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サリナを守るために

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 「さっきふしぎなゆめをみました。ぼくが22さいでしぬまでのゆめです。そのなかでサリナにレーフこうしゃくがひどいことをして、ぼくのおとうとをうみました」
俺って言っているんだけれど『ぼく』になっている。自動的に翻訳されているらしい。
デボラは青ざめていたが、すぐに首を左右に振った。
「……さっき頭を叩いたから気がおかしくなったのね。サリナ、連れて行って頂戴。お前と話すことは何も無いわ」
「は、はい、奥方様……」
俺はサリナに連れて行かれながら、叫んだ。
「しんじて、おねがい!」

 あの部屋に連れ戻された俺はサリナにだけでもと思って警告した。
「きょうはなんにち?サリナ」
「アフロディア女神の月の16日でございます」
げえっ、明後日だ!サリナが乱暴される夜が来るのは。
「いい、サリナ。あさってのよるはひとりになったらだめ。ぜったい、このやかたのそとにいないと。レーフこうしゃくにみつかったらおしまい」
「メイドの私は、主の許しなく館の外に出ることはできません……!」
「じゃああさってはゆうがたからぼくのへやにいてよ」
「ですが……」
「サリナ、おちついてきいて。サリナがひどいことされてぼくのおとうとをうむとね、おかあさまはくるってしまわれるの。しんじていたサリナにまでうらぎられたって。そのあとでおかあさまはぼくをみちづれにしようとするの」
到底、2歳児が言うような内容じゃないことは分かっているが、ここで防がないと悲劇が止まらなくなるのだ。
「ヒッ……!」
サリナは真っ青を取り越して死にそうな顔色をしていたが、俺は続けた。
「そうだ、サリナ。しつじのマグヌスをここにつれてきてよ!こいびとなんでしょ、たすけてもらおうよ」
「どうして坊ちゃまがそれを……」
「ぼくが22さいでしぬまでのゆめでね、ぜんぶみたんだよ」
マグヌスとはレーフ公爵家の執事である。サルハール男爵家の三男坊で、元々は騎士になりたかったのだが怪我で諦めて、兄の伝手でここの執事になったのだ。
「マグヌスがそばにいればレーフこうしゃくもちかよれないだろうから、はやく!」
『ザ・筋肉』とあだ名が付いていたマグヌスなのだ。暴飲暴食+酒池肉林で変に太っているだけのレーフ公爵なんぞ相手にもならないだろう。
「は、はい!」
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