるのか?」

「香辛料はほんの少しだけね。後は香り野菜を使っています。」

 俺が席に着くのを待ってから爺さんはハンバーグにナイフを入れた。

「これは、何と柔らかい肉じゃ。老人に肉料理を出すとはけしからんと思っておったが、ワシの間違いだった様じゃ。」

 その後もビーフシチューの肉の柔らかさに驚いたり、パンの香りとふわふわ感に驚いたりと賑やかな食卓になった。

「お主は普段からこんな贅沢をしておるのか?貴族でもここまでの食事をしている者は少ないぞ?」

 あー、現代日本人からすれば、この世界の食事は何と言うか耐えられないんだよね。米も無いし、何時でも何処でも温かいご飯が食べられる日本って思えば凄いよな。

「俺は貴族って会った事が無いので解らないのですが、この町にも貴族は居るのですか?」

「居るぞ。基本的に町の領主は貴族じゃ。村の長が村長だと言うのと一緒だな。なので、町と名が付く場所には貴族が居る。また、王都に行けば複数の貴族が集まる貴族街と言うのが存在する。」

 ほう?王都が存在するって事はこの国は王国制を取っているのか。

「ちなみにこの町から王都までは遠いのでしょうか?」

「そうじゃな。馬車を乗り継いで1か月と言った所じゃの。」

 1か月かぁ。まあ、貴族に関わりたく無い俺にはこの町は正解だった様だ。

「しかし、王都の場所も知らんとは随分と田舎から出てきたようじゃな?」

「はぁ、それもあるんですが、実は何処かで頭を打ったのか、記憶があいまいな部分もあるんです。」

「ほう?それは興味深いな。お主の失われた記憶にはワシも興味がある。何か思い出したら教えてくれんかのぉ?」

 それは難しいな。それに現代日本の事を話しても誰も信じないだろうし。

 曖昧な返事をして俺は逃げる様に2階に上がった。ちなみに2階に上がってすぐの部屋が6畳程の広さがあるので、そこを使っている。

 おそらくだが、建てる時に宿屋か下宿を想定して作られているらしく、2階には同じような部屋が6個もある。1階は店舗に改装した様で部屋数は2つしかない。

 こんなでかい家に一人で住んでいたら寂しくなりそうだな。って言うか、あの爺さんかなり儲けてるんじゃないか?魔道具屋って儲かるのだろうか?

 ところで、一旦ラザリン村に帰ろうと思って居たのだが、現状では難しい。畑とか放置したままだけど大丈夫だろうか?

 片道4時間半だからなぁ。気軽に行って帰って来れる距離じゃ無いよな。車でもあれば1時間も掛からないのだろうが、徒歩でも馬車でも速度はあまり変わらないからな。

 等と考えて居たら、何時の間にか眠って居た。ゾンアマにアカウントがあるのだから電子書籍でも読もうと思って居たのだが、気が付けば朝だ、魔法の訓練で疲れたのだろう。

 朝飯のおにぎりを食べていたらローナがやって来た。

 この日はソリオさんが張り切っていて、100袋売るぞと意気込んでいたが、結果はそれを大きく上回る150袋が売れた。

 売れる度に補充する形で販売しているのだが、途中で在庫が無くなるんじゃないかと心配する位のペースで売れた。このスキルには売り切れと言う概念は無いのだろうか?

 中にはまとめて15袋購入した人も居た。そんなにたくさん買ってどうするのだろう?と思ったが、ソリオさんが言うには恐らく食堂の経営者では無いかとの事。

 1個銅貨1枚で購入して一体幾らで転売するつもりなんだろう?転売ヤーと言うのはどの世界にも居る様だ。って言うか俺がその転売ヤーじゃんと心の中で突っ込んだ。

 150袋で売り上げが9万円だ。仕入れ値が22500円なので儲けは67500円だ。一人頭22500円儲けた事になる。このペースで1か月売ると単純計算で1日2万×30日で月に60万円だ。

 パンでここまで儲かるとはまさかの展開だ。

 流石にこれは儲け過ぎじゃ無いかと思う。帰り道に襲われるんじゃないかとローナも心配している。

 ソリオさんに相談すると用心棒を雇ったらどうかと言われた。

「用心棒ですか?そう言う人を雇っている商人って結構居るのですか?」

「大きな商会の出店等では大抵雇ってますよ。この規模の市場でも結構大きな金額が動く事がありますからね。」

 なるほど、この世界は中世ヨーロッパかと思ったら時代劇や西部劇に近い様だ。考えを改めないとイケないかもしれない。 
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