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転生編
Report05. 千里眼のオージェ
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「もうすぐ日没か…」
イサミは生ける木々のマルドゥークの上から、沈みゆく異世界の夕日を眺めていた。
「俺がこの世界で何ができるのか、それはまだわからない。まずは俺に課せられたミッションを一つずつこなしていくしかなさそうだ。」
日比谷に言われたことをずっと考えていたイサミであったが、これから探していくしかないという結論に落ち着いていた。
『どうした?何か悩んでいるようだが?』
マルドゥークがイサミを気にして話しかけてくる。
「ああ、俺はここで何が出来るのかということをずっと考えていてな。」
『決まっているだろう。姫様をお守りするのだ。』
「ふっ…確かにその通りだ。当面はそのミッションを遂行することに全力を注ぐよ。」
『…お前は不思議な奴だな。人の気配に敏感な我々に気付かれず侵入してきたり、かと思えば突然姫様の力になりたいとか言い出したり、まるで掴みどころのない奴だ。』
「だが、そんな不思議な奴を何の疑いもなく迎え入れて良かったのか?」
『フハハハハ!お前がそれを言うのか!本当に面白い奴だな!
本来、我々生ける木々は人への警戒心がかなり強いのだが、なぜだろうな?お前には理屈では説明できない妙な信頼感がある。それは他の生ける木々たちも同じように感じているはずだ。だからこそ我々も、そして姫様もお前を受け入れたのだろう。』
「そうか。なんかわからんが、受け入れられているようで何よりだ。その信頼に応えられるように俺もベストを尽くすよ。」
『フハハ!楽しみにしているぞ。イサミよ!』
「ところでマルドゥーク、ひとつ質問なんだがライオンのようなエンブレムの入った黒い軍服、これがどこの国のものかわかるか?」
『ライオン…ライオのことか?ライオのエンブレムに黒い軍服といったら、それはディストリア帝国兵のものであるな。それがどうかしたか?』
「なるほど。じゃあ、あいつらは排除していい奴らってことだな。」
そう言うなり、イサミはマルドゥークから飛び降り、全速力で生ける木々の群れから離れていく。
『おい、イサミ!お前一体どこへ行く⁉︎』
マルドゥークがイサミを止めようとしたが、イサミはさらに加速しながら、生ける木々の群れ全体に聞こえるように大声で言い放つ。
「この群れはディストリア帝国兵に狙われている!お前たちは全速力でこの草原を駆け抜けろ!俺が囮になる!」
生ける木々たちの制止を振り切り、イサミは一人でディストリア帝国兵が潜伏する場所へ攻め込んでいくのであった。
----------------------------------------
「なんだぁ…⁉︎こっちに近づいてくる奴がいる…まさか俺らの存在に気付いたというのか⁉︎」
崖の上でスナイパーライフルを構え、狙撃の体勢に入っていたオージェはイレギュラーな出来事に動揺していた。
「ちぃっ…!だが、たったの一匹だ。下にいる部下たちにそいつを潰してもらうとして、今はあの生ける木々どもをぶち抜く方が先決だ。予定より早いがしょうがない、やるか。」
そう呟いたオージェは、生ける木々の群れに狙いを定め、スナイパーライフルの引き金を引く人差し指に力を込める。
「ぶち抜け。業火の弾丸。」
スナイパーライフルから放たれた炎を纏った弾丸は、赤い流れ星のように日没の空を駆け抜けていく。
しかしー
ドゴオオオオオーーーーン‼︎
生ける木々の群れに届く前に、赤い弾丸は轟音とともに空中で爆散してしまった。
「な、なんだと…弾丸が途中で吹っ飛んだ…?撃ち落とされたとでも言うのか⁉︎この俺の弾丸が⁉︎…まさか…!」
オージェは手に持ったスナイパーライフルを下ろし、崖の下の状況を確認する。
そこには、十数人の自分の部下が草原に倒れ伏し、ライフルの銃身を天高く掲げた少年が一人立っているという、オージェにとっては信じがたい光景が広がっていた。
「あいつ…!たった一人で俺の部下をねじ伏せただけじゃなく、あまつさえ俺の弾丸すらも撃ち落としたっていうのか…!」
この一瞬の間に、全ての出来事に対応したイサミを見て、オージェは戦慄を覚えた。
「こいつは生かしておくと、後々厄介だ…今ここで、確実に仕留める。」
オージェは再びスナイパーライフルを構え、狙撃の体勢に入る。
しかし、イサミに照準を合わせた瞬間、オージェの全身から冷や汗が噴き出した。
遠く離れているにも関わらず、そのイサミの眼は確実にオージェを捉えていたのであった。
「こいつ…!この距離で俺に気づいているのか…!ちっ…こっちに来やがる。」
イサミはオージェの姿を捉えると、全速力で崖の上を目指した。
背中に装備したバックパックからアンカーを射出し、崖の岩肌に引っ掛けながらイサミは器用に崖を登っていく。
そして、ものの数秒もしないうちにオージェのいる崖の上に到着するのであった。
それに対してオージェは逃げも隠れもせず、自分を倒しに来た男を興味深そうにまじまじと見つめていた。
「あんたが、下にいる兵士たちの大将か?」
イサミは顔色一つ変えず、自分をまじまじと見つめる男に尋ねる。
「ああ…ま、そんなとこだ。それより俺からもひとつ質問していいかぁ?どうしてこっちの奇襲に気づいた?」
「えーと…勘、だな。」
イサミはここでもひとつ嘘をついた。
イサミには、360度全てを見渡せる全天視界モニターが搭載されており、半径10km圏内であれば、モニターに映る情報は全て把握することができるのであった。
そのモニターは例え夜間であっても、その姿を鮮明に映し出す。だからこそ、ディストリア帝国軍の存在に気づけたのである。
「ククク…ハーッハッハッハ‼︎勘?勘だと⁉︎…面白い奴だな!」
突拍子もないイサミの回答に、オージェは思わず大笑いする。しかし、
すかさず手に持ったライフルの銃口を、イサミの頭部に突き立てた。
「だが、大人をからかい過ぎだな。真面目に答えねぇと首から上を吹き飛ばす。貴様…一体何者だぁ?」
「敵であるお前に、俺の素性を明かす必要性を全く感じないな。それともこれは脅しているつもりなのか?」
「けっ…ガキのくせに可愛げのねぇ奴だ…まあ、いいだろう。貴様についてはこれ以上詮索はしない。」
脅しが通用しないと悟ったオージェは、頭部に突き立てたライフルを地面に下ろす。
「話が分かるようで助かる。」
「勘違いするなよ。詮索する必要がもう無いって意味だ。」
そう言うなり、オージェは地面に向けてライフルを4発ほど発砲した。
「お前…一体何をしている?」
「それこそ、貴様に話す必要はない。」
オージェは、イサミが先程発した言葉をそっくりそのまま返し、不敵な笑みを浮かべた。
その直後、
地面から突如として4発の銃弾が飛び出し、イサミに襲いかかってきたのであった。
「…!地面から銃弾だと?」
「自動追尾の弾丸。弾丸が地面の中を自由に泳ぎ回り、死角からの攻撃を可能にする。そしてこの自動追尾弾を避け切った奴は、今まで一人としていないのだよ。」
意表をつかれたイサミは、防御態勢を取ろうとしたが間に合わず、両足と両腕にそれぞれ1発ずつ被弾してしまった。
「くっ…当たってしまったか…!」
「あーあーあー、じゃあ貴様はおしまいだな。なんせこの弾丸には毒蛇龍の牙から抽出した猛毒が塗り込んである。傷口から一瞬にして毒が全身に広がり、激痛に苛まれながら、やがて死に至る。
俺様を愚弄した罰だ。苦しみながら死んでいけ!ハハハハハ!」
高笑いしながら勝ち誇るオージェに、イサミはひとつの質問をぶつける。
「もっと簡単に、手早く殺す方法なんていくらでもあるのに、なぜお前はわざわざ毒殺などという回りくどい方法を取るんだ?」
「なぜかって?そりゃあ、貴様が激痛に叫びながら死んでいく様を見たいからに決まってるだろう!ここまで散々この俺様をコケにしてきたんだ!
早く俺様に苦痛に歪む顔を見せろ!叫び声を聞かせろよ!さあ!」
その答えを聞いたイサミは「そうか」と呟いた後、ひとつため息をつき、腰に差した鞘からゆっくりと刀を抜く。
「やはり、俺にはまだ人間というものがよくわからない。だが、お前は倒してしまっても構わない人間だってのは、なんとなく分かる。」
「あぁ?何言ってんだ?てか…何で貴様動けて…」
「いい。お前はもう喋るな。」
イサミはオージェの言葉を遮り、手に持った刀を構える。
「日比谷流百式奥義其ノ一、瞬光。」
一瞬の風切り音の後、崖の上には数秒間の沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、先程まで勝ち誇っていたオージェだった。
「な…んで、毒は…既に全身に回っている…はずなのに…」
イサミは丁寧な所作で、刀を鞘に戻す。
「驚いたな。峰打ちで完全に意識を断ち切ったと思ったが、まだ喋れたのか。」
「く…そ…。この千里眼の…オージェ…が、こんなガキに…負ける…なん…て…」
そこまで言った所で、オージェの意識は途切れた。
「千里眼…か。俺を毒でじわじわ殺してやろうって算段だったんだろうが、ずいぶんと見通しが甘かったようだな。」
イサミは気絶したオージェを一瞥し、崖の上からソニアたちの現在地を確認する。
「よし、草原地帯は抜けたようだな。さて、俺も合流するか。」
崖から飛び降りようとしたイサミであったが、オージェの横に落ちているスナイパーライフルに目が止まる。
「ふむ…一応もらっておくか。」
イサミはオージェのライフルを担ぎ、改めてソニアたちの元へ向かうのであった。
イサミは生ける木々のマルドゥークの上から、沈みゆく異世界の夕日を眺めていた。
「俺がこの世界で何ができるのか、それはまだわからない。まずは俺に課せられたミッションを一つずつこなしていくしかなさそうだ。」
日比谷に言われたことをずっと考えていたイサミであったが、これから探していくしかないという結論に落ち着いていた。
『どうした?何か悩んでいるようだが?』
マルドゥークがイサミを気にして話しかけてくる。
「ああ、俺はここで何が出来るのかということをずっと考えていてな。」
『決まっているだろう。姫様をお守りするのだ。』
「ふっ…確かにその通りだ。当面はそのミッションを遂行することに全力を注ぐよ。」
『…お前は不思議な奴だな。人の気配に敏感な我々に気付かれず侵入してきたり、かと思えば突然姫様の力になりたいとか言い出したり、まるで掴みどころのない奴だ。』
「だが、そんな不思議な奴を何の疑いもなく迎え入れて良かったのか?」
『フハハハハ!お前がそれを言うのか!本当に面白い奴だな!
本来、我々生ける木々は人への警戒心がかなり強いのだが、なぜだろうな?お前には理屈では説明できない妙な信頼感がある。それは他の生ける木々たちも同じように感じているはずだ。だからこそ我々も、そして姫様もお前を受け入れたのだろう。』
「そうか。なんかわからんが、受け入れられているようで何よりだ。その信頼に応えられるように俺もベストを尽くすよ。」
『フハハ!楽しみにしているぞ。イサミよ!』
「ところでマルドゥーク、ひとつ質問なんだがライオンのようなエンブレムの入った黒い軍服、これがどこの国のものかわかるか?」
『ライオン…ライオのことか?ライオのエンブレムに黒い軍服といったら、それはディストリア帝国兵のものであるな。それがどうかしたか?』
「なるほど。じゃあ、あいつらは排除していい奴らってことだな。」
そう言うなり、イサミはマルドゥークから飛び降り、全速力で生ける木々の群れから離れていく。
『おい、イサミ!お前一体どこへ行く⁉︎』
マルドゥークがイサミを止めようとしたが、イサミはさらに加速しながら、生ける木々の群れ全体に聞こえるように大声で言い放つ。
「この群れはディストリア帝国兵に狙われている!お前たちは全速力でこの草原を駆け抜けろ!俺が囮になる!」
生ける木々たちの制止を振り切り、イサミは一人でディストリア帝国兵が潜伏する場所へ攻め込んでいくのであった。
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「なんだぁ…⁉︎こっちに近づいてくる奴がいる…まさか俺らの存在に気付いたというのか⁉︎」
崖の上でスナイパーライフルを構え、狙撃の体勢に入っていたオージェはイレギュラーな出来事に動揺していた。
「ちぃっ…!だが、たったの一匹だ。下にいる部下たちにそいつを潰してもらうとして、今はあの生ける木々どもをぶち抜く方が先決だ。予定より早いがしょうがない、やるか。」
そう呟いたオージェは、生ける木々の群れに狙いを定め、スナイパーライフルの引き金を引く人差し指に力を込める。
「ぶち抜け。業火の弾丸。」
スナイパーライフルから放たれた炎を纏った弾丸は、赤い流れ星のように日没の空を駆け抜けていく。
しかしー
ドゴオオオオオーーーーン‼︎
生ける木々の群れに届く前に、赤い弾丸は轟音とともに空中で爆散してしまった。
「な、なんだと…弾丸が途中で吹っ飛んだ…?撃ち落とされたとでも言うのか⁉︎この俺の弾丸が⁉︎…まさか…!」
オージェは手に持ったスナイパーライフルを下ろし、崖の下の状況を確認する。
そこには、十数人の自分の部下が草原に倒れ伏し、ライフルの銃身を天高く掲げた少年が一人立っているという、オージェにとっては信じがたい光景が広がっていた。
「あいつ…!たった一人で俺の部下をねじ伏せただけじゃなく、あまつさえ俺の弾丸すらも撃ち落としたっていうのか…!」
この一瞬の間に、全ての出来事に対応したイサミを見て、オージェは戦慄を覚えた。
「こいつは生かしておくと、後々厄介だ…今ここで、確実に仕留める。」
オージェは再びスナイパーライフルを構え、狙撃の体勢に入る。
しかし、イサミに照準を合わせた瞬間、オージェの全身から冷や汗が噴き出した。
遠く離れているにも関わらず、そのイサミの眼は確実にオージェを捉えていたのであった。
「こいつ…!この距離で俺に気づいているのか…!ちっ…こっちに来やがる。」
イサミはオージェの姿を捉えると、全速力で崖の上を目指した。
背中に装備したバックパックからアンカーを射出し、崖の岩肌に引っ掛けながらイサミは器用に崖を登っていく。
そして、ものの数秒もしないうちにオージェのいる崖の上に到着するのであった。
それに対してオージェは逃げも隠れもせず、自分を倒しに来た男を興味深そうにまじまじと見つめていた。
「あんたが、下にいる兵士たちの大将か?」
イサミは顔色一つ変えず、自分をまじまじと見つめる男に尋ねる。
「ああ…ま、そんなとこだ。それより俺からもひとつ質問していいかぁ?どうしてこっちの奇襲に気づいた?」
「えーと…勘、だな。」
イサミはここでもひとつ嘘をついた。
