8 / 20
第8話:目指せ高額報酬
しおりを挟む
今回のクエストは、街道沿いの渓谷に現れるハーピーの群れの駆除だ。
街道を通る旅人の馬や、商人の荷馬車に積まれた食べ物などを奪って大繁殖しており、このままでは街道が安全に通れない。
大きな商会が多額の報酬を賭けており、完全に駆除した場合には、20万Gもの報酬を手にすることができる。
ハーピーは、上半身は美しい女性の体だが、下半身は鳥で鋭い爪とくちばしを持つ。
高額報酬のクエストだが、飛行タイプが相手のモンスターのため、挑戦できる者が限られており、魔法が使えて家を建てるお金が欲しいルーイには、狙い目のクエストだった。
「土蜘蛛族のローナです。魔術師です。よろしくお願いします」
白に近いふわふわの金髪を二つに分けて緩く結んだ、内気そうな女の子だ。小さな声でペコリとお辞儀をした。
「大鷲族のイスラです! ルーイとは前も一緒にクエストやったよね。よろしく!」
オリーブグリーンのおかっぱの女の子がさわやかに挨拶した。背中に長い鎖のついたモーニングスターを背負い、短めの剣を腰に挿している。
「魔術師のルーイと、こっちは戦士のアーロンです。よろしくお願いします」
ルーイも自己紹介してあいさつした。
今回は、この四人でクエストに挑む。
渓谷までは、馬車で行ったほうがよいくらい距離があるのだが、ハーピーに襲われるのを恐れて、なかなか馬車を出してもらえないため、仕方がないので歩いて行く。
「ルーイさんとアーロンさんと組めてよかったです」
てくてくと連れ立って歩きながら、ローナが微笑んだ。
「ローナは、おとなしそうに見えるから、男性冒険者と組むと、しょっちゅうセクハラされたり、舐められて重要な役割を回してもらえなかったりするんだって」
イスラが解説した。
「その点、ルーイさんとアーロンさんは、女の子を誘うけど、セクハラしたり無理に飲ませたり、家に連れ込もうとしたりしないって聞いて、安心したんです」
カイラとニーアの時もそうだったが、婚活という不純極まりない動機で冒険者をやっているのに、結果としてルーイは、紳士的な男性冒険者だという評判が広まってしまったようだ。
「そんな不埒な奴がいるんだな」
ルーイは義憤を抱いた。
「いるいる! 酒場で晩御飯食べた後、家までつけられたこととかあるよ! 稼げる女性冒険者にタカる男とかもいるみたいだし」
イスラがぷんぷん怒って言った。ローナも眉をひそめている。
「そういうわけで、一人暮らしするのも危ないし、家賃もかさむから、今、友達と二人で住める家を探してるんだ」
とイスラが言った。だからこの高額報酬のクエストに挑戦することにしたのだという。
「そうなのか。俺も家を持ちたいと思っていて、冒険者稼業をやっているんだ。奇遇だな」
ルーイは言った。
イスラと二人で、しばし「どのあたりの物件がいいか」「どの商会に聞くのがいいか」と盛り上がっているうちに、渓谷の入り口についた。
平野部に突き出た台地の端が、赤茶けた岩だらけの急峻な崖となって、街道の両側に覆いかぶさるようにしてそびえたっている。
早くも、ギャー、ギャー、というハーピーの鳴き声が、どこかから聞こえてくる。
「よし、行くぞ」
ルーイが言うと、イスラが
「アーロンは、あたしが崖の上に連れて行くね」
大鷲族のイスラは、部族の固有スキルとして、空を飛ぶことができる。ルーイとローナも魔法で飛ぶことができるが、魔力がもったいないので、アーロンを運ぶのはイスラにやってもらった。
「おお~! すっげ~~!」
イスラにぶら下がって宙に浮かぶと、アーロンは歓声を上げた。
ルーイとアーロン、ローナとイスラのチームに分かれて、それぞれ渓谷を挟む両側の崖のてっぺんに陣取った。ルーイが反対側の崖を見ると、ほぼ垂直に切り立った斜面にに、ハーピーが何羽か止まっているのが見えた。わずかな岩の出っ張りに作られた巣も見える。
ハーピーの群れは、すでにこちらの気配を察知しているようで、何羽かは、叫び声を上げながらぐるぐると飛び回っている。
「アーロン、ホントに崖の上スタートでいいのか?」
事前の打ち合わせでアーロンは、「崖から飛び降りながらハーピーを倒す」と言っていたが、すぐ足元の斜面は、ほぼ垂直だ。
「大丈夫だって! わくわくするな!」
アーロンは、嬉しそうに肩をぐるぐる回し、剣を抜いた。
例によってアーロンは、何の防具もつけていない。心配になったルーイは、またしてもキュルキュルと物理防御上昇の魔法をかけてあげるのだった。
「それじゃ、ローナ、頼むぞ~!」
ルーイが手を振ると、ローナが両手を広げて前に突き出した。
「スパイダー・ウェブ!」
ローナの指先から、しゅるしゅると蜘蛛の糸が出て、渓谷の入り口と出口の側面を包み始めた。
街道の上に広がる空間は、シャッターを閉められたように前後を閉ざされた。
「くうっ……」
両手を突き出しながら、ローナが顔をしかめた。これだけの面積の糸を出すのは、相当な精神力を使う。
ハーピーたちは、焦ってギャアギャアと叫びながら、こぞって上空へ舞い上がり始めた。
「ライトニング・ボルト!」
ルーイは、目の前に上がってきたハーピーたちを、魔法で次々と撃ち落とし始めた。
致命傷を与える必要はない。
少しでも当たれば、ハーピーたちはバランスを失い、あるいは避けようとして、次々と下降していく。
「よっしゃ! 俺の出番だぜ!」
アーロンが、崖の両脇からズザザザーーッと駆け下りながら、行き場を失って崖に止まろうとするハーピーを、次々と切り落としていく。
──すごいバランス感覚だな……。
ルーイは、魔法を撃ちながらもアーロンの動きに感嘆した。
ほぼ垂直に切り立った崖の、ちょっとした足場を瞬時に見抜いて、平地と変わりない速度で駆け抜けていく。
ジグザグに崖を駆け下りながら、目ざとく巣を見つけると、剣で崖下に払い落とし、瞬時に向きを変えると、またハーピーを斬りながら駆け下りていく。
いつもの無邪気な表情が嘘のように、アイスブルーの瞳は、瞳孔が針のように小さくなって、獲物を狩る狼のようにギラギラと光っている。
「どりゃー!」
「っしゃー!」
アーロンが気勢を上げるたびに、ハーピーが撃ち落とされ、崖下に落ちていく。
上に逃れようとするものは、ルーイが撃ち落とし、渓谷の真ん中や反対側の崖に逃げて行こうとするものは、イスラが飛びながらモーニングスターで叩き落としていく。
ズザザザーーッとアーロンは渓谷の底、街道脇に降り立った。
ルーイやイスラに撃たれて、翼が傷ついたハーピーたちが、一気にアーロンに襲い掛かる。
アーロンは、臆するどころか、舌なめずりをして、次々とハーピーを切り捨てていった。
──やっぱりあいつの戦闘センス……というか野生の勘みたいなものは、すごいな。
ハチミツ牧場の時にも思ったが、ルーイは崖の上からアーロンの勇姿を見つめて、あらためて感嘆した。
ある程度腕に覚えがあっても、練習と実際の冒険は異なるもので、ギルドに入りたての冒険者は、そんなすぐには活躍できない。
しかし、戦士としてのアーロンの能力はずば抜けており、あっという間にルーイと遜色ない戦いぶりを見せるようになった。
鋭い嗅覚は、洞窟や遺跡の道順を調べるにも役立つし、仲間の位置も見失わない。
集団戦になった時に、どの獲物から狙うべきか、瞬時に正しく判断し、素早く襲い掛かる。
──カッコイイな……。
と思いかけて、ルーイはハッとした。
──いやいや、何を考えてるんだ俺は……。付き合いが長い方が、よく見えるのは当たり前だ。うん。
お互いのことをよく知っているので、次にルーイが何をするつもりなのか、ちょっと言葉を交わしただけで、すぐに理解してもらえるのも、ルーイにとっては大いに助かった。
戦闘中のコミュニケーションというのは意外と難しい。離れた距離にいることも多いし、「あっちから行く」と手で示されても、言われた側には「どっちから」なのかいまいちわからないし、込み入った話をしている時間もない。
遠距離から魔法を撃ちたいのに、射線に入り込まれることもしょっちゅうあったが、アーロンはルーイの雰囲気を察して、魔法を撃つ時は、射線から外れてくれる。
結局ルーイは、毎度毎度、アーロンと一緒にクエストに行ってしまうのだった。
「よっしゃー!」
アーロンが最後のハーピーを斬り捨てた時、ちょうどローナのスパイダー・ウェブが焼き切れて、元に戻った。
「はぁ……、はぁ……」
ローナは、肩で息をしながら、崖の上にへたりこんだ。
「これで全部か? イスラ、見回ってみてくれ」
ルーイが言うと、イスラは飛び回って岩陰を探し始めた。
ルーイも、辺りを見回してみる。
すると、地上からアーロンが、
「まだハーピーの匂いがする!」と上に向かって叫んだ。
その時、「ギャーー!!」
という大きな鳴き声とともに、五羽ほどのハーピーが、岩と岩の間から飛び上がってきた。
──まずい!
イスラは少し離れた岩場にいるし、ローナは魔力切れだ。
──くっそ……!
ハーピーは、ぐんぐんと上空に向かって飛びあがってくる。一羽一羽撃ち落としていたら取りこぼしが出てしまう。
──でも、あきらめてたまるか! 俺のマイホーム!
ルーイは天に向かって両手を広げ、
「メテオ・ストライク!」
と叫んで、残り全部の魔力を振り絞った。
ドカドカドカッ!!
と大岩が次々と上空からハーピーに降り注ぎ、残るハーピーも撃ち落とされていった。
「やっ……た……ぞ……」
最後のハーピーが錐もみしながら崖下に落ちていくのを見届けると、ルーイの意識は途絶えた。
街道を通る旅人の馬や、商人の荷馬車に積まれた食べ物などを奪って大繁殖しており、このままでは街道が安全に通れない。
大きな商会が多額の報酬を賭けており、完全に駆除した場合には、20万Gもの報酬を手にすることができる。
ハーピーは、上半身は美しい女性の体だが、下半身は鳥で鋭い爪とくちばしを持つ。
高額報酬のクエストだが、飛行タイプが相手のモンスターのため、挑戦できる者が限られており、魔法が使えて家を建てるお金が欲しいルーイには、狙い目のクエストだった。
「土蜘蛛族のローナです。魔術師です。よろしくお願いします」
白に近いふわふわの金髪を二つに分けて緩く結んだ、内気そうな女の子だ。小さな声でペコリとお辞儀をした。
「大鷲族のイスラです! ルーイとは前も一緒にクエストやったよね。よろしく!」
オリーブグリーンのおかっぱの女の子がさわやかに挨拶した。背中に長い鎖のついたモーニングスターを背負い、短めの剣を腰に挿している。
「魔術師のルーイと、こっちは戦士のアーロンです。よろしくお願いします」
ルーイも自己紹介してあいさつした。
今回は、この四人でクエストに挑む。
渓谷までは、馬車で行ったほうがよいくらい距離があるのだが、ハーピーに襲われるのを恐れて、なかなか馬車を出してもらえないため、仕方がないので歩いて行く。
「ルーイさんとアーロンさんと組めてよかったです」
てくてくと連れ立って歩きながら、ローナが微笑んだ。
「ローナは、おとなしそうに見えるから、男性冒険者と組むと、しょっちゅうセクハラされたり、舐められて重要な役割を回してもらえなかったりするんだって」
イスラが解説した。
「その点、ルーイさんとアーロンさんは、女の子を誘うけど、セクハラしたり無理に飲ませたり、家に連れ込もうとしたりしないって聞いて、安心したんです」
カイラとニーアの時もそうだったが、婚活という不純極まりない動機で冒険者をやっているのに、結果としてルーイは、紳士的な男性冒険者だという評判が広まってしまったようだ。
「そんな不埒な奴がいるんだな」
ルーイは義憤を抱いた。
「いるいる! 酒場で晩御飯食べた後、家までつけられたこととかあるよ! 稼げる女性冒険者にタカる男とかもいるみたいだし」
イスラがぷんぷん怒って言った。ローナも眉をひそめている。
「そういうわけで、一人暮らしするのも危ないし、家賃もかさむから、今、友達と二人で住める家を探してるんだ」
とイスラが言った。だからこの高額報酬のクエストに挑戦することにしたのだという。
「そうなのか。俺も家を持ちたいと思っていて、冒険者稼業をやっているんだ。奇遇だな」
ルーイは言った。
イスラと二人で、しばし「どのあたりの物件がいいか」「どの商会に聞くのがいいか」と盛り上がっているうちに、渓谷の入り口についた。
平野部に突き出た台地の端が、赤茶けた岩だらけの急峻な崖となって、街道の両側に覆いかぶさるようにしてそびえたっている。
早くも、ギャー、ギャー、というハーピーの鳴き声が、どこかから聞こえてくる。
「よし、行くぞ」
ルーイが言うと、イスラが
「アーロンは、あたしが崖の上に連れて行くね」
大鷲族のイスラは、部族の固有スキルとして、空を飛ぶことができる。ルーイとローナも魔法で飛ぶことができるが、魔力がもったいないので、アーロンを運ぶのはイスラにやってもらった。
「おお~! すっげ~~!」
イスラにぶら下がって宙に浮かぶと、アーロンは歓声を上げた。
ルーイとアーロン、ローナとイスラのチームに分かれて、それぞれ渓谷を挟む両側の崖のてっぺんに陣取った。ルーイが反対側の崖を見ると、ほぼ垂直に切り立った斜面にに、ハーピーが何羽か止まっているのが見えた。わずかな岩の出っ張りに作られた巣も見える。
ハーピーの群れは、すでにこちらの気配を察知しているようで、何羽かは、叫び声を上げながらぐるぐると飛び回っている。
「アーロン、ホントに崖の上スタートでいいのか?」
事前の打ち合わせでアーロンは、「崖から飛び降りながらハーピーを倒す」と言っていたが、すぐ足元の斜面は、ほぼ垂直だ。
「大丈夫だって! わくわくするな!」
アーロンは、嬉しそうに肩をぐるぐる回し、剣を抜いた。
例によってアーロンは、何の防具もつけていない。心配になったルーイは、またしてもキュルキュルと物理防御上昇の魔法をかけてあげるのだった。
「それじゃ、ローナ、頼むぞ~!」
ルーイが手を振ると、ローナが両手を広げて前に突き出した。
「スパイダー・ウェブ!」
ローナの指先から、しゅるしゅると蜘蛛の糸が出て、渓谷の入り口と出口の側面を包み始めた。
街道の上に広がる空間は、シャッターを閉められたように前後を閉ざされた。
「くうっ……」
両手を突き出しながら、ローナが顔をしかめた。これだけの面積の糸を出すのは、相当な精神力を使う。
ハーピーたちは、焦ってギャアギャアと叫びながら、こぞって上空へ舞い上がり始めた。
「ライトニング・ボルト!」
ルーイは、目の前に上がってきたハーピーたちを、魔法で次々と撃ち落とし始めた。
致命傷を与える必要はない。
少しでも当たれば、ハーピーたちはバランスを失い、あるいは避けようとして、次々と下降していく。
「よっしゃ! 俺の出番だぜ!」
アーロンが、崖の両脇からズザザザーーッと駆け下りながら、行き場を失って崖に止まろうとするハーピーを、次々と切り落としていく。
──すごいバランス感覚だな……。
ルーイは、魔法を撃ちながらもアーロンの動きに感嘆した。
ほぼ垂直に切り立った崖の、ちょっとした足場を瞬時に見抜いて、平地と変わりない速度で駆け抜けていく。
ジグザグに崖を駆け下りながら、目ざとく巣を見つけると、剣で崖下に払い落とし、瞬時に向きを変えると、またハーピーを斬りながら駆け下りていく。
いつもの無邪気な表情が嘘のように、アイスブルーの瞳は、瞳孔が針のように小さくなって、獲物を狩る狼のようにギラギラと光っている。
「どりゃー!」
「っしゃー!」
アーロンが気勢を上げるたびに、ハーピーが撃ち落とされ、崖下に落ちていく。
上に逃れようとするものは、ルーイが撃ち落とし、渓谷の真ん中や反対側の崖に逃げて行こうとするものは、イスラが飛びながらモーニングスターで叩き落としていく。
ズザザザーーッとアーロンは渓谷の底、街道脇に降り立った。
ルーイやイスラに撃たれて、翼が傷ついたハーピーたちが、一気にアーロンに襲い掛かる。
アーロンは、臆するどころか、舌なめずりをして、次々とハーピーを切り捨てていった。
──やっぱりあいつの戦闘センス……というか野生の勘みたいなものは、すごいな。
ハチミツ牧場の時にも思ったが、ルーイは崖の上からアーロンの勇姿を見つめて、あらためて感嘆した。
ある程度腕に覚えがあっても、練習と実際の冒険は異なるもので、ギルドに入りたての冒険者は、そんなすぐには活躍できない。
しかし、戦士としてのアーロンの能力はずば抜けており、あっという間にルーイと遜色ない戦いぶりを見せるようになった。
鋭い嗅覚は、洞窟や遺跡の道順を調べるにも役立つし、仲間の位置も見失わない。
集団戦になった時に、どの獲物から狙うべきか、瞬時に正しく判断し、素早く襲い掛かる。
──カッコイイな……。
と思いかけて、ルーイはハッとした。
──いやいや、何を考えてるんだ俺は……。付き合いが長い方が、よく見えるのは当たり前だ。うん。
お互いのことをよく知っているので、次にルーイが何をするつもりなのか、ちょっと言葉を交わしただけで、すぐに理解してもらえるのも、ルーイにとっては大いに助かった。
戦闘中のコミュニケーションというのは意外と難しい。離れた距離にいることも多いし、「あっちから行く」と手で示されても、言われた側には「どっちから」なのかいまいちわからないし、込み入った話をしている時間もない。
遠距離から魔法を撃ちたいのに、射線に入り込まれることもしょっちゅうあったが、アーロンはルーイの雰囲気を察して、魔法を撃つ時は、射線から外れてくれる。
結局ルーイは、毎度毎度、アーロンと一緒にクエストに行ってしまうのだった。
「よっしゃー!」
アーロンが最後のハーピーを斬り捨てた時、ちょうどローナのスパイダー・ウェブが焼き切れて、元に戻った。
「はぁ……、はぁ……」
ローナは、肩で息をしながら、崖の上にへたりこんだ。
「これで全部か? イスラ、見回ってみてくれ」
ルーイが言うと、イスラは飛び回って岩陰を探し始めた。
ルーイも、辺りを見回してみる。
すると、地上からアーロンが、
「まだハーピーの匂いがする!」と上に向かって叫んだ。
その時、「ギャーー!!」
という大きな鳴き声とともに、五羽ほどのハーピーが、岩と岩の間から飛び上がってきた。
──まずい!
イスラは少し離れた岩場にいるし、ローナは魔力切れだ。
──くっそ……!
ハーピーは、ぐんぐんと上空に向かって飛びあがってくる。一羽一羽撃ち落としていたら取りこぼしが出てしまう。
──でも、あきらめてたまるか! 俺のマイホーム!
ルーイは天に向かって両手を広げ、
「メテオ・ストライク!」
と叫んで、残り全部の魔力を振り絞った。
ドカドカドカッ!!
と大岩が次々と上空からハーピーに降り注ぎ、残るハーピーも撃ち落とされていった。
「やっ……た……ぞ……」
最後のハーピーが錐もみしながら崖下に落ちていくのを見届けると、ルーイの意識は途絶えた。
4
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる