【完結】愛しているなんて嘘ですよね?婚約者もいますし、婚約しないなら殺すだなんてありえません!

みかみかん

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「リリナ、今日も君は美しい。そして暖かさを感じるよ。ああ、なんて愛しいんだ」

「そんなことありませんよ……」

彼はいつも私に愛していると言ってくれます。

だけども彼には婚約者がいると、最近知りました。

それなのに彼は今日もいつものように、

「愛しているよ、リリナ」

どうしてでしょうか。

これがいわゆる不倫というものなんでしょうか。

ですがまだ正式に結婚しているわけではないので単なる浮気相手という奴でしょうか。

なんとも不服です。

そして悲しい気持ちになります。

私は彼に婚約者がいるのならばその人のために生きて、その人をちゃんと想ってほしいのです。

それが婚約というものです。

我々、貴族はたしかに必ずしも想い人と結ばれる運命にはありません。

ですが、相手を選ぶ権利はありますし、互いに互いを知っていく上で愛が芽生え、幸せな時を過ごすのです。

「一つよろしいでしょうか。大変言いづらいのですが、パウロ男爵はリサ姫という素敵な婚約者がいらっしゃるのに、どうして私にそのようなことを……」

彼は眉をひそめて首を垂れる。

「リリナ、気づいていたんだね……。すまない。君のことを本当に愛してしまったんだ。だから、ずっと言い出せなかった」

「ほ、本当に愛しているというのならばなぜ最初に伝えてくださらなかったのですか」

「僕にはね……リサとの子供がいるんだ。彼女のお腹の中にね」

「まあ……!」

「成り行きでそうなったんだ。結局は跡取りのためだ。互いの家を守るためなのだから仕方はないが、すごく悲しかったんだ」

「そうですか……でも……」

「愛してもいない女性と無理に子供を作り、僕はどんな顔をして子供の顔を見ればいいのだろうか。そんな風に考えた。きっと可愛いとも思わない。だけどもし君との子供ならば誰よりも愛する自信がある」

そんな自信はすぐ捨てていただきたい。

「では私からは、丁重に断りを告げます」

「な、何故だ……! こんなにも君を愛しているというのに!」

「それは男爵の都合です。第一に私のことを貴方は何も知らないではありませんか。私にも婚約者はいますよ」

「な、なに!?」

「ほら、その扉の向こうで音が聞こえませんか?」


パウロ男爵は耳を澄まして私が指差した扉の方向を見つめる。

『キンキーンッ』と金属が擦れるような音。

これは、彼の剣を研ぐ音だ。

すると何を思ったのか、パウロ男爵は胸ポケットからナイフを取り出した。

「--何をするおつもりですか?」

「君にふさわしい男かどうか見定めるのだよ。もし僕が彼を殺したら、僕と結婚すると約束してくれ。もし断るというのならこの場で君を殺す」

なんという傲慢な思考でしょうか。

彼には一度も惹かれたこともない。こんな男ですから。

「……断ります」

あえて否定をした。

私は婚約者を愛しているから。

別に婚約者じゃなくとも愛しています。

そして、信じているのです。


即座に私の喉元にナイフを突きつける男爵でしたが、

「それくらいにしてくださいますか? でなければ、貴方の首が飛んでしまいますよ?」

彼は絶対に助けてくれるのです。

「バルサレス様!」

直後、パウロ男爵は青ざめる。

「まさかッ……英雄バルサレスだと!? 剣技で右に出るものなど存在しないという、あの……」

「おそらく、私のことでしょう」

「クッ……」

「おっといけない」

バルサレス様はナイフを奪い今度は男爵の喉元に突きつける。

「はい。二度と彼女の前に現れないと誓いなさい」

「ち、ち、誓うううう!!!」


慌ててパウロ男爵はこの場から逃げだした。

「これで君の人生に彼が関わらなければいいけど」

「ええ。全くですわ」

私は誰よりもバルサレス様を愛しているのです。

それ故に、二人でこれからの長い人生を歩んでいきたい。
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