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神様の恋事情3
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夢で見た…月の光に照らされた川の中に1人の女性が立っていた。
その姿はどこか悲しげで、ずっと星空を眺めていた
俺はそんな姿を遠くから見ていた
するとある声が聞こえた
「また、貴方様に…私は貴方様に恋をしました…この恋は叶うのでしょうか…貴方様にまた会えますよう願っています…」
透き通った声だった
けど、やはり悲しげであった
勇人は声をかけようとしたが気がついた時には彼女の姿はなく、夢がそこで途切れた
目を覚ますと狛犬は相変わらず、勇人のお腹でくるまって気持ちよく眠っている
優しく狛犬の頭を撫でながら考える事をした
夢に現れた女性、彼女こそが今回の依頼主なのかもしれないな…まさか恋事情とは
恋愛経験がない俺にはキツい案件だ
ふと思った事がある、天照から貰った依頼主からの手紙、何が書いてあるんだろうか
勇人は机上にある手紙を手に取ろうとし、手を伸ばすが狛犬が腹にいて取れない
狛犬を優しく抱き上げ、隣の布団に下ろし手紙を手に取り開ける
中に入っていた紙を読む
「配達員様、私は速秋津比売命です。貴方様にお願いがあります。3日程前の事です。ある男性が川に流されている子犬を助けた事があり、私はそれ以降勇敢な男性の姿を見てから胸が熱くなり、もう一度あの方に会いたいと思い続けているのです。配達員様、どうかあの方を探してはいただけないでしょうか。私はここから離れることが出来ないのです。どうか私の願い…叶えてくれませんか。」
神様が人間に恋をする、神様も人と同じように泣いたり笑ったり、怒ったりもする。だが彼女は「恋」という感情を知らない。それは他の神様も同じなのだろうか、人間との違いはそこだけなのだろうか。
「恋…か」
そう呟いた後、勇人は布団から出て身支度を整え始めた。
身支度を終え狛犬と2人で速秋津比売命の所へと向かった。
川に着き彼女を呼ぶ
「速秋津比売命様、神様の配達員をしています、神林勇人です。」
「お待ちしておりました。」
この声、あの時の夢に出てきた彼女と同じ声だ
声が聞こえた方へ視線を向けると、川の中央から透き通った女性が現れ、徐々に肌の色や髪の色がはっきりと見え始めた
水縹の長い髪に水色の瞳、空色の着物に白縹の羽衣を纏った姿はとても美しく、彼女が現れた瞬間、川の流れる音が消え、強かったはずの川の流れが穏やかになった。
彼女は川の中央からゆっくりと勇人の方へと歩み始める。音をたてず、水飛沫も上げず、綺麗な波紋を広げながら
「私の願いに答えていただき感謝申し上げます。配達員様」
「そんな自分なんてまだ未熟な配達員です。様を付けられる程ではありません、勇人って呼んでください。」
「でしたら、「勇人さん」はいかがでしょう」
「それでいいですよ。」
「あら、そちらの狛犬ちゃんは」
勇人の後ろに隠れている狛犬に視線を向ける
「狛犬、挨拶して」
勇人が言うと狛犬は勇人の前に出て挨拶をする
「こ…こんにちは、狛犬の阿形です」
恥ずかしがりながら挨拶をする狛犬を見て彼女は笑顔を見せる
「こんにちは阿形ちゃん、そんな恥ずかしがらなくていいのよ」
「とても綺麗で美しくて、えっと…えっと」
恥じらいながらも、尻尾を激しく振る狛犬
狛犬よ、その気持ちはわかる、この方は美しい、どこかのわがままな神様とは全くの別物だ
「ありがとう阿形ちゃん」
優しく狛犬の頭を撫でながら笑みを見せる
「本題の方に入ります、人を探して連れてくるで間違いないですか。」
「間違いありません、ですが急に連れて来られてもあの方が困ってしまうだけです。ですので、こちらを届けて欲しいのです。」
彼女は手紙を勇人に渡した
「分かりました。この手紙を届けます。それで、その男性の名前や住所等は知っていますか。」
速秋津比売命は顔を横に振る
「申し訳ありません、ですがあの方はこの河川敷を主に通勤しているのだけは確かです。また、あの方は呟いていました。「先生」と」
先生、という事は学校の教師かこの近くの学校を調べればその人に会えるかもな
「承りました。配達員としてこの仕事精一杯勤めさせていただきます!」
「よろしくお願い致します。」
勇人と狛犬はその場を離れ、情報収集から始めた。
その姿はどこか悲しげで、ずっと星空を眺めていた
俺はそんな姿を遠くから見ていた
するとある声が聞こえた
「また、貴方様に…私は貴方様に恋をしました…この恋は叶うのでしょうか…貴方様にまた会えますよう願っています…」
透き通った声だった
けど、やはり悲しげであった
勇人は声をかけようとしたが気がついた時には彼女の姿はなく、夢がそこで途切れた
目を覚ますと狛犬は相変わらず、勇人のお腹でくるまって気持ちよく眠っている
優しく狛犬の頭を撫でながら考える事をした
夢に現れた女性、彼女こそが今回の依頼主なのかもしれないな…まさか恋事情とは
恋愛経験がない俺にはキツい案件だ
ふと思った事がある、天照から貰った依頼主からの手紙、何が書いてあるんだろうか
勇人は机上にある手紙を手に取ろうとし、手を伸ばすが狛犬が腹にいて取れない
狛犬を優しく抱き上げ、隣の布団に下ろし手紙を手に取り開ける
中に入っていた紙を読む
「配達員様、私は速秋津比売命です。貴方様にお願いがあります。3日程前の事です。ある男性が川に流されている子犬を助けた事があり、私はそれ以降勇敢な男性の姿を見てから胸が熱くなり、もう一度あの方に会いたいと思い続けているのです。配達員様、どうかあの方を探してはいただけないでしょうか。私はここから離れることが出来ないのです。どうか私の願い…叶えてくれませんか。」
神様が人間に恋をする、神様も人と同じように泣いたり笑ったり、怒ったりもする。だが彼女は「恋」という感情を知らない。それは他の神様も同じなのだろうか、人間との違いはそこだけなのだろうか。
「恋…か」
そう呟いた後、勇人は布団から出て身支度を整え始めた。
身支度を終え狛犬と2人で速秋津比売命の所へと向かった。
川に着き彼女を呼ぶ
「速秋津比売命様、神様の配達員をしています、神林勇人です。」
「お待ちしておりました。」
この声、あの時の夢に出てきた彼女と同じ声だ
声が聞こえた方へ視線を向けると、川の中央から透き通った女性が現れ、徐々に肌の色や髪の色がはっきりと見え始めた
水縹の長い髪に水色の瞳、空色の着物に白縹の羽衣を纏った姿はとても美しく、彼女が現れた瞬間、川の流れる音が消え、強かったはずの川の流れが穏やかになった。
彼女は川の中央からゆっくりと勇人の方へと歩み始める。音をたてず、水飛沫も上げず、綺麗な波紋を広げながら
「私の願いに答えていただき感謝申し上げます。配達員様」
「そんな自分なんてまだ未熟な配達員です。様を付けられる程ではありません、勇人って呼んでください。」
「でしたら、「勇人さん」はいかがでしょう」
「それでいいですよ。」
「あら、そちらの狛犬ちゃんは」
勇人の後ろに隠れている狛犬に視線を向ける
「狛犬、挨拶して」
勇人が言うと狛犬は勇人の前に出て挨拶をする
「こ…こんにちは、狛犬の阿形です」
恥ずかしがりながら挨拶をする狛犬を見て彼女は笑顔を見せる
「こんにちは阿形ちゃん、そんな恥ずかしがらなくていいのよ」
「とても綺麗で美しくて、えっと…えっと」
恥じらいながらも、尻尾を激しく振る狛犬
狛犬よ、その気持ちはわかる、この方は美しい、どこかのわがままな神様とは全くの別物だ
「ありがとう阿形ちゃん」
優しく狛犬の頭を撫でながら笑みを見せる
「本題の方に入ります、人を探して連れてくるで間違いないですか。」
「間違いありません、ですが急に連れて来られてもあの方が困ってしまうだけです。ですので、こちらを届けて欲しいのです。」
彼女は手紙を勇人に渡した
「分かりました。この手紙を届けます。それで、その男性の名前や住所等は知っていますか。」
速秋津比売命は顔を横に振る
「申し訳ありません、ですがあの方はこの河川敷を主に通勤しているのだけは確かです。また、あの方は呟いていました。「先生」と」
先生、という事は学校の教師かこの近くの学校を調べればその人に会えるかもな
「承りました。配達員としてこの仕事精一杯勤めさせていただきます!」
「よろしくお願い致します。」
勇人と狛犬はその場を離れ、情報収集から始めた。
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