30 / 45
第6章 Sin and punishment for falling in love
死神と飛行旅行
しおりを挟む
私は初めて柚希と出会ったあの日から、毎日彼の部屋へと訪れていた。
もちろん他の死神には内緒にしてだけど。
いつも同じように家へと勝手に入り、いつもと同じように部屋の扉を開け、いつもと同じように窓の外を見ている柚希に声をかける。
何も変わらない毎日だが、凄く楽しい毎日であった。
しかし、毎回同じような会い方では面白味がない。
そういうことで今日の私は、部屋の窓からこんにちはすることにしたのだ。
柚希がいつも通り外を眺めているのを、家の外から確認し、私は張り切りながら、空中を飛び柚希の部屋の窓まで飛んだ。
そして、
「ばあああああぁぁぁぁぁーー!!!!」
私が驚かすように大きな声で叫ぶと、案の定柚希は驚き、ベッドの上で叫びながらバタバタしている。
「あははははは!!!柚希驚いてる!!」
「ビックリするに決まってるだろー!もう!!」
柚希は少し膨れていたが、私の笑っている顔を見て安心したのか、彼も笑いだした。
そしてここからはまたいつも通り。
彼のベッドの近くにある椅子に腰を下ろす。
「それにしても驚いたよ!」
さっきの事を思い出しながらクスクス笑う柚希。
「死神って空も飛べるんだね!」
目を輝かせながら私を見る。
その目に私は惹かれていた。
うっとりと見惚れてしまうほど、綺麗で純粋な目なのだ。
そして顔を赤くしながら「まぁね。」と答える。
すると柚希はいつものように窓の外に目を向けた。
「羨ましいな、僕はどこにも行けないから。自由に飛び回れる死神さんが羨ましい。」
顔はよく見えなかったが、声は悲しそうだった。
「じゃー飛んでみる?」
「え…?」
「え!?」
なぜ自分がそんな事を言ったのか分からず、その言葉を無意識に言っていた事に驚き、口元を手で隠す。
「いいの…?」
柚希が控えめに言ってくる。
私は口元を手で隠しながらコクンと首を縦に振る。
柚希は先程の悲しそうな声とは違い、ワクワクするような声で喜んだ。
「やったーー!!!僕いつか空を飛びたいと思ってたんだ!!!夢が叶うぞ!」
その姿はまるで天使のようで、またしばらく見惚れてしまっていた。
私はふと我に返り、椅子から立ち上がって、柚希に手を差し伸べる。
「私の手を掴んで。」
「うん!」
柚希が差し伸べた私の手を握ると、その手を軸に彼をお姫様抱っこした。
「君って力持ちなんだね。」
「死神は皆そうだよ。」
私は窓の近くまで行き、少し体を浮かした。
「凄い…!」
柚希の声が漏れる。
「まだまだこれからだよ。」
私はそのまま宙へ浮かび、窓から外へと出て、一気に空へと飛んだ。
「怖くない?大丈夫?」
柚希に怖くないか確認をしたが、返事はない。
もしかして怖くて怯えているのかもしれないと思い顔を覗き込むと、彼は空から見る景色に感動をしている様子だった。
「外の世界はこんなにも美しかったんだ…!」
私も柚希と同じように景色へと視線を移す。
「柚希は初めて見るの?」
「うん、こんなに綺麗なのは…初めてだ…。」
彼の声が急に震えだし、もう一度顔を見ると、柚希は大粒の涙を流していた。
「柚希…?」
「……!ごめん…!凄く感動したんだ。こんな事初めてで…、こんなに綺麗なものを見たのは初めてで…!」
涙を拭いながら彼は答えた。
私はその涙を少しでも早く風で乾かしてあげようと、ゆっくりと空を舞った。
私達は2人で色んなものを見た。
近くのパン屋、海、学校。
柚希はきっと、その全ての景色を見た事はあると思うが、空からは産まれて初めて見るという事もあり感動している。
私は楽しい時間を柚希と共に過し、それと同時にまた分からない温かい気持ちに包まれていた。
夕方。
私は柚希を部屋まで連れて帰った。
「どうだった?」
「最高だよ!こんなに感動したのはいつぶりだろう!」
部屋に戻っても興奮している様子の柚希は、キラキラと目を輝かせていた。
そしてその目を私に向け一言「ありがとう。」と言った。
私は照れくさくなって、椅子から立ち上がり、
「今日は帰るよ、またいつでも空の旅に連れてってあげるから、外に行きたい時は遠慮なく言いな。」
そう言葉を残し、窓から外へと飛び、夕焼けへと姿を消していった。
もちろん他の死神には内緒にしてだけど。
いつも同じように家へと勝手に入り、いつもと同じように部屋の扉を開け、いつもと同じように窓の外を見ている柚希に声をかける。
何も変わらない毎日だが、凄く楽しい毎日であった。
しかし、毎回同じような会い方では面白味がない。
そういうことで今日の私は、部屋の窓からこんにちはすることにしたのだ。
柚希がいつも通り外を眺めているのを、家の外から確認し、私は張り切りながら、空中を飛び柚希の部屋の窓まで飛んだ。
そして、
「ばあああああぁぁぁぁぁーー!!!!」
私が驚かすように大きな声で叫ぶと、案の定柚希は驚き、ベッドの上で叫びながらバタバタしている。
「あははははは!!!柚希驚いてる!!」
「ビックリするに決まってるだろー!もう!!」
柚希は少し膨れていたが、私の笑っている顔を見て安心したのか、彼も笑いだした。
そしてここからはまたいつも通り。
彼のベッドの近くにある椅子に腰を下ろす。
「それにしても驚いたよ!」
さっきの事を思い出しながらクスクス笑う柚希。
「死神って空も飛べるんだね!」
目を輝かせながら私を見る。
その目に私は惹かれていた。
うっとりと見惚れてしまうほど、綺麗で純粋な目なのだ。
そして顔を赤くしながら「まぁね。」と答える。
すると柚希はいつものように窓の外に目を向けた。
「羨ましいな、僕はどこにも行けないから。自由に飛び回れる死神さんが羨ましい。」
顔はよく見えなかったが、声は悲しそうだった。
「じゃー飛んでみる?」
「え…?」
「え!?」
なぜ自分がそんな事を言ったのか分からず、その言葉を無意識に言っていた事に驚き、口元を手で隠す。
「いいの…?」
柚希が控えめに言ってくる。
私は口元を手で隠しながらコクンと首を縦に振る。
柚希は先程の悲しそうな声とは違い、ワクワクするような声で喜んだ。
「やったーー!!!僕いつか空を飛びたいと思ってたんだ!!!夢が叶うぞ!」
その姿はまるで天使のようで、またしばらく見惚れてしまっていた。
私はふと我に返り、椅子から立ち上がって、柚希に手を差し伸べる。
「私の手を掴んで。」
「うん!」
柚希が差し伸べた私の手を握ると、その手を軸に彼をお姫様抱っこした。
「君って力持ちなんだね。」
「死神は皆そうだよ。」
私は窓の近くまで行き、少し体を浮かした。
「凄い…!」
柚希の声が漏れる。
「まだまだこれからだよ。」
私はそのまま宙へ浮かび、窓から外へと出て、一気に空へと飛んだ。
「怖くない?大丈夫?」
柚希に怖くないか確認をしたが、返事はない。
もしかして怖くて怯えているのかもしれないと思い顔を覗き込むと、彼は空から見る景色に感動をしている様子だった。
「外の世界はこんなにも美しかったんだ…!」
私も柚希と同じように景色へと視線を移す。
「柚希は初めて見るの?」
「うん、こんなに綺麗なのは…初めてだ…。」
彼の声が急に震えだし、もう一度顔を見ると、柚希は大粒の涙を流していた。
「柚希…?」
「……!ごめん…!凄く感動したんだ。こんな事初めてで…、こんなに綺麗なものを見たのは初めてで…!」
涙を拭いながら彼は答えた。
私はその涙を少しでも早く風で乾かしてあげようと、ゆっくりと空を舞った。
私達は2人で色んなものを見た。
近くのパン屋、海、学校。
柚希はきっと、その全ての景色を見た事はあると思うが、空からは産まれて初めて見るという事もあり感動している。
私は楽しい時間を柚希と共に過し、それと同時にまた分からない温かい気持ちに包まれていた。
夕方。
私は柚希を部屋まで連れて帰った。
「どうだった?」
「最高だよ!こんなに感動したのはいつぶりだろう!」
部屋に戻っても興奮している様子の柚希は、キラキラと目を輝かせていた。
そしてその目を私に向け一言「ありがとう。」と言った。
私は照れくさくなって、椅子から立ち上がり、
「今日は帰るよ、またいつでも空の旅に連れてってあげるから、外に行きたい時は遠慮なく言いな。」
そう言葉を残し、窓から外へと飛び、夕焼けへと姿を消していった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
Dランク水魔法使いが実家を追い出された後、真理を手に入れて死神と呼ばれる冒険者となる話
卯月 三日
ファンタジー
才能あふれる家族のもとに生まれたルクス。
しかし、彼が得たのは、水属性のDという低い魔法適正だった。家をでたルクスは大道芸人をやっていたが、ひょんなことから真理を得ることになる。
真理を得たルクスと少女との出会い。
そこから始まる戦いの日々。
強敵達をなぎ倒しながら、ルクスはいつしか死神と呼ばれるようになる……。
小説家になろうにも別名で投稿しております。
強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい
リコピン
ファンタジー
某乙女ゲームの悪役令嬢に転生したナディア。子どもの頃に思い出した前世知識を生かして悪役令嬢回避を狙うが、強制力が無茶するせいで上手くいかない。ナディアの専属執事であるジェイクは、そんなナディアの奇行に振り回されることになる。
※短編(10万字はいかない)予定です
ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。
桜祭
ファンタジー
前世の記憶を思い出してしまい、ここが前世でプレイしたギャルゲーの世界だと気付いてしまった少年の奮闘物語。
しかし、転生してしまったキャラクターに問題があった。
その転生した明智秀頼という男は、『人を自由自在に操る』能力を用いてゲームの攻略ヒロインを次々と不幸に陥れるクズでゲスな悪役としてヘイトを稼ぐ男であった。
全プレイヤーに嫌われるほどのキャラクターに転生してしまい、とにかくゲームの流れにはならないようにのらりくらりと生きようと決意するのだが……。
いつでもトラブルがエンカウント物語の開幕です。
カクヨム様にて、総合部門日間3位の快挙を達成しました!
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
剣聖の娘はのんびりと後宮暮らしを楽しむ
O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。
それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。
ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。
彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。
剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。
そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……
182年の人生
山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。
人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。
二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。
(表紙絵/山碕田鶴)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる