15 / 101
第十二話 1年A組にて
しおりを挟む
鞍月の指令を受けた次の日の昼休み。
修人は、仙崎たちのいる1年A組のクラスを訪ねていた。
修人は目当ての三人を呼び出してもらおうと、近くにいる生徒に話しかけようとした。
その時、背後から何者かに声をかけられる。
「あーっ!修兄ちゃん!なんでここにいるの⁉︎」
修人に声をかけたのは、お目当ての一人である仙崎だった。
「おお、花恋か!良かった探す手間が省けたよ。」
そう言うなり修人は仙崎に対して、申し訳なさそうに頭を下げる。
「昨日は悪かった、なんかお前の機嫌を損ねてしまったみたいで。」
それに対して仙崎は気にしていないといった様子で明るく笑った。そして、仙崎自身も昨日の行動について修人に謝罪をする。
「別にいいよ。花恋も勝手に出て行っちゃってごめんなさい。」
その言葉で仙崎はもう怒っていないと見た修人は、すかさず勧誘を試みる。
「昨日は途中で有耶無耶になっちまったから、改めて言わせてくれ。花恋、俺たちのサッカー部に入ってくれないか?」
「もちろんだよ!花恋はその為にこの学校に来たんだから!」
仙崎は満面の笑顔で快諾した。
「そうか!ありがとう!花恋がいれば百人力だ!」
修人は仙崎の手を力強く握った。手を握られた仙崎の頰はほんのりと熱を帯びる。
「えへへ…でも嬉しいな。花恋の為にわざわざ教室まで来てくれるなんて。ありがとう!修兄ちゃん!」
「いや、俺がここに来たのはそれだけじゃないんだ。」
「へ?」
「実はこのクラスにいる犬塚と呉っていう生徒を探していてな。出来ればその生徒たちの所へ案内してくれないか?
一人だと心細くてな、いやぁ花恋がいてくれてホント助かったぜ。」
「へ、へー…そうなんだー。」
仙崎は、修人が自分に会う為だけにここへ来たわけではないことを理解し一瞬顔を強張らせたが、同じ過ちは繰り返さまいと笑顔を取り繕う。
「じゃあ、花恋が案内してあげるよ!えっとー…まず犬塚さんは…」
仙崎が廊下の窓から教室の中をキョロキョロと見渡していると不意に背後から教室の引き戸を勢いよく開ける大きな音が鳴り響く。
バーーーン!
引き戸を勢いよく開けた女子生徒は、購買で買った惣菜パンや菓子、ジュースを両脇に抱え、教室内にいたあるグループに声をかける。
「ごっめーん!ダッシュで買いに行ったんだけど、購買既に混んでてさー。買うのに時間かかっちゃった!」
それに対して、グループのリーダー格であろう一人が気だるそうに答える。
「いーっていーって。買い出しご苦労さん、ワンちゃん。さっ、みんなご飯にしよーか。」
リーダーの一言が合図となり、そのグループは机を囲み始める。
買い出しに行っていた生徒もその輪の中に加わり、談笑をし始めるのであった。
そのやり取りをボーッと見ていた修人は仙崎に肩をチョンチョンと叩かれる。
「あの子が犬塚 京子だよ、修兄ちゃん。」
「えっ?どっちの子?」
「買い出しに行ってた方。」
「あの子か。よし、ちょっと話しかけてみる。」
修人が犬塚に近づこうとした時、リーダーの女子生徒が不服そうな声を上げた。
「ちょっとワンちゃんさぁ。アタシ照り焼きチキンサンドって言ったよねぇ。なんで焼きそばパン買ってきちゃってんのよ。」
その女子生徒は買い出しに行った犬塚に文句を言っていた。
「ご…ごめんね!楓ちゃん!たくさん頼まれたから覚えられなくって…」
犬塚はしどろもどろになりながら、女子生徒に謝罪する。
「頭まで犬レベルじゃ困るよー、ワンちゃん。」
楓と呼ばれた女子生徒がそう言うと、そのグループ内からドッと笑いが起きる。
犬塚は一瞬俯いたように見えたが再び顔を上げ、彼女自身も大きな声で笑い出す。
「あっはっは!ごめんごめんだワン!」
そう言って犬塚はおどけてみせた。
「まーいーや。もっかい買って来てよ。」
「え。でもお金は…」
「ワンちゃんで立て替えといてよ。また明日返すからさ。」
「う…うんっ!分かった!ダッシュで買いに行って来るね!」
そう言って、犬塚は再び教室を飛び出して、購買へ向かうのであった。
犬塚が去った後、そのグループからは今度はクスクスという笑いが起きる。
「ちょっと楓ー。ワンちゃんこき使いすぎじゃない?」
グループ内の一人がリーダー格の女子にニヤけながら話しかける。
「いーんだよ。昔っからあんな感じだから。それに、ワンちゃんがウチらのグループに入りたいって望んだんだから、文句も言わんでしょ?