イサミには、360度全てを見渡せる全天視界モニターが搭載されており、半径10km圏内であれば、モニターに映る情報は全て把握することができるのであった。
そのモニターは例え夜間であっても、その姿を鮮明に映し出す。だからこそ、ディストリア帝国軍の存在に気づけたのである。
「ククク…ハーッハッハッハ‼︎勘?勘だと⁉︎…面白い奴だな!」
突拍子もないイサミの回答に、オージェは思わず大笑いする。しかし、
すかさず手に持ったライフルの銃口を、イサミの頭部に突き立てた。
「だが、大人をからかい過ぎだな。真面目に答えねぇと首から上を吹き飛ばす。貴様…一体何者だぁ?」
「敵であるお前に、俺の素性を明かす必要性を全く感じないな。それともこれは脅しているつもりなのか?」
「けっ…ガキのくせに可愛げのねぇ奴だ…まあ、いいだろう。貴様についてはこれ以上詮索はしない。」
脅しが通用しないと悟ったオージェは、頭部に突き立てたライフルを地面に下ろす。
「話が分かるようで助かる。」
「勘違いするなよ。詮索する必要がもう無いって意味だ。」
そう言うなり、オージェは地面に向けてライフルを4発ほど発砲した。
「お前…一体何をしている?」
「それこそ、貴様に話す必要はない。」
オージェは、イサミが先程発した言葉をそっくりそのまま返し、不敵な笑みを浮かべた。
その直後、
地面から突如として4発の銃弾が飛び出し、イサミに襲いかかってきたのであった。
「…!地面から銃弾だと?」
「自動追尾の弾丸。弾丸が地面の中を自由に泳ぎ回り、死角からの攻撃を可能にする。そしてこの自動追尾弾を避け切った奴は、今まで一人としていないのだよ。」
意表をつかれたイサミは、防御態勢を取ろうとしたが間に合わず、両足と両腕にそれぞれ1発ずつ被弾してしまった。
「くっ…当たってしまったか…!」
「あーあーあー、じゃあ貴様はおしまいだな。なんせこの弾丸には毒蛇龍の牙から抽出した猛毒が塗り込んである。傷口から一瞬にして毒が全身に広がり、激痛に苛まれながら、やがて死に至る。
俺様を愚弄した罰だ。苦しみながら死んでいけ!ハハハハハ!」
高笑いしながら勝ち誇るオージェに、イサミはひとつの質問をぶつける。
「もっと簡単に、手早く殺す方法なんていくらでもあるのに、なぜお前はわざわざ毒殺などという回りくどい方法を取るんだ?」
「なぜかって?そりゃあ、貴様が激痛に叫びながら死んでいく様を見たいからに決まってるだろう!ここまで散々この俺様をコケにしてきたんだ!
早く俺様に苦痛に歪む顔を見せろ!叫び声を聞かせろよ!さあ!」
その答えを聞いたイサミは「そうか」と呟いた後、ひとつため息をつき、腰に差した鞘からゆっくりと刀を抜く。
「やはり、俺にはまだ人間というものがよくわからない。だが、お前は倒してしまっても構わない人間だってのは、なんとなく分かる。」
「あぁ?何言ってんだ?てか…何で貴様動けて…」
「いい。お前はもう喋るな。」
イサミはオージェの言葉を遮り、手に持った刀を構える。
「日比谷流百式奥義其ノ一、瞬光。」
一瞬の風切り音の後、崖の上には数秒間の沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、先程まで勝ち誇っていたオージェだった。
「な…んで、毒は…既に全身に回っている…はずなのに…」
イサミは丁寧な所作で、刀を鞘に戻す。
「驚いたな。峰打ちで完全に意識を断ち切ったと思ったが、まだ喋れたのか。」
「く…そ…。この千里眼の…オージェ…が、こんなガキに…負ける…なん…て…」
そこまで言った所で、オージェの意識は途切れた。
「千里眼…か。俺を毒でじわじわ殺してやろうって算段だったんだろうが、ずいぶんと見通しが甘かったようだな。」
イサミは気絶したオージェを一瞥し、崖の上からソニアたちの現在地を確認する。
「よし、草原地帯は抜けたようだな。さて、俺も合流するか。」
崖から飛び降りようとしたイサミであったが、オージェの横に落ちているスナイパーライフルに目が止まる。
「ふむ…一応もらっておくか。」
イサミはオージェのライフルを担ぎ、改めてソニアたちの元へ向かうのであった。
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