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NNTC合宿編
第九十話 娯楽室
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「みなさん!この後、娯楽室に行ってみませんか?」
ホテルでの夕食の場で、九条は突然チームメイト全員に呼びかけた。
「娯楽室?この施設にそんな所があるのか?」
修人の質問に対して、九条は小さく頷く。
「はい!この施設の地下にあるんですよ。娯楽室にはスポーツに因んだ様々なゲームが用意されていて、選手たちの気分転換の場所になっているんです。」
「ほほう?つまりそこでは、ゲーム感覚で色んなスポーツが楽しめるってことッスね?」
ゲームというワードにいち早く反応した宇田川の目はキラキラと輝いている。
「はい、そーゆーことです!みんなこの合宿中はずっとサッカーに集中してたから、息抜きがてらどうかなと思ったんですけど……どうですか?監督?」
九条は遠慮がちに修人の方をチラリと見る。
「ああ、別に構わないぞ。俺も興味あるし一緒に行くよ。ただ、はしゃぎ過ぎて怪我だけはするなよ。」
「「「はーい!」」」
こうして満場一致で賛成となり、桜ヶ峰一行は地下にある娯楽室へと向かうのであった。
---------------------------------------
NINEナショナルトレーニングセンターの娯楽室。
「おいおいおい……マジかよ。」
修人は目に映る光景に思わず息を飲む。
そこには、テレビのスポーツバラエティ番組で見るような巨大なアトラクションがずらずらと立ち並んでいた。
アトラクションはスポーツごとに区分けされており、
サッカーでいうと、ゴールマウスに番号の的が張られたキックターゲットを楽しめるエリアや、さらには『バブル』というやわらかい球体を装着してサッカーをする、バブルサッカーエリアなど、
サッカーだけでも様々な娯楽が用意されているのであった。
もちろん他のスポーツも同様に多数のエリアが存在し、スポーツ選手たちは思い思いにアトラクションを楽しんでいるのであった。
「娯楽室……っていうかさ。これ、地下に作られた巨大テーマパークだよね?」
小宮山が言う通り、娯楽室というにはあまりにも巨大なスケールに、九条を除く桜ヶ峰の選手たちは言葉を失っていた。
この施設の案内人の九条は全員の反応を見て、苦笑いを浮かべる。
「ははは……この娯楽室は半分父の趣味みたいなもので、半ば強引に押し切って作った場所なんです。」
「確かに、建物の外観と比べるとこの場所だけ世界観が違うもんなあ。本当に遊園地にきたみたいだ。」
「さすがNINEグループの代表……!やることのスケールの大きさが半端じゃないッス!」
娯楽室の充実具合に各々が感動する一方で、犬塚は早く遊びに行きたくてうずうずしていた。
「もう我慢できないっ!私、キックターゲットやってくるーーーーーー!」
そう言って犬塚は、自慢の脚力でその場から走り去ってしまう。
「あっ、こら!京子!ちょっと待ちなさーーーーい!」
「やれやれ……まっ、とりあえず私たちはキックターゲットで遊んでるからさ、なんかあったら連絡ちょうだいね片桐監督。」
そう言い残して、楓と呉も犬塚を追って行ってしまうのであった。
「全く……俺は引率の先生じゃないっつーのに。まあ、なんだ。とりあえず、一時間後にここに集合しよう。それまではみんな自由に遊んできていいぞ。」
「「「はーい。」」」
修人の許可を合図に、皆それぞれ興味のある場所へと散っていく。
「さてさて……俺はどこに行こうかなーー……」
修人は皆の前では平静を装っていたものの、内心ではかなりテンションが上がっており、ウキウキ気分で娯楽室のフロアマップを眺めていた。
「修兄ちゃん。」
「ん?」
名前を呼ばれ、修人はクルリと後ろを振り向く。
そこには、ほんのりと顔を赤らめた仙崎 花恋が立っていた。
「どうした花恋?皆と一緒に遊んできていいぞ。」
「え…あ、その……ね。」
花恋はどこかもじもじと恥ずかしそうにしており、
自分の服の裾をギュッと強く握っていた。
「え…えっとね……もし修兄ちゃんが嫌じゃなかったら、私と一緒にアトラクション回らない?」
花恋のお誘いに、修人の顔がパッと明るくなる。
「ああ!もちろん!一人だとちょっと心細かったから、誘ってくれて嬉しいぜ!」
「え!ホントに……!えへへへへ……私も修兄ちゃんと一緒に回れて嬉しいよ……!」
修人が快諾してくれた嬉しさで、花恋は満面の笑顔になる。
「よっし!じゃあ、どこから行こうか?花恋はどこか気になるアトラクションある?」
「え……うーんそうだなあ。回りながら決めようと思ってるから、修兄ちゃんが先に決めていいよ!」
「ん?そうか?そうだな……じゃあ、まずは野球のエリアに行ってみるか!そこに面白そうなバッティングのアトラクションがあるんだ。ほら、こっちこっち!」
「あっ!ちょっと待ってよー。」
少年のように無邪気に笑う修人を追いながら、花恋は人知れず小さくガッツポーズをするのであった。
---------------------------------------
娯楽室【サッカーエリア:キックターゲットアトラクション】
「ふっ!」
呉は足元に転がるボールを、思い切り振りぬく。
そのボールは、ゴール右上の小さな的へ飛んでいき、
バアン!
見事、ターゲットとなる的へと命中。
その直後、
『PERFECT!!!YOU ARE FANTASTIC!!!』
機械音声でパーフェクト達成を告げる音声が流れ、後ろで見ていたギャラリーから大きな歓声があがるのであった。
「すごい!すごーーーい!さっすが泉美ちゃんだね!」
「……ふーん、なかなかやるじゃない。」
呉のパーフェクト達成に、犬塚と楓が手放しで褒めたたえる。
それに応えるように呉はドヤ顔で、右手の人差し指を天高く掲げるのであった。
「へっへー!ま、私の実力なら当然っちゃ当然かな!」
「まったく、その自信家な所が無ければもうちょっと可愛げがあるのに。」
楓が呉に対して、ぼそっと悪態をつく。
「なんだと楓ぇ!」
「なによお。本当のことじゃない。」
「まーまー、二人とも落ち着いて落ち着いて。」
二人の痴話げんかを仲裁しようと、犬塚が手慣れた様子で割って入る。
最近はこの3人でつるむことが多く、二人の喧嘩を犬塚が仲裁するというのがお馴染みの光景と化しているのであった。
その様子を、少し離れた場所から覗く一人の男がいた。
「ほーん……あれが呉 泉美か。なかなか面白そうな奴やないか。」
その男、U-18日本代表の名取 慶次は呉を見て、ニヤリとほくそ笑むのであった。
ホテルでの夕食の場で、九条は突然チームメイト全員に呼びかけた。
「娯楽室?この施設にそんな所があるのか?」
修人の質問に対して、九条は小さく頷く。
「はい!この施設の地下にあるんですよ。娯楽室にはスポーツに因んだ様々なゲームが用意されていて、選手たちの気分転換の場所になっているんです。」
「ほほう?つまりそこでは、ゲーム感覚で色んなスポーツが楽しめるってことッスね?」
ゲームというワードにいち早く反応した宇田川の目はキラキラと輝いている。
「はい、そーゆーことです!みんなこの合宿中はずっとサッカーに集中してたから、息抜きがてらどうかなと思ったんですけど……どうですか?監督?」
九条は遠慮がちに修人の方をチラリと見る。
「ああ、別に構わないぞ。俺も興味あるし一緒に行くよ。ただ、はしゃぎ過ぎて怪我だけはするなよ。」
「「「はーい!」」」
こうして満場一致で賛成となり、桜ヶ峰一行は地下にある娯楽室へと向かうのであった。
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NINEナショナルトレーニングセンターの娯楽室。
「おいおいおい……マジかよ。」
修人は目に映る光景に思わず息を飲む。
そこには、テレビのスポーツバラエティ番組で見るような巨大なアトラクションがずらずらと立ち並んでいた。
アトラクションはスポーツごとに区分けされており、
サッカーでいうと、ゴールマウスに番号の的が張られたキックターゲットを楽しめるエリアや、さらには『バブル』というやわらかい球体を装着してサッカーをする、バブルサッカーエリアなど、
サッカーだけでも様々な娯楽が用意されているのであった。
もちろん他のスポーツも同様に多数のエリアが存在し、スポーツ選手たちは思い思いにアトラクションを楽しんでいるのであった。
「娯楽室……っていうかさ。これ、地下に作られた巨大テーマパークだよね?」
小宮山が言う通り、娯楽室というにはあまりにも巨大なスケールに、九条を除く桜ヶ峰の選手たちは言葉を失っていた。
この施設の案内人の九条は全員の反応を見て、苦笑いを浮かべる。
「ははは……この娯楽室は半分父の趣味みたいなもので、半ば強引に押し切って作った場所なんです。」
「確かに、建物の外観と比べるとこの場所だけ世界観が違うもんなあ。本当に遊園地にきたみたいだ。」
「さすがNINEグループの代表……!やることのスケールの大きさが半端じゃないッス!」
娯楽室の充実具合に各々が感動する一方で、犬塚は早く遊びに行きたくてうずうずしていた。
「もう我慢できないっ!私、キックターゲットやってくるーーーーーー!」
そう言って犬塚は、自慢の脚力でその場から走り去ってしまう。
「あっ、こら!京子!ちょっと待ちなさーーーーい!」
「やれやれ……まっ、とりあえず私たちはキックターゲットで遊んでるからさ、なんかあったら連絡ちょうだいね片桐監督。」
そう言い残して、楓と呉も犬塚を追って行ってしまうのであった。
「全く……俺は引率の先生じゃないっつーのに。まあ、なんだ。とりあえず、一時間後にここに集合しよう。それまではみんな自由に遊んできていいぞ。」
「「「はーい。」」」
修人の許可を合図に、皆それぞれ興味のある場所へと散っていく。
「さてさて……俺はどこに行こうかなーー……」
修人は皆の前では平静を装っていたものの、内心ではかなりテンションが上がっており、ウキウキ気分で娯楽室のフロアマップを眺めていた。
「修兄ちゃん。」
「ん?」
名前を呼ばれ、修人はクルリと後ろを振り向く。
そこには、ほんのりと顔を赤らめた仙崎 花恋が立っていた。
「どうした花恋?皆と一緒に遊んできていいぞ。」
「え…あ、その……ね。」
花恋はどこかもじもじと恥ずかしそうにしており、
自分の服の裾をギュッと強く握っていた。
「え…えっとね……もし修兄ちゃんが嫌じゃなかったら、私と一緒にアトラクション回らない?」
花恋のお誘いに、修人の顔がパッと明るくなる。
「ああ!もちろん!一人だとちょっと心細かったから、誘ってくれて嬉しいぜ!」
「え!ホントに……!えへへへへ……私も修兄ちゃんと一緒に回れて嬉しいよ……!」
修人が快諾してくれた嬉しさで、花恋は満面の笑顔になる。
「よっし!じゃあ、どこから行こうか?花恋はどこか気になるアトラクションある?」
「え……うーんそうだなあ。回りながら決めようと思ってるから、修兄ちゃんが先に決めていいよ!」
「ん?そうか?そうだな……じゃあ、まずは野球のエリアに行ってみるか!そこに面白そうなバッティングのアトラクションがあるんだ。ほら、こっちこっち!」
「あっ!ちょっと待ってよー。」
少年のように無邪気に笑う修人を追いながら、花恋は人知れず小さくガッツポーズをするのであった。
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娯楽室【サッカーエリア:キックターゲットアトラクション】
「ふっ!」
呉は足元に転がるボールを、思い切り振りぬく。
そのボールは、ゴール右上の小さな的へ飛んでいき、
バアン!
見事、ターゲットとなる的へと命中。
その直後、
『PERFECT!!!YOU ARE FANTASTIC!!!』
機械音声でパーフェクト達成を告げる音声が流れ、後ろで見ていたギャラリーから大きな歓声があがるのであった。
「すごい!すごーーーい!さっすが泉美ちゃんだね!」
「……ふーん、なかなかやるじゃない。」
呉のパーフェクト達成に、犬塚と楓が手放しで褒めたたえる。
それに応えるように呉はドヤ顔で、右手の人差し指を天高く掲げるのであった。
「へっへー!ま、私の実力なら当然っちゃ当然かな!」
「まったく、その自信家な所が無ければもうちょっと可愛げがあるのに。」
楓が呉に対して、ぼそっと悪態をつく。
「なんだと楓ぇ!」
「なによお。本当のことじゃない。」
「まーまー、二人とも落ち着いて落ち着いて。」
二人の痴話げんかを仲裁しようと、犬塚が手慣れた様子で割って入る。
最近はこの3人でつるむことが多く、二人の喧嘩を犬塚が仲裁するというのがお馴染みの光景と化しているのであった。
その様子を、少し離れた場所から覗く一人の男がいた。
「ほーん……あれが呉 泉美か。なかなか面白そうな奴やないか。」
その男、U-18日本代表の名取 慶次は呉を見て、ニヤリとほくそ笑むのであった。
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