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十九話

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私がアレンベル侯爵家を出て2週間が経った。

ここ、ストレイ伯爵領は、この国の最北端に位置しており、都市から1番遠い領地として名が知られている。そして領地の周りには鉱山が聳え立っており、そこから取れる鉱物がこの領地の主な収入源となっていた。
しかし北の大地というだけあって冬は特に寒さが厳しく、毎年とんでもない量の雪に見舞われるため、作物や植物が基本育ちにくい。
それに冬は雪のせいで交通の便が悪くなるのも相まって、度々この地では領地民の食糧不足に悩まされていた。

そんな状況を変えようと10年前、普段ならほとんど顔を出さない社交界に父と共に参加した。
これは、この危機を乗り越えるために他の貴族からの協力を仰ぎ、取引を持ちかけようと言う父の考えからだった。

そして最近、そこで初めて旦那様……、いや、侯爵様と出会ったことを思い出した。
政略結婚ではないと聞かされた時、最初、いつどこで知り合ったのか分からなかったが、よくよく考えてみたら侯爵様と会う機会なんてあの時しかなかったし、今思えば、確かに父に促されて同い年くらいの男の子と挨拶を交わした記憶がある。
多分、あの時の彼が侯爵様だったんだろう。


それにしても伯爵領に帰るのは本当に久しぶりだった。
馬車から見える街並みは五年前とあまり変わっていない。
だからこそ余計にその風景にどこか懐かしさを感じていて、荒れ気味だった心が少しだけ安らいだような気がした。


これから帰る実家には父と母が2人で暮らしている。
両親には侯爵様と離婚した当日に手紙を出して、離婚したことと、実家に帰ることを予め伝えていた。
しかし返って来た返信にしたためられていたのは、父の字でたった一言、「気をつけて帰って来なさい。」という、離婚に関しても、帰宅に関しても何も書かれていない、そんな返事だった。
普段ならどんな内容であってもちゃんと返事をしてくれた父が、突然それしか送って来なかったことに、私は一抹の不安を覚えた。

父は領地運営で多忙で、母は身体が強くないのであまり外には出れない。
だから2週間かかるこの険しく長い道のりを、易々と渡ってくることはできなかった。
そのため両親と会うのも、これが5年ぶりだった。
父と母は温厚でとても優しい性格だ。
勿論それは私が1番よくわかっている。


(でももし、私を受け入れてけれなかったら……。)


ただでさえ今までで社交界で悪い噂を流されていたのに、もしそんな家門の恥のような娘が突然家に帰って来ると聞いたら、普通の両親は快く受け入れてくれるだろうか。


もしかしたら、私の噂がここまで届いているかもしれない。
父は度々地方の社交界には参加しているようだったから、もしかしたら噂を知っているかもしれない。
もしかしたら、私が知らないだけで、今まで私の噂のせいで2人に迷惑をかけていたかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら……。

もうすぐ着くというのに、私は2人に顔を合わせる自信がなかった。


(もし噂を知っていたら……、それを間に受けていたら……。)


そんな不安に駆られながら、とうとう邸宅の近くまで来ると、不意に私を呼ぶ女性の声が聞こえて来た。


「ヴィ………ル………ルヴィーーー!!!」


そう私を愛称で呼んで大きな声で手を振っていたのは、体調があまり良くないであろう、お母様だった。


「お母様……?!」


私は体調が悪いはずの母がこんな寒い日に外に出て、私を出迎えに来ていた。
勿論、隣に使用人を携えてはいるが、そんな母が心配になり、私は思わずその場で馬車を降りて、急いでお母様の元に駆け寄った。
そんな私の心配を知ってか知らずか、母は駆け寄って来た私に強く抱きついて、開口一番にこう言ってくれた。


「ルヴィ!お帰りなさい!よく帰って来てくれたわね……!」


そう言った母は、私の先程の予想や不安に反して、心底嬉しそうに私の事を邸宅前で出迎えた。
そこで私は母が私の帰宅を楽しみにしていてくれたと言うことにやっと気がついた。


「お母様……、」


私が思わず涙声でそう呟くと、母はそんな私の様子に気づいてニコリと優しく微笑んだ後、私の背をまるで慰めるかのように、労わるかのように優しく叩いた。


(やっと帰って来たんだわ……あの地獄から……)


そう干渉に浸って母に抱きついたまま上手く声が出せないでいると、そんな私を知ってか知らずか母は私の手を引き、ウキウキと私を邸宅の中まで手招いた。


「ささ!お父様は忙しくて出迎えには出れなかったけれど、ちゃんと中で貴女を待っていてくれているのよ!早く行きましょう!」


そう母に誘われやっと帰って来た邸宅内は、5年前と全く変わっていなくて、私はその事実に心のどこかでとても安心していた。

すると、私の帰宅に気づいた周りにいた使用人達が私の顔を見るなり目を輝かせ、次々に私に声を掛けて来た。


「お嬢様……、お嬢様だ……!」

「お嬢様!お帰りなさい…!!」

「皆!アルヴィラお嬢様が帰って来たわ……!」


この5年間、嫁いでからはずっと奥様と呼ばれていたからだろうか、久しぶりにお嬢様と呼ばれることに少し気恥ずかしさを覚えると共に、なんだかとても、くすぐったい気持ちになった。


(この人たちの中では、私はまだお嬢様なんだわ……。)


そう思うと、どこか感慨深い気持ちになる。
そしてそんな使用人達も相変わらず、私の知っている顔ばかりで全く変わらないそのメンツに、私はとても安心していた。


(私、帰って来たんだわ……!)


この邸宅特有のみんなの温かい言葉と眼差し、それから優しさ溢れる雰囲気に、改めてそう思わされた。

だけどそんな彼らの言葉と眼差しを背に、私は改めて気を引き締めた。



そして私は父がいると言う談話室に、母と並んで入室した。

そこには4つある椅子のうちのひとつに腰を掛けている父がいた。

父は椅子に深く腰掛けながら、誰かからの手紙を眼鏡越しにじっくり読み込み、何故だかとても険しい顔をしていた。

そんな父の姿に少し驚いて、何か怒られるかもしれないと怖くなった。
しかしそんな私の予想に反して、父は私が入って来たことに気づくなり、顔をパッと明るくさせて徐に立ち上がると、私を快く出迎えた。


「アルヴィラ!帰っていたのか、おかえり!」


先程感じていた私の不安や心配とは裏腹に、父は母と同じく和かに、まるで何も気にしていないとでも言うかのように平然と笑っていた。
そしてそんな父の姿に安堵して、私はホッと胸を撫で下ろした。
そしてそんな私の心情を気遣ってか、父と母が私に椅子に腰掛けるように促したので、私はそれに素直に従い、2人の目の前の椅子に腰を下ろした。

そうしてソワソワした雰囲気から一変、少しだけ私が平静を取り戻すと、父はそれを感じ取ったようで、ゆっくりと落ち着いて話題を切り出して来た。


「早速だけど、アルヴィラ。君の噂は聞いたよ。」


そう開口一番に父に言われて、私は聴いてそうそう、とても不安になった。
もしかして、侯爵様が私が"処女"だと公言したことまでこの人たちは知っているのだろうか。
正直それだけは恥ずかしくて、絶対に知られたくなかった。
両親にそんなこと聞かれたら、恥ずかしくて死にたくなるどころの話ではない。

その不安と羞恥心から私が強く肩を震わせていると、父はそんな私に気がついたのか、安心させるように、落ち着かせるようにこう付け足した。


「安心しなさい、噂は嘘だとわかっているし、信じてもいないから。君の口から言った言葉しか、私たちは信じないよ。」


つまり、例え"処女"という噂を聴いていても、聴いていなくても、私の口から言った言葉しか信じないから大丈夫だ、と言ってくれているらしかった。


「実は私たちもつい最近知ったんだ。私たちは普段、あまり社交界に顔は出さないし、何より都市からここは遠すぎるから、噂が広まるのも遅いんだろう……。しかし、まさかあんな噂が流れていたなんて……。」


そう言って父は思わずと言った形で、強く表情を歪ませた。
するとその隣に座っていた母が徐にハンカチを取り出して、堪えきれなかったのか、震えた声でこう語った。


「アルヴィラ……、今までよく耐えて来たわね……。助けに行けなくてごめんね……。」


そう私に謝った母は、とても悲痛な顔をしていて今にも泣き出してしまいそうだった。
私はそんな顔を見たくなかった。
そもそもこれは私と侯爵様との問題だったから、両親に心配をかけたく無かった私は、この2人に自分の話をしたことはなかった。
だから両親が噂について知らないことは当然だった。
むしろ私はそう思ってくれた、その気持ちだけでもう充分だった。


「いいの。お父様、お母様……私こそ、迷惑ばかり掛けてごめんなさい………。」


そう私が頭を下げると、父も母もより一層、困ったような顔をした。
そしてその怒りの矛先が、当然のようにある男の方に向いた。


「それにしても、侯爵様は一体何をしているんだ…?アルヴィラがこんなことを言われているのに、何もしてくれないなんて……!!」


そう言って父が秘めていた怒りを侯爵様にぶつけると、それに強く賛同するように母も続いて彼に激怒した。


「貴方!こうなったら名誉毀損で侯爵様を訴えましょう……!あと慰謝料もたんまり請求しましょう!!」

「慰謝料………。」


お父様はお母様のその言葉で何かを思い出したのか、先程の怒りが嘘のように、ピタリとその動きを止めた。
そしてその言葉を復唱すると、顎に手を置いて考えるようにこう話し出した。


「そう言えば……、あの時の契約もなしになるのか……。結婚した時に渡した鉱山も、その内こちらに戻って来るだろうね。」



(契約……、)

そんな父の言葉で、私はハッとした。
父の言う契約とはつまり、私達が結婚した時に交わしたあの契約書のことだ。
そして私はある重大なことに気がついてしまった。


「お父様……!契約のこと……、ごめんなさい……。」


私は自分が何をしたのか、やらかしたのか、やっと理解した。


離婚したあの日、侯爵様は自分から縁談を申し込んだから政略結婚ではないと言っていたが、私達からしたらあの結婚は領地の食糧不足を解決するためにした政略結婚で相違なかった。
だから契約書があるし、そこには勿論、離婚した場合の要項も書いてあった。
そこには簡単に言ってしまえば、離婚したらお互いに渡していた利益をお互いの家に戻すと言う内容が記されていた。

侯爵様の最後のあの日の様子からしても、多分この食料の輸出入の取引の話は、確実に無かったことになってしまうだろう。
そしたらまた領地民が食べるものがなく、生活に困る日々になってしまう。
私はそこで初めてそれに気づいた。
自分がただただ楽になることばかりを考えて、そこまで考えが至らなかったのだ。
そして改めて、自分の一存で離婚してしまったことをとても後悔していた。

そんな私を見兼ねたのか、父は私を安心させるかのように優しくこう語った。


「食料のことは別の貴族と取引すればいいんだ。実際、気の良い貴族の方が声を掛けて下さっている。幸い私たちは鉱山のおかげでお金だけはあるからね。だから大丈夫。何も心配しなくても良いんだ、アルヴィラ。」


私はそんな父の言葉にいくらばかりか張り詰めていた緊張の糸が解けた。
しかし、良かった、と安堵する暇もなく、父はそんな私を追い込むかのように次はもっと大変な事を私に伝えて来た。


「それよりも心配しなければならないのは、君自身のことだ、アルヴィラ。君は今、23歳。しかも離婚していて悪い噂も流されているから、これから新しい縁談というのはかなり難しいだろうね……。」


確かにそうだ。
前も言ったが、貴族女性が離婚すると言うことはとても重大なことだった。
離婚した適齢期終了が間近な貴族女性を貰ってくれる人なんて、金目当てか、そう言うマニアの人か、愛人を欲しがる男達くらいだろう。
それに私は悪い噂もあって余計に貰ってくれる人なんていないだろう。
そう考えるだけで、どうしても気分は優れず気落ちする。
そんなあからさまに落ち込んで顔を下げた私を見兼ねた父が、そこにまるで一本の光を見出すかのように私に対してこう言った。


「そこでひとつ、提案があるんだ。」


そして私がその言葉に不思議そうに顔を上げたのを見た父は、少し間を置いてから私の目を真っ直ぐに見つめて、真剣な顔をしながらこう言った。




「伯爵位を継がないか?」





私はその言葉に驚いて、思わずその場で固まってしまった。
そしてゆっくりと私はその言葉の意味を咀嚼する。
伯爵位、つまりストレイ伯爵。今の父の立場に私がなると言うことだ。


「良い話だと思うんだ。君が帰って来ると知った日、母さんと相談したんだ。うちはひとり娘しかいないし、そんな君は嫁いで家を出たから、爵位は傍系から養子を取ってその子に継がせようと思っていたんだけど……どうせなら帰ってきた君に継がせた方がいいと思ったんだ……どうかな?」


確かに、不可能ではない。
ひと昔前までは爵位は男性しか継げないというルールがあったが、最近はその古い文化を撤廃して約10年ほど前から、少しずつ女性の爵位継承が行われつつあった。
実際、都市にはそれなりに爵位を継いだ女性がいて、最近ではわたしと同じ歳くらいの伯爵令嬢と子爵令嬢がその爵位を継いでいた。

結婚できない、またはしないつもりなら確かにその道を選んだ方がいいかもしれない。
社交界での私の今までの酷評も、爵位を継いで栄誉を手に入れれば、いくらかはマシになりそうだとも思った。

それにもし爵位を継いだら、侯爵様や私を見下したマーガレット様や公爵夫人、そして都市の社交界の面々を一刀両断できるほどの力を手に入れることができるんじゃないかとも思った。

しかし、なろうと思ってなれる程、爵位を継ぐということはそう簡単なものではない。


「………一度、考えさせて下さい。」


父自身も身をもってそれを理解しているから、そう自信なさげに答えた私を見て、困ったように苦笑していた。


「そうだね、焦らなくても良いよ。まだまだ時間はたっぷりあるから……ゆっくり考えて答えを出しなさい。」


しかしこんな私のために何かを考えて、新しく道を示してくれたことが、何よりとても嬉しかった。


「はい……。本当にありがとうございます…。」



そうしてこの一連の事に一度、話に区切りがついた。
すると、そう言えば、と父が突然、何かを思い出したかのように私にまた話しかけて来る。


「そう言えば、2日前に君の友人だという男性がここを訪れたよ。」

「え……?」


友人、と聞いて思い浮かべるのは何とも悔しいことに1人しかいない。
だから父のその言葉に余計に驚いた。
だって彼は、あの日、あの場にいた、あの侯爵様の発言を聞いたうちの1人だったから。


「確か……ブレス伯爵……だったかな?君によろしくと言っていたけど……。」


(レバンタ……。)

彼とはあの舞踏会以来、顔を合わせていない。
あんなことがあった後だから、流石に顔を合わせずらかったし、何より最近の彼はどこか様子がおかしい気がしていて、とても怖かった。
あんなことがあったにも関わらず、まだ私を友人として見ていてくれてると言うことなんだろうか。
それとも………何か別の用事があったのだろうか。
一体何の用だったんだろうか。
どう言うつもりで私を訪ねて来たんだろう。
そんなことばかり考えていると、自然と険しい顔つきになっていたのか、そんな私を父が心配そうに見ていた。


「友人、なんだよね….?」

「はい……。」


こちらを伺うようにそう問いかけて来るお父様に、私は曖昧に返事を返した。




何故ならもう、彼を友人と呼ぶべきかどうか、考えあぐねていたから。



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