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NNTC合宿編
第六十九話 A代表 VS U18代表
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『まさか、こんな形で日本代表の監督になるとはな……。』
A代表の選手たちが集まるロッカールーム。
森谷に頼まれ代理監督となった片桐武人は、突然の出来事に困惑していた。
そこに、とある一人の選手が武人に声をかける。
「この試合のこと、黙っていてすみませんでした、武人さん。」
「……斗真か。」
教え子である三剣が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「まったく俺をハメやがって。で?どうしてこのことを秘密にしていたんだ?」
「森谷監督に口止めされてまして……。サプライズな演出にしたかったらしいッスよー。」
「ちっ、あの野郎…。」
苦言を呈す武人に同意するように、三剣も小さく頷いた。
「正直ボクもこの試合、あまり乗り気じゃなくてですねー。だから、修人たちの所に逃げてたんですよー。」
「お前なあ。」
呆れたようにため息を吐く武人。
しかし、他の代表選手たちがいるということもあったので、武人はすぐに気持ちを切り替えて、その場にいる選手たちに招集をかける。
これはチャンスと、捉えよう。
武人はそう思うことにした。
というのも、武人自身もゆくゆくは代表監督というものを経験したいと考えていたからである。
しかし、監督としての経験はまだまだ浅く、東京ユナイテッドの監督に就任してからも、いまだクラブにタイトルをもたらすことができないでいた。
もちろん、クラブの監督をステップアップの踏み台にしているつもりなど毛頭ない。
東京ユナイテッドというクラブにタイトルをもたらす為、日夜練習メニューや試合の対策を必死で考えていた。
その中で、不本意ながらも転がり込んできたA代表の代理監督の依頼。
今まで率いてきたクラブとは全く異なる環境の中で、自分はどこまでやれるのだろうか?
そう考えた時に、口から思わず笑みが溢れた。
『いいだろう。こうなったからには、とことんまでやってやろうじゃないか。』
監督としての成長に繋がることは間違いない。
武人はそう確信し、今自分の目の前にいる代表戦士たちに力強く言い放つ。
「さあ、アンダー18のひよっこたちに、格の違いを見せつけに行こうか。」
---------------------------------------
「うわー!すっごい広いグラウンド!これがホントに第二なの!?」
第二グラウンドの広大さを目の当たりにした犬塚は、興奮気味に声をあげる。
桜ヶ峰一行は武人に言われた通り、第二グラウンドへとやってきていた。
「ねぇ、監督。武人さんに招かれたはいいのだけど、私たちここにいればいいのかしら?」
鞍月は修人に尋ねる。
「ああ、正直どんな練習をするのか全く聞いてないからな…。とりあえずここで様子を見ていよう。」
「おっ、選手たちが出てきたみたいだよ。」
第二グラウンドに姿を現すアンダー18の日本代表の戦士たち。
その中には、何人かの顔見知りがいた。
先頭を切って、いの一番に芝を踏んだのは、不動のセンターフォワードである火野英翔。
それに続き、ディフェンスの要である仙崎 洋一郎、さらには副キャプテンの麻上の姿もあった。
「あっ!麻上さんもいる!お世話になった人がいると、なんか嬉しいね!」
次々とグラウンドへとやってくる選手たち。
その最後には、一際目を引く大男の姿があった。
「あっ!あれって……!」
「寛ちゃん先生がいるッス!おーーい!寛ちゃーーーーん!」
宇田川はその大男、折場寛治に向かって大声で呼びかける。
それに気づいた折場は、驚きのあまり目を見開いた。
「なっ…!?なんでここに宇田川がいるんじゃあっ!?」
折場に向けられた女性の声援に対して、チームメイトの一人が冷やかしを入れる。
「なんや、折場。お前彼女持ちやったんかい。お堅そうに見えて、なかなか隅におけんやっちゃのー。」
「ばっ…!馬鹿を言え名取!あいつとはただの師弟関係ってだけじゃい!」
「ほーん。それにしちゃ、ずいぶんフランクな呼ばれ方されてるみたいやけど……まっ、そーゆーことにしといたるわ。」
名取と呼ばれた関西弁の男はやれやれと言わんばかりに肩をすくめるのであった。
「森谷監督……!結構大きくメンバーを入れ替えてきたな。まさか折場が代表に呼ばれているなんて。」
修人は自分がいた時とは大きく異なるメンバー選考に驚きを隠せずにいた。
「でも、私は納得ッスよ!寛ちゃん先生ほどのキーパーが今まで選ばれてなかったのが逆におかしいッスもん!」
「ま…それも確かにそうかあ。」
力強く熱弁する宇田川に、不思議と修人は納得してしまう。
名門、無名関係なく、古今東西さまざまな場所へ自ら赴き、才能ある選手を発掘する。
それが、森谷 千里という男であることを知っていたからだ。
おそらく、梁山高校にも視察に訪れていたのだろう。
しかし、あの頑固な折場を代表に呼ぶとは、流石のスカウティング能力だと言わざるを得ない。
『頑張れよ、寛治。』
修人は心の中で折場にエールを送るのであった。
「ん?あれ?まだ選手が出てくるみたいだよ……って、あれ!?あの人三剣さんじゃない?」
辻本が先ほどまで一緒にいた、三剣の姿を捉えた。
「ちょっと待って……他の人も……今A代表に選ばれてる選手ばかりじゃない!」
アンダー18の選手たちと対峙するようにグラウンドに立つ、三剣をはじめとするA代表の選手たち。
そして最後に、それぞれのチームの監督である森谷と武人が姿を現す。
「おいおい、まさかこれって……」
矢切が興奮を隠しきれない様子で修人を見る。
「ああ…おそらくだが、A代表 VS アンダー18の試合を今からやるようだ。こいつは楽しくなってきたぞ……!」
修人もまた、これから起こるであろう出来事に目を爛々と輝かせるのであった。
A代表の選手たちが集まるロッカールーム。
森谷に頼まれ代理監督となった片桐武人は、突然の出来事に困惑していた。
そこに、とある一人の選手が武人に声をかける。
「この試合のこと、黙っていてすみませんでした、武人さん。」
「……斗真か。」
教え子である三剣が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「まったく俺をハメやがって。で?どうしてこのことを秘密にしていたんだ?」
「森谷監督に口止めされてまして……。サプライズな演出にしたかったらしいッスよー。」
「ちっ、あの野郎…。」
苦言を呈す武人に同意するように、三剣も小さく頷いた。
「正直ボクもこの試合、あまり乗り気じゃなくてですねー。だから、修人たちの所に逃げてたんですよー。」
「お前なあ。」
呆れたようにため息を吐く武人。
しかし、他の代表選手たちがいるということもあったので、武人はすぐに気持ちを切り替えて、その場にいる選手たちに招集をかける。
これはチャンスと、捉えよう。
武人はそう思うことにした。
というのも、武人自身もゆくゆくは代表監督というものを経験したいと考えていたからである。
しかし、監督としての経験はまだまだ浅く、東京ユナイテッドの監督に就任してからも、いまだクラブにタイトルをもたらすことができないでいた。
もちろん、クラブの監督をステップアップの踏み台にしているつもりなど毛頭ない。
東京ユナイテッドというクラブにタイトルをもたらす為、日夜練習メニューや試合の対策を必死で考えていた。
その中で、不本意ながらも転がり込んできたA代表の代理監督の依頼。
今まで率いてきたクラブとは全く異なる環境の中で、自分はどこまでやれるのだろうか?
そう考えた時に、口から思わず笑みが溢れた。
『いいだろう。こうなったからには、とことんまでやってやろうじゃないか。』
監督としての成長に繋がることは間違いない。
武人はそう確信し、今自分の目の前にいる代表戦士たちに力強く言い放つ。
「さあ、アンダー18のひよっこたちに、格の違いを見せつけに行こうか。」
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「うわー!すっごい広いグラウンド!これがホントに第二なの!?」
第二グラウンドの広大さを目の当たりにした犬塚は、興奮気味に声をあげる。
桜ヶ峰一行は武人に言われた通り、第二グラウンドへとやってきていた。
「ねぇ、監督。武人さんに招かれたはいいのだけど、私たちここにいればいいのかしら?」
鞍月は修人に尋ねる。
「ああ、正直どんな練習をするのか全く聞いてないからな…。とりあえずここで様子を見ていよう。」
「おっ、選手たちが出てきたみたいだよ。」
第二グラウンドに姿を現すアンダー18の日本代表の戦士たち。
その中には、何人かの顔見知りがいた。
先頭を切って、いの一番に芝を踏んだのは、不動のセンターフォワードである火野英翔。
それに続き、ディフェンスの要である仙崎 洋一郎、さらには副キャプテンの麻上の姿もあった。
「あっ!麻上さんもいる!お世話になった人がいると、なんか嬉しいね!」
次々とグラウンドへとやってくる選手たち。
その最後には、一際目を引く大男の姿があった。
「あっ!あれって……!」
「寛ちゃん先生がいるッス!おーーい!寛ちゃーーーーん!」
宇田川はその大男、折場寛治に向かって大声で呼びかける。
それに気づいた折場は、驚きのあまり目を見開いた。
「なっ…!?なんでここに宇田川がいるんじゃあっ!?」
折場に向けられた女性の声援に対して、チームメイトの一人が冷やかしを入れる。
「なんや、折場。お前彼女持ちやったんかい。お堅そうに見えて、なかなか隅におけんやっちゃのー。」
「ばっ…!馬鹿を言え名取!あいつとはただの師弟関係ってだけじゃい!」
「ほーん。それにしちゃ、ずいぶんフランクな呼ばれ方されてるみたいやけど……まっ、そーゆーことにしといたるわ。」
名取と呼ばれた関西弁の男はやれやれと言わんばかりに肩をすくめるのであった。
「森谷監督……!結構大きくメンバーを入れ替えてきたな。まさか折場が代表に呼ばれているなんて。」
修人は自分がいた時とは大きく異なるメンバー選考に驚きを隠せずにいた。
「でも、私は納得ッスよ!寛ちゃん先生ほどのキーパーが今まで選ばれてなかったのが逆におかしいッスもん!」
「ま…それも確かにそうかあ。」
力強く熱弁する宇田川に、不思議と修人は納得してしまう。
名門、無名関係なく、古今東西さまざまな場所へ自ら赴き、才能ある選手を発掘する。
それが、森谷 千里という男であることを知っていたからだ。
おそらく、梁山高校にも視察に訪れていたのだろう。
しかし、あの頑固な折場を代表に呼ぶとは、流石のスカウティング能力だと言わざるを得ない。
『頑張れよ、寛治。』
修人は心の中で折場にエールを送るのであった。
「ん?あれ?まだ選手が出てくるみたいだよ……って、あれ!?あの人三剣さんじゃない?」
辻本が先ほどまで一緒にいた、三剣の姿を捉えた。
「ちょっと待って……他の人も……今A代表に選ばれてる選手ばかりじゃない!」
アンダー18の選手たちと対峙するようにグラウンドに立つ、三剣をはじめとするA代表の選手たち。
そして最後に、それぞれのチームの監督である森谷と武人が姿を現す。
「おいおい、まさかこれって……」
矢切が興奮を隠しきれない様子で修人を見る。
「ああ…おそらくだが、A代表 VS アンダー18の試合を今からやるようだ。こいつは楽しくなってきたぞ……!」
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