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男大好きアホ女にしては奇妙
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「きゃあっ、申し訳ございません!ぶつかってしまうなんて……私の不注意でした」
「い、いや、良いんだよ。君こそ怪我は無いか?」
「ええ、貴方様が受け止めて下さったからどこも痛くありません。……今度からはこのような事が無いように気をつけて参りますわね」
「そうだね、それが……」
「本当にありがとうございます……何てお礼をすれば良いのか」
「あっ……いやぁ、あははは……あははは……っ!」
美少女にぶつかられて、涙ぐまれて、お礼を言われて、微笑まれて抱きつかれて。
それで悪い気がする男っていないだろうなー。
まあ、普通はいないだろうねー。
留学してきて早々に、クロエ嬢は上から下まで男にとにかく積極的に近付いた。愛想が良くて媚びを振りまいて。だから、あっという間に女子からは蛇蝎のごとく嫌われる。
「……俺は開幕失恋して良かったかも知れない」とレクスが安堵するくらいだった。
「あれは何だね?貴族の愛人の地位でも狙っているのかね!?」
ヴァロが忌々しそうに言った。
ハリカルナッシン家の養子候補として明らかによろしくない振る舞いだからだ。
「だとしたら、何かおかしいよね」
俺は眉をひそめた。
クロエ嬢の行動には、何らかの目的があるようなのだ。
「何がおかしいのだね?」
「どこもおかしくなんか……俺はガッカリしているぜ……?」
ヴァロとレクスが怪訝そうに俺の方を向いて言った。
「一見無差別に男にすり寄っているように見えるけれど、近付こうとしている男に共通点があるみたいだ」
「「は?」」
『……』
「今のところ、彼女が狙っているのは……貴族派だけじゃないかな……?」
「どう言う意味だ!?」
レクスが食いついてきた。
レクスをなだめて、声量をとても抑えて、俺は二人に囁く。
「このクラスで一番爵位が高いのは僕達だろう?でもクロエ嬢は僕達に抱きついた事はおろかほとんど会話した事も無い」
「そう言えば……『こんにちは、良いお天気ですね』しか俺も言われてないぜ」
我に返ったようにレクスが言った。
「男と女の物の見方は少しは違うかも知れないけれど……クロエ嬢は成績優秀だろう?」
「それは否定……しない」
ヴァロが小声で言った。
クロエ嬢が、一昨日の臨時(抜き打ちとも言う)テストの総合結果でヴァロの次に食い込んだからだ。魔法学はヴァロより3点下だったが、数学ではヴァロより1点高かった。
今までずーっと、トップに立っていたヴァロにとっては凄まじい屈辱だっただろう。
「あそこまで頭の良い子だったら、財産持ちで落としやすい男だってすぐに見抜くんじゃないかなって」
そう言ってから俺はヴァロをジーッと見つめた。
穴が開きそうなくらいに、ジーッと。
「そうか……確かにな」
レクスも納得の顔でヴァロをジーッと見つめた。
『ああ、この学者バカはとても落としやすそうだ』
「わ、吾輩か……!?」
ヴァロだけが心外そうである。
「そう考えて彼女を見てみたら、貴族派の男にしかすり寄っていないんじゃないかって……」
「い、いや、良いんだよ。君こそ怪我は無いか?」
「ええ、貴方様が受け止めて下さったからどこも痛くありません。……今度からはこのような事が無いように気をつけて参りますわね」
「そうだね、それが……」
「本当にありがとうございます……何てお礼をすれば良いのか」
「あっ……いやぁ、あははは……あははは……っ!」
美少女にぶつかられて、涙ぐまれて、お礼を言われて、微笑まれて抱きつかれて。
それで悪い気がする男っていないだろうなー。
まあ、普通はいないだろうねー。
留学してきて早々に、クロエ嬢は上から下まで男にとにかく積極的に近付いた。愛想が良くて媚びを振りまいて。だから、あっという間に女子からは蛇蝎のごとく嫌われる。
「……俺は開幕失恋して良かったかも知れない」とレクスが安堵するくらいだった。
「あれは何だね?貴族の愛人の地位でも狙っているのかね!?」
ヴァロが忌々しそうに言った。
ハリカルナッシン家の養子候補として明らかによろしくない振る舞いだからだ。
「だとしたら、何かおかしいよね」
俺は眉をひそめた。
クロエ嬢の行動には、何らかの目的があるようなのだ。
「何がおかしいのだね?」
「どこもおかしくなんか……俺はガッカリしているぜ……?」
ヴァロとレクスが怪訝そうに俺の方を向いて言った。
「一見無差別に男にすり寄っているように見えるけれど、近付こうとしている男に共通点があるみたいだ」
「「は?」」
『……』
「今のところ、彼女が狙っているのは……貴族派だけじゃないかな……?」
「どう言う意味だ!?」
レクスが食いついてきた。
レクスをなだめて、声量をとても抑えて、俺は二人に囁く。
「このクラスで一番爵位が高いのは僕達だろう?でもクロエ嬢は僕達に抱きついた事はおろかほとんど会話した事も無い」
「そう言えば……『こんにちは、良いお天気ですね』しか俺も言われてないぜ」
我に返ったようにレクスが言った。
「男と女の物の見方は少しは違うかも知れないけれど……クロエ嬢は成績優秀だろう?」
「それは否定……しない」
ヴァロが小声で言った。
クロエ嬢が、一昨日の臨時(抜き打ちとも言う)テストの総合結果でヴァロの次に食い込んだからだ。魔法学はヴァロより3点下だったが、数学ではヴァロより1点高かった。
今までずーっと、トップに立っていたヴァロにとっては凄まじい屈辱だっただろう。
「あそこまで頭の良い子だったら、財産持ちで落としやすい男だってすぐに見抜くんじゃないかなって」
そう言ってから俺はヴァロをジーッと見つめた。
穴が開きそうなくらいに、ジーッと。
「そうか……確かにな」
レクスも納得の顔でヴァロをジーッと見つめた。
『ああ、この学者バカはとても落としやすそうだ』
「わ、吾輩か……!?」
ヴァロだけが心外そうである。
「そう考えて彼女を見てみたら、貴族派の男にしかすり寄っていないんじゃないかって……」
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