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しおりを挟む「ーーッ……レオン様……私たちだけじゃなくて、レオン様ももう到着されていたのですねっ」
上擦った声は動揺しているのを隠しきれていない。
そこで察した。彼女はレオン様に好意があるということを。
それとは別に変な既視感が頭に浮かんだ。
レオン様……彼もどこかで見覚えがある顔だった。
なぜだろうか、二人揃って、前に夢の中に出てきたことが……いやもう流石に夢であることはない。かと言って、出会ったこともない。
「レオン様は今日もとても素敵ですね」
話を変えるようにしてルメリアは言う。
自分に対する態度とのあまりの差に若干、苛々してしまう。
もしかすると、私以外の人物にはとても温厚ぶっているのだろうか。
これってもしや……少女漫画や乙女ゲームとかでよくある悪役令嬢っていうやつなのでは……?
そうだとしたら、嫌な予感がする。
ヒロインに対してずっと執着してくるからだ。
まさか、自分がヒロイン的立場にはならないだろうから、これは単なる妄想に過ぎないけれど。
「あの……ナタリアさん。それはいいとして、さっき、ルルさんのこと“クソネズミ”とか言ってなかったかな?」
レオンと呼ばれた彼は、私たちに近づいてきて、そう問いかけた。
この場合、ナタリアは紅のドレスで悪役令嬢ぽい彼女で、私がルルということなのだろうか。
ルルってなんだか、可愛らしくて気に入りそうだ。
ん……? ルル……あれ、ルルって、もしかして!
「え、いやあのそれは……ネズミが好きだとこの前聞いたので……」
「そうなんですね。僕はそんなこと一度も聞いたことないんだけど……ーールルさん、それは、本当の話ですか?」
「えっ、?」
いきなり話を振られたものだから、素っ頓狂な声を出しながらも、
「ごめんなさい。私、多分言ってないです。たしかにネズミは可愛いとは思いますが、好きではありませんし……第一にネズミが好きだとかそういう話ではなく、私のことをクソネズミだと“罵倒”してきました」
あくまで本当のことを言う。
変な嘘をついたところで、余計に状況が難しくなると思ったからだ。
それに……
「そうですか。僕もそう思いました。あの、ナタリアさん。もしも次、ルルのことそんな呼び方したら、わかっていますよね?」
彼ならば、私を助けてくれるかもしれないと思ったからだ。
そして、それは的中したようだ。
雰囲気からしてとても優しそうだったのだ。
「は、はい……! 申し訳ございません。レオン様に不快な思いをさせてしまって」
「いいえ、それは違います。謝るのは僕じゃなくてルルさんに。そして不快な思いをしているのもルルさんです」
言葉は強めだけれど、ふるまいはとても落ち着いたものだ。
「そうですわね……はい。あの、ところで婚約者候補から外したりとかは……」
何の話をしているのかは、さっぱりだけれど、結局、謝罪もなしに会話とはルメリアはつくづく嫌な人だと思う。
「次はないという意味で、先ほど答えました」
「そうでしたわね。ありがとうございます。でも……早めに答えを聞きたくって、それで結局誰を選ぶのかを」
「そうですね……今回はそのための食事会ですからね。皆さんが集まってからでもいいですが、本人がこの場にいるので告白しても問題はありませんよね」
ルメリアは彼の言葉に惹かれるように、目を輝かせて反応する。
「それってつまり、私と婚約を……!」
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