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第3章 携帯越しに止まった時間
死神との喧嘩
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「私・・・、本当は嫌われてるかもしれない。」
ドアをドスンっと置いた女の子に、私は一言そう言った。
「・・・。」
女の子はその一言に反応し、黙ったまま私を見ている。
「私と日向はね、幼稚園の時に友達になったの。一緒に過ごしていくうちにどんどん友達から親友に変わっていった。」
聞かれてもいない昔話を、私は口を開き話し始めた。
「私達の小学校昔からいじめが酷かったんだよね。先生達も子どもの悪ふざけだと思ってたみたいで。誰も止めてくれなかった。」
私は涙が零れそうなのを必死に我慢した。
どうしても思い出したくない記憶を話したかったから。
どうしても話して楽になりたかったから。
「やっぱり小学生だから手加減とか知らないんだよね、だから何をされたら本当に傷つくかも知らなかった。私は結構やり返す方だったけど、日向は違う。あなたも見てたでしょ?あんな地味な子だよ?やり返せるはずもないよ。」
「・・・・・・。」
「いじめをされ続ける日々だった。でも私は運がいい事に親の仕事の都合で引っ越すことになって、引っ越した先でも友達に恵まれて、学校ってこんなに楽しいところなんだって初めて感じた。でもたまにあの思考が過ぎるんだよね、日向はまだいじめられてるって。」
自分のその言葉に初めて涙が零れた。
私がいつも思い出さないように心の奥底に隠していた言葉。
『日向はまだいじめられている。』
「私だけずっと幸せなフリしてた。日向はいじめられてるのに、私は気づかないフリしてた。初めてできた友達からも軽蔑されないようにこの過去も話してこなかった。本当は・・・、気づかなきゃいけなかったのに・・・。気づいてたはずなのに・・・!」
とうとう膝から崩れ落ちた。
今まで誰かに話したかったことを死神かもしれない女の子に話し、気持ちが溢れた。
もう誰でもよかった。
私の中にある気持ち悪い感情を誰かに話して楽になりたかっただけ。
ずっと隠し通してきた罪悪感を誰かに話したかっただけ。
女の子は膝から崩れ落ちた私を見下ろしている。
そして、
「そうか、まぁなんでもいいよ。とりあえず一応願いは叶えたから階段は登ってもらうよ。」
そう言って扉を開けていた。
その無慈悲な言葉に私は絶望を感じた。
私は慰めて欲しかった。
慰めて欲しかったという気持ちがまた私の感情を溢れさせ、口を開かせる。
「なんでよ・・・、なんでよ!!!あなた本当に何も思わないの!?この話を聞いてもっと何か言うことあるんじゃないの!?」
「あんたの感情を押し付けないでよ。」
「・・・・・・!」
女の子は冷たい表情と言葉で私を責めた。
「あんたが親友さんにどう思おうが私には知ったことじゃない。それはあんたの気持ちだから。私はただ階段を登って欲しいから最後に親友さんに合わせただけ。そこに慈悲も同情もない。」
放心状態だ。
本当にこの子には感情がないんだ。
そう思わざるを得なかった瞬間だった。
何年も、何十年も何百年も周りが死んでいくのを見続けなければならないという話を聞いて、私は可哀想だと思い女の子と友達になろうとした。
でも今の言葉で全ての優しさが怒りへと変わった。
「何それ・・・、少しは感情のある優しい子だとは思ってたのに。こんなつまらない話を・・・、ここまで聞いてくれたから・・・、優しい子だと思ってたのに・・・。」
「・・・・・・。」
「人が死んでいくのを見続けなければならないあなたが可哀想だと思った・・・。でも、今の言葉でそんな風には思えなくなった!!!」
女の子は泣き崩れる私の事を真っ直ぐ見つめている。
「それも、あんたの勝手な感情だ。あんたの勝手な思い込み。」
その言葉を言い放った声は、何故か震えて聞こえた。
「可哀想?私がいつ寂しいとか、悲しいとか言ったの?私の気持ちを勝手に憶測して、勝手に勘違いして、勝手に友達になろうとしてただけじゃないか。」
女の子のこの言葉に気付かされた。
確かに女の子は寂しいなんか言っていない。
それどころか友達や家族、恋人という関係はこの仕事の邪魔だとさえ言っていた。
それなのに私は勝手な思い込みをして、私の気持ちを押し付けていた。
私はまた涙を零した。
こんな恥ずかしい勘違いをし、酔っている自分がとてつもなく気持ち悪く思えた。
「ごめん・・・、ごめん・・・」
私は震えながら小声で何度も謝った。
これは自分の間違いを正すためでもあるが、女の子を可哀想だと決めつけたことに対する謝罪でもある。
「ごめんなさい・・・。」
声を振り絞ることで精一杯。
震える自分を抑えることで精一杯。
今の私には余裕がなく、何もかもが精一杯だった。
女の子はそんな私を見て、目の前にしゃがみ込んだ。
「あんたは勘違いが多い。だから・・・、もしかしたら嫌われてるかもっていうのも勘違いかもしれない。」
「えっ・・・?」
あまりにも温かい言葉。
今までの冷たい女の子の口から出るとは思えない言葉だった。
「本当に嫌われてるかもしれない、でも違うかもしれない。それはあんたの親友にしか分からないけど、あんたはどうなの?どうしたいわけ?」
私の中ではすでに答えが決まっていた。
「謝りたい・・・、仲直りしたい・・・、日向の気持ちをちゃんと知りたい!!!」
泣いてぐちゃぐちゃになった顔を女の子に向ける。
その時女の子の顔を見たが、笑ってはいなかった。
でも、私を見る目は温かかった。
ドアをドスンっと置いた女の子に、私は一言そう言った。
「・・・。」
女の子はその一言に反応し、黙ったまま私を見ている。
「私と日向はね、幼稚園の時に友達になったの。一緒に過ごしていくうちにどんどん友達から親友に変わっていった。」
聞かれてもいない昔話を、私は口を開き話し始めた。
「私達の小学校昔からいじめが酷かったんだよね。先生達も子どもの悪ふざけだと思ってたみたいで。誰も止めてくれなかった。」
私は涙が零れそうなのを必死に我慢した。
どうしても思い出したくない記憶を話したかったから。
どうしても話して楽になりたかったから。
「やっぱり小学生だから手加減とか知らないんだよね、だから何をされたら本当に傷つくかも知らなかった。私は結構やり返す方だったけど、日向は違う。あなたも見てたでしょ?あんな地味な子だよ?やり返せるはずもないよ。」
「・・・・・・。」
「いじめをされ続ける日々だった。でも私は運がいい事に親の仕事の都合で引っ越すことになって、引っ越した先でも友達に恵まれて、学校ってこんなに楽しいところなんだって初めて感じた。でもたまにあの思考が過ぎるんだよね、日向はまだいじめられてるって。」
自分のその言葉に初めて涙が零れた。
私がいつも思い出さないように心の奥底に隠していた言葉。
『日向はまだいじめられている。』
「私だけずっと幸せなフリしてた。日向はいじめられてるのに、私は気づかないフリしてた。初めてできた友達からも軽蔑されないようにこの過去も話してこなかった。本当は・・・、気づかなきゃいけなかったのに・・・。気づいてたはずなのに・・・!」
とうとう膝から崩れ落ちた。
今まで誰かに話したかったことを死神かもしれない女の子に話し、気持ちが溢れた。
もう誰でもよかった。
私の中にある気持ち悪い感情を誰かに話して楽になりたかっただけ。
ずっと隠し通してきた罪悪感を誰かに話したかっただけ。
女の子は膝から崩れ落ちた私を見下ろしている。
そして、
「そうか、まぁなんでもいいよ。とりあえず一応願いは叶えたから階段は登ってもらうよ。」
そう言って扉を開けていた。
その無慈悲な言葉に私は絶望を感じた。
私は慰めて欲しかった。
慰めて欲しかったという気持ちがまた私の感情を溢れさせ、口を開かせる。
「なんでよ・・・、なんでよ!!!あなた本当に何も思わないの!?この話を聞いてもっと何か言うことあるんじゃないの!?」
「あんたの感情を押し付けないでよ。」
「・・・・・・!」
女の子は冷たい表情と言葉で私を責めた。
「あんたが親友さんにどう思おうが私には知ったことじゃない。それはあんたの気持ちだから。私はただ階段を登って欲しいから最後に親友さんに合わせただけ。そこに慈悲も同情もない。」
放心状態だ。
本当にこの子には感情がないんだ。
そう思わざるを得なかった瞬間だった。
何年も、何十年も何百年も周りが死んでいくのを見続けなければならないという話を聞いて、私は可哀想だと思い女の子と友達になろうとした。
でも今の言葉で全ての優しさが怒りへと変わった。
「何それ・・・、少しは感情のある優しい子だとは思ってたのに。こんなつまらない話を・・・、ここまで聞いてくれたから・・・、優しい子だと思ってたのに・・・。」
「・・・・・・。」
「人が死んでいくのを見続けなければならないあなたが可哀想だと思った・・・。でも、今の言葉でそんな風には思えなくなった!!!」
女の子は泣き崩れる私の事を真っ直ぐ見つめている。
「それも、あんたの勝手な感情だ。あんたの勝手な思い込み。」
その言葉を言い放った声は、何故か震えて聞こえた。
「可哀想?私がいつ寂しいとか、悲しいとか言ったの?私の気持ちを勝手に憶測して、勝手に勘違いして、勝手に友達になろうとしてただけじゃないか。」
女の子のこの言葉に気付かされた。
確かに女の子は寂しいなんか言っていない。
それどころか友達や家族、恋人という関係はこの仕事の邪魔だとさえ言っていた。
それなのに私は勝手な思い込みをして、私の気持ちを押し付けていた。
私はまた涙を零した。
こんな恥ずかしい勘違いをし、酔っている自分がとてつもなく気持ち悪く思えた。
「ごめん・・・、ごめん・・・」
私は震えながら小声で何度も謝った。
これは自分の間違いを正すためでもあるが、女の子を可哀想だと決めつけたことに対する謝罪でもある。
「ごめんなさい・・・。」
声を振り絞ることで精一杯。
震える自分を抑えることで精一杯。
今の私には余裕がなく、何もかもが精一杯だった。
女の子はそんな私を見て、目の前にしゃがみ込んだ。
「あんたは勘違いが多い。だから・・・、もしかしたら嫌われてるかもっていうのも勘違いかもしれない。」
「えっ・・・?」
あまりにも温かい言葉。
今までの冷たい女の子の口から出るとは思えない言葉だった。
「本当に嫌われてるかもしれない、でも違うかもしれない。それはあんたの親友にしか分からないけど、あんたはどうなの?どうしたいわけ?」
私の中ではすでに答えが決まっていた。
「謝りたい・・・、仲直りしたい・・・、日向の気持ちをちゃんと知りたい!!!」
泣いてぐちゃぐちゃになった顔を女の子に向ける。
その時女の子の顔を見たが、笑ってはいなかった。
でも、私を見る目は温かかった。
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