それどころかウチらのどんなお願いも喜んで聞いてくれるんだから、ホント忠犬って感じだよねー。」
「それ言えてるかも。楓上手いこと言うじゃん!」
そしてまたグループ内では大きな笑いが起きる。
その一部始終を見ていた修人は静かに怒りに燃えていた。
ガツンと言ってやろうと一歩足を前に踏み出したが、修人は仙崎に肩を掴まれる。
「なんで止める?花恋。」
「犬塚さんの立場も考えて、修兄ちゃん。」
「立場…?どういうことだ?」
「ここで大ごとにしちゃったら彼女たち、多分犬塚さんにもっと酷いことすると思うの。」
「なんだよ、それ。わけわかんねー。もういい、俺、直接犬塚さんに会ってみるわ。ありがとな、花恋。」
修人はそう言って犬塚の後を追って購買に向かう。
「修兄ちゃん…」
仙崎は、その後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
修人は、仙崎たちのいる1年A組のクラスを訪ねていた。
修人は目当ての三人を呼び出してもらおうと、近くにいる生徒に話しかけようとした。
その時、背後から何者かに声をかけられる。
「あーっ!修兄ちゃん!なんでここにいるの⁉︎」
修人に声をかけたのは、お目当ての一人である仙崎だった。
「おお、花恋か!良かった探す手間が省けたよ。」
そう言うなり修人は仙崎に対して、申し訳なさそうに頭を下げる。
「昨日は悪かった、なんかお前の機嫌を損ねてしまったみたいで。」
それに対して仙崎は気にしていないといった様子で明るく笑った。そして、仙崎自身も昨日の行動について修人に謝罪をする。
「別にいいよ。花恋も勝手に出て行っちゃってごめんなさい。」
その言葉で仙崎はもう怒っていないと見た修人は、すかさず勧誘を試みる。
「昨日は途中で有耶無耶になっちまったから、改めて言わせてくれ。花恋、俺たちのサッカー部に入ってくれないか?」
「もちろんだよ!花恋はその為にこの学校に来たんだから!」
仙崎は満面の笑顔で快諾した。
「そうか!ありがとう!花恋がいれば百人力だ!」
修人は仙崎の手を力強く握った。手を握られた仙崎の頰はほんのりと熱を帯びる。
「えへへ…でも嬉しいな。花恋の為にわざわざ教室まで来てくれるなんて。ありがとう!修兄ちゃん!」
「いや、俺がここに来たのはそれだけじゃないんだ。」
「へ?」
「実はこのクラスにいる犬塚と呉っていう生徒を探していてな。出来ればその生徒たちの所へ案内してくれないか?
一人だと心細くてな、いやぁ花恋がいてくれてホント助かったぜ。」
「へ、へー…そうなんだー。」
仙崎は、修人が自分に会う為だけにここへ来たわけではないことを理解し一瞬顔を強張らせたが、同じ過ちは繰り返さまいと笑顔を取り繕う。
「じゃあ、花恋が案内してあげるよ!えっとー…まず犬塚さんは…」
仙崎が廊下の窓から教室の中をキョロキョロと見渡していると不意に背後から教室の引き戸を勢いよく開ける大きな音が鳴り響く。
バーーーン!
