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エルト王国編

Report 49. 同盟

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エルト城内の地下牢。

五龍星の一人ホムラ・キョウゴクは、冷ややかな眼でイサミを睨みつけていた。

「もう二度と会えない……というのはどういうことかなホムラさん?」

イサミはそれに動じることなく、あくまで冷静にホムラに尋ねた。

「お前のような危険な奴を姫様の近くに置いておくことはできないからだ!」

ホムラはキッパリとそう言い放った。
これに負けじとイサミは言葉を返す。

「しかし、この牢獄で1日様子を見て何ともなかったら解放されるという約束だったはずだが?」

「はっ!それは姫様の手前そう言ったまでだ!元よりお前を自由にする気などさらさら無いんだよ。」

ホムラは不敵な笑みを浮かべながら吐き捨てた。

「約束を反故にする……という訳か。それで?ホムラさん。アンタの命令に従うとして、俺はこの後どこに連れて行かれるというんだ?」

「このエルト王国のはずれにあるレジーナという集落だ。そこにいるレジスタンスと合流する。」

ホムラはフンと鼻息を鳴らし、ぶっきらぼうに言い放った。

「隠れ里レジーナか、つい先日俺が訪れた場所だ。」

「何だと?何故お前のような部外者がレジーナを知っている⁉︎」

「ソニアに連れられてな。そこでメアリーに会い、魔法を教えてもらっていた。」

淡々と答えるイサミに対して、ホムラのイライラは頂点に達しようとしていた。

「姫様……!こいつのことをそこまで信用しておられるというのか……!くそっ……まあいい!レジーナに行くのは今まさにお前が言ったそのメアリーが原因だ。」

「と、言うと?」

「奴はエルト王国を裏切り、ディストリア帝国に寝返った。即ち奴の作業場があったレジーナの場所が向こうに割れた可能性がある。だからこそ迅速にレジーナの拠点を放棄して別の場所に移る必要があるのだ。」

「何故、そこに俺を連れて行く必要がある?」

「レジスタンスがレジーナから撤退するまで、イサミ、お前には時間稼ぎの囮となってもらう。」

ホムラはニヤリと笑いながら、そう言い放った。

「わかった。その仕事、引き受けよう。」

「え……?」

二つ返事で了承したイサミに拍子抜けしたホムラは目を丸くする。
そして、一連の会話のやり取りを近くで聞いていたハリルは、思わず吹き出してしまうのであった。

「プッ……ハハハハハッ!イサミ!お前は根っからの馬鹿なのか⁉︎そんな仕事を引き受けてお前に一体何のメリットがある⁉︎ましてやお前に悪意を向けている相手の手助けなんて、どうかしているとしか思えないよ!」

爆笑するハリルに対して、イサミは怒るでもなく平然と答える。

「レジーナの人々にはお世話になった恩がある。部外者である俺を快く受け入れてくれた。だから俺はその人たちを助けたい、理由はただそれだけだ。」

イサミはさも当たり前かのように、キッパリと言い放つ。

「……話が早くて助かるよ。抵抗するようなら、力でねじ伏せなければならなかったからな。」

その言葉とは裏腹にホムラはどこか不満気な表情を見せていた。

「レジーナ撤退は、今夜未明に決行する。そしてハリル、ガーレン。お前らにも同行してもらうぞ。」

ホムラからの突然の指名に、ハリルは憤慨する。

「はぁ⁉︎なんで僕がレジスタンスどもの撤退を手伝わなければならないんだよ!」

「お前の言うことは最もだ。だがハリル……お前は今のディストリア帝国に誇りを持てるか?」

「はぁ…?いきなり何だよ?」

「私が推察するに、お前は王を討って自分が王位につきたいという野心を持っているはずだ。」

「な……はぁ⁉︎そそ…そんな訳ないだろ!」

「我らレジスタンスが王を討った暁には、お前が王位を継げるよう全面的にバックアップしてやる。」

「なにを馬鹿な!王位を告げるのはその血族のみと定められているはずだ!」

「どこからともなくやってきた王が今ディストリア帝国を牛耳ってる時点で、そんなルールは既に破綻している。」

「はっ、そうか!じゃあ王を倒した後、僕にもチャンスがあるということだな?」

「その通りだ。レジスタンスを逃す為に奮闘したという功績が残れば、後々英雄譚えいゆうたんとして未来永劫ディストリア国民に語り継がれるだろうな。」

「ふ…ふぅん……まあ、悪くないかもね。ようし、どうしてもというのならいいだろう!この天災のハリル様が雑魚どもの撤退を手伝ってやる。大いに感謝したまえよ!」

すっかり乗り気となったハリルを見たホムラは、あまりのチョロさに苦笑する。
そして、最後の一人であるガーレンがいる方をチラリと見た。

既にガーレンは、自らにつけられていた手枷や鉄球を持ち前の馬鹿力で引きちぎり、自由の身になっていた。

「ガーレン、お前はどうする?」

答えを聞くまでも無かったが、一応ホムラはガーレンに尋ねる。

「もちろん行くぞ!そんな楽しそうな場所、絶対行くに決まっておろうが!」

そうしてガーレンはまた豪快な声で笑い始めるのであった。

「……話はまとまったな。よし、ではまた今夜未明に迎えに来る。各々準備しておくように。」

そう言い残して、ホムラは踵を返し牢獄を後にする。

協力な助っ人を味方につけ、ホッと胸を撫で下ろしたが、それと同時にこんなチョロい連中に殿を任せて本当に大丈夫だろうか?
そんな一抹の不安を覚えるホムラであった。











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