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第8章 パパとボク
空白の場所
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私達は白い空間の中にいた。
階段をどれくらい登ってきたのだろうか。
不思議と疲れは感じなかった。
辿り着いた先には何も無く白い空間だけ。
当たりを見渡すが他には何も無い。
どこに行けばいいのか分からないような場所へと来てしまった。
「ここ、どこだろう。」
隣で不安そうにしているレンタロー。
「歩いていても、道標も無ければ道も無い。つまり、どこを歩いているのか分からないという事だね。」
私はレンタローに説明するように話す。
私達がこの先どうすれば良いのか分からず困っていると、
「貴様ら何者だぁ?」
少し低い声が聞こえてきた。
その声にレンタローは驚き、体をビクつかせていた。
私は警戒し、声の主を探したが姿は見当たらない。
「誰だ!」
私が叫ぶと白い空間の中から少しずつ、その主は姿を現した。
そこには綺麗な金髪を揺らし、紳士を感じさせるような服装をした男がいた。
「それはこっちのセリフだぁ。」
見た目とは違い、気だるそうな話し方をする男。
「お前は何者だ!」
「ワタクシですかぁ、ワタクシはここの番人をしてますぅ。」
「この白い空間は何?ここは人があの世に行ける場所じゃないの?」
「えー、あの世に行けるようにワタクシがその方達を案内してるんですよぉ。」
男は頭をかきながら私達に近寄って来たが、さっきまで気だるそうだった顔は、不思議なものを見る目へと変わった。
「お前たちぃ、ちゃんとした死者じゃないですねぇ。そこの小さい坊ちゃんは自殺者ですねぇ。そしてその隣のお嬢ちゃんは死者の魂を送る存在ではありませんかぁ。」
この男は私たちを見ただけで、どんな存在なのかを把握した。
相当出来る男であると私は確信した。
「この何もない空間は何?どうやってここから次の場所に行くの?」
「そんなに質問責めしないで下さいよぉ、質問したいのはワタクシの方なんですからぁ。」
私と男の間には緊張感が漂っていた。
それを感じ取ったように、レンタローが私の服の袖を掴んだ。
「私たちはある死んだ人間に会いに来た。この子どもの父親だ。あんたなら分かるんだろう?この子の父親がどこにいるのか。」
「なるほどぉ、これは面白い。本当はワタクシ共の職務放棄になるのですが、面白そうなのでお教えしましょう。」
男は笑いながら私たちにそう伝えると、空を切るように手を動かした。
私たちは周りを警戒しながら、何が起きるのか待った。
すると空の上から大きい扉がドスンと音を立てて落ちてきたのだ。
「さぁて、お入りなさい。ここからどうするかはお前たちが決めなさい。」
ニヤニヤしている男の後ろの扉はギギギ…と音を鳴らして開いていく。
「この扉は何?」
「坊や、お父様はここにいると思いますぅ。」
男はレンタローに話しかけ、レンタローも開いていく扉に釘付けになっていた。
「パパ…。」
小さく呟く声。
レンタローは扉に向かってゆっくり歩き出し、私はそんな彼を追うように、隣を歩く。
階段をどれくらい登ってきたのだろうか。
不思議と疲れは感じなかった。
辿り着いた先には何も無く白い空間だけ。
当たりを見渡すが他には何も無い。
どこに行けばいいのか分からないような場所へと来てしまった。
「ここ、どこだろう。」
隣で不安そうにしているレンタロー。
「歩いていても、道標も無ければ道も無い。つまり、どこを歩いているのか分からないという事だね。」
私はレンタローに説明するように話す。
私達がこの先どうすれば良いのか分からず困っていると、
「貴様ら何者だぁ?」
少し低い声が聞こえてきた。
その声にレンタローは驚き、体をビクつかせていた。
私は警戒し、声の主を探したが姿は見当たらない。
「誰だ!」
私が叫ぶと白い空間の中から少しずつ、その主は姿を現した。
そこには綺麗な金髪を揺らし、紳士を感じさせるような服装をした男がいた。
「それはこっちのセリフだぁ。」
見た目とは違い、気だるそうな話し方をする男。
「お前は何者だ!」
「ワタクシですかぁ、ワタクシはここの番人をしてますぅ。」
「この白い空間は何?ここは人があの世に行ける場所じゃないの?」
「えー、あの世に行けるようにワタクシがその方達を案内してるんですよぉ。」
男は頭をかきながら私達に近寄って来たが、さっきまで気だるそうだった顔は、不思議なものを見る目へと変わった。
「お前たちぃ、ちゃんとした死者じゃないですねぇ。そこの小さい坊ちゃんは自殺者ですねぇ。そしてその隣のお嬢ちゃんは死者の魂を送る存在ではありませんかぁ。」
この男は私たちを見ただけで、どんな存在なのかを把握した。
相当出来る男であると私は確信した。
「この何もない空間は何?どうやってここから次の場所に行くの?」
「そんなに質問責めしないで下さいよぉ、質問したいのはワタクシの方なんですからぁ。」
私と男の間には緊張感が漂っていた。
それを感じ取ったように、レンタローが私の服の袖を掴んだ。
「私たちはある死んだ人間に会いに来た。この子どもの父親だ。あんたなら分かるんだろう?この子の父親がどこにいるのか。」
「なるほどぉ、これは面白い。本当はワタクシ共の職務放棄になるのですが、面白そうなのでお教えしましょう。」
男は笑いながら私たちにそう伝えると、空を切るように手を動かした。
私たちは周りを警戒しながら、何が起きるのか待った。
すると空の上から大きい扉がドスンと音を立てて落ちてきたのだ。
「さぁて、お入りなさい。ここからどうするかはお前たちが決めなさい。」
ニヤニヤしている男の後ろの扉はギギギ…と音を鳴らして開いていく。
「この扉は何?」
「坊や、お父様はここにいると思いますぅ。」
男はレンタローに話しかけ、レンタローも開いていく扉に釘付けになっていた。
「パパ…。」
小さく呟く声。
レンタローは扉に向かってゆっくり歩き出し、私はそんな彼を追うように、隣を歩く。
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