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【トーマスと僕】
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やあ、トーマス。気分はどうだい?やはり、良さそうじゃないね。
もしかして「地下牢に閉じ込められているから」ではなくて、「どうして地下牢に閉じ込められたかが理解できていない」……それが原因かい?
そうか、だろうと思っていたよ。
何、僕達は『親友』だったじゃないか。君がそう言ってくれたんだよ。しがない貧乏男爵家の三男坊の僕を、王家の血を引く由緒正しい大公家の跡取り息子が……ね。
済まない、いくら頼まれようと、君をこの地下牢から出すことは出来ないんだ。ご存じの通り、貧乏貴族の三男坊はそんな権限なんて持ち得ないからね。
うん、うん……トーマス、君はまだ『真実の愛』を口にするんだね。
あの悪女ならもう処刑されたよ。君を含めた国の中枢に関わる貴族達の令息の大半と情を交わしていた上に、彼らの口から漏れた国の機密情報を隣国に売り渡していたとあってはね。死刑が妥当だろう?
驚かないでくれ、トーマス、君もあの悪女の涙に絆されていたんだ。
…………。
なあ、トーマス。
いくらそうだったからといって、真実に君を愛していたエリカ様に、どうして君はああも酷い態度が取れたんだい?
エリカ様は君の唯一の婚約者で、君に引けを取らない血統の大貴族の一人娘だったじゃないか。父君はこの国の英雄、母君は友好国の王女。そして彼女は優秀で慈悲深い『結界』を張れる聖女で……。
えっ!?優秀なのが気にくわなかった!?慈悲深いのが鼻についた!?
そうか、だろうと思っていたよ。
トーマス、君はいつだって己より優秀な相手を妬み、恨み、引きずり下ろそうとしていたからね。
だから馬鹿女の振りをするあの悪女にころりと騙されて、大喜びで国の大事な機密情報を漏らしてしまったんだろうよ。
…………。
なあ、馬鹿な相手は安心したかい?
馬鹿な相手を体よく支配していると思い込んで、さぞご満悦だったんだろう?
実際は貴様が一番の馬鹿だったと思いもしないでさ。
何を怯えているんだ、トーマス。俺の人格が変わったとでも思ったか?
生憎これが俺の本性だ。貴様だけに向ける、俺の中にある最もおぞましい獣の顔さ。
トーマス。
かつて貴様は『親友』の俺に何をしたか、その時どんな気分だったかを言えよ。
『親友』に虫を食わせて嗤っていただろう。
一週間かけて書いたレポートを奪っただろう。
はは、女性の下着を盗んだと冤罪を被せられたこともあったな。
殴る蹴るは当たり前、火傷も骨折も当たり前だった。
まだ痕が残っているんだぜ、ほら、見ろよ。
何で目を背けるんだよ、あの時は楽しそうに何十回と踏みにじったじゃあないか!
エリカ様だけだったよ、俺の無実を信じてくれたのは。俺の怪我を泣きながら治してくれたのは。
エリカ様は俺にとっても、正真正銘の聖女だった。
俺がいくら不幸で苦痛まみれの人生であっても、エリカ様がお幸せなら俺は何もかもに納得出来ていたんだぜ。
だが!
貴様はことも有ろうに!
そのエリカ様相手にやりやがったな!
悪女のでまかせを調べもせずに信じて、何の罪もないエリカ様に剣を抜いて襲いかかった。咄嗟に身を挺して庇った忠実な侍女を未だに立ち上がれない体にしてさ。エリカ様が『結界』を張るのがもう少し遅かったら……ああ、想像するだけでぞっとしねえよ。
ああ、そうだ、トーマス。
俺がどうしてここに来たか、その理由を教えてやるよ。
貴様で最後なんだよ、悪女に騙された馬鹿男は!
貴様のせいで王立学園を退学させられた俺だったが、嬉しいことにこの国の『暗部』に採用して貰えたんでね。
……やっと血を吐いたか。
あばよ、トーマス。
地獄で会おうぜ。
もしかして「地下牢に閉じ込められているから」ではなくて、「どうして地下牢に閉じ込められたかが理解できていない」……それが原因かい?
そうか、だろうと思っていたよ。
何、僕達は『親友』だったじゃないか。君がそう言ってくれたんだよ。しがない貧乏男爵家の三男坊の僕を、王家の血を引く由緒正しい大公家の跡取り息子が……ね。
済まない、いくら頼まれようと、君をこの地下牢から出すことは出来ないんだ。ご存じの通り、貧乏貴族の三男坊はそんな権限なんて持ち得ないからね。
うん、うん……トーマス、君はまだ『真実の愛』を口にするんだね。
あの悪女ならもう処刑されたよ。君を含めた国の中枢に関わる貴族達の令息の大半と情を交わしていた上に、彼らの口から漏れた国の機密情報を隣国に売り渡していたとあってはね。死刑が妥当だろう?
驚かないでくれ、トーマス、君もあの悪女の涙に絆されていたんだ。
…………。
なあ、トーマス。
いくらそうだったからといって、真実に君を愛していたエリカ様に、どうして君はああも酷い態度が取れたんだい?
エリカ様は君の唯一の婚約者で、君に引けを取らない血統の大貴族の一人娘だったじゃないか。父君はこの国の英雄、母君は友好国の王女。そして彼女は優秀で慈悲深い『結界』を張れる聖女で……。
えっ!?優秀なのが気にくわなかった!?慈悲深いのが鼻についた!?
そうか、だろうと思っていたよ。
トーマス、君はいつだって己より優秀な相手を妬み、恨み、引きずり下ろそうとしていたからね。
だから馬鹿女の振りをするあの悪女にころりと騙されて、大喜びで国の大事な機密情報を漏らしてしまったんだろうよ。
…………。
なあ、馬鹿な相手は安心したかい?
馬鹿な相手を体よく支配していると思い込んで、さぞご満悦だったんだろう?
実際は貴様が一番の馬鹿だったと思いもしないでさ。
何を怯えているんだ、トーマス。俺の人格が変わったとでも思ったか?
生憎これが俺の本性だ。貴様だけに向ける、俺の中にある最もおぞましい獣の顔さ。
トーマス。
かつて貴様は『親友』の俺に何をしたか、その時どんな気分だったかを言えよ。
『親友』に虫を食わせて嗤っていただろう。
一週間かけて書いたレポートを奪っただろう。
はは、女性の下着を盗んだと冤罪を被せられたこともあったな。
殴る蹴るは当たり前、火傷も骨折も当たり前だった。
まだ痕が残っているんだぜ、ほら、見ろよ。
何で目を背けるんだよ、あの時は楽しそうに何十回と踏みにじったじゃあないか!
エリカ様だけだったよ、俺の無実を信じてくれたのは。俺の怪我を泣きながら治してくれたのは。
エリカ様は俺にとっても、正真正銘の聖女だった。
俺がいくら不幸で苦痛まみれの人生であっても、エリカ様がお幸せなら俺は何もかもに納得出来ていたんだぜ。
だが!
貴様はことも有ろうに!
そのエリカ様相手にやりやがったな!
悪女のでまかせを調べもせずに信じて、何の罪もないエリカ様に剣を抜いて襲いかかった。咄嗟に身を挺して庇った忠実な侍女を未だに立ち上がれない体にしてさ。エリカ様が『結界』を張るのがもう少し遅かったら……ああ、想像するだけでぞっとしねえよ。
ああ、そうだ、トーマス。
俺がどうしてここに来たか、その理由を教えてやるよ。
貴様で最後なんだよ、悪女に騙された馬鹿男は!
貴様のせいで王立学園を退学させられた俺だったが、嬉しいことにこの国の『暗部』に採用して貰えたんでね。
……やっと血を吐いたか。
あばよ、トーマス。
地獄で会おうぜ。
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