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それにしても尻が痛い

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 サリナは次の日の朝、朝食を運んできてくれた時に話してくれた。

手紙を読みながらフラヴィウスが目を見開き、ワナワナと震えて顔を真っ赤にして歯を食いしばったこと。それからすぐさまサリナに『委細任せるようにと伝えてくれ』とだけ言い残して、その場を立ち去ったこと。

「坊ちゃま……これから奥方様は……」

「ゆめのなかでね、こうたいしでんかはおかあさんがだいすきだったんだ」

サリナはハッとした。

でもその反応は俺の言葉に驚いたと言うより、俺の言葉で納得が出来たと言うべき顔だった。

「やはり……そうだったのですね」



 帝国城にデボラがいた時から、何となくお互いに好感を抱いていた。だが政略ありきの皇族貴族の結婚、結ばれるなんて甘い夢は最初から捨てている。祈るように相手の幸福のために、二人は周囲から見て違和感があるほどに双方の距離を遠く離したまま、長らく固定していたのだ。その違和感にサリナだって気付いていても何も変じゃない。

「もしぼくがしっぱいしても、こどものしたことだもの。むちうちまではされないよ」

中身はおっさんになりかけているけれどな。

俺が悪ガキのようにニヤッと笑うと、サリナもようやく笑ってくれた。

「……その、お体の調子は、もう……痛んだりしませんか?」

「まだちょっとおしりがいたいかな」

俺がカインの体に居座る直前にもデボラに鞭で叩かれたらしくて、まだ腫れ上がっている。こんな虐待をずっと受けていたら、そりゃ歪むよな……。

「ひかりまほうがつかえるひとがいればいいのにね」



 この世界で魔法が扱えるのは貴族以上の身分の出身者だけだ。そしてそれらの魔法は6つの属性に分かれている。

人々を守り癒やし導く光、命や動力の源となる炎、移動や情報を司る風、豊穣や繁栄の加護を宿す水、建築や工作などモノを生み出す地、破壊と魂を支配する闇だ。

属性は髪と目の色に必ず反映されるので、誰がどの属性を所持しているか、一目で分かる。

髪と目の色の濃さに魔力の強さは反映される。サリナは曖昧に光属性だが(ある貴族の私生児なのだ)、マグヌスは疑いようのない地属性である。



「私は魔法は使えませんが」魔法は幼少期から特訓してやっと扱えるようになるものだからなあ……。「お薬を塗ることは出来ますよ」

俺はありがたくサリナに頼んで、尻に塗って貰った。羞恥心よりも尻が痛む方が勝った。

ちょっと染みたが、その後で痛みは少しだけマシになった。

「ありがとう、サリナ」

何か家が騒がしくなったのはその瞬間だった。

「……?様子を見て参ります」

と言って部屋を出て行ったサリナが目を白黒させながら走って戻ってきた。

「こ、皇太子殿下が!坊ちゃま、大変です!」



 俺が思っていた以上にフットワーク軽いな!?
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