なんだろう、公爵令嬢で破滅フラグなんて困るのでやめてもらっていいですか?

みかみかん

文字の大きさ
上 下
3 / 6

3

しおりを挟む

「ーーッ……レオン様……私たちだけじゃなくて、レオン様ももう到着されていたのですねっ」

上擦った声は動揺しているのを隠しきれていない。

そこで察した。彼女はレオン様に好意があるということを。

それとは別に変な既視感が頭に浮かんだ。

レオン様……彼もどこかで見覚えがある顔だった。

なぜだろうか、二人揃って、前に夢の中に出てきたことが……いやもう流石に夢であることはない。かと言って、出会ったこともない。

「レオン様は今日もとても素敵ですね」

話を変えるようにしてルメリアは言う。

自分に対する態度とのあまりの差に若干、苛々してしまう。

もしかすると、私以外の人物にはとても温厚ぶっているのだろうか。

これってもしや……少女漫画や乙女ゲームとかでよくある悪役令嬢っていうやつなのでは……?

そうだとしたら、嫌な予感がする。

ヒロインに対してずっと執着してくるからだ。

まさか、自分がヒロイン的立場にはならないだろうから、これは単なる妄想に過ぎないけれど。

「あの……ナタリアさん。それはいいとして、さっき、ルルさんのこと“クソネズミ”とか言ってなかったかな?」

レオンと呼ばれた彼は、私たちに近づいてきて、そう問いかけた。

この場合、ナタリアは紅のドレスで悪役令嬢ぽい彼女で、私がルルということなのだろうか。

ルルってなんだか、可愛らしくて気に入りそうだ。

ん……? ルル……あれ、ルルって、もしかして!

「え、いやあのそれは……ネズミが好きだとこの前聞いたので……」

「そうなんですね。僕はそんなこと一度も聞いたことないんだけど……ーールルさん、それは、本当の話ですか?」

「えっ、?」
いきなり話を振られたものだから、素っ頓狂な声を出しながらも、
「ごめんなさい。私、多分言ってないです。たしかにネズミは可愛いとは思いますが、好きではありませんし……第一にネズミが好きだとかそういう話ではなく、私のことをクソネズミだと“罵倒”してきました」

あくまで本当のことを言う。

変な嘘をついたところで、余計に状況が難しくなると思ったからだ。

それに……

「そうですか。僕もそう思いました。あの、ナタリアさん。もしも次、ルルのことそんな呼び方したら、わかっていますよね?」

彼ならば、私を助けてくれるかもしれないと思ったからだ。

そして、それは的中したようだ。

雰囲気からしてとても優しそうだったのだ。

「は、はい……! 申し訳ございません。レオン様に不快な思いをさせてしまって」

「いいえ、それは違います。謝るのは僕じゃなくてルルさんに。そして不快な思いをしているのもルルさんです」

言葉は強めだけれど、ふるまいはとても落ち着いたものだ。

「そうですわね……はい。あの、ところで婚約者候補から外したりとかは……」

何の話をしているのかは、さっぱりだけれど、結局、謝罪もなしに会話とはルメリアはつくづく嫌な人だと思う。

「次はないという意味で、先ほど答えました」

「そうでしたわね。ありがとうございます。でも……早めに答えを聞きたくって、それで結局誰を選ぶのかを」

「そうですね……今回はそのための食事会ですからね。皆さんが集まってからでもいいですが、本人がこの場にいるので告白しても問題はありませんよね」

ルメリアは彼の言葉に惹かれるように、目を輝かせて反応する。

「それってつまり、私と婚約を……!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。

みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。 そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。 婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。 アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。 追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...