俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ

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012 パン?

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 俺は帰り道、ローナに相談してみた。

「なぁ、ローナ。この町で家を借りると月に幾ら位掛かるんだ?」

 相変わらず小さな体で大きな丸めたゴザを担いでいるので重そうだ。俺はそれをひょいと掴んで肩に担いだ。

「家ですか?家を一軒借りるとなると、最低でも月に銀貨3枚は掛かりますよ。」

「銀貨3枚か、ちょっとキツイな。」

「では、下宿はどうですか?空いている部屋がある家なら月銀貨1枚程度で住まわせて貰えますよ。」

 ほう?この世界にも下宿と言う制度があるのか?隣町に自分の持ち家がある訳だから、この町の活動拠点としては下宿でも何でも寝泊まりさえできれば構わない。

「ローナの家の近くあるいは市場の近くで下宿できる場所って無いかな?」

「んー、特別な条件が無いのであれば私が探してあげましょうか?」

「特別な条件は無いぞ。雨露が凌げれば良い。後、安ければ尚良いかな。」

 なにやらローナには心当たりがありそうだ。

「解った。任せて置いて。私に出来るのはこの位だから。タツヤさんもソリオさんも凄い商人みたいだし。」

「そんな事は無いぞ。ローナには立派な役割があるから心配するな。」

 そう言うとローナは嬉しそうに微笑んだ。

 宿に着くと俺が担いでいたゴザを受け取ってローナが帰って行く。

 俺は女将に大銅貨3枚を払って自分の部屋に向かう。

 さて、パンの仕入れは明日販売直前で良いだろう。同じ価格帯で他の商品があるかチェックして置こう。

 ネットスーパーの画面を開くと結構色々な種類がある。黒糖入りやレーズン入りが定番の様だ。中にはマーガリンが中心に入って居る物もある。

 変わり種だとタマゴマヨやハムマヨなんてのもあるが、これはコストの面で却下かな?

 これを売るならサンドウィッチを売った方が高く売れるんじゃないかと思われる。

 まずはベーシックなバターロールが売れるかどうかが問題だ。これが売れなければ、違う商品を考えなければならない。

 売れるのであれば次のステップを考えれば良い。パンなら菓子パンや総菜パン等バリエーションが効くので、そこを攻めても良いし。パンと相性の良い飲み物を販売するのもありだ。

 マーガリンやジャムと言う線も捨てがたい。

 そう言えばこの世界の一般家庭の食事って、どんな感じなのだろう?パンが主食なのは解って居るが、庶民の生活レベルを一度調べて見る必要があるかもしれない。

 そんな事を考えていたら、夕飯を食べていない事に気が付いた。飯を食うのも忘れて没頭する程、真剣に商売の事を考えるなんて初めての経験だ。

 会社に勤めていた頃は与えられた仕事をこなすだけで精一杯だった気がする。

 俺はネットスーパーですぐに食えるものを探し、おにぎりとお茶を購入し腹を満たした。

 後は明日の本番が上手く行く事を祈るだけだな。

 翌朝、リルケちゃんのノックの音がする前に目が覚めた。わくわくで眠れないなんて小学校の遠足以来だ。

 ノックの音を待って、下へ降りるとローナが待っていた。

 ローナと一緒に市場へ向かう。市場に着くと、既にソリオさんが来ていた。どうやら皆気合十分な様だ。

「さて、皆さんが揃ったので、作戦会議と出店の準備をしましょう。」

 ソリオさんが笑顔で言う。

「最初に確認したいのですが、パンは6個で1パックです。バラ売りは考えていますか?」

 俺は、気になって居た点をソリオさんに聞く。

「バラ売りも考えて居たのですが、この市場に来るお客さんは手ぶらの人も多いです。そうなるとパンを何に入れて売るかと言う点に行きつきます。」

「普通パンを買う客はどうしているのですか?」

「パンを購入する客は基本、入れ物として籠を持参します。しかし、市場でパンを売っている店はそう多くありません。なので、最初からパンを買う目的で来ていない客は入れ物を用意していないと考えた方が良いですね。」

 俺は、ネットスーパーでロールパンを10袋程購入する。売れたら追加すれば良いだろうと言う考えだ。

 そして、一袋をアイテムボックスから取り出す。

「仕入れたパンはこの様に包装された状態です。出来ればこのまま販売した方が衛生上にも持ち運びにも良いと思うのですが?」

 ソリオさんがビニール袋に入ったパンを興味深げに見ている。

「透明な袋ですか?これは珍しいですね。でも、確かにこれならパンを衛生的に販売出来ますね。とりあえず今日はこのまま6個単位で売って見ましょう。バラ売りを希望する者が多ければ、その時に対処法を考えれば良いと思いますよ。」

 一応透明なビニール袋なら100枚単位で安く買えるのでバラ売りにも対応出来るのだが、ソリオさんがそう言うならまずは任せてみよう。

 そう言えばビニール袋って化学製品だよな、オーバーテクノロジーになってしまうのかな?とは言え、紙の値段の高いこの世界で紙袋と言う選択肢は取れない。

「宣伝はどうするんですか?」

 俺とソリオさんが話をしているとローナがそう話しかけて来た。

「試食をやってみようと思って居るんだけどどうかな?」

「試食ですか?」

 俺は昨日の内に宿で用意して置いたものをアイテムボックスから取り出す。まずは折り畳み式のテーブルだ。流石に食品をゴザの上に置いて販売するのはどうかと思う。

 取り出したテーブルを展開しその上にパンを展示する。そして、まな板と包丁を取り出した。これは自分用に購入した物だが、綺麗に洗浄してあるので問題無いだろう。

 次にパンを一袋開けて、1個取り出し4つに切り分ける、それを皿の上に並べた。

「この小さく切ったパンを1切れ食べて貰えばパンの美味しさを解って貰えるんじゃ無いかと思うのですが?」

「パンを無料で食べさせちゃうんですか?」

 ローナが吃驚している。あれ?この世界には試食って言う文化が無いのかな?

「なかなか斬新な事を思いつきますね。試食ですか、その様な販売方法は初めて聞きました。」

 ソリオさんも感心してるぞ。試食とかすぐに思いつきそうな物だが、この世界ではそう言う面も遅れているのかな?

「まぁ、とりあえずやってみましょう。物は試しです。」

「では、呼び込みは私がやりますので、タツヤさんは試食の方を担当して下さい。ローナさんは販売で。代金は銅貨6枚で皆さん異存はありませんね?」

 俺とローナが大丈夫と答える。ソリオさんは流石に販売に慣れている様で、大きな声で、それでいて叫び声では無い良く通る声で呼び込みを始める。

 俺ではああは行かないな。前に串焼き屋で思いっきり叫んで居たしな。

「いらっしゃいませ!貴族でも食べられない様なふわふわのパンは如何でしょう?冷やかしでも良いので見て行って下さい。見れば解る柔らかさと、そのパンの白さに驚いて下さい。値段は6個で銅貨6枚。この値段で今夜の食卓が豪華になりますよ。」

 流れる様な流暢な節回しで、呼び込みをしている。

「午後にはローナに変わって貰うつもりだから、ソリオさんの呼び込みを良く聞いて勉強してくれよ。」

「え?私もやるんですか?」

 ローナが恥ずかしそうな声で答える。

「そりゃそうだろう。皆で儲けるって決めたんだからな。明日は俺もやるつもりだ。」

「解りました。頑張ります!」

 さて、プロの呼び込みでもなかなか客は来ない物だ。こう言うのは最初の1人が肝心なんだよね。1人でも誘い込めれば、試食させて販売まで持って行ける。その場で味が解る訳だから口コミもすぐに広がるはずだ。

 串焼き屋の様に匂いで客を呼び込めないのが欠点だが、試食に持ち込めればこちらの勝ちって事だな。

 最初の客が来たのは呼び込みを始めて20分が過ぎた頃だった。まあ、あまり朝早くからパンを買う客は居ないよね。

 大抵の客は市場に来る前に朝食を済ませている。パンを購入するのは帰る客だろう。

 この時間にパンを見に来る客は冷やかしが多いはずだが、俺達はその冷やかしを待っていた。店に引き込めさえすれば試食で購買意欲を出させるのは簡単だと考えて居る。

「柔らかいパンだって?パンなんて、そんなに違いは無いだろう?」

 案の定客は冷やかしの様だ。俺は皿の乗ったパンを見せて言う。

「お一つ摘まんでみて下さい。本当に今までのパンとは次元の違う柔らかさですよ。」

「言うねぇ。本当に貴族が食べる様なパンなら、買ってやるよ。」

 そう言って最初の客がパンを一切れ摘まんで口にした。

「何だこいつは。これがパンだって?じゃあ今まで俺が食べてたのは何だったんだ?」

 そう言ってもう一切れ摘まもうとしたので皿を引っ込める。

「試食はお一人様1つまでです。これ以上食べたいのであれば購入して下さい。」

「解った買おう!1袋いや2袋貰う。」

 ここから先はローナに任せれば良い。この一連の流れを見て、興味を持った客が何人か居た様だ。まだ、時間が早いので予想以上に売れるかもしれない。

 売れればリピーター率は高いと踏んでいる。

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