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007 市場?

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 商業ギルドは冒険者ギルドからそれ程離れていない場所に合った。ただ、冒険者ギルドと違ってあまり目立たない。

 商業ギルドの建物は敷地面積は広いが、平屋である。若干背が高いので一見2階建てに見えるが、天井を高くして圧迫感を失くしているらしい。

 中に入ると皆整然としている。冒険者ギルドの様な賑やかさは無い。かと言って人が少ない訳でも無い。

 登録の受付の場所が分からなくてキョロキョロしていると、後ろから男性に声を掛けられた。

「ご用件はなんでしょうか?」

「ギルドに登録したいのですが?」

 やべっ、不審者に思われたかな?

 ギルドの職員らしきその人が丁寧に窓口まで案内してくれた。

 商業ギルドも登録は簡単だった。まず登録の種類を聞かれる。露店・屋台・奉公の3種類だ。迷わず露店を選ぶ。まあ、適度に売れたら逃げるつもりだからね。

 次に身分証明書は持っているか聞かれたので冒険者ギルドのカードを出す。ここで身分証明書が無いとお金を取られるらしい。バルザックさんの裏技が役に立ったと思ったのだが、商業ギルド側にもメリットはある様で、何かトラブルがあった時、冒険者ギルド扱いになるそうだ。まあ、トラブルを起こさなければ問題が無いんだけどね。

 僕が出店を許された場所はE-16番だ、地図を見せて貰ったが、かなり端っこの方だ。まあ、最初はしょうがないよね。売り上げが上がれば出店場所の変更も出来るらしい。

 思えば、EとかFとかアルファベットだよね?この世界の言葉じゃ無いけど、僕に解り易い様に翻訳されているのかな?異世界言語スキル何気に優秀だな。

 さて、ギルド証を貰って商業ギルドを出る。このギルド証は商売中は見えやすい場所に身に着けて置くようにと言われた。そう言えば商人は皆、首や手首にギルド証を付けている。

 あとでショップで革紐でも買って首からぶら下げて置こう。

 とりあえず今日は視察がメインだ。商売は明日からしようと思っている。市場はかなりの規模だ。見るだけでも1日は掛かりそうだ。市場と言うよりはフリーマーケットに近い感じがする規模から言えばコミケか?

 出店の半分は農家だろう。自分の家で取れた野菜を販売している。他にも様々な物が売られている。肉も普通に売られているし、生活必需品も充実している。中には商会か商店が出店していると思われるブースもある。

 アクセサリーやお菓子などを売っている店もある。需要があるのだろうか?

 日本で言えば複合商業施設って感じなのだろうな。屋台も結構な数出ていて、若干お祭り感もある。本や古着も見つけた。嬉しかったのは魚の干物が売っていた事だ。海から結構離れているので魚は諦めていたのだが、干物があればアイテムボックスに突っ込んで置けば何時でも魚が食える。

 その他の乾物も結構種類がある。冷蔵技術が無いので乾燥の技術が進んだのかもしれない。

 そう言えば、農家が多いわりに葉物野菜が少ない気がする。この世界では傷みやすい葉物野菜は敬遠されるのだろうか?その代わりに豆類が異常に種類が多い。
 
 パンが主食だが、流石に毎日では飽きるのかもしれない。豆料理なら工夫次第で主食になる。

 小豆や大豆は無いだろうかと探したが見つからなかった。見つからないと言えば米が無い。一応、大麦ともち米らしき物は見つけたので、うるち米も何処かで流通している可能性はある。

 ざっと出店の傾向が解ったので自分の出店スペースを確認しに行く。俺のスペースは市場でもかなり端の方で人通りも少ない。これは何か目立つ物を置かないと見てさえ貰えないかもしれないな。

 ふと、俺のスペースの隣を見ると、小学生位の女の子がちょこんと座っていた。ゴザを引いて、商品を並べている。木工製品らしい、多分親が作って子供が販売しているのだろう。

「お嬢ちゃん。それ1つ幾らだ?」

 お隣さんになる訳だから一応挨拶して置こうと思った。

「銅貨4枚だよ。」

「売れてるか?」

 俺のその問いに少女は首を振った。

 俺は自分のスペースに汚れるのも気にせずに座る。

「明日からここで商売をする事になった。タツヤと言う。よろしく頼むな。」

「私はローナ。タツヤさんは何を売るの?」

「タツヤで良いよ。何を売るかはまだ決めていない。ちなみに俺のこっち隣りは何を売ってるんだ?」

 そう言ってローナと反対を指さす。

「そこは、まだ空いてるよ。」

 なるほど、本当に端っこなんだな。さて、ここは少し奇抜な商品を持って来ないと見向きもされない可能性が大きいな。何を売るべきかじっくり考えないとな。

「なぁ、ローナ。この町で安い宿って知らないか?」

「だったらリルケちゃんの所が良いよ。」

 リルケちゃんって言われても知らんし。

「冒険者ギルドの裏通りを南に進むと『そよ風亭』って言う宿屋があるの。食事無しなら大銅貨3枚で泊れるよ。」

 ほう?素泊まりで3000円か、それは安いな。

「私の家の隣だから、待っていてくれれば案内するよ?」

 なるほど、リルケちゃんとローナは幼馴染って奴か。

「解った。頼むよ。」

 さて、時間が出来たので、何を売るか考えるか?それともローナからもう少し情報収集をするか?

「なぁ、ローナ。この市場で一番儲けている店って何の店だ?」

 ローナが少し考えてから答える。

「多分、香辛料のお店かな。」

 なるほど、香辛料か。これだけ大きな町なら食堂の数も多いだろう。と言う事はこの町なら香辛料を使った料理が食えるって事になるな。

「でも、香辛料って商会が独占してるんだろう?転売したら不味いよな?香辛料を使った料理なら売っても問題が無いのか?」

「難しい事は解んないけど、商会の許可が無いと香辛料は売れないってお父さんは言ってた。」

 ふむ、この世界の香辛料の値段が知りたい所だな。明日にでも少し調べてみるか?

「他に人気のある店とか知らないか?」

「うーん。農具のお店かな。この市場には農家の人が一杯来るから。鉄製の農具はこの町か鉄の取れる場所じゃ無いと買えないからね。」

 なるほど、市場の出店者も買い物をするから客と考える事が出来る訳だ。と言う事は、農家の人達はここで野菜を売って、帰りに買い物をして帰るって事になるので、需要と言う意味では無視できない存在な訳だ。

「ところで、朝からここで座ってるのか?」

「そうだよ。」

「お腹減らないか?」

 時間的にはそろそろ夕方が近いと思うのだが。

「お腹減るけど、お金が無いから。」

「串肉で良いよな?」

「え?」

 ローナがきょとんとした顔をしている。

「肉は嫌いか?パンの方が良かったか?」

「嫌いじゃ無いよ。でも、私お金持って無いから。」

「お隣さんになった記念に驕るよ。俺も腹が減ったしな。」

 そう言って近くの屋台に走って行く。串肉を5本購入して昨日買った皿に乗せて貰う。一旦アイテムボックスに仕舞い、歩いて戻る。その間にショップのウインドウを開いてネットスーパーで焼き肉のタレとペットボトルの水を2本買う。

「おまたせ!」

 ローナの座って居るゴザの上に皿に乗った串肉を出す。ちょっと待ってなと言い。焼き肉のタレを出し、串肉の上に掛ける。途端に強烈なスパイスの香りが漂う。炭火で焼いただけの串肉も不味くは無いが、塩味だけってのはちょっとね。

 ペットボトルの蓋を開けて水を渡すと、冷たいと吃驚してた。ネットスーパーってクール便なのか?

「食べて良いよ。」

 そう言って俺も1本串肉を掴み齧る。相変わらず何の肉か解らないが、豚と鶏の中間の様な味がする。だが、焼き肉のタレは肉なら何でも合う!

 バーベキューの様な感覚で無茶美味い。

 ローナが上目遣いで本当に食べて良いの?と言う顔をしているので、頷いてやる。ようやくローナが串肉に手を伸ばした。

「美味しい。初めての味だけど、凄く美味しいよ。」

「そうか?なら遠慮せずに食え。」

 って言うか、焼き肉のタレってちょっと匂いが強すぎたかな?知らない間に周りに人が増えてるんですけど……

 1本目を食べ終えて、2本目を手にしようとしたら、なんか視線が痛いんですけど?

 何やら好奇の視線があちこちから寄せられている。人前で飯食うのって慣れて無いんだけどな。
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