共犯

ボブえもん工房

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第1章 大学最後のビッグイベント

浮かれる心達

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大学生活最後の1月下旬、私達は浮かれていた。
なぜなら私達の大学は、4年生の2月に有名なホテルへと行き、パーティーをするというビッグイベントがあるからだ。
パーティーをする理由は大学生活最後くらい盛大に楽しんで、社会人になっても頑張ろうという単純なものだ。
私は大きな会場を貸し切って、知り合いのみで行われるパーティーに心を踊らせていた。
この間スマホに大学からパーティーのお誘いが来た。
招待状のようなものだ。
メールを見た時点でパーティーへ行くという意思表示になり、大学側がホテルに予約をしてくれる。
行かないなんて人はいないだろう。
私は大学の食堂の椅子に座り、メールの内容を何回も確認していた。
すると後ろから、私のポニーテールをいつものように触りながら話し掛けてくる人物がいた。
「なぁにニヤニヤしてんだかねぇ!」
「びっくりしたぁ…!」
聞き馴染みのある声に振り向くと、大学に入ってすぐに仲良くなった伊藤 千紘(いとう ちひろ)がいた。
「驚かすなよぉ、千紘ぉ。」
「何か犯罪者みたいな顔でニヤついてる変わり者がいたから声掛けたわ。」
「親から貰った顔いじんな。」
いつものおふざけを始める私達。
千紘は大学に入った当初、人見知りをしていて、大人しく椅子に座っているイメージだった。
他の子達は、お互いにすぐ声を掛け合って仲良くなっていたが、千紘と私は完全に出遅れていた。
私も人見知りをする方だが、勇気を出して話し掛け、そこから仲良くなり今では軽口を言い合う仲になっている。
千紘はサークルに入り、一気に友達が多くなった。
サークル仲間と飲みに行く事が増え、大学生活の半分はその子達と過ごしている。
人見知りで自己主張をしなかったはずの千紘は、皆から人気があり可愛がられている。
彼女は俗に言ういじられキャラなのだ。
私はと言うと、同じ学部の子達と徐々に仲良くなっていき、その子達と過ごすことが多くなった。
私はどちらかと言うといじる方が多いが、人の嫌がるようなことは言わない。
あくまでも周りが面白いと思える許容範囲でいじっている。
そんな風に別々になってしまった私達だが、完璧に離ればなれになったわけではない。
大学生活の半分は自分達の自由な時間だが、もう半分は気づけば2人の時間になっている。
縛られず会いたい時に会って、話したい時に話す。
丁度いい関係を築いているのだ。
前と変わらず仲が良く、LINEはするし、千紘のサークルが無い日は一緒に帰る。
違う場所にいても、2人はいつも仲良しなのだ。
「ねぇねぇ、パーティーに着て行く服決まった?」
千紘がスマホの画面をタップしながら聞いてくる。
「決めたよ。私は黄色のワンピース着て行く、あの服ドレスに見えるし!千紘は?」
「私は青のドレスかなぁ、レンタルだけどね!」
「へぇいいじゃん!」
タップしていたスマホの画面を私に見せてくる。
「可愛いじゃん!千紘には似合わんなぁ~。」
「てめぇ…、ぶっ飛ばすぞ!」
「冗談じゃんかぁ、でも本当にいいと思う!」
その言葉を聞いて、満足そうに彼女は笑った。
そんな話をしながら、2人で暇潰しをしていると、大声で千紘を呼ぶ声が聞こえた。
「千紘ー!ご飯買いに行こう!」
「ごめん、呼ばれたから行くわ!」
「うん、また授業で。」
彼女は急いでその子達の所まで走って行った。
千紘を呼んだ子は、同じサークルで1番仲がいい玲奈(れな)という子だ。
しかしあの子は私のことをあまり良く思っていないらしい。
他の子から聞いたが、どうやら私が千紘と仲良くしていることが気に食わないんだとか…。
なるべく関わらないようにしているが、たまに千紘が空気を読まずに連れてくる時がある。
千紘はそういうのに鈍感だから気づいていないようだ。
「皆仲良し精神だけやめてくんないかなぁ…。」
私は一人言を溜め息混じりに呟いた。
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