引き戸を勢いよく開けた女子生徒は、購買で買った惣菜パンや菓子、ジュースを両脇に抱え、教室内にいたあるグループに声をかける。
「ごっめーん!ダッシュで買いに行ったんだけど、購買既に混んでてさー。買うのに時間かかっちゃった!」
それに対して、グループのリーダー格であろう一人が気だるそうに答える。
「いーっていーって。買い出しご苦労さん、ワンちゃん。さっ、みんなご飯にしよーか。」
リーダーの一言が合図となり、そのグループは机を囲み始める。
買い出しに行っていた生徒もその輪の中に加わり、談笑をし始めるのであった。
そのやり取りをボーッと見ていた修人は仙崎に肩をチョンチョンと叩かれる。
「あの子が犬塚 京子だよ、修兄ちゃん。」
「えっ?どっちの子?」
「買い出しに行ってた方。」
「あの子か。よし、ちょっと話しかけてみる。」
修人が犬塚に近づこうとした時、リーダーの女子生徒が不服そうな声を上げた。
「ちょっとワンちゃんさぁ。アタシ照り焼きチキンサンドって言ったよねぇ。なんで焼きそばパン買ってきちゃってんのよ。」
その女子生徒は買い出しに行った犬塚に文句を言っていた。
「ご…ごめんね!楓ちゃん!たくさん頼まれたから覚えられなくって…」
犬塚はしどろもどろになりながら、女子生徒に謝罪する。
「頭まで犬レベルじゃ困るよー、ワンちゃん。」
楓と呼ばれた女子生徒がそう言うと、そのグループ内からドッと笑いが起きる。
犬塚は一瞬俯いたように見えたが再び顔を上げ、彼女自身も大きな声で笑い出す。
「あっはっは!ごめんごめんだワン!」
そう言って犬塚はおどけてみせた。
「まーいーや。もっかい買って来てよ。」
「え。でもお金は…」
「ワンちゃんで立て替えといてよ。また明日返すからさ。」
「う…うんっ!分かった!ダッシュで買いに行って来るね!」
そう言って、犬塚は再び教室を飛び出して、購買へ向かうのであった。
犬塚が去った後、そのグループからは今度はクスクスという笑いが起きる。
「ちょっと楓ー。ワンちゃんこき使いすぎじゃない?」
グループ内の一人がリーダー格の女子にニヤけながら話しかける。
「いーんだよ。昔っからあんな感じだから。それに、ワンちゃんがウチらのグループに入りたいって望んだんだから、文句も言わんでしょ?
それどころかウチらのどんなお願いも喜んで聞いてくれるんだから、ホント忠犬って感じだよねー。」
「それ言えてるかも。楓上手いこと言うじゃん!」
そしてまたグループ内では大きな笑いが起きる。
その一部始終を見ていた修人は静かに怒りに燃えていた。
ガツンと言ってやろうと一歩足を前に踏み出したが、修人は仙崎に肩を掴まれる。
「なんで止める?花恋。」
「犬塚さんの立場も考えて、修兄ちゃん。」
「立場…?どういうことだ?」
「ここで大ごとにしちゃったら彼女たち、多分犬塚さんにもっと酷いことすると思うの。」
「なんだよ、それ。わけわかんねー。もういい、俺、直接犬塚さんに会ってみるわ。ありがとな、花恋。」
修人はそう言って犬塚の後を追って購買に向かう。
「修兄ちゃん…」
仙崎は、その後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜
八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」
「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」
「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」
「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」
「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」
「だって、貴方を愛しているのですから」
四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。
華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。
一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。
彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。
しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。
だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。
「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」
「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」
一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。
彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる