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番外編1

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ルーザ王子は昔から素行の悪い人だった。

自分の快楽を満たすためならば、人を傷つけることも、法に触れることも厭わない性格をしていた。

そんな彼の婚約者になったのは、勝手に親から決められたことだった。

婚約者となる前は、彼の存在こそ知ってはいたものの、どんな人物であるかまでは知らなかった。

むしろ、良い噂ばかり耳にしていたように思う。

ドルリアス家の次期当主であり、国王となられるお方。

とても優しい人柄で皆から愛されている。

民を救うために、自らを犠牲にし戦い抜いた過去がある。

などなど、今となっては全てが嘘なのだと分かる。

実際には、遊び人であり残忍という言葉がよく似合う。

毎晩、新しく女性を捕まえては、不埒なことをして、自分に対して反抗した女性に対しては、他国に奴隷として売り飛ばす。

平民が嫌いで、気に入らない者が視界に入っただけでその平民の住んでいる村ごと焼き払おうとしたこともある。

最低なクズ人間なのだ。

そんな彼から私自身も嫌がらせを毎日のように受けている。

遊び人の彼は婚約というのが気にくわないらしく、暴言なんて序の口。

食事の際には、私のナイフやフォークをとりあげて手で食べろと言い、メイドさんには私の心が貧しいなどと散々な悪口を言い、私の家族に向かっては家畜などと非人道的な呼び方をする。

今までで一番最悪だった出来事は、街中を歩いていた際に、髪をひっぱられて、雌豚だのなんだのと言われて、大衆の見せ物にされたことだ。

思い返すだけで、憎悪に心が支配されそうになる。

しかしそんな中で、唯一の救いだったのが、ルーザー王子の父である皇帝陛下がとても真っ当な人間だったということだ。

他人への敬意を忘れず、自分の身分に溺れることもなく、いつだって国民のために尽くす。そんな素晴らしい人柄をされている。

息子であるルーザー王子も、威厳ある皇帝陛下の前では、好き勝手することはない。

なるべく温厚な振る舞いをして機嫌を伺うのが毎度のことだ。

皇帝陛下は、それくらいに絶対なる権力者ということだ。

もしも、皇帝陛下が私の味方になってくれるのならかなり心強い。

正義感の強い、皇帝陛下には計画を話してみる価値がありそうだ。

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