39 / 49
エルト王国編
Report39. 違う道 part.2
しおりを挟む
アメリカのカリフォルニア州にある、とあるホテル内。
その一室では、盛大なセレモニーが開かれていた。
華やかな舞台上には様々なタイプのAIロボットがズラリと並んでおり、周囲にいるギャラリーは固唾を飲んで檀上の様子を見守り続けていた。
同じく舞台上に立つセレモニーの司会者は、助手から受け取った一通の封筒を開き、その中身を確認する。
中にはポストカードほどの大きさの一枚の紙が入っていた。
そこに書かれた文字を読んだ司会者は、オーバーリアクション気味に驚いたような素振りを見せる。
その後、咳ばらいを一つして落ち着きを取り戻した司会者は、スタンドマイクを通してギャラリーたちに呼びかけるのであった。
「レディース・エン・ジェントルメン!大変長らくお待たせいたしました!ただいまより、今年のAIロボティクス・アワード、最優秀賞を発表させていただきます!」
ギャラリーからは、待ってましたと言わんばかりの拍手と口笛が鳴り響く。
「今年も数多くのAIロボットが誕生し、様々な社会で活躍をしてまいりました。もはや、AIは人類に欠かせない存在となってきていることを皆様、強く実感していることでしょう。
その中で、特段際立った活躍を見せてくれたAIロボットに、最大級の賛辞を込めてお送りさせていただくのが、このAIロボティクス・アワード。
私も長年このセレモニーの司会を務めておりますが、AIロボットのレベルは年々上がっていると感じております。そして、それに比例するように審査員のハードルも年々上がっているのです!
動作・思考能力・汎用性などなど…チェック項目300を超える厳正なる審査を行ってまいりました!
その厳しい目の中で、最も得点の高かった優秀なAIロボットを、発表させていただきます!」
ダララララララララララララララララララララララ……
照明が落ち、会場内はドラムロールが鳴り響く。
「今年のAIロボティクス・アワード、栄えある最優秀賞が贈られるAIロボットは…!」
ダン!
「キョウジ・ヒビヤ作、人命救助AIロボット『SUBARU』に決定いたしました!」
最優秀ロボットが決まった瞬間──
会場からは、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
しかし名前を告げられた当の本人、日比谷 恭二は口をあんぐりと開け、手に持っていたグラスを床に落としてしまうのであった。
まさか自分の作ったAIロボットが最優秀賞に選ばれるなどとは、夢にも思っていなかった日比谷は理解が追い付かず、頭の中が真っ白になっていた。
その隣にいた羽倉は、呆然とする日比谷の背中をドンと押す。
「おい、あんまりギャラリーを待たすもんじゃねーぞ。早く舞台に上がれ、本日の主役さんよ。」
そう悪態をついた羽倉であったが、その言葉とは裏腹に表情は嬉しさを隠しきれないといった様子であった。
「ほ…本当に…私なのか…?こんなの…ゆ…夢なんじゃないのか?」
「夢なんかじゃねーよ。お前が今まで積み重ねてきた努力が、ついに実を結んだんだ。しっかりと胸張って、自信持って行ってこい!」
羽倉は、再び日比谷の背中を強く叩いて送り出す。
「う…うわあっ!」
押し出されるような形で歩き始めた日比谷は、覚束ない足取りでヨタヨタと舞台の方へ進む。
周囲を囲っていたギャラリーは、舞台への通り道を作るために左右へよけ、
日比谷はその作られた道を、さながらモーセのように歩いていくのであった。
ようやく壇上に登った日比谷であったが、一息つく間もなく司会者からマイクを向けられる。
「この度はおめでとうございます、Mr.キョウジ・ヒビヤ。まずは最優秀賞を受賞した率直な気持ちをお聞かせ願えますかな?」
「あ、はい。えーと……まさか、自分が選ばれるなんて、思っていませんでしたので…とても驚いております、はい。」
「なるほど!実の所私自身も結果を見た瞬間、驚いてしまいましてね。もちろん、AIロボットの性能は疑いようの余地はありませんよ。『#SUBARU__スバル#』による様々な場所での救助活動は、人々の記憶に新しいですからね。
ただ!驚くべきはこのロボットを開発した、Mr.キョウジ・ヒビヤのその若さ!
まさかまさか!若干20歳の青年がAIロボティクス・アワードの最優秀賞を受賞するとは!
私、長年セレモニーの司会を務めて参りましたが、このようなことはまさに前・代・未・聞!
この結果には私、大変驚きました。そして同時に、AIロボット界の未来を担う若き天才の誕生に感動しておりまして……私、涙を禁じえません!」
感極まった司会者はハンカチで目を拭う。
それを見たギャラリーの声援はよりいっそう強くなった。
「あ…そうですか。その…ありがとうございます。」
いまいちこの雰囲気に乗り切れなかった日比谷は、その後も無難な返答をすることしかできず、早く終わってはくれまいかと、心の中で強く念じ続けるのであった。
そのインタビューの様子を遠巻きに見ていた恭二の兄である誠一は、手に持ったグラスを置き、セレモニー会場を後にする。
今まで自分より下の存在だと思っていた弟に、初めて上を越された誠一は、強い屈辱感を味わっていた。
「何故だ…何故、私ではなく恭二が選ばれた?私の作ったAIロボットのいったいどこがいけなかった?
あいつのものより、私のロボットの方が断然優れているのに…!審査員の目は節穴か?
くそ…今に見てろよ……!世間を黙らせるぐらい、絶対的なAIロボットを作ってやるからな……!」
執念に燃える誠一の目は、どこか凶器を帯びたような鈍い光を放っているのであった。
その一室では、盛大なセレモニーが開かれていた。
華やかな舞台上には様々なタイプのAIロボットがズラリと並んでおり、周囲にいるギャラリーは固唾を飲んで檀上の様子を見守り続けていた。
同じく舞台上に立つセレモニーの司会者は、助手から受け取った一通の封筒を開き、その中身を確認する。
中にはポストカードほどの大きさの一枚の紙が入っていた。
そこに書かれた文字を読んだ司会者は、オーバーリアクション気味に驚いたような素振りを見せる。
その後、咳ばらいを一つして落ち着きを取り戻した司会者は、スタンドマイクを通してギャラリーたちに呼びかけるのであった。
「レディース・エン・ジェントルメン!大変長らくお待たせいたしました!ただいまより、今年のAIロボティクス・アワード、最優秀賞を発表させていただきます!」
ギャラリーからは、待ってましたと言わんばかりの拍手と口笛が鳴り響く。
「今年も数多くのAIロボットが誕生し、様々な社会で活躍をしてまいりました。もはや、AIは人類に欠かせない存在となってきていることを皆様、強く実感していることでしょう。
その中で、特段際立った活躍を見せてくれたAIロボットに、最大級の賛辞を込めてお送りさせていただくのが、このAIロボティクス・アワード。
私も長年このセレモニーの司会を務めておりますが、AIロボットのレベルは年々上がっていると感じております。そして、それに比例するように審査員のハードルも年々上がっているのです!
動作・思考能力・汎用性などなど…チェック項目300を超える厳正なる審査を行ってまいりました!
その厳しい目の中で、最も得点の高かった優秀なAIロボットを、発表させていただきます!」
ダララララララララララララララララララララララ……
照明が落ち、会場内はドラムロールが鳴り響く。
「今年のAIロボティクス・アワード、栄えある最優秀賞が贈られるAIロボットは…!」
ダン!
「キョウジ・ヒビヤ作、人命救助AIロボット『SUBARU』に決定いたしました!」
最優秀ロボットが決まった瞬間──
会場からは、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
しかし名前を告げられた当の本人、日比谷 恭二は口をあんぐりと開け、手に持っていたグラスを床に落としてしまうのであった。
まさか自分の作ったAIロボットが最優秀賞に選ばれるなどとは、夢にも思っていなかった日比谷は理解が追い付かず、頭の中が真っ白になっていた。
その隣にいた羽倉は、呆然とする日比谷の背中をドンと押す。
「おい、あんまりギャラリーを待たすもんじゃねーぞ。早く舞台に上がれ、本日の主役さんよ。」
そう悪態をついた羽倉であったが、その言葉とは裏腹に表情は嬉しさを隠しきれないといった様子であった。
「ほ…本当に…私なのか…?こんなの…ゆ…夢なんじゃないのか?」
「夢なんかじゃねーよ。お前が今まで積み重ねてきた努力が、ついに実を結んだんだ。しっかりと胸張って、自信持って行ってこい!」
羽倉は、再び日比谷の背中を強く叩いて送り出す。
「う…うわあっ!」
押し出されるような形で歩き始めた日比谷は、覚束ない足取りでヨタヨタと舞台の方へ進む。
周囲を囲っていたギャラリーは、舞台への通り道を作るために左右へよけ、
日比谷はその作られた道を、さながらモーセのように歩いていくのであった。
ようやく壇上に登った日比谷であったが、一息つく間もなく司会者からマイクを向けられる。
「この度はおめでとうございます、Mr.キョウジ・ヒビヤ。まずは最優秀賞を受賞した率直な気持ちをお聞かせ願えますかな?」
「あ、はい。えーと……まさか、自分が選ばれるなんて、思っていませんでしたので…とても驚いております、はい。」
「なるほど!実の所私自身も結果を見た瞬間、驚いてしまいましてね。もちろん、AIロボットの性能は疑いようの余地はありませんよ。『#SUBARU__スバル#』による様々な場所での救助活動は、人々の記憶に新しいですからね。
ただ!驚くべきはこのロボットを開発した、Mr.キョウジ・ヒビヤのその若さ!
まさかまさか!若干20歳の青年がAIロボティクス・アワードの最優秀賞を受賞するとは!
私、長年セレモニーの司会を務めて参りましたが、このようなことはまさに前・代・未・聞!
この結果には私、大変驚きました。そして同時に、AIロボット界の未来を担う若き天才の誕生に感動しておりまして……私、涙を禁じえません!」
感極まった司会者はハンカチで目を拭う。
それを見たギャラリーの声援はよりいっそう強くなった。
「あ…そうですか。その…ありがとうございます。」
いまいちこの雰囲気に乗り切れなかった日比谷は、その後も無難な返答をすることしかできず、早く終わってはくれまいかと、心の中で強く念じ続けるのであった。
そのインタビューの様子を遠巻きに見ていた恭二の兄である誠一は、手に持ったグラスを置き、セレモニー会場を後にする。
今まで自分より下の存在だと思っていた弟に、初めて上を越された誠一は、強い屈辱感を味わっていた。
「何故だ…何故、私ではなく恭二が選ばれた?私の作ったAIロボットのいったいどこがいけなかった?
あいつのものより、私のロボットの方が断然優れているのに…!審査員の目は節穴か?
くそ…今に見てろよ……!世間を黙らせるぐらい、絶対的なAIロボットを作ってやるからな……!」
執念に燃える誠一の目は、どこか凶器を帯びたような鈍い光を放っているのであった